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Dea occisio ーFlos fructum nonー  作者: つつみ
Videntur reminisci aliquando suspendat ultoris(復讐者の回想)
31/91

『Filii confundetur』

暫く休んだ後、二人が目を覚した事で一行の旅路は再開する。

次なる目的地を星都ソフィアリア・イルに定めて、其の歩みを進めてゆく。



道中、一行のうち復讐者とレミエの表情は重々しいものであった。

復讐者について、彼の事情を知るニイスは何も言わず、彼を気掛かりに思っているが、レミエに至っては彼女が何故暗い顔をするのか、其の場に居る者達には推し量る事すら出来無い。

不思議な事にレミエの表情に翳りが見え始めたのは割と最近だ。復讐者に付いて行った頃はそういった表情をする事はあまり無かったのだが、此処の所最近、少女の死を切っ掛けにしたのかは分からないが頻度が増えた。









珍しく二人が暗い表情をするものだから、共に居るエムオルは酷く酷く、それは大変困った様子でいた。

ニイスについてもエムオルは彼の姿を見れない上声も聞こえないので意思疎通は叶わないし、エムオルは兎に角二人を元気付ける事に躍起した。



…何で、この二人はくらい顔してるんだろう?

たった一人だけ、何の事情も知らず、そして二人の事について殆ど知らないエムオルは、こんな時に限って自分の気質でもどうにか出来無い無力さを痛感した。

二人のことをもっと知ってれば…と一瞬頭の中で考えるものの、無闇に踏み込む訳にはいかないと考えた事を霧散させた。

















「………エムオル」

何時もの様に静かな復讐者の声がエムオルを呼んだ。

「……ぴえ、なに」名を呼ばれて驚いてしまったエムオルはとても吃驚(びっくり)する。

「…すまん」復讐者は驚いたエムオルを見て申し訳無い気持ちになったのか、謝ってしまった。



そんな彼の謝罪を気にせず、何か言いたそうにしている復讐者の様子を逆に気掛かりに感じていたエムオルはどうしたのか、と訊ねる。

ーーツブ族の集落についての事だった。

エムオルの故郷の話をしろ、というものでは無さそうだったが。

















「ツブ族って永世中立種族なんだろう?女神にすら与さないって聞いているが」

「あっ、あれ…うん、そうだよ。ツブぞくは女神のみかたはしないし、商売いがいでは人間さんたちともこうりゅうしないの。こうすることでツブぞくは平和にやってるからね」

「女神側には絶対属したりしない訳か」

「そう。女神はせいかくわるそうだしいやーな感じするもん。そういうの分かっちゃうツブぞくはきらいなものには石なげちゃうんだよ…!!」

石を投げるというのは流石にアレだが、然し此の場に女神達が居なくて正解だとは思う。もし連中の誰かが此の言葉を聞いていたらきっと此のツブ族は只では済まない事だろう。




「石投げる程嫌いなのか、女神の事」

「うん」

多分、ツブ族全体と言うよりもエムオル自身の考えの方が大きいのかもしれない。

然しエムオルが其処まで言うのだから、女神の横暴さをツブ族は知っているだろうし、何よりも此のツブ族が其の目で既に見ているのだ、其の結果の此の発言なのだから女神の所業を何処かで見届けていたりするのだろうかと思う。


エムオルからツブ族の事を聞いて物思いに耽る復讐者を、隣のエムオルは只管じっと見詰めていた。

何かを言いたげにしている様な、そうでは無さそうな、然し何か言いたそうな…少なくともエムオルの表情から其れを推し量るのは意外と難しい。

復讐者が彼の視線に気付いた時、エムオルは静かに口を開いた。
























「………あのさあ、前から気になってたことがあるんだよね」

「「『?』」」


























「星都は世界しゅうきょうの「そうほんざん」ってところだよ?このままでいいの?あぶなくない??」









































「「『ああ………』」」

































三人(ニイスを含む)は星都について、そして統治する女神の事についてあまり考えていなかったらしい。

多分、今の状態で向かえば碌でも無い事になる事を忘れていた様だった。

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