『作者、鷹山敏樹が、雑誌のインタビューを受けている』かもしれないpart2。~今も、何処かで 番外編~
今日は私、西島里美24歳が、あの『今も、何処かで』の作者、鷹山敏樹を取材しにきました。
実は私、あの小説が物凄く大嫌い!!
理由はとっても面白いから。
えっ!?なんで面白いのに嫌いなのかって?それは、ちっとも面白くない現実を強く生きていかなきゃらない人間にとって、あんなものは、夢の世界に連れていく麻薬よ。
危ないなんてありゃしない。
えっ!?じゃあ読まなきゃいいじゃないかって?
そうね。でも雑誌記者の仕事をしていると、いろんな事を知っておかなきゃならないの。
だから、仕方がないのよ。
あっ、また男から電話・・はぁ~っ。なんで私に言い寄ってくる男が多いのかしら。
私のどこがいいっていうの?今年に入って30人くらいの男に付き合ってって言われたわ・・。もういや。疲れる。
あっ、それと私、鷹山敏樹にはあったことないけど、鷹山敏樹の事も大嫌いなんだ。
なぜなら、あんなロマンチックな物語を書ける男は、きっと屑よ。
ロマンチックとエロチックは紙一重。
そうでしょう?
鷹山敏樹には会ったことないけど、なんだかいけ好かない。
本当、今日のインタビューは中止にしたいくらいだわ。
あっ、鷹山敏樹の泊まるスイートルームの前に到着しました。
今日は鷹山敏樹と二人きりで対談。
ヘドがでそうだけど、頑張ります。
※インタビューは、某高級ホテルのスイートルーム。硝子のテーブルを挟み、お互い向かい合ってソファーに座り、はじまりました。
『今も、何処かで 最終回』について。
西「今も、何処かで、次回で最終回という噂ですが、本当ですか?」
鷹「そうですね。本当です。あっ、ちょっと実は迷ってたんですけど、言っちゃいましたね。じゃあ、最終回にします!!」
西「へぇ~、よかったですね」
鷹「ちょっときみ!!」
やばい、鷹山敏樹って意外といい顔してんじゃん、なんて考えてたら、上の空になってしまっていた。怒られるっ。
鷹「きみ、素敵な洋服だね。似合ってるよ」
えっ!?突然洋服を誉めるなんて・・なんなのこの人・・確かに今日の服は、私のお気に入り。奮発して買ったブランド品のダークブルーのスーツ。
すこし短めのスカートの裾に、小さくブランドの刺繍。
鷹「それ、『グッチェ』のスーツだよね?とっても似合ってるよ」
西「ありがとうございます」
なによ、そんな事で私の心を掴めると思ってるの?
バカじゃないの?本当、イカす、あっ間違えた、イカ野郎ね!!
西「スーツの話は置いといて、遂に次回は最終回。読者の為に、少しだけ内容を教えてくれませんか?」
鷹「それはできないよ」
西「なぜですか?」
鷹「まだ考えてないからさ」
『次回作』について。
西「ちょっと気が早いですが、次回作については、なにか考えていますか?」
鷹「考えてるよ。次回作は、シリアスでいこうかなと考えてるんだ。僕だって、シリアス、出来るんだよ」
西「あっそ」
鷹「きみ!!」
やばい、鷹山敏樹からとてもいい香りがするから、そっちに気をとられて、上の空になってしまっていた。
怒られるっ。
鷹「きみ、とても優しい目をしているね。人の痛みをわかってあげられる目だ。素敵だね」
は?いきなりなんなのこの人!?私を口説いてるつもり?優しい目をしている?人の痛みをわかってあげられるから、こんなに損ばかりしているっていうのに!!それが素敵!?冗談じゃない!!あんたになにがわかるっていうの!?
もしかして、わかるっていうの?・・・。
西「話を戻しましょう。次はミステリーですか?それとも」
鷹「ラブストーリーだと思うよ」
西「ラブストーリーですか」
鷹「そう、ラブストーリー。僕は奥手だから、なかなか現実で恋ができないんだ。だから小説の中で恋をする。まったく、気持ちわるいよね?はっはっは」
本当、気持ちわるい。モテるくせに。
嘘つき・・。
『至るところで、恋』について。
西「『至るところで、恋』ですが、続編はやらないんですか?」
鷹「やらない!とは言わないよ。あれは自分にとって思い入れの強い作品だからね。ただ、暫くはやらないかなぁ。時間がないからね」
西「女がいて、一緒に過ごすのが忙しいんですか?」
鷹「えっ?」
あっ!!しまった!!私無意識に何を聞いてしまったんだろう!!なんで鷹山敏樹の女性関係を探ろうなんてしてしまったのかしら!?
どうしたの!?私!!
鷹「僕には、誰もいないよ。女性なんて身の回りに一人もいない。確かにファンの娘たちはたくさんいるけど、ファンの娘たちには手を出さないよ。僕という人間を知って、僕の作品を嫌いになってほしくないんだ。僕よりも、僕の作品を愛してほしいから。」
西「そんな事ない!!」
鷹「えっ?」
西「鷹山敏樹さんという人間を知ったら、きっとみんな今以上に作品を好きになるはず」
鷹「ありがとう」
えっ!?いま私なんて言ったの?無意識に何かを言ってしまったみたい。
おかしい・・なんか胸がちくちくするわ・・。
『今も、何処かで 最終回投稿時期』について。
西「ズバリ、いつ頃ですか?」
鷹「そうだね~っ。出来るだけ早くにしたいけど、こう見えて結構忙しいんだ。まぁ、年内には完結させたいね」
西「年内!!ですね。あ、最終回について先程聞きましたが、1つだけ教えてください」
鷹「なんだい?」
西「主人公は、パイプ椅子の男になる予定でしょうか?」
鷹「あぁ、いまのところ漠然とそう思ってるよ。あ、漠然となら少しだけ。舞台は『ローラ飲料水』本社建物内。実は地下に一部の人間しか入れない場所があって、そこになる。そんな予定かな。まぁ、変わるかもしれないけどね」
西「大好き・・」
鷹「えっ?いまなんか言ったかい?」
あっ!!いま私なんか言ってしまった!!鷹山敏樹が、自分の作品を語る顔があまりにも無邪気で、そして可愛らしくて、わたし、わたし、やばい、わたし!!
好きになりそう・・。
突然!!鷹山敏樹の右手が私の額に当てられた。
凍りつく体。呼吸がとまる。
鷹「きみ、熱でもあるのかい?なんか様子がおかしいけど」
そう言って鷹山敏樹の右手が離れていく。
なにも考えられなくなってしまった私の脳が、勝手に唇を動かした。
西「大丈夫です。ちょっと好きになってしまっただけ・・」
『ファンに向けて一言』
西「では、ファンに向けて一言」
鷹「はい、え~っと」
西「なんて!!言わなくていい!!ファンに向けて一言なんて、編集長に聞くように言われてきたから聞いたけど、そんなこと聞きたくない!!あなたが誰かに向けて言葉をあげるなんて耐えられない!!ねぇお願い!!ファンじゃなくて、私に向けて言葉をください!!私はあなたを好きになってしまったの!!あなたのことを嫌いだと思っていた!!だけどそれはあなたのことを少しも知らなかった頃の私!!ねぇお願い。私に言葉をください!!」
鷹「きみ・・」
鷹山敏樹の目が優しく私を見つめている。
愛を知っている目だ。だれを愛して生きてきたの?どんな愛をもらってきたの?
そしていま、誰かを愛して生きているの?
鷹「ではきみに一言。君のような女性に好かれて、僕は幸せだよ。生きていて本当によかった。この世界は楽園さ。これから先、君に好かれたという事実だけで、この世界は、どこまでも楽園だよ。ありがとう」
西「敏樹さん!!」
私は考えるより先に、鷹山敏樹に抱きついていた。
優しく髪を撫でる手。
ゆっくりと、ゆっくりと。
そして彼が小さく囁いた。
「いい香りがするね、君は」
私は嬉しすぎて、気絶した。
目が覚めると、私は鷹山敏樹の泊まるスイートルーム、ベッドの上だった。
残念ながら洋服は着たまま。
そして鷹山敏樹の姿もなかった。
ゆっくりと体を起こし、インタビューをしていたソファの場所まで歩く。
硝子テーブルに一枚の紙切れ。
私はそれを手に取った。
そこには綺麗な字でこう書かれていた。
「今も、何処かで」
『君のおかげで幸せを感じている』人がいる。




