2
もう浜辺の家の前だった。相変わらず悪霊センサーは敏感に反応してくれるようだった。
死者は生者を引っ張る。生者は死者に引っ張られる。
(真坂 浜辺を監視しているように言ったあいつの言い分は正しかったんだろうなあ)
と俺はぼんやり思った。首を吊りたいなどという発言、普通の女子高生の希求することじゃない。やはり彼女の父親と母親の悪霊が、彼女を引っ張っているのだろうか。それは、普通に考えれば当たり前のことのような気もする。引っ張られてしまうに決まっている。
まだ彼女の両親が亡くなって、一か月と経っていないのだ。
あいつ……ミカド、近くにいるのか?
俺は周囲を見回して、神出鬼没のミカドの姿を探したが、見当たらない。
悪霊センサーはピピピと高鳴っている。
悪霊化した浜辺の両親を今日こそは浄化しなくてはならない。そのためには俺だけの力じゃ難しい。まだこの仕事を初めてから、数週間しか経っていないのだ。
ミカドの助けが必要だ。
しかしミカドの姿が見当たらないとなれば、しばらくは真坂家の中に入ることを控えなくてはいけないだろうか。
それとも、俺だけの力でやってしまうか?
やれば、できるはずだ。
やれないことはないはずだ。しかし、
『能力の欠如している存在は、何をやってもダメなのよ』
過去。それは過去の言葉だった。俺の心にズシンと響き渡る、重たい言葉。
その言葉が、俺を勇猛にすることを、妨げる。
立ち止まったまま動くこともせず、俺は浜辺に忠告した。
「中に入っちゃだめだぜ」
「ここは私の家だよ? 入っちゃっていいでしょ」
「ダメだ! 中は危険だからな」
「そう。そうなの。じゃあ、わかったよ」
気まぐれな彼女のことだからどこまで納得しているかわかったものじゃない。悪霊の危険性を訴えておいた方がいいだろうか?浜辺は自分の両親が悪霊化しているからと言って、それを甘く見ているような気がする。
両親といえども、悪霊は悪霊だ。
俺はスマホを取り出して、ミカドへと連絡をつけようとした。
応援にきてくれと言うつもりだった。だが、連絡をつける必要はなかった。
背後から声を掛けられる。
ミカドの到着だ。
なんでもいいので感想くださぃぃぃいい……