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 学校では思念が渦巻いている。

「あー……だりぃ」

 つまらないのはつまらないからだ。だるいのは俺がだるいからだ。

 それはわかるが、実につまらない日々を送っているわけではないはずだった。幽霊退治は刺激的で、期末テストが近くて勉強の必要もある。つまらないどころか、忙しいはずだった。

 しかし、くだらない。

 そんな思いに囚われていた時、後ろの方からこんな言葉が聞こえた。

「不細工は心の鋼を鍛えているんだ」

 振り返るまでもなく、誰の言葉なのかはわかった。彼は、たしかに不細工だ。不細工な人間であるかどうかはともかく、不細工な容姿をしている。

 こんなのは失礼だから、当人には言わない、ということはなく、先ほどの台詞を自分で言ってしまう所から言って、たしかに彼は鋼の心を持ち合わせているのかもしれない。

 そんな彼――薬田 弘には、守護霊がついている。備わっている。

 俺にはよくその姿が見えた。仕事人になってから、そういうのがハッキリと見えるようになっていた。優しそうなおじいさんで、柔和な微笑みを浮かべたまま、弘の背後を漂っている。

 背後の彼らは期末テストの話をしている。

 ちっともわからねえ、と弘は言っている。

 それと、前方にいる尾狼 業太郎はいつも真剣な顔つきをしてふざけている。愉快なことをいつもやっている。迷惑なこともやっている。ベランダからボールをバットで打ったりしている。そんな人間な尾狼 業太郎は他人から憎まれることがある感じがある。

 そんな彼には悪霊も守護霊もついていない。

 授業がはじまった。全員が席についたころ、業太郎だけ浮き上がっていたのは、彼だけが座っていなかったからだが、そんな彼に慣れている先生は、無視するかのような態度を取っていた。業太郎はやがて座った。

 山本はよくしゃべる。俺はうんうん頷く。

 山本と一緒に昼飯を食べたりした。その途中、真坂 浜辺のことが唐突に思い出され、大丈夫かなと思った。俺は今日、久しぶりに写真部に顔を出そうかな、と思い張り巡らせた頃、昼休みのチャイムが鳴り響いて、午後の授業が始まった。

 そして驚いてしまった。

 昨日までは何にもいなかったのに、国語の先生の背後に、悪霊が取り憑いている。

 色白の真っ白いローブを着た女性の霊だった。

 それはしかし、うっすらとした見え方をしていて、どこか頼りない明かりのようだ。

 今まで守護霊も悪霊も、はっきりとよく見えるものばかりだった。だけどその幽霊は、どこか儚げで、薄くて、曖昧で、目を凝らしてようやく女性だとわかるくらいだった。髪が長いから。悪霊だとわかったのは、そのぼやんとした顔が、口元だけが裂けたように曲折していたからだ。人を脅すような顔つきだと思った。

 

 

 


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