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act17:フクシュウ「オヤコ」

滑り込みセーフなんてなかった…。それとこれから、色々と加筆してきます。

どうしてもこの部分までは、と考えていましたので。最悪、別話にして

投稿も考えます…

何はともあれ、今日も楽しい読書の時間を!




前回までのあらすじ

セヴァル:チート要員?」「モルドス:彼はエキストラでございます(ぇ」

エノリー:世間話ですね」アエルード:ホントあいつ何やってんだろうなあ」

セルア・エルゼス:いちゃいちゃ?」チェトフ:出来なくてすまにぃ」

鳥番:ヒサビサトウジョウ」セヴァル:うるさい…」

新しいワイヴァーン?:ステンバーイ…ステンバーイ…」


本日のサブタイトル追加:「イツカ イッショニ ソラヘ」


軍本部の手前まで来て口を開いたのはヒビキだった。


「して、私としては軍部の自室に戻りたいんだがね」

「あらあらー?ヒビキちゃん、いきなり秘密持ち抱え宣言ー?」

「あなたなら何もかも知ってそうで怖いがね。ファーニフアル大佐どの」

「何の話ー?」

「私の部下達が世話になった事を私は知っているぞ?ベルク軍曹から色々と

聞いているのではないかな?むしろ、聞かずして予想できている可能性すら

あるのだろうが」

「それはちょーっと買いかぶり過ぎじゃない?元委員長のヒビキっちも軍を

そこまで知っているわけじゃあないでしょ?仮に央都に来てから軍部で―」

「そんな風に口がすべるからあなたは信用できないんだ。少しは落ち着いたら

どうか?そんな性格のせいで妻に愛想を尽かされでもしたらどうするんだ」


誰の目にも見えるように火花がファーニフアルとヒビキの間で散る。軍に

入ってからヒビキが初めて人に触れる毒を吐いた場面だった。そして、

ファーニフアルは妻という言葉を聞いたからか、目を細める。瞳の中には

静かに怒りが宿った。


「へぇ―」

「ちょちょちょ、ターンマッ!!何で2人とも―軍本部の前:こんな所―で

そんなケンカ腰になってるの!皆見てるでしょ!?」


2人の言い合いがいよいよ白熱しそうな所でベルクが割って入り、止める。

ファーニフアルにとってはできた部下なのだろう、ベルクはファーニフアルの

方を見てこう言った。


「大佐、大人として今の殺気はいけませんぞよ。」

「ベルちゃん…貧乳の絆が:チャキチキチキ…:四面楚歌を第6感感知ィ!?

お願い許してこのオレってばスロースターターなのよんっ!?」

「女性への―蔑称:べっしょう―はお前の妻にも聞かせてやろうか?大佐」

「すいまえんでした…貧乳にも存在価値があ―」


槍先端射出→ムチ状打ち上げ→ムチ縛り戻し→突き×2→マウント柄叩き


ブスッバチィンジャッギュルルルルッズスズスダンダンダンダンダンダン…


「全裸に靴下あああああああああああああああああああああああ!!」


ガク


「流石お姉様のデスコ…「ツギハダレダ」…すいまえんでした」

いつものようにギャグがツッコミに誅された軍部前は他の兵も出歩いている。

しかし、誰もが見慣れているからかアスカレナがファーニフアルにした事に

誰も見ようとしなかった。否、見てはいるがファーニフアルと男達はむしろ

自業自得とでも言うかのような目で見ていた。そのほかにも


「んい?ああ、私達が帰ってきたからかな?」

「そのよう…と言うわけでもないな?」


視線はベルクの方にも向かっていた。その目にある感情は大半が嫉妬だった。

彼女の実力を疑う者。彼女の実力を知り、妬みの目を向ける者。冷静に、

視線にさらしたベルクを興味深げに見る者。それらを指摘したヒビキの言葉を


「まあ、気にしてもしょうがないでしょう」

ばっさりとベルクはそう言い捨てた。

「君も結構何のためらいも無く、そういう事を言うな」

「だってさ、こんな世の中ですし」

さらりと言ったベルクの言葉にはこの上ない安定感があった。その一言で

周囲からの視線に敵意が入るがベルクはそんなのを気にするつもりもなく。

「ん~」っと軽く伸びをした後に肩にファーニフアルをかつぐ。そして

軍部の中へ足を運ぶ。ベルクから離れるように周囲の誰もがほんの少しだけ

歩いた。その時


ドガァァアアアアアアアアアッ!!


「「な…!?」」「「何事!?(ガバッ!)オブファ!?」」

ファーニフアルも城の方からした爆発音に顔を上げ、ベルクのあごを激しく

うってしまった。2人して地面へもんどりうつ。しかし、そんな2人を見て

動いたのはヒビキぐらいだった。


城の方から、とてつもない破壊音がした。誰もがその穴が空いた場所へと目を

向ける。しかし、2つの影が軍備工築区へ向けて飛ぶように入って行ったのを

目にしたのはどれ程だろうか。ヒビキ達がそれを目で追った中、続いて


ドゴンッドガドゴドゴゴゴゴゴゴ…ッ!ドゴン…ッ


連続した破壊音が軍備工築区に広がる。流石にそんな音を幾つも聞いてただ

沈黙を保つ軍部ではなかった。


ザワ…ザワザワ…


突然の事に戸惑いながら周囲が辺りを見回している。ヒビキは、ベルクと

ファーニフアルを助け起こすように抱え上げた、そんな中で。

「うろたえるな!状況確認急げ!現場判断優先権を発令する!」

一番にき然と声を張り上げさわぎを静めたのはアスカレナだった。周りへ

視線を投げ、指示を飛ばす様は軍部上層部で堅実と呼ばれる彼女の強さと

言える部分がかいま見えるアスカレナへ、ヒビキは言う。


「中佐どの、私もいってくる」

「少尉と伍長は…」

「必要ならあなたが呼べばいいだろう。この場に呼び戻してもいいが…」

「…そうだな、そこまで無粋な真似をしても仕方がない。それよりも―」

「統括はお任せする事になりましょう。現場の方はお任せ下さい」

「特務隊隊長、報告を期待する」


それに頷いたヒビキは煙が立ち上り始めている軍備工築区の北方面へ向け

急ぎ早に向かう。向かった先は案の定、破壊とそれによる誘爆があったのか

最早様々な建物が残がいとなっていた。煙に囲まれながらもヒビキは冷静に周りを見渡し―見知った魔力が尾を引いているのを感じた。ヒビキは思わず

声に出す。


「セルアにエルゼス…?何故戻って…?」



「頃合いだと思うのだよ。―灼蛇:我ら―の内部を探り続けている愚かな

カエルの頭を取るのは」


帝国南の隠れ家にて、そうニアテルス幹部どのはおっしゃいました。ワシめは

それに是ととなえます。

「ホホ、分かりました。あ奴を消しましょう。あなた様のお付きであり、

現段階で我らが目的の最大障害と言えるあれを」


あれとは当然ながら我々の動向を探るべく糸を張っている薄汚いクモと言える

帝国の頭脳です。機械のように淡々としていながら、どこに高性能かつ人口の

頭脳でも入れているのやらまるでこちらの心を先読みしてくるかのごとく、

監視や。まあしょせん人の頭脳では機械の頭脳を越えられないと言う

一例やも知れませんな。それは、ともかく。思い立ったが吉日。あの


「しかし、何故こうも私に肩入れする?しかも、そちらが見返りを求めない

文だけ、性質が悪いように思えるが」

疑り深い目でこちらを見てきます。なるほど、【本来なら】我々は灼蛇

「何、この先短い老いぼれでも役立てるのはうれしいものです。ましてや、

あなた様のような者と共にこれからの未来を作り上げていくと言うのもまた

勿体なき光栄にありましょう?」

「フン…」


ほ、お気に召しなかったようです。何、ワシめもあえて本心、好意を持って

言っているのです。この方が考えたその他人を見下ろす計画は実にワシめに

心地いいものを与えてくれますゆえに。それにあなたと言う存在さえ…ホホ、

これ以上は楽しみが無くなりますな。


と、そんなこんななやり取りの結果でこの先短い老いぼれが我が身と命を賭し

ネズミの排除に来たわけですが…いやはや、生きるしゅうちゃくと言うのも

凄いものです。全てこのワシめに効く道理も皆無でございますが。


フム?色々燃えて壊れては土に還っていきますな。ホホ。美しいものです。

モノは壊れてしまう瞬間が美しいと言うのは正に心理ですな。それがたとえ

どんなに哀れでおろかしい存在であったとしてもです。ゆえに―


あれも、今あの【ネズミ】からあふれるとち狂う程気色悪い魔力の呪縛から

少しはワシめの魔力で中和され、解き放たれる事でしょう。何せワシめは…

とと、今は目的を果たさねばなりませぬ。コレモマタ【我が主のため】。

ホホッ、言葉遊びに人形遊び、加えて【化かし遊び】とワシめもちと遊びが

過ぎますかな?


そう思いながらワシめは黒い玉に自ら包まれます。そしてそこから出て来た

ワシめの姿は―


「ホ。流石ニ長時間ハ畏レ多イデスガ、コレモマタ【アノオ方】ノタメ」


一応この帝国の影の支配者と呼ばれる【ネズミ】…そして


「セヴァルー!セヴァルヤー!ワラワジャー!ドコニオル!?」


全く、恥を忍び子供同然と言える幼稚な声を出したと言うのに反応しない?

それでも忠臣ですか、無能でチクショウなアレ共々度し難いモノですなあ。

しかし、音を発することで魔力を空気に溶かしました。きやつの位置もやや

不安定ながらも方向だけはつかめましたぞ。ああ、この熱を出してるものは

少し邪魔ですな。消して通るしかありませぬかな?


…フム?気配が動きましたが、ワシめから離れるようです…?一体何が…と

考えた所で逃がす必要すら無いやもしれませぬが。差し当たり周りに目障りな

命の気配も感じましたしやめる事としましょうか。まがいなりにもこの姿は

【我が主】の生き写しに近いそれでありますので。どこにでもいる雑多の目に

入る事すら汚らわしい。


ブゥウウウウウゥゥゥゥゥゥウン…


ホホホホホホ。では、【ドロボウテイクの片腕狩り】と参りましょう…


「チェトフおじさん!一体何が―」


セルアの叫びにチェトフは岩場へ腰掛けながらも言う。


「オレも何が起きたのか、詳しくは見えてなかったんだが…やばい。あの

暴威が央都中を歩ける状態になっちまったら間違い無くここは崩壊する!

…オレはこいつらのおかげで工築区からこっちに逃げて来たが…」


そういうチェトフの肩からセルアへと飛んできたのは2匹の小鳥だった。

間違い無く、央都でセルアに懐いている鳥の番だ。


「せるあせるあ!」「ヒナンシテ、ヒナンシテ」

その鳥の番達に反射的に言ったのかセルアはさけんだ。

「どこから来たの!教えて!!」

「イエナイイエナイ」「トビラハイッテ3バンメヒダリナンテイエナイ」

「言ってんじゃねーかよ…」

「コマケェコタァコマケェコタァ」「のーさんきゅーのーさんきゅー」


一体何を言っているのか、突っ込んでいる時間がない事にエルゼスはハッと

セルアを見る。案の定、セルアはもう林の中をかけ出していた。

「セルア!」

「向かわないとヒビキちゃん達が危ない!あの軍曹さんも!」

「さん付けかよ…」と言いつつもエルゼスはセルアをわきから抱え上げる。

「ワヒャッ!?」と声を上げたセルアを気にすることなく、魔力で身体を

強化し、一足飛びに商業区の建物屋上へ向け、飛び上がる。そうして

建物伝いに商業区まで伸びている―要塞網道:ようさいもうどう―を通り

軍備工築区へ猛スピードで降り立った後、セルアを下ろしてこう言う。


「俺、一応あっちを調べてみるな。セルアは―」

「あの子達が行った方、行ってみるよ」

「んじゃ、また後でな」

と、言いつつエルゼスとセルアは分かれる。しばらくエルゼスは駆けだすが

周りを見回しても破壊の手が回ってない側に来たのか建物は大半が原形を

とどめており火の手は完全に来ていない。しかし、そこまで軍備工築区を

知らないエルゼスは自分がどこにいるのか迷ってしまった。


(これはまずいか?降りて来たのは軍備工築区の中で中央あたりだと思って

降りて来たんだが…)


そう思ってる所に上からの気配で思わずいた場所から離れる。そして、


バサッ


降りてきた影はエルゼスが知っている4本角の彼女だった。


「おのれ…!上手い事やりおってからに…!!」

「姫さん!?」

「エルゼスかや!!」

「戻ってきていたのか!?」

エルゼスは央都に余りエアリシドがいない事を知っていた。


エアリシドは彼女自身が気に入った者以外には姿を見せようと考えない。

だからこそ彼女自身の本当の姿を見た者の大半は会った記憶を消され、姿や

かたちを変えた変わり身をもって人の中へ潜みこむ事もする。また、万象から

生まれた彼女は魔力のある所ならどこへでも出現できるこの央都だけでなく

帝国全土においてエアリシドが見れないもの、いけない所は無かった。

それが今回、彼女が今になって―央都:ここ―に戻ってきたという言葉に

つながるのだが。エアリシドはエルゼスの言葉には


「魔力の―残り香:コンセキ―をたどってきた!!きやつはまず間違いなく

このあたりにいる筈じゃ!!」

「そいつは…誰だよ?」

反射的にエアリシドは口を開きかけ―、考えた後こう言った。


「―妾:わらわ―の…すまぬ、言うより前に早く探さねば。恐らくそ奴の

狙いは―」




場所は変わり、セルアもまた、数ある建物の中で立ち止まっていた。


「迷っちゃった…ここ、どこだろ」


ある意味無理も無い事だった。周囲は火煙と残がいに、わけも分からない

道具の成れ果てばかりで場所が記されたプレートなども破片となっている。

それに加えてセルアがこの央都における軍備工築区の全容を覚えている程

頭がいいわけでもなかった。


路頭に迷って辺りを見回している内に彼女の人でない感覚―神経が鋭くも

この火と煙、残がいの中でかすかな息づかいを


「息づかい…?誰かいる―」


もしかしたら、区を破壊する暴威に巻き込まれ脱出できず危険状態にある

民間人かもしれない。セルアはそこまで考えながらけむりの中を手探りで

進み―思考を停止し絶句した。ボロボロのその男は、まず今日出会う事が

ないだろうと思っていた男だった。


そして、こちらを見たその男―セヴァルもセルアをぼう然と見ていた。それは

今まで見たセヴァルの顔のどれとも全く違うものだった。


(そんな顔をするんだ)


セルアがそう思っていると、静かにセヴァルが口を開く。


「エノリア…?」


セヴァルの口からセルアにとって信じられない言葉がもれた。目の前にいる

男からは母親への愛情など欠片も感じさせなかった。少なくともセルアからは

そうとしか見えなかったからだ。


「母さんの名前呼んで。あたしまでバカにしてる余裕なんてあるんだ?

ボロボロじゃない?」

そう口にしてもセヴァルは、あ然とこう言い続ける。


「バカな…生きているはずが…何故…何がどうなって…」

その疑問に答えるようにセヴァルの元へいつの間に行ったのか、鳥の番達が

セルアの方へ戻る。

パタパタパタ…

戻った鳥達は口々に言った。

「せるあせるあ!」「サソイコンダツモリカ、サソイコンダツモリカ!」

「セル、ア…セルア…?」


鳥の言い分にセヴァルの顔は呆然と、しかし絶望の色に染まっていた。


「そうだよ。あたしの名前」


それを聞いた瞬間。火煙が2人の間を割るように舞う。再び鳥の番はセルアの

肩から飛びたってしまった。そんな中で。


「自分は…助かった自分の娘すら目に入れて無かったと言うのか…」


セヴァルは間違いなくそう口にした。


「何度あっても…分からなかったのに、ね」

「何と最早な。…ここが終着か。ある意味、自分にはお似合いで…1番の

救いか」

「何を…言ってるの?」

「逃げて来た。逃げて、逃げて、逃げ続けて。そのツケと言うものだろう。

ましてや、自分の子供に看取られるなどこれ以上も無い」

「死ぬの…?…―!」


セルアはそこでハッとしてセヴァルを注視する。最早生きているのが不思議と

言えるようなセヴァルは状態だった。


「どうにも、な。本当にロクな人生じゃなかった。まあ、そんな人生の中でも

幸せな時があったのだから、あながち捨てたものでもないだ…ゲハッ」


血を吐くかと思ったが、最早それさえ吐けないらしい。しばしの沈黙の後、

再びセルアが口を開く。

「ねえ」

「ん、どうした?」

「言い残しとか、ある?」

「そうだな……幸せになってほしいな…」

「あたしが不幸になったらどうするのかな?」

「地獄の底からでも…はい上がる…そうでなければ…納得できん…グッ」

「地獄の底からでも謝る位はしないの?」

「そこは当然だ…心当たりがもうろうとしてるが…」


「余り根には持ってないけど、勝手に嫁に出すなんてひどくない?」

「…―ノレット:彼―はそんなに悪い人だった…か…?貴族生まれは…身を

固める場所を…選べん…だからこそ…堅実な所にした…が…」

「うーん…結局死んじゃったのと同じみたいになっちゃった。何て言うか、

ふわふわなおねーさんに利用される形で…」

「何と…未だ、測りきれぬ…な。―帝国:ここ―は」

「あなた達が作ったのに?」

「そうさ…それも…な」


そう言いながらセヴァルはふるえながらその巨大な影を指差す。血はもう

吐きつくしたようだった。


「それに…触れてみるといい…」

「え―?…何それ?」


それは巨大な乗り物だった。羽を複数後部に持ち、頭も複数持っている

作りになっているその乗りものは、セルアが知っているようで全く知らない

乗り物だった。セヴァルはその乗り物の首下にある巨大な紫の石を震える手で

指差している。セルアはそれをしばらく見た後、歩いて行きそれに触れた。


フィイイアォオオオオオ…


乗り物全体が魔玉からの光で包まれる。その光を見ながらセヴァルは目を細め

言った。


「それで…もう、それは…お前のものだ…好きな名前でもつけて…や…」

「…もう、お休みかな?」

「ああ…」


(エノリア…自分は満足したよ…後は…セルアが…)


そうしてセヴァルは少し長すぎたのだろうその生を閉じた。それを確認した

セルアは後ろで一本の髪にまとめ上げていた髪飾りを解き


「…おやすみ…バイバイ。お父さん」


言いながら父親の手に置く。その後自分が触れたその巨大な何か―乗り物が

置かれている台へ上りあるいていく。


カン…カン…カン…


乗り物の前まで来、席に乗ろうとした時にセルアは乗り場所のそばに何かが

立てかけてあるのを見つける。


「ん?これ…」


それは木で出来た絵だった。赤子を大切そうに抱く母親と、それを慈しむよう

見下ろす端正な男の顔。誰もが穏やかな顔つきをした絵だった。


「あは…」


そう軽く笑いながらセルアの目からこぼれる、火と煙の中でこぼれたそれは

星のように輝くも風邪で流されていく。それと共にセルアは顔を上げ―

セヴァルが指差したそれの一番前の席に座る。【複座】だった。席は全部で

3つ。

「お父さん…お母さん……あたし、行くね!」


乗り物の首をなでて魔力の綱を、セルアは握った。それと同時に


ピィフィイイイン…!!


身動きしなかったその乗り物の3つある頭部の内中央の鳥頭が持つ目。そこに

光がともる。それと同時にセルアの長い髪が真っ黒に染まった。輝かしい夜を

映すかのようなその柔らかい闇は乗り物の全体を輝かしながら


ガシャン…


一歩を踏み出す。ゆっくりと、しかしセルアの意思を魔玉から通して、四肢を

少しずつ


ガシカン…ジャガシ…ジャカシ…


そして足場から何歩か歩いた所で


フィィオン…


軽く乗り物―ワイヴァーンは後ろの羽を用いて浮いた。セルアはそこまで

確認すると、目を閉じ近くにいるだろう2人を心の内で呼んだ。


『ゼス君、ヒビキちゃん』


「「セルア…!?」」「む―?セルアかや!?」


エアリシドあらため魔力に敏いエルゼスやヒビキは反応し周りを見回す。

しかし、魔力を乗せて発した言葉を感知したのは他にもいた。


「フム…?想話…?」


この区を壊しつくしながら先程息を引き取ったセヴァルを探し続けている

モルドスだった。そのモルドスが火煙も無視してセルアの場所を探し当て

目前まで来る。彼女の乗った【それ】を見てモルドスはこう口にし笑みを

浮かべた。


「ほほ、これはこれは…面白く可愛いおもちゃでございますなあ。はて―」


そうセルアに言う【それ】が生き物と言うにも禍々しい存在だと言うのを

セルアは【本能】で理解した。そして、これ程軍備工築区を壊しつくした

本人だと言う事も


「目ざわりですなぁ」


モルドスの片手がセルアの乗るワイヴァーンの倍はある大きさに膨れ上がる。

魔力で巨大化した手はまるでおもちゃに手を出すかのようにセルアが乗る

ワイヴァーンに近づく。


一方的にこちらに被害を出さず、しかし形あるものに被害を与えると言う

魔力を使った理不尽で巨大な手の攻撃は


ブウォォオッ!!


突進してきたセルアのワイヴァーンに魔力の手をかき消され直撃する。


「のほっ!?!?!?!!?」


ガガガガガガガガガガ!


普通なら死んでもおかしくない中でモルドスは焦り考える。


(このワシめが力負けを!?否、ましてや物理に対して衝撃など―)


その判断は間違いではないが間違っていた。元よりそのワイヴァーンは

セルアの魔力を受け魔物に近い存在として、


【魔力をまとった非物理性質を持った物質】だからだ。


ただ、それに気付くものはいない。気付く前に気持ちが前に出ている

セルアは言葉を口にする。


「ここから…―」


クォオオオオオファアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


セルアのワイヴァーンが―龍躁者:ドラグーン―の意思を得たかのように

雄々しく叫ぶ。それと同時に


「ここから、出てけ―――――!!!」


「ぬ…ごっぉおおおおおおああああああああああああああ!!」


そうセルアのワイヴァーンに押し出されたモルドスは空中で姿勢を立て直す。

セルアも精一杯、羽の浮力で姿勢を正すようワイヴァーンに意思を伝え空中で

制止した。見事な空中停滞状態だった。そして、戦いは終わっていない。


セルアは目の前の化け物を許すわけにはいかないし、モルドスもここでは

目立ちたくはないが目の前のモノを片付けた方がいいと判断した。


お互いに明確な敵意をぶつけあおうとしたその時。


「はっ!?」


モルドスは背後をふり返った。そこに彼女はいた。


「見つけたぞや…【ネズミ】が」


エアリシドだった。宙へ飛ばされたモルドスを見つけ空へ舞い上がってきた

彼女にモルドスは忌々しく、こう口にする

「ぐっ…おのれ【我が主の片割れ】ごときが―!」

ドヴァンッ!!!!

「ノッ」


全て口にする前にモルドスは自身の10倍程はある巨大な手に抱かれる。

エアリシドはその腕の中でなおももがくモルドスにこう言い


「今妾は気がたっている。理由は分かるな…?―失せよっ!!!」


パグチャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!


巨大な魔力の腕が文字通り手の中にある【それ】を握りつぶした。


「Coaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」


正に地獄の底からひびく―怨嗟:えんさ―の如き断末魔を上げ軍備工築区を

壊しに壊した黒幕は散った。しかし


「お姫様…?:ウィコォー…?」「姫さーん…!?」「エアリシド姫!?」


エルゼスとセルア、そして駆け付けたらしいヒビキにセルアのワイヴァーンが


彼女を見上げる中でエアリシドは

いまいましげにうめく。


「…っ仕留め損ねたかや!【再構成】に時間はかかるが…」


央都の外へ視線を向ける。


ザワ…ザワ…


上空にいるエアリシドの姿をとらえられたら色々と厄介な事になりかねない。

エアリシドの決断は早かった。


「後の事は―」

「頼まれるけど、姫様。1つだけ」


セルアは、ワイヴァーンに魔力で頭を下げるよう指示した後、エアリシドの

顔を正面から見ていった。


「お父さんの葬式、必ずするから」


―act18へ続く―



次の投稿は7月15日を予定しています!遅れて申し訳ありませんが

どうか楽しみに待っていて下さい

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