act29(後編:野望の果て「コワレ ネジレテ カブセラレテ」
今回も大変お待たせして申し訳ありません(土下座
それにしても本当に皆様には感謝感激雨あられ…前雨にさらされた時は気が
沈んで、文進まなかったけどな!
それでは、良い読書の秋を?
前回のあらすじ
キロメ:くそくそくs(ry」ニアテルス:シャベルナァアアアアアアアアア!」
ヒビキ:全く君と言うやつは」セルア:ハンセイシマース」
クォーレ:ヒャッハァー!」ニアテルス:アンマリダァー…orz」
注意!:今回も明確かつ性的な描写が文内にあります。上記の内容に嫌悪・
抵抗のある方や14才以下の皆さまはページを閉じるのを強くすすめさせて
頂きます。
クァー
再度気の抜けたエクスドの呆れた泣き声に興がそがれてしまったエルゼスは
「チッ」と隠さず舌打ちし、キロメに訪ねる。
「歩けるか?」
「いきなり何クソい事を言ってやがる」
「…」
エルゼスはやはり一言たずねただけで後は何も言わない。キロメは前よりも
静かな瞳をするようになった兄を見てこめかみを引くつかせる。エルゼスは
聞く時間も惜しかった。キロメから視線を外し、目を館の門扉へと向ける。
赤いシミだけが、目的の人物の逃亡を教えてくれた。歩き出そうとしかけた
所を、片足前に出しただけで立ち止まりエルゼスは考えた後。エルゼスは
館の天辺にとまったエクスドに館の門扉前に移動するよう合図した後、自身の
機龍が降りてくるのを見ながらキロメにぽつりとつぶやく。
「母さん、心配してたぞ。先に帰って安心させといてやれ」
エルゼスはそれだけ言って館の門扉から出ていく。エルゼスの思う事全てが
その一言に詰まっていた。これにはキロメにもたまったものではなかった。
キロメにとってクソと呼べない女性。そして、先に帰るという言葉。この半分
分けた血の持ち主である母は間違いなくエルゼスの帰りを待っている事も
合わせて伝えたのだ。キロメは歯を食いしばり機龍に乗る手前の兄を見て
自分の中の代名詞をしぼりだし吐き出す。
「クソがぁ…!!!」
せめて兄が前と同じように自分らと同等のクズだったら、笑えていただろう。
しかし、兄の。血を分けた片割れの奴はいつか旅立った時以上に静かな目を
持つようになっていた。そんな顔で、さっきのような言葉を投げる術をこんな
キロメ自身と言うクズ相手にも、身に付けている。そう考えている間にも奴は
機龍に乗って飛び立とうとしていた。遠くに、遠くに言ってしまう。キロメや
エノリークを置く何かが、間違いなくエルゼスの原動力となって。そして
それを助ける力になるように紫紺の機械で出来た龍がエルゼスを乗せ、遠くへ
羽ばたくエルゼスの翼となって奴を連れていってしまう。
それに比べてどうだ?そうキロメは思う。クソ以外何も無い。それは結局の所
兄である少年がこの村から町になった故郷を出て行った半年前から何1つを
取っても変わっていなかった。
あたしは 何を してた? あいつは 上っ面だけでも まともになったのに
いつから、こんなにも血を半分分けた兄が遠くへ行ってしまったのか。この
苛立ちの行き先をどこへ向ければいいのか。キロメは考え続けるが―今は何の
答も浮かばなかった。
*
「見えてきたか…!本当に後ろへ構えた山の先は海のようだな…!」
潜み休憩したゲニトルフ湖から枝分かれしていた川が広がる湿地帯を抜け、
平原をしばらくそのまま飛んだ東の果てにその街はあった。山を後ろの方へ
かまえたその街は門へ機だけが立派に作られており、貴族の家も東の端に
建っている。どうやら立て変え引っ越す余裕さえ無いと感じるギリギリ街と
呼べる小さな屋根の群がそこにはあった。小さな商店などもちらほらと見え
普段も活気がありそうな景色を出しているその街に今は少しばかりの暴徒の
影しか見当たらない。その暴徒達も小さな黒い三角の影が自分の身長と同じ
程度のものを振いバッタバッタとなぎ払っている様が見える。その小さな影が
何なのかと言う以上にセルアは心の中にわき上がった言葉を口にした。
「ここが…ゼス君の故郷!」
声を上げて目を丸くしているセルアに冷静なヒビキの声が届く。
「感動するのもいいが、ここから先は戦闘軌道に戻さなければな。休みを少し
入れただけの連戦名分、私達ができる事は限られるが…」
「あ、うん!今度こそ、もうどこにも逃がすわけにはいかないよね」
ブゥウウワッ…
2人の意思に応えるように気龍の2機が空中で静止し、魔力の散布を始める。
本来型式の違う機龍でそんな芸当をするには互いの魔力の質や射程範囲を
知る為にも長い年月を必要とする。互いの魔力の流れ、魔術紋と言う魔法の
役割を文字にした命令羅列の作り、それらを分かり合った上でそれを互いに
どのような方法で中和させ大気が含む魔力へと溶かしていくか。
そこは例え昨日今日で機龍に乗り始めたセルアにはヒビキが相方だとしても
至難と呼べるはずだった。ただでさえ、セルアはアロルーファの機体性能と
内蔵した魔術の全てを知らない。ヒビキも、魔力こそ熟知し扱えるとは言え
ツヒオリメの正式な操者ではない。そんな2人が龍躁者―ドラグーンの中でも
片手で数える程しかいない芸当をフォルデロッサの魔力的制空権を取れたのは
神業と言ってもいいものだった。そんな中で、ヒビキがハッとさせられた事が
あった。
―ヒビキがセルアの魔力に合わせられた。
セルアは表情を変えていないあたり、無意識のようだった。しかし、それを
ヒビキは感じ取っていた。彼女はヒビキ自身を少なくとも頭1つは上回る
強さを間違いなく身に付けている、と。
(やれやれ、さっきから本当に異常な成長ぶりを目のあたりにしては
少し自信を失くしそうだ。私の幼なじみと言い、あいつと言い)
事実、ヒビキは先程自覚したがエルゼスとセルアがうらやましかった。彼女も
十分に将来優遇であるはずにもかかわらず。ヒビキをまるで笑顔で追い越し
2人だけで遠くに行ってしまうかのような事を想像しさみしさにも似た感情に
心を揺さぶられたのを、彼女は感じていた。
「ヒビキちゃん?」
そんなヒビキの気持ちを知ってか知らずか、表情の暗さを見て訪ねようとした
セルアを制止しヒビキが言う。
「上ってきたな。魔力と影からかんがみて…ヴォーゲ卿か」
遠目でも分かる毒々しい色に全身を塗られたニアテルスが、ヒビキとセルアを
視界に治めるなり、顔を引きつって睨み上げてくる。上空にある魔力―その
制空権が彼女2人によって支配されている事に、近づいた事で彼は気付いた。
気付くのが遅れて戦闘軌道を即座にしなかった無様さもかなぐり捨てながら、
ニアテルスは言う。
「おのれ…軍のまつりごとをごっこ遊びと取り違えるようなガキどもが…!」
そんな声を上げるニアテルスにヒビキはセルアともども絶句し、固まった後、
気を取り直すように首を振り、こう言った。
「そんな子供の私達に計画をメチャクチャにされていては、程度が知れると
思わないか?卿が言う所の気品の装飾がはがれてくようだぞ。…何と言うか
もうすでにはがれている所の話ではない気がするが」
機龍の搭乗場所から見えたニアテルスはヒビキ自身も気が沈んだ声しか出ない
ありさまだった。髪でおおい隠されていない左半分は、鼻が崩れ目が血走り
くっきりと誰かの靴の裏のあとが付いている。服は何かの排泄物を首にかけて所々に受けていた。ヒビキ達が知る由もないがエルゼスの言葉を思い出すに
とてつもなく屈辱的な何かを受けたのは簡単に察せられる。そしてそこから
逃げてきた鄭だと言う事も含めて。そんなニアテルスはヒビキ達の言葉を
受け、怒り任せで言い返す様は正に気品も外した貴族の末路のようだった。
「お前達がここに来た事は素晴しいと言わせて貰うが貴様等が、休む時間さえ
削り「長い言い分は結構だが、貴公もそんな風に口論を言っていられるヒマが
あればいいな?」何…」
そんなヒビキの言い分に呼ばれたかのように、ニアテルスと上層部専用機龍が
飛び立ってきたフォルデロッサの街から今度は彼の機龍と同じ紫を基調に
しながら、禍々しい気配を一切感じられない機龍―エクスドとそれに乗った
エルゼスがニアテルスを追って上空へと舞い上がってくる。セルアやヒビキの
2人とニアテルスの間に割って入るよう上ってきたエルゼスは、背にした
2人に「待たせたか?」と訪ねるのもそこそこに目の前のにくきかたきへ
こう言った。
「おう、いい加減遊ぼうぜ。お前しもべな」
「貴様…!!」
「拒否権ねえの分かるよな?分かってんだよなぁ、お?分かってねえなら
今から直々に体に教えてやるが―」
今にも当たりそうなエルゼスのとなりへ飛んだヒビキが止めるよう片方の腕を
エルゼスの前へ出す。
「その前に1つだけ、1つだけ語らせて貰えるかな?」
「何?」「隊長?」「ヒビキちゃん?」
空にいる誰もの視線が集まる中でヒビキが語り出す。
「私なりに仮説と確証…これまで見て来たものを参考にある推論を立てさせて
貰った。何故あなたが、既に死んだ帝国の老将―【イェス・トラスパロ】の
名を出したのか」
「フッ、聡明な君にしてはそんな世迷い事を言うとは、な」
ニアテルスはあざけりに歪めた笑みをヒビキへ向ける。
「おかしすぎると思わないかね、私が何を見たかも信じず…知らず。それを
確かめもせずそのような事を口にするとは君も程度が落ちたな」
「…」
「そう、あのお方は確かに今見ているだけかもしれん。そう、見ているだけだ。
私が薬で惑わされているわけではない。私は大願成就のための鎖でもあるこの
剣を、この帝国の王に相応しいあの方―イエス様よりたまわったのだ。それは
揺らぐ事のない真実―」
いつにも無くヒビキはため息をつきながらニアテルスの声を自分の言い分で
さえぎった。
「都合のいい夢から覚めろ。そもそも貴公の口から彼の老将の名が出た事こそ
間違いだ」
「何?」
「イェス・トラスパロが戦死したのはあなたが治めていた都市、ヴォーゲから
北へ離れた―王都だ。彼はその王城に機龍で高速特攻したらしい。遺体はある
王城の兵が確認済みだ。…遺品でもある全身鎧はボロボロながらも彼の専用に
作られたただ1つのものだったので間違いはない。肉体は炭となっていた」
「な…」
これにはニアテルスも絶句した。ならば、彼に語りかけてきたのは何か。
「おかしい事はまだあるぞ。ヴォーゲ卿、何故その剣を渡されている?彼は
何故丸腰になってまで貴殿にその剣を託したのか」
「…」
「もしかしてそれ…」
「俺でも知っているぞ…まさか、ヤロウの持っているあれは」
「ここでとどめの話をさせて貰うが―城内で大破した機龍と横たわっていた
トラスパロ卿の遺体からは鎧と…剣のサヤしか見つからなかったという事だ」
場が静まり返っていた。誰もがヒビキがこれから続ける仮説を否定できない。
そしてヒビキは自分がまるで目にでもしたかのように語っていく。目の前の
ニアテルスが見たものを
「ではどのようにして貴公は剣を手にしたのか。簡単だ、剣が魔力を―そして
意思を持ったと考えれるならば、だが」
顔が徐々に生気を失くし始め、青くなっていくニアテルスに容赦なく自分の
推論をヒビキは言いながら彼の心を追いつめていく。
「魔剣と呼ばれるそれが記憶をすりかえると言った能力を持つと推察すれば、
あなたの言動にも納得がいく」
「論よりも、実証。確かめさせて貰いたいので、教科書にも載った彼の言葉を
引用してみよう、気分はどうかね!?」
そして最後にヒビキがさけんだその言葉が引き金となる。
燃えている 燃エテイル
赤く・黒く燃えている 手始メニ燃ヤセテ頂イタ
何もできなかった コレハ証デアル
私の守るべき都市が燃えている!? 我ラガ主ニ取ッテ代ワッタねずみヘノ!
ニアテルスはボロボロの死に体と呼べる片腕しか動かないような状態で何とか
上半身を起こす。切られた顔の右半分は既に浸食と腐敗が進んでいた。最早
思考や精神まで腐敗が進みそうな感覚を覚えながら、ニアテルスはそれでも
現実を目前にする。
燃える自らが守るべきだった都市、南西にあるヴォーゲの街は植物や作物が
育ちにくい砂漠を有した地に興った国だった。
ゆらめく男がこちらへ振り向く。まるで陽炎のような、影のようなその老将は
こちらを見てヒゲの下の口を笑みのように浮かべながらニアテルスに向けて
問いかけてきた。それを、思い出した―思いだしてしまった。その勇将とは
かけ離れた、力に歪まされた笑みを。
―キブンハ、ドウカネ?
「フフ…フフフィフェフェ…ヒャハハヒャヒャ…!アヒャヒャ、イフェフェ
ヒャハ!サイコォダァ――――――――!」
そうニアテルスが声を上げたと同時に、専用機龍と彼が腰にさした魔剣から
黒く大気を侵す魔力が噴き出した。その時見えた髪で隠された右半分の顔は
【目のあった場所から眼球が今にもこぼれ落ちていた】。どう見ても半分は
生き物とは考えられないそれにエルゼスがうめく。
「…ひでえ事になってやがる」
エルゼスでも呆れた声しか出なかった。ニアテルスの今の状態はキロメから
ぶつけられた排泄物さえ拒否するような腐敗した動く死体となっていた。
「余計な事をしたか?エルゼス」
「―…あいつがどうなろうが結局は問題ねえですよ。【体があれば】って
話っすけどね」
ニタァ
そう音を立てて笑った後、まだ声をかけようと手を伸ばしたヒビキを見ずに
エルゼスは目前まで迫ってきたニアテルスの機龍と衝突する。
エルゼスは目をそむける事無く、最早それはただの腐った死体を見て言う。
最早どうにもない、やり場のない気持ちがエルゼスを突き動かしていたからか、
次のような言葉がエルゼスの口からこぼれ落ちていく。
「正直テメェの考えや記憶やら、昔の事やらはどうでもいいんだよ」
もう届かない、魂すら闇に食いつくされたような死体に向けてエルゼスは
言う。
「テメェがもうどんな状態だか、そう言うのは知った事じゃねえよ…他でも
ねえ、テメエと言う存在がばらまいた種、そのツケを払いやがれ…他の誰でも
ねえ…テメエの体でだ!!!」
最早妄執とも取れるそれを腹の底から不要のものと吐き出すようにエルゼスは
絶叫しニアテルスの機龍に正面からぶつかる。彼の上層部専用機龍を包んだ
禍々しく黒い魔気とも言えそうな者をまとった機龍に物おじもせず右手の
アルク―ソル・ヴォルグの光で出来た刃を叩きこむ。禍々しき空気と光が
ぶつかり合い、名状しがたい耳障りな音が上空にひびいた。
*
はち合わせた後行われた模擬戦でニアテルスを叩きのめしたエルゼスだが、
今のニアテルスがその限りでない事は3人の誰が見ても分かる通りだった。
実際、戦い方と言うものが違う。仮にも理性があった彼は機龍の装備をしかと
堅実に使いこなしていた。自身の人としての体が持つ限界まで、だが。
しかし、今何のタガもなく暴れ回るこの機龍と死体は【あらゆる障害】を
魔力共々無差別に破壊しようとする。全身凶器の無差別破壊兵器だった。
受け止めるような真似をすれば、間違いなくエルゼスとエクスドでもただでは
済まない早さと禍々しい魔力を持った存在が、生物のかせを余裕で外し3人を
殺すべく迫り来る。
その分、攻撃にまったく戦法と呼べるものがない。今目の前にいるのは生物を
自分の腹の中に収めるためだけに空を暴れ回る飢えたサメと同じだ。ただ
突き動かされる衝動と本能がおもむくままに暴れる上層部専用機龍―否、
初代試験機をニアテルスのものとなるよう改造された専用機龍初代仕様は
龍躁者―狂ったドラグーンとありえない連携力を持って襲いかかってきた。
その筈が。
凍る大気に続き雷が専用機龍初代仕様の動きを止めたかと思えば、エルゼスの
右手にあるアルク―ソル・ヴォルグから放たれた光とエクスドが吐き出した
爆炎の弾幕が空を飛ぶ機能を持った翼をうちすえ、破壊する。魔力を翼上に
吹き上がらせ機龍は飛ぶが、間違いなく機動力が落ちている。形あるものが
無ければ失った機能へ魔力を割かなければならない上、機能自体が破壊された
状態から魔力だけでその不足を補うのは間違いなく無茶と言うものだった。
しかし、何故こうも一方的に人の知覚が追いつかない早さを持つのか。
簡単な話だった。まず、本能だけで何の考えも無しに動く軌道をエルゼスが
理解できない動きはない。エルゼスの内に寄こされた【彼女】の力が、ただ
本能だけで動く敵の早さと向かう先を手に取るように教えてくれた。そして、
エルゼスは後ろの2人―セルアとヒビキを射線から外すように動いていた。
打ち合わせすら必要なかった。エルゼスからセルアへ思念を送り、セルアが
アロルーファを介してヒビキとツヒオリメを無意識に魔力で誘導する。
それを本能だけで戦う死体と機龍は気付く事が出来ない。ただ魔力だけに任せ
暴れるそれは、赤い布だけを追う闘牛と同じだった。
(―エクスド。次の交差だ)
反転し突っ込んでくる瞬間にエルゼスはエクスドにその思考を送る。しかし、
エクスドから伝わった思念は呆れたようなそれで。エルゼスは声を上げた。
「オイコラこのバカ!あいつの狙いが見えねえのか?!」
操者にしかられた気龍は慌てて軌道を確認し―納得する。横に広がる翼から
コロッと飛び出すそれをエルゼスは左手にしっかりと持った。
エクスドは翼を魔力で生やした機龍の射線に少し隣り合うよう立ちはだかる。
交差しながらニアテルスの死体が魔剣を振り上げエルゼスに襲いかかった。
ガギィイイイインン!ジジジジジジ…ッ
ソル・ヴォルグも相当な衝撃に悲鳴を上げるかのように火花が散っている。
(少しもってくれ…!こいつの行き先には…)
どう言うわけか、眼下の町―フォルデロッサを軌道先にしていたニアテルスと
機龍をエルゼスはすんでの所で受け止めたのだ。
―Shock repair…No problem!―
エルゼスはしかと右手とソル・ヴォルグを自身の魔力でおおいながら、左手に
持ったそれを振り上げ
ガバンッ!!
鈍い音がする。エルゼスは【キロメが持っていたのと同じ排泄物が固まる程
大量に詰まった箱を頭から被せるよう撲った】。ニアテルスもいきなり頭に
ひびいた衝撃にのけぞり、そのままの勢いで機龍から落ちていってしまう。
彼と言う死体の手から魔剣がするりと機龍へ落ちた。
(今だっ!!)
カパッ…ガチャコン!ヒンヒンヒンヒンヒンヒン…!!
エルゼスの右手にあるソル・ヴォルグから8個の分離武装、全てが飛ぶ。空を
舞い、ニアテルスの乗っていた機龍を囲んだ分離武装達は八面隊を形作った
無色の光で構成された魔法の格子を作り出す。それを作ったエルゼスは2人を
呼んだ。
「隊長!セルア!」
「合わせる!破壊するぞ」
「直撃させればいいんだね!:クォオオオルルルルル!!」
3人の魔力が同調しエルゼスの魔力で作られた格子内部に、セルアとヒビキ、
そしてエルゼスの攻撃魔法が想像通りに発言する。
エクスドとアロルーファが互いの魔力と軌道を同調させ、ツヒオリメを運んだ
際に短い間だが合わせられた魔力の同調による誘導は優秀な操者も加える事で
完全な合体魔術を生み出した。奇跡とさえ言いかねない見事な魔術の合体は
鮮やかに、そして強かに格子に閉じ込めた邪悪な存在を灼き尽くす。
―最早全身に腐敗が進み、魔剣すら手ばなしたニアテルスには片目だけで見た
景色しか映っていなかった。そしてそれがどう言ったものなのかすら理解を
出来ない程に彼と言う意識は無いに等しかった。全て、彼自身が渡されたと
勘違いをしていた力に結局全て奪われたのすら、彼は理解していなかった。
しかし。何時からだったかいまいましく感じる2色髪を持つ青年が、自分の
力を破壊しようとしている。それだけは何故か理解できた。思念を思わず彼は
拾う。
―テメェの夢…未来…希望…栄光…
こんな奴に――――――――――――――――――――忌々しいこんな奴に!
―今終わる!!
自分の力と呼べるそれが、忌々しい青年の手で完全に残がいとなった光景が、
彼の見る最後の景色となった。
*
草原へみじめに落ちていくニアテルスの死体を見下ろしながら、エルゼスは
未だ自分の魔術で閉じ込めた残がいに向けて言う。
「おう、そこのボロクズ。何チンタラ寝たフリしてやがる。そのまんま、俺の
使ってるそいつをといて落とすぞゴラ」
『オヤ、気付イテイタノカネ。人ガ悪イナ「―」イヤイヤ、ソレハ本当ニ
持チ出スノモタメラウベキダト思ウンダヨ』
崩れた残がいからゆらぁりと音を立ててその人影は現れた。青白いその影へ
向けて聞く耳持たず箱ごとの投てきを考えようとしたのか、エルゼスが後ろの
ヒビキに振り返る。ヒビキはガックリとした状態から立て直す途中であるにも
かかわらず、うなだれる。
『聞ク耳スラコッチニハ持タナイカイ。嘆カワシ―』
ブガン…ベチャ
全力投てきだった。2度目は無かった。箱の奥で固まり、壊れでもしなければ
付かなかったその排泄物すら残がいにこびりついた光景を見た老将の影は口を
開け閉めしながら言葉にならない事を口にしようとしている。そんなさ中に
エルゼスが言う。
「はん、口上述べてる暇あるならとっとと消えろやゴラ。見て分かんねえか?
俺は今機嫌が悪いんだよ」
『最近何ヲサレテモ怒ラナイ程度ニハ人ノ皮カラ解キ放タレタト思ッタノダガ
先ハマダマダアルカ…シテ、図ニ乗ルナヨコノ汚イこぞうメガ!』
「テメェのお陰で散々ひねた性格になったんだ、それくらいすら許容範囲とも
取れねえ老害がピーチクパーチクとゴタクを並べんじゃねえ!!」
一瞬で関係が決まり衝突が避けられない状態となった老将の影とエルゼスの
間に割って入る声がした。
「あー…失礼する」
こめかみを押さえながらもヒビキは人影に訪ねた。
『苦労シテソウダネ。若イ身空デコンナ青年ヲ部下ニ持ツトハ。ふむ、コレハ
マタ北西ノ所カラゴ苦労ト言ッタ所カネ』
「労いどうも、と言いたいが単刀直入に言わせて貰おうか。あなたは本当に
イェス・トラスパロ本人か?」
ニィイイ
ヒビキの問いに老将の霊―を形作った魔剣は言う。
『鋭イ察シヲアリガトウ。何、カツテコノ地デ有名トナッタ者ヲ使イ手トシ、
意思アル剣トナッタソレニ【我ラガ主】ガ1ツ己トイウ魔力ヲ与エタノダ』
「さながらあなたはイェス・トラスパロの精神を食い散らかし、その形へと
擬態した憎悪と妄執の化身、といった所か?」
その言葉に残がいとなった機龍が笑い、龍玉が血が通うかのように禍々しい
筋を浮き立たせる。それを中心に残がいと魔力が物質化し、1つの形―
元あった龍のような姿を取ろうと同時に禍々しい魔力を噴き出した。反射で
エルゼスが鏡の魔術をとく。
「来ますぜ!隊長にセルア」
「これで…最後か。いや、終わらせなければならないな…!」
「ゼス君…」
「―?どうしたセルア」
「…ううん。何でもない。ありがとね」
「何、俺ら3人で持ちつ持たれつだろ:グル…:エクスド、やれるな?」
ルガァアアアア!
咆哮したエクスドと並ぶかのようにイェストラスパロの形をとっていた影が
赤く夕陽に優しく染まりそうな空を、まるで世界全てにひびけと言うように
叫んだ。
『【己等ノ】願イハタダ1ツ…戦乱ヤ血、憎悪ト怨嗟デ染マリ滅ビユクコノ
世界ソノモノダ―――――!!!』
*
「―!はい出てきた…みたい…」
「そのようですね~、さて…今からでも間にあうでしょうか?」
「今の魔力の振動は…!」
「老骨にひびいたの…10年ほど前を思い出す…」
「中佐ぁ!(ガバッと起きる)」
「…どうした軍曹」
「私は行かなければなりませんのざます!あなたを足止めするために力を
与えてくれたある子を助けに行かなければ」
「…要塞砲撃試験機が必要かの」「―(言葉に困り)少将!?」
「ありがとうございます。必要なので使わせてくだしあ!…そんなこんなで
ベルク・イタガキ。行ってまいります(敬礼」
「…やれやれ、気を付けてな…(軽く敬礼)…少将。どうしてあんな?」
「何、それくらいのするべき事はしとかんといかんようだしの。周りの方も
見ての通りさわがしい故…(よっこらせと腰を上げる」
「何とか、間に合いましたか~」
「むきゅー、レイア。ここからは…」
「おう、おっぱいコノヤロウのお2人さんでっか」
「お願いします。私はともかくとして、リアちゃんは頼りになりますわー」
「旅は道連れ世は情けって事で、一緒に行こうぜベイベー!(ピピピピと
電子パスワードと魔力タッチで扉を開ける」
くいくい
「中に乗り込んだ所で)ん?よう、首輪付き―」
「ぽつりと)ありがと、ルー」
「―え…?(操縦席に行こうとした体が固まる」
―act・Lastへ続く―
【後書き】
1回保存忘れました\(^q^)/
次でようやく最終回です。最後の最後で伏線を作るとか自分もようやるわと
呆れつつ、いくつかの謎を残して次かく時はもう少し余裕と全体図をきっちり
作ってからテンポ良く再投稿といきたく思います(苦笑)
次の投稿は活動報告でもしましたが神話生物とかそういうのの恐怖体験談の
リプレイ動画を自分なりに改編・色々混ぜた話になると思います。テレビの
ネタもあるので誰が誰なのかと言うのに気付いた紳士淑女の皆さまは思わず
フフりとしながらお楽しみ下さればと思います。
それはともかく今度は―嫌何も言うまい。今から無心に最終act作成へと
取りかかります。完成は少なくとも今週末までを予定させて頂きます!




