『Dormiens vindictae ーⅢー』
………復讐者は歩み出す。眩い光が差し込んだ場所まで。
斬っても斬っても、何度も現れる星の乙女の幻影を何度も斬り伏せて。
彼は強い眼差しで光の果てへ向かう。
憎悪の暗い闇も、恩人を喪った哀しみも、たった一つの目的に全てを込めた、強い瞳で。
復讐者が剣を振るう度に少女の幻影は少女だったものへ変わり果てる。
或る者は鼻を削ぎ落とされて、
或る者は首を切断されて、
或る者は四肢を斬り落とされ、
或る者は縦に真っ二つに分断、
或る者は腹を引き裂かれ、
或る者は両眼をぶつりと斬られた。
復讐者は躊躇わない。行く手を阻み、遮り続けるなら彼は取り払うだけだった。
其れが星の乙女であろうと、他の追従者であろうと、女神であろうと構わない。今の彼に彼女達の幻は叶わない。
光明に次第に近付くにつれ復讐者は何か答えを見出したかの様な錯覚に囚われる。
目的が完遂される迄、彼の旅は終わらない儘。
眩い光の向こう側に、取り戻したかった人の姿が僅かに見えた様であって。
『ーー…君の徒花が、君自身にとって後悔の無いものであれば良いね』
「……………………!!」
復讐者の両目がぱっと大きく見開かれた。
「!!復讐者さん!!!!!!!!」
「おにーさん!」
彼の手を取りながら祈りの言葉を唱えていたレミエ、心配そうに見詰めていたエムオルの表情が明るくなった。
「……やっぱり、夢だったのか」彼の言葉は拍子抜けする程あっさりとした様子で、そしてある意味では彼らしからぬものだった。
「…復讐者さん、妙に落ち着いてますね?」レミエは訝しんだりはせず、穏やかに微笑みを溢した。
「????????」エムオルはなにかあったのか、何処までも分からなかったらしいが、そう悪いものでも無いのかもしれないと思った時には、エムオルも嬉しそうに笑っていた。
「…悪かった。心配してくれて感謝する。有り難う」
「本当ですよ、エムオルさんの計らいで宿も取りましたのに」
復讐者の珍しく柔らかい声に二人は改めて安堵を浮かべた。
「まだ此処に居られるなら居たいんだ、二人共先に宿に向かって欲しい」
二人を送り出す様に、其の後ろ姿を暫し見届けた後、彼は不思議な花木に向かい直る。
「……が、」復讐者の左目を静かに温いものが伝って落ちた。
「"あの人"が助けてくれた気がした、」
己すら燃やし尽くす怨嗟の焔から。
女神達すら燃やし尽くし、自分の骨すら遺さずに燃えてゆく蒼い憎しみの焔から。




