colorful monotone
久しぶりに書いて出来たのが連載中のじゃなくてコレ。
もうね、アレね。疲れてるのね。脳が働かないのよ。
けど地道に頑張ります。応援してください。
オナシャス!
…………あ、えーと、今回の作品は独特な雰囲気でやらせていただきました。
僕と彼女の世界を楽しんでくれれば幸いです(いつもこんなんばっかだな。いい加減キーワード打つのがめんどうだぞ……)。
実は2ヶ月ほど前から長編のプロットを練り、一ヶ月前から書いておりましたところ、データが全部飛びました\(^o^)/
あと数年待ってください。
やたら長い前書きで、もはや本編よむ気がしないと思いますが、よろしくお願いします。
白と黒で飾られた鍵盤に七色の音が色づき、僕の頬を撫でていく。
優雅で無機質なピアノから奏でられる音は生命の心音よりも感動的に、そして美しく僕の心を揺さぶった。
一音一音紡がれた音色は僕の中で確かな気持ちを生み出しては泡のように消えていく。
始まったときから終わりへと近づく旋律。ダカーポを繰り返し、折り返しても止まることはない事実。
――人生の縮図。
五線譜に図された音符たちは僕を叩き、溶け込み、沁みていく。
そして五線譜は僕の身体を縛って離そうとはしてくれない。
唯一動かせるのはまぶただけ。
今まで瞑っていたまぶたをひらくと眼下には一台のピアノと一人の女性。
彼女の名は椎名未凪。ピアニストだ。
細く白い指先で鍵盤を叩く所作は違和感なく、ピアノと彼女がいて初めて楽器と成っている。そう思えた。
※ ※ ※
僕は未凪と結婚した。
いま思うと、それは罪だったのかもしれない。ピアノから彼女を奪った罪。
未凪が言った。
「私はもうピアノは弾けない」
と。
僕は泣いた。
未凪はピアノのために存在していた指先で僕の雫を拭ってくれた。
彼女は微笑んだ。
「私の指はあなたに触れるためにあったの。あなたが嘆くことではないわ」
僕は知っていた。それは嘘だと。
虚偽と欺瞞を着飾ってまで僕を元気づけようとしてくれる。そのことが僕をさらに深いところへ追いやる。
色づいた音色を身に纏っていた未凪は僕のせいで虚偽と欺瞞を着飾ってしまった。着飾らせてしまったことが僕の罪。
そのことに憂いたが、泣くことはなかった。泣けなかった。泣き虫な僕は泣くことをやめ、笑うようになった。
――虚偽と欺瞞を着飾って。
※ ※ ※
彼女は僕とは真反対な性格をしていたと思う。
そんな僕と未凪が出会い、結婚できたのは僥倖の一言に尽きる。
ありがとう。うれしい!
※ ※ ※
とある踏切。彼女と歩いた踏切。
遮断機の鼓動を追い抜く規則正しい音は、僕の冷めてしまった心に警告するようだった。
赤い雲、濃い影、踏切の前で佇む僕。舞っているのは桜の花びらかピアノの音色。もしくは君の声。遮断桿が下がるのに合わせて僕は目を瞑る。
踏切の向こうで未凪が微笑んでいるのがわかる。
――強がり。
未凪は最後まで僕の胸のなかで泣くことはなかった。
僕の数歩先を歩き、いつだって振り向いて笑顔をくれた。
ピアノのことは一切話さなかった。
僕が見ていたのは君の背中。弱々しく、華奢な背中。
多分未凪は泣いていた。
未凪は前を向いているとき、ピアノを見ながら泣いていたのだろう。
抱きしめたかった。
後ろから思いっきり抱きしめて、彼女の首すじに顔を埋めて、彼女を感じ、最後には背中を押してあげるべきだった。
遮断機の音が止まった。
僕は思い出したかのように目を開ける。
踏切の向こうは夏。
僕は一人で夏に向かって歩きだす。
もう目の前には未凪の背中はない。
振り返ることもしない。そこに未凪がいたとしても。
僕は踏切を越えた。
※ ※ ※
木漏れ日の中、彼女のピアノを聴く。
イヤホンから流れる旋律は彼女そのもの。
僕はピアノを買った。
誰も弾くことのないピアノは彼女への贈り物だ。
僕は目を閉じて、彼女の演奏に埋没する。
『目を開けなよ』
彼女がいなくなってから二度目の春。
目を開けると流れる花びらの向こうに涙を浮かべ微笑んである未凪が見えた。
僕は花びらとキスをした。
お読みくださりありがとうございました。(もはや様式美)




