act18:報告と言う名の「勢力無き言語乱戦」
お待たせしてしまいました。昨日の晩には投稿しようと思っていたのですが、
所用により、今日に遅れてしまったこの頃です
何はともあれ、今日も楽しい読書の時間を!
前回までのあらすじ
ヒビキ達:大佐はディスり対象」「アスカレナ:確定だな」
アル:待遇の改善を」「ベル:どこにも逃げ場は…って何事!?」
モルドス:このにじみ出るチート臭!」
セルア・セヴァル:仲直り?ただの会話だよ」ワイヴァーン:さようですか」
ワイヴァーン:ユニ○ォーーーーーーン!!!」「モルドス:何とぉ!?」
モルドス:チート場面かと思ったら!」「エアリシド:出番終了じゃよ」
本日のサブタイトル追加:「舞台が踊る前に」
「生存者の確認や残がいの撤去を急げ!消火も順調だな?―エルピトルム・
ナム・リーク:複数人1組―を忘れず効率的に事態を収めろ」
軍備工築区の軍部前。ニアテルスは現場で事態収拾に向け指示を出していた。
城の方の修復には他の人員も咲いている。副官がとなりで「了解…」と言い
現状の報告などで部隊の者達が組んでどこへ行くかの選択肢を掲示する。
「では各自、持ち場が重ならないよう向かえ。ミスは許されん、1秒でも早く
この工築区が再び業務可能になるまで、尽力するのだ。休みも仕事と言う事も
忘れるなよ。使えない者はとことん使い物にならないからな」
「隊長、少しお休みになられては…」
「なぜだ?こんな忙しい時に―我々:軍―が休んでいる余裕があると?」
いつもよりも強く冷たい口調で言うニアテルスには痛々しさがかいま見えた。
しかし、副官は今のニアテルスに何かを言おうとし、言いよどむ。
「しかし、ヴォーゲ卿は…その…」
指示を出しているニアテルスの後ろにある【彼の死体】を副官は振り返る。
セヴァルは眠ったように死んでいた。彼の残したワイヴァーンはセルアが
父娘の間柄だったというべきなのか、いつの間にか回収されていた。しかし
そのワイヴァーンの近くで帝国の忠臣とも言える彼は事切れていた。そして
しかし、副官の言葉にニアテルスは、言いよどんだ副官さえもおどろく行動に
出た。
「いい加減にしろ!!」
ズドンッ!!!
激しい破砕とも思える音に誰もがおどろいてニアテルスの方を見る。そして
悲壮な片目で訴えるニアテルスの顔がそこにはあった。その場にいる誰もが
固まっていた。普段感情の起伏を出さない冷血、策略家で通るニアテルスが
感情をあらわにしたのを初めて見た者も少なくないはずだった。そんな男が
激高し机を殴りつけたのだと周りが理解するのにどれ程かかったろうか。
「失ったモノは最早手に戻らん…手に戻らんのだっ!!!それが個と言う
命ならば、なおの事…!しかし、だからこそ、失ってしまった彼らの分まで
我らが埋め合うだけの実力を今ここで示さずしてどうする…っ!!重ねて
言うが命は戻らない…戻りはしないのだ…!」
事実上、彼は自分が帝国に入るきっかけを作った師と、対立していたとはいえ
手腕を認めていた男を失くした事になっているのだ。そんなニアテルスの
心境がどう言ったものかはともかく。
(フフフ…さようなら、セヴァル。君も私が作る楽園のいしずえとなれる。
それをあの世で喜んでくれたまえ…君を失うのは本当に残念だったが)
そう心の底で死んでいったセヴァルを思いながら、ニアテルスは表情を隠し
部下達へ、後処理の指示を出し続ける。ニアテルス自身、残念だと悔いる
心は持ち合わせていた。
思えばニアテルスは、彼自身の正義を信じて疑わない子供じみた面がある。
彼が生まれたのは帝国の領土となる前の西南西海岸沿いにある都市だった。
アナファルジャでアカナチとの交易をうまく扱える拠点の1つとされていた
そこは、帝国は当然のようにほっし達の1つだった。そこで生まれ持った
権力と、自らの才をほしいままにしてニアテルスは生まれた。
願うは高み。常勝不敗、非の打ち所無き支配。
ニアテルス自身、信じて疑わなかった。守るべき者がしかるべき力と地位を
持って下々の者達を扱う権利を持ち、反面として守護する義務を持つと。
その身の将来有望視されていた実力に慢心する事無く、彼自身が持った社会を
作るためにニアテルスは日々己を知と体の両方を鍛え上げていた。そんな
彼の住むアナファルジャの都市にも帝国から侵略の手が来ない事は無かった。
ニアテルスが先だって部隊を持ち、民を守るため戦うのは当然だった。しかし
その戦いで彼は運命に出会う。圧倒的軍隊と力を持ち、彼が仕える事を決めた
男―イェス・トラスパロに。当時だけでなく今も猛威をふるう比類なき強大な
兵器、ワイヴァーンにニアテルスも例にもれず心酔した。
しかし、ニアテルスが師と慕うこの男は帝国のアナファルジャ進行が終了し
戦争が1つの終結を見る頃。イェスは余命幾ばくも無く―
それだけではない。セヴァルの事は最後に述べたとおり、非常に残念だった。
彼が自分達に信を置くなら、ニアテルスは迷う事無くセヴァルを片腕として
利用していただろう。最後の最後まで彼が【誰かとは分からないが】現在の
帝国に忠誠を誓い、こちらを謀っていた事はニアテルスにとって悲しく、また
最後まで自分の手元まで来てほしい望みをニアテルスは自覚している。ここで
彼を消すのは、計画の進攻上、切らなければならない選択だった。
確かに彼は【ある目的のため】【イェス・トラスパロの遺志とも言えるモノを
継ぎ】、彼自身が信じる未来に向けて今も策を巡らせている。その結果の
1つが現状なのだが。
その2日後、特務隊の報告により、ニアテルス・ヴォーゲは窮地に立つ。
*
「準備はできてるかい?」
「つっても、業務片付けてただけなんスが」
「むー、今日は大事な日だって言うのに…こうなった原因はもういないし」
特務隊は今回報告どころではなかった。昨日央都で起きたさわぎにより急きょ
特務隊は書類処理をやらされる指示を受けたのである。そしてこのやりようは
間違いなく、あのニアテルスが寄こした災難だったと言う事だ。特務隊には
今日となった―これも間違い無く上層部から届いた妨害と考えていい―報告は
提出する書類が不完全だと言う事だった。間違い無く軍上層部は特務隊の
調査報告詳細を握りつぶす算段をにおわせている。しかし、間を開けたと言う
事実が一応とはいえあるのでそれを強く言えないあたり、小細工とも言える
嫌がらせでもあった。しかし、それとは関係なしにエルゼスは心の内で呟く。
(やられたら、やり返す…)
今度は物理ではなく、書類の面で。あの片目しか見せない面を引くつかせる。
「んじゃ、行きますか」
そして特務隊達は執務室から会議場へと足を運ぶ。
所と時間が数時間前と変わり特務隊が机業務を行うそのとなりの部屋。そこで
次のような会話が部下と上司でかわされていた。
「さあ、始めますわよ」
「やるでガーンス」
「フンガ―!!…して、正直に言うけど企みはどうなの?」
ギャグから一変核心に触れる言葉を投げたのはファーニフアルだった。
「企みはぬっ殺しました。でも、その企みを暗闇に葬る手立てはありあます。
何故なら特務隊の計算結果は」
「オレ達が准将のダンナに―漏えい:ろうえい―すればいい」
ベルクの真剣な言葉をファーニフアルが引き継ぎ
「はい。私達には独自の木材輸入ルートがある。ある意味帝国と違うこの点は
大きく利用しやすい―利点:メリット―ですよね」
そう神妙な顔をしてベルクはいったん締めくくった。
それ以上に、報告するべき事はある。ベルクとファーニフアル。
「まさか…アカナチで密偵として潜り込んでいた彼がやられるなんて」
ベルクにとっても初めて訪れた村落で会った男は知り合いだった。何か命を
受けているのを承知していたベルクは接触を避けたが、彼が消息を絶ったと
ファーニフアルから聞き、少なからず衝撃を受けたのは確かだった。
「どこで消されたんでしょう?まさか、私達が村を出たのと同じ頃に?」
「だとしたら手際が良すぎる。オレ達の行動すら手の平のものとしている
奴がいるのかい?」
それに対し、ベルは呟く。
「いるとしたら…候補はしぼられてきますが」
昨日感じた、セルアの魔力。そしてその魔力ごしに伝わってきた【何か】。
ベルクが感じていないわけではなかった。そして、ベルクは【この国の真の
支配者】をファーニフアルに報告していない。
「ベルちゃん、まさか?」
「今、話す必要を感じません。それに、隊長が私の上司であり同郷の人なのは
疑いのない事実ですが」
ベルクとファーニフアル、2人の視線が交差する。1つの間をおいて口を
開いたのはファーニフアルの方だった。
「まあ、それならいいけど。お互いに死なないよう立ち回らないとね」
「…そうですね。お互いに」
「んじゃ、行きましょ。まずは准将達と合流だ」
この2人の利害関係も一筋縄ではないようだった。
再び場所が変わり、大佐とドールモートをのぞく上層部が集った会議室。
口火を切ったのはニアテルスだった。
「さて、どれ程のモノを彼らが持ってくるか。お教え願おうか?中佐」
「その前に発言をお許し下さい。私は今回完全に不干渉で行かせて頂きます。
ヴォーゲ准将様」
「…その心は?発言を許そう」
「結果は、自分の身を持って確かめられよ…そう、申させて頂きます」
アスカレナの本音としては特務隊に手を貸したかった。彼女の上司である
准将が、犯罪組織を利用してでも計画していることを為そうとしている事実は
アスカレナを迷わしている要因の一つであった。しかし、彼女は軍における
彼女自身の役目として、准将を利用しようと決めている。そんなアスカレナの
腹の内を知ってか知らずかニアテルスはこう言う。
「まあ、良いだろう。君が持ってきたこれは―」
「はい、いいように扱って頂いて構いません」
それに満足げにうなずくニアテルス。それを静かに見守る
「後は―:コンコン:良いぞ、入るといい。ファーニフアル大佐」
「あいよー、ダンナ。これを寄こせって話ねー?」
「そうだ、今からこれのつじつま合わせを行うぞ。ベゼグ少将、貴官もだ。
今更、この程度の事をしてあなたの手が汚れるわけではありますまい」
「フム、言うようになりおったの、准将どの。はて」
「んじゃー、迎撃準備を始めるとしましょうかい?」
改ざん作業を目の前でやり始めた自分の上司達を静かに見つめアスカレナは
心中でつぶやく。
(私は譲歩できてここまでだ。さて…)
アスカレナが考えている間に【書類仕事を済ませた】上層部は会議の場へ
立ち上がる。これから始まるのは彼らにとっては【宣告】だろう。しかし、
それで特務隊が終わるわけではないと、アスカレナは心の底で思いながら
上司達のあとへ続いた。部屋の外にはベルクがいた。互いの視線がほんの
一瞬だけ交差したが、アスカレナは気にしないふりをした。ベルクもそれは
同様だった。そうこうしている間に上層部とその部下達は報告会議を行う
場所へたどり着き―
ガチャリ
音を立ててニアテルス達が入った先には、すでに部屋に入り着席していた
特務隊の3人がいた。「失礼しています」とヒビキがニアテルス達に向けて
言う。ニアテルスはそんな中で、自分が最も忌むべき存在を眼中に治める。
ちょうどエルゼスもそんなニアテルスをねめ上げていた。しかし
ニアテルスとエルゼスは互いににらみ合い、口元に笑みを浮かべた。
*
両者はにらみ合うように対面していた。誰もがたった1つ理解している事が
ある。これから始まるのは言葉の戦争だと言う事を。
半ば固まっているように前を向いているヒビキをエルゼスは横目で見た。今
場では、書類の関係もあり、横長の机で3人が一まとめにされているから
前ニアテルス達と相対した時以上にセルアやヒビキと距離が近く感じる
「大丈夫、俺が付いてる」
根拠のないエルゼスの言い分に、しかしその言葉でヒビキは顔を真っ赤にし
エルゼスを見る。そして、意味のない言葉が彼女の口から発せられた。
「な、なななななななななな…!?」
「あ?隊長?一体何が「何を言い出すんだ君と言うやつは…っ!?」―…」
ヒビキの余りの狼狽ぶりにエルゼスは首をかしげながらこう言い考える。
「?……?何って…緊張してたみてーだし?」
しばし、エルゼスの言った言葉を受け、ヒビキはあ然とし、エルゼスから
視線を外した後、口の中でエルゼスが言った言葉を反すうするように言い
その顔を呆れたそれへと変化しながらこう言った。肩をガックリと言う音が
出る程落とした状態で。
「アー、ソウダナー、タシカニソウダナー」
「何で棒読―「エルゼス」あい、何ですか?」
「後で全力でもむからよろしくな」
「……「返事は?」……拒否け「あると思うか?」……」
笑顔がとてつもなく輝いていた。間違い無くヒビキに遠慮も迷いもない事を
エルゼスは悟る。この会議が終わったら魔力全開で男子寮側へ逃げ行こうと
誓った頃、ぎいと会議室の扉が開いた。
「遅くなったな。すまない」
最後に来たドールモードも含め北東部魔物強襲事件の報告は始まった。
「では、報告を始めさせていただく。まず―」
ヒビキは村落や商業都市・要塞都市であった事を【1つだけのぞき】努めて
事務的に言い終える。その言葉を聞き口を開いたのはニアテルスだった。
「フム、話をまとめると前の魔物の暴走は魔物を何らかの形で洗脳した組織を
軍が何かの目的のため支援していた。そういう事情を実際に見てきており、
組織の手にかかって【なり変り】何てものまで起きている軍さえあったと」
「そういう結論になりますが…」
「荒唐無けい過ぎるな。しっかりとした証拠がなければ」
「証拠と言うなら言質を取ればいいとは思いますが、1つ。軍が物資横領は
この書類にしかと示させて頂いているはずなのですが?」
「ああ、この書類作成。ご苦労だった―して、聞きたいのだが」
「いかがしましたか?准将どの」
「これのどこに横領の具体数字があると?赤字で記した部分ではあるまい?」
「―」
そこでヒビキの言葉は口を閉ざし、目だけでエルゼス達と顔を見合わせる。
(やはりか)
軍上層部の大半はこれを。しかし、特務隊とて考えなしに書類仕事をしてきた
わけではない。ヒビキはまず1手を取る事にした。
「では、あなたが今持っているその書類。拝見願えますか?」
「させると思うかね。面が厚いな、君は。アカナチの気品が知れますぞ」
「そんなもので民の飯が増えるならそうしますがね。そんな事よりも、見せて
困るモノを持っているほうが気品の他に問題を抱える原因では?」
あえて挑発的したが、ニアテルスは肩をすくめて言う。
「何、同じだよ。同じモノを見て言ったのだ。君の言っているその物資処理。
上層部は問題ないと判断している、それが総意だ」
「仮にも上層部が組織すらだます書類を容認するのですか?」
「では、その物資がどこの何に使われていると?具体的報告を願おう」
「よろしいのか?」
「何が?」
「口にしてない事を口にされて困る場合もありましょう?特にヴォーゲ卿、
あなたの部下が仮にも【なり変り】の本人だったと言うのに」
それに対し、ニアテルスはらちが明かないと思ったのか、強硬的にヒビキを
追いつめるようこう言った。
「それで脅しのつもりかな、タカナシ特務隊長どの?何を言っているのだ?
何の証拠も、具体的な説明も無しに?この物資の計算は本当に書類をまとめた
―結果:もの―なのか?」
「―」
ヒビキはファーニフアルとベルクの方をちらりと見た。
「「―(フッ」」
2人して笑みをヒビキへ投げかける。どうやら特務隊の書類を寄こしたのは
間違い無くベル下った。そんな彼女をあざ笑うかのようにニアテルスは言う。
「さて、どうするかね?」
「「「…」」」
特務隊の3人は視線を投げ合い、うつむいた。
「万策尽きた、と言う所かね?…フフ、何か懐に隠し持ってるなら早い内に
出す事をすすめるが―」
そこでニアテルスの顔が怪訝に染まる、特務隊の3人は震えていた。そして
「「ぷっ」」「ククッ」
「「あはははははははは!」」「ダハハハハハハハヒャハハハハハ!」
エルゼスにいたっては余りにも人格を疑う哂い声にニアテルスはしかめ面を
する。しながら特務隊にこう尋ねる。
「何がおかしい」
問うたニアテルスを思わず指差しながらエルゼスが初めに言った。
「いやー、まあもう腹芸はいらねえよなあ」
「失礼、ヴォーゲ卿。そう言った以上、後戻り…その発言を無かったとは
出来ない」
「何を言っている?特務隊にまだ提出する書類があると言うのか?」
そう聞き返した言葉にヒビキはありえない言葉を続けた。
「そう、それを今掲示させていただく」
ヒビキの言葉に顔色を変えたのはニアテルスだけだった。視線を寄こした
ベゼグは腕を組み事態を最後まで静観する姿勢でいるようだった。順々に
アスカレナ、ベルク、そしてファーニフアルとニアテルスは視線を移す。
ベルクとファーニフアルはニアテルスへ2人して首を横に振った。2人が
知らない書類らしい。
(何だ…!?一体何を出してくる、この異国で姫とされる小娘…)
そう考えているニアテルスに向け、1枚の紙がヒビキの手で向けられる。
「それは?」
「今までの書類に関する計算事項、その証明として作った書類だ」
「何をバカな。どこからそんな書類を作れる時間や紙をひねり出した」
そう反論したが、ニアテルスの言葉は先程のような覇気がない。何故なら
(馬鹿な…事態収拾・今日と間にあの書類を作る時間的余裕はない…!
仕事とて今日特務隊は山積みされていたはずだ…)
自身満々
「さてはて、照らし合わせと行こうか?そちらが持っている書類が真か
それとも…」
「…!」
「ああ、それともう1つ。私が作ったその書類、証明する人間はいる。
【この会議室にはいないが】、この央都内には確実に、な」
「―上層部:我々―があてがった、客人以外にか」
「当然だ。そうだな…これは、そちらの持ってるそれと交換条件で」
ニィ…
ヒビキとエルゼス、2人して音になる程口元に笑みが浮かんだ。しかし、
高が1本取られたからと言って、ニアテルスはひるむ人間ではなかった。
すぐにき然とした調子に戻りこう言う。
「いいだろう。それが本物だとしよう。しかし、仮にそれが本当なら北東の
巡回に充てていた軍は相当人員削減をしなければならないだろう。しかし、
そうは簡単に離職させる出来ないのも分かるな?それに、そう言った者達が
君達からそう言った連絡を寄こされてどう言った顔をするだろうか」
ある意味その言葉は脅しだった。特務隊とはいえ、これ以上大立ち回りは
許さないと言う釘さしだろう。しかし、その言葉を待っていたかのように
こうエルゼス達は言った。
「さて、どうだっただろうか?離席の必要がある人物がいたか?」
「覚えがないでっさぁ」
うすら笑みすら浮かべながら2人は会話を続ける。
「フム、困ったな。人員全体を回ってみたから私も誰がどうと具体的には
みていなくてな」
「そうッスねー、あれ?何で顔が思い出せねぇんだろぉ。もう思い出す必要が
無いからか?」
「何…?」
「フム、私も半ば同意見か?そう言った事をやってる顔なら覚えやすいが…
不思議と思い出せないぞ?」
「ハッキリとものを言ってほしいものだが!?」
ついにエルゼスとヒビキの言葉遊びに業を煮やしたのかニアテルスが怒りで
声を張り上げる。しかし、そんなのはカヤの外としている人物がいた。
「…?」
セルアである。彼女は少し首をひねった後
「おおー」
何か納得が言ったように、ポンと手の平に握りこぶしを打ち付ける仕草をする。
それを見とがめないニアテルスではない、視線をエルゼス達から外し、セルアを
見ながら訪ねた。
「どうかしたかね、テルラスク卿」
ニアテルスが訪ねたと同時にセルアは大声で聞こえるよう、ハッキリと言った。
「寝た日の晩に何があったのか、あとかたも無い位まで全壊していた横長ーい
砦だねっ!!」
部屋内で誰もが固まる。セルアは間違いなく自分がどんな爆弾発言をしたのか
理解していないようだった。証拠に「へ?はえ?」と空いた口がふさがらない
彼女自身の従姉や皆を慌てて見回している。この中で固まっていないのは
関心ないのかどうなのか表情の変化が全く見られないドールモートと他の
固まった者達とは違い、何かをこらえるように震えているヒビキ。そして
「ブフゥウウウウウウウウウウウウウウウーーーーーーーーーー!!」
静かに一口飲んだ水を目の前のニアテルスに向け思わず噴いてしまったらしい
エルゼスだった。
「…」
「や、カンベンしてくれやインケンヅラ。故意じゃねーから、今のは」
「あえて許そう。しかし、布拭きはしっかりやってくれたまえ」
「あいよ」
机の上で組んだ腕の上に乗せた凄くやるせない顔の片目で、ニアテルスは
エルゼスを見る。エルゼスが噴き出した水は対面側までは影響が無かった。
とっさに両陣営の中央あたりに噴き出した水が散ったからだが
「なあ、セルア」
「うん?」
「お前、あえて誰も触れなかったっつーの気付かなかったのか?」
「気付いてたよ?」
「あ゛ぁ゛?」
「だからさ」
「あ?」
「あえて言ったんだ」
「あのバカモノ…」と流石の姉変わりであるアスカレナも壁に手をついて
うなだれていた。「このヤロ…」とまで呆れ笑いしているエルゼス。そして
快活そうに笑う声が響いた。ここで初めてベゼグが口を開いたのだ
「ホホッ、テルラスク卿。ずい分豪気なやり方を好むようじゃが、その手腕、
まさか父親を真似たのかの?」
「知った事じゃないもの。軍の1つや2つ消えた所で。それ以前に手を貸した
大半、砦ごとゼス君達が一晩で消しちゃったんでしょ?いくら上層部の人達が
有能だからって、隠し通しきれたなら、それがこの軍無くてもよくない?って
あたしやゼス君がとっとと軍を抜ければ済む話だと思ってたし。それにね、
」
セルアが言った事は正しかった。文字通り帝国が置ける中央から東側の南北を
完璧に両断するよう作られていた砦だった。それを作るのと防衛するのに
どれ程の人員をだまし、どれ程の物資を偽ったのか。しかと計算が出来れば
小学生でも「おかしいな」と気付くに違いない。
大きすぎた故にセルアのような世間知らずで天然な令嬢でも察せられた計画。
最後にそんな彼女はこう言った。
「ゼス君、この人のこんなツラまで見せたんだから、十分でしょ?」
*
部屋で撤収の支度をし終えた―エルゼスの床拭きも含める―上層部と特務隊が
会議室を出ると軍部入り口で待っていた小さな人影が駆けて来た。
「エルゼス、帰ってきた」
ぱたぱたとまるで兄の帰りを待っていた妹のようにネーペルリアがエルゼスに
抱き付く。そんなネーペルリアにエルゼスは、訪ねた。
「ペルリア、もう連れて―央都:ここ―まで戻ってきていたのか?」
「んぅ、どことかは…」
「いっちゃめ、な?」
「んぅ、お使い、大成功。…役、立てた?」
ブイ、と手をはさみのようにしながら上目使いいで聞いてくるネーペルリアに
いつも通りエルゼスは答える。
「おう。ホント相方の書類仕事といい、良い子だなペルリア、よしよし」
「むきゅ~」
なでなでなでなでなでなですりすりすりすりすりすりなでなですりすり
ナデナデナデナデスリスリスリスリナデナデナデナデスリスリスリスリ
人目はばからずいつも通りのほのぼのごとをやり始めた2人をアスカレナが
注意した。
「少尉、何やら満喫している所すまないがそこは通路だ…そして、部屋への
連れ込みは無理だからな?」
「あ、すんません。―保護者:相方―が来るまで預かってくれますか?」
「…まあ、こっちにくるだろうからな。ほい、っと」
「むきゅ!?」
アスカレナにへそ辺りから抱き寄せられて一瞬ビックリしたネーペルリアは
しばらくアスカレナをジト目で見ていたが、されるがままになった。因みに
上層部はこれまで我関せずか、書類の再度確認をしていたりし、ヒビキは
窓の外を眺めていた。セルアにいたっては軽い前かがみ状態でネーペルリアを
狙っており、ベルクにいたっては虚空に向けて「読んでるチミらは次の瞬間、
うらやまけしからんと言う!」等と言っていた。
「ペルリア、また明日な」
「んぅ」
そんな所でヒビキが会話に入ってくる。
「ところでだ、エルゼス」
「あ、はい。隊長?―」
それは突然始まった。
バッ!ババッ!!!
ヒビキからの奇襲を完全に先読みしていたエルゼスはほぼヒビキの動きに
完全に避けるよう対応した。相手はヒビキだったのでかつてのテツをふまず
魔力強化で足の瞬発力を念のため上げている。その結果、ヒビキの手は空を
切り
こてん
どう言う拍子か、転んで頭から床にぶつかった、黒髪少女がいた。
「うえええええええええええええええええええええええええええん!!」
まるで子供のように、ヒビキは泣き出した。
エルゼスは見下ろし、身を引きながら思う。
(演技…だよな)
そう言いながらアスカレナ達に向けて
「あ、悪いペルリアに中佐に皆さん。俺、もう自室の方行きますんで」
「…(じーっとつぶらな瞳でエルゼスを見る」
「…」
「生徒会長、だった、おねーさん…泣いてる、よ?」
ペルリアがアスカレナに抱えられながら言う。あざとくも首をかしげて。
それじゃあ、俺が泣かせたみたいじゃないか。その言葉をエルゼスは
飲み込む。ある意味、本当に妹分に甘い兄様なエルゼスだった。そして、
「あー…隊長…」
恐る恐る手を伸ばすエルゼス。
しかし、問題だったのは
「貰ったああああああああああああああああああああああああああっ!!」
胸の内に―諦めの悪さ:修羅―を秘めていたヒビキに捕まった事だった。
「ぐぇああああああああああああああああああああああああああああ!?」
因みに、この日エルゼスの針頭は女性陣への―贄:にえ―となったらしい。
裏で糸を引いたのはベルクとファーニフアルだったそうだが確証は無い。
「「計画通り…」」
―act19に続く―
次回は7月24日以内に投稿する予定です。いよいよ、物語は後半へと
突入します…!




