『Determinatio Nis』
ーーさて、復讐者とニイスがエインと合流し、エムオルとレミエが戻ってくる。今回は宿を取る事をせず、エインの所で合流し改めて話し合う事にした。
其処で開口一番にレミエがとある事を話し始めた。
「そう言えば…その……あの、通貨で補給しようかと思ったのですが………」
彼女の言葉の始まりはこうだ。
「実は神聖手榴弾を作ろうと思って必要なものを揃えようと思ったんですけれど…店主の方から『エバルピアは持ってるかい?』なんて聞かれてしまいまして……」
言いたい分を言い切るとレミエが恥ずかしそうに小さくなってしまった。
「エバルピア?」
復讐者もニイスも、エムオルですらも頭の上に?を出している。
「エバルピアですか。噂には聞いていたのですがまさか本当に仮想通貨を作ってしまうとは…」
彼女の言葉に唯一まともに対応出来たのはエイン一人。彼は、「エバルピア」と呼ばれたものについて腕を組みながら語った。
「エバルピア。仮想電子通貨。単純な話シーフォーンが我儘を通して作った「ジャンドラ」という名称がダサくて変えようにも変えにくくなってしまったという理由で作られた、新しい世界基準の通貨です。当初は噂程度でしたが本気だったとは思わず」
「…エイン、其の、エバルピアというのは、由来とかその辺りは」
「…嗚呼、由来ですか?多分、イヴの別の呼び方のエバに智恵を意味する言葉、或いはデインソピアの「ソピア」を複合させたものでしょう。智恵についてはアレ、だって星の乙女が大好きですし」
エインはあっさりと答えてしまった。大体の推測なのだろうが彼の推測はほぼ合ってる。
復讐者は成程、と納得した。
「でもどうしてエバ、なんでしょうね」
「其れはですね。ニイスが昔話していた事ですがシーフォーンの童女形態が確かそんな感じの名前だったとかなんだったとかでしたっけ」
レミエの言葉にもエインはさらりと答えてくれた。
「あー、じゃあ自分さんとすきなキャラの名前とをくっつけちゃったかんじかー」
エムオルが要約を話す。
『うわ。自分大好き、デインソピア大好き、あとアレ大好き超好きってやつの極みみたいだねえ…』
そしてニイスの皮肉。
「…ともかく、そのエバルピアというものが無ければウチのものは買えないよ、と追い出されてしまいまして…」
はあ、とレミエが溜息を吐いた。
「まあ仕方がありませんよ、実質エバルピア普及は追い付いていない状況ですし此処の民衆も全員とは言えたものでも無いですしね。落ち込まないで下さい」
エインがレミエへ慰めの言葉を掛ける。慰めも含め周囲を支える事において彼の方が長けているのは事実だ。其の彼が、復讐者と共にニイスを見る。
『………なに?』
「いや、ニイスはどうなのかなとな」
『どうなのかなと言われてもなあ…』
ニイスは困った様に頭を抱えて悩んでいる様子だ。
「貴方がやって下さらなければ、我々とて立ち往生せざるを得なくなるのですよ、ニイス」
エインは悩むニイスに決断を迫り、必死になるべきだと訴える。復讐者はエインの振る舞いに少しだけ難色を示すが、先に進むにはニイスが動かねばならないからには、何も言う事が出来無かった。
『………うううう〜っ』
ニイスは只管悩み、戸惑い、嫌悪し…眉を顰めた。其れでも自分が黙っていれば彼等は何時まで経っても進めない。復讐者もエインも、レミエ達も大好きだ。大切な仲間、同胞。自分が動かぬままでいる事は逃げであり大事な同胞の足を引っ張る行為でしか無い。
ニイスは決意し、選んだ。
『分かった。では僕が請け負おう』
ーーエインの口元は緩み、復讐者は目を見開いた。
レミエは少し嬉しそうに、エムオルは吃驚する。無駄に大きな声は出さない。ニイスの決意に対する彼等の喜びは充分に伝わった。
同時にこれ迄自ら戦わなかった己を恥じる。
「よく決意して下さいましたね、ニイス」エインの少し柔らかな表情がニイスへ向けられた。
「君が戦うと決めた以上、我々も戦おう」
復讐者の言葉により皆の決意はより一層強くなった。
予定の刻はあと少し。
星を討つ時が近付いてくる。




