表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dea occisio ーFlos fructum nonー  作者: つつみ
dixisse praeparatio(襲撃準備)
35/91

『Dormiens vindictae ーⅡー』

銃口が少女に再び向けられる。

















































「………めてよ………………………」

ゆらりと突然、復讐者の傍らに現れる。




「…めろ……やめろ………」もう傍らに、また別の一人。

殺した筈の女神、リンニレースとアンクォア。


「やめろ…やめろ……」

「■■■■ちゃんを傷付けないで…」

生気の無い表情、抑揚の無い声を伴って復讐者の周りをぐるぐると囲む様に回る。

「……死に損ないの死者が」

復讐者は何の躊躇いも持たず囲む二人の脳天を撃ち抜く。…然し撃ち抜いた筈にも関わらず二人は動きを止めない。




(変化が無い…)其の死を見届けた、深い怨恨の対象でしか無い存在を前に復讐者は戸惑いも、困惑も無かった。

死んだ筈の者である以上彼は何処までも冷静だった。

「■■■■ちゃんの時みたいにデインさんの■■■■ちゃんを虐めるのか」

「■■■■ちゃんには何の罪も無いでしょ…」

「私達は悪くない」

「私達は悪くない」

「■■■■ちゃんは尊い子」

「全てを作ったシーフォーンさんこそ絶対」

「女神は偉大だ」

「私達に従え」

二人の女神の言葉は復讐者にとっては酷く不気味で、醜くて、許せない。

(人殺しの仲間がの分際でよく言う)

殺せ、殺せ、殺せ、殺せ。脳裏の全てを殺意が支配する。消えろ、消えろ、とぐるぐる囲み回る二人に願い、苦しんだ儘の星の乙女を怨嗟故に殺したいという憎悪に駆られてゆく。


「絶対の四女神に従わないのは何故?」

「シーフォーンちゃんに跪いて(かしず)いてよ」

「私達を地獄から出せ」

「早くシーフォーンちゃんとデインちゃんに従って」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」

「隷属しろ」



『隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ隷属しろ』









恐ろしい程に繰り返される「隷属しろ」の言葉。

彼女達はやはり"支配者になりたがる者"なのだ。あらゆる人種を自分達の下に置き、自分を尊ぶ存在と自負して止まない、愚かな者。

女神の名に残る、嘗ての名義も彼は忘れていない。

…憎悪や怨嗟が日増し強くなってゆく様に。


ただ彼の怒りが、其の時ばかりは爆発した。

































圧倒的な殺意を報復者の剣に変えて。

















































「ーーあらゆる全てから消えろ死に損ない共おおおおっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

黒剣から迸る一閃がリンニレースも、アンクォアも薙ぎ払う。

突き詰められた暴威は寧ろ研ぎ澄まされた一撃の様だった。

「ああああっ!!!!!!!!!!!!!!!」

彼の放つ剣の一撃に耐えかねたリンニレースとアンクォアの身体が真っ二つに分断された。幻影でしか無い筈なのに、分断された所から生々しい臓物が鮮血と共に飛び出し、見事に切断された白い骨、ぶつりと切られた筋繊維や神経が続いて飛び出す。

また、一撃の圧力が大き過ぎたのか、切断された場所から彼女達二人の全身を大きな圧力が巡り、リンニレースとアンクォアの顔が勢い良く膨らみ真っ赤になると両目を飛び出させ顔の穴という穴から更に多くの鮮血を溢れ出させた。

リンニレースなんかは顔が限界まで膨らんだ風船の様に膨らみ、そして張り裂けて割れてしまった。

バン!!と大きく重い音が響く。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が復讐者の足元周りに飛び散った。リンニレースの砕けた頭蓋が惨たらしさを物語る。

ーー地に落ちた鮮血は暫し広がった後、怨嗟の闇に吸い込まれる様に消えていった。



アンクォアもリンニレースも、もう指一つ動かしはしなかった。

幻影でしか無かった二人だが、幻影になっても死を迎えるなんて。出て来ないで地獄の中に居続ければ良かったものを、と復讐者は思ったが本物の二人はニイスの地獄の中で今でも苦しめられていると気付いてはっとする。

















「……………………」復讐者の手に、"殺し"をした感覚が強く残った。

既に女神や追従者を殺している以上彼にとっては今更な話だが、いい気味とも思えない感情と、仇敵を討ち取った快感の二つの感情が彼の中で(せめ)ぎ合う。


「……………………」復讐者が少女に一瞥をくれてやると、目のあった少女は小さく「ひっ」と悲鳴を漏らした。

「……随分と狡い事をするものだな」復讐者は呆れた様な表情を浮かべて、更に侮蔑を向ける。

「あ…うぁ………」少女はがたがたと頭を押さえながら震える。折角押さえていた頭も、震えの所為で脳が少し飛び出してしまった。

「…まだ終わった訳じゃ無い。一時の夢から今は醒めておくといいさ」

そして彼は先程の行動から間も無くして星の乙女を数十回程撃ち抜いた。

何の躊躇いも、最後まで持たずに。

























































……花木の下にて。


眠り続ける復讐者を不安そうに見ている、レミエとエムオルが傍に座る。

ニイスも何故か、復讐者の傍には居ないらしい。ぼんやりとした彼の気配をレミエは感じる事が出来無かった。









「復讐者さん、大丈夫でしょうか………」

「さいきんいっぱいがんばったから、つかれちゃったのかな」

復讐者の容態を気掛かりに思うあまり二人は彼の左手をそっと優しく握った。


レミエは祈りを込めて、復讐者の手を握る。




(どうか、どうか…この人をお導き下さい、助けて下さい、ああ、どうか……!!)

































ーーレミエの祈りが届いたのか、そうなのかは分からない。

然し夢中の復讐者の前に、一筋の光明が照らし出された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ