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Dea occisio ーFlos fructum nonー  作者: つつみ
Anagnostes fugitivus cum furore(激烈と暴走)
25/91

『Ferox flamma quam in carcerem calidum flammae』









ーー復讐者が放った、剣の焔を一身に受けて、アンクォアは灰燼と化した。

彼女の熱炎よりも静かで、そして激しい焔が、彼女の魂を捕えて飲み込んでゆく。

狂ったアンクォアに悲鳴の一つすら上げさせず、ニイスの焔は彼女(アンクォア)を喰らった。


アンクォアの全身を、"彼"の悔恨が駆け巡る。




(やが)て、彼女を侵蝕した。









































……………………


…………



身体が沈んでゆく感覚。一指たりとも動かす事の叶わない重さ。支配する黒、暗い底に呑まれてゆく。

女神である私が、恐怖している。




ーーああ、そっか、元々私は人間だった。

















私は図り知れない深さに打ち負けて、沈んでゆくのか。

此れが「地獄」なのだろうか。

息をする事も出来無い。

上へ藻掻く事も叶わない。

何処までも何処までも沈んでゆくだけ。

■■さんの暗い心が、私を何度も殺す為にのしかかって来る。


………。

でも、私は罪を犯したとは思わない。

私は悪くない。

シーフォーンさんじゃ無いけど、私は悪くないと言い張ろう。

死んだのはあっちの勝手だ。どうせ構ってほしかったからなんだろwと嘲ってやる。嗤ってやる。罵ってやる。許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない…



私の「身勝手な人」という発言と、シーフォーンさんへの密告は裏切り行為でも虐めでも無いのだから。

彼奴はイジメ抜いても良い、私の本能が疼いて疼いて仕方が無かった。だから私はシーフォーンさんに肩入れしたし、シーフォーンさん達は大正義だった。

…良い人なんだからそっちに付くのが普通でしょ?悪い奴をとことん苦しめるのが良い人の役目でしょ?

悪人に容赦なんて要らない、悪人は善人達(わたしたち)で苦しめてやるべきだ。
























「……私を苦しめようとしてるみたいだけどそんなものに屈したりはしませんぞwww私は何も悪くないwww悪いのはアンタwwwwwww」

だから私は何時かシーフォーン達に助けてもらえる。リンニレースさん達と一緒に。あっははははははははははwwwwwwwwwwwwww


































……ゴボゴボと、深淵から蠢く何かが垣間見える。

大きな二つの光が、アンクォアを捉えた。




「……………………………!?」

アンクォアは視線を深淵へ向けた。だが、身体を動かそうにも全く動かせられない。

女神を捉えた深淵の何かは、恐ろしい速度で闇と共に広がると、アンクォアを呑み込んで咀嚼した。




…ググっ、グッ、ブチンッ!!グチャ、バリッ、バリッ、バリッ、バリッ、バリッ、ブチンッ、グチャグチャグチャグチャグチャ………




































「ーーア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!痛い痛いイタイイタイイダイ痛い゛痛イィぃイいいいいいい!!!!!!!!!!!腕が千切れる両足がもげる指が、指っ……!!!!いダイ!!!!!!!そこっ…お腹、あああああやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてお腹真っ二つはやめて痛い怖い嫌だやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめt」






ブツンッ。









































『……………………死に絶えた自分が女神の儘だと思っていたのか?』

女神を咀嚼した何かから聞こえてくる、"誰か"の声。

『君はそれでも、罪を犯している。認めたくない気持ちは誰にだってある。だが、認めず足掻くのは良くないのではないだろうか?』

『己の罪を認め、自傷を繰り返し自責と自戒に命を絶つ方が、逃げ惑い正当化する者よりどれ程マシだろうか』

『それでも、もう君には届かなくなったのだろうな。()()()()の様に狂ってしまった。先に堕ちたリンニレースと同じく。』

語りが続けられる中、女神の身体を物理的に咀嚼する行為は止まらない。



『…命を絶つ者も、罪を認めずに逃げる者も、何方も何方である。だが、自覚の範囲が違うな』

咀嚼の度にアンクォアの身体は千切れ、でも意図も容易くは死ねない。






女神アンクォアは、女神の頑健さを失い人間の其れへと戻った儘で、女神の永遠の命故に咀嚼される事で与えられる苦痛を永遠に受け続ける事となった。


噛み千切られては再生し、また噛み千切られては再生し、肉片になろうとも臓腑を飛び散らせようとも、血肉の一片まで深淵の何かに喰らわれ続ける。

何度も焼け爛れては再生し魂の髄まで焼き尽くされてゆくリンニレースや先に喰らわれたディーシャーやレイヨナの様に、永遠の苦痛がアンクォアの身を蝕み続ける。

アンクォアの骨が剥き出しになる。

血肉のこびり付いた彼女の白い骨が。









































…断罪に臥せるべき第二番目の女神として、女神アンクォアは永遠の苦痛を受け続ける事となった。

リンニレースの地獄にも共に在れず、追従者達と同じ地獄にも行けず、アンクォアはたった独りで深淵に堕ちてゆく。




女神は死んだ。

フィリゼンから、女神が消えた。

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