act13(前編:接触「因縁と」
さて、前話の伏線?とも言える答え合わせです。
まあ、誰もが「ですよねー」と言える答えかとは思いますが。今回からの
見せ場はそんな腹黒さ全開な彼女の立ち回りです。あの白巫女様マジ真っ黒。
ではでは、楽しい読書の時間になりますように。
注意!:開幕出オチです。そしてネタが飛び交うシーンが少し長いです。
苦手な方は―しばらくお待ちください―のあたりまで軽く飛ばして下さい。
「神は言っている…まな板が足りないと…」
「…」
ああ、もう慣れたとも。2日ぐらい彼女のようなのと2人でいれば流す方法も
意地でも身に付くさ…彼女には悪いが。かと思えば何か物理的に中年くらいの
父上みたいな渋い顔をして、こんな事を言い出す…
「本日のバディはコンディションレッドだ…そして某一角獣のラスボスもまた
悲しみを背負ったのがついこの間だ…」
私は彼女のこの冗談語りに後どれだけ付き合えばいいのだろう…
「1日のノルマと言うのがあるから仕方にぃ!」
「この貴婦人風のイキモノ、直接脳内を…ハッ!?!?」
いやいや、何故私まで感化され始めた!?どういう原理だ!?こんな所で
下手な芝居をうっている場合ではないと言うに!?ただでも中佐どのが先に
―要塞都市:イアシェ―について待ちぼうけしていたらどうする!?
「そう思ってるあなたに、この―タスブロ:カニ―をおごってやろう」
「…」
落ち着こう、と言うかどこから取り出したそんな大きなものを。
「さて、問題はここからでごわす。元生徒会長で隊長なロリ姫様をこれから
どうやってネタキャラに堕ちていただくか―」
…あ、綺麗な星が付いたり光ったりしてる…
「おいぃいいいい!?それ以上はあかん!」
あはは、違う、違うな。彗星はもっとこう、バーって飛ぶものな。
「アカン!?!?ゴールしたらアカンよ!?それ以上言ったらあかんよ!?」
―しばらくお待ちください―
私は一体何をやっていたんだろう…
「とりあえずご飯食べて落ち着きましょう、殿下」
「自然にずい分な事を言っているな?」
「ああ、いえ、なんて言うか…やはり、遠慮は無用で?」
この空気から察するに。彼女は冗談を通してしか私に自己主張できなかったと
見るべきだろうか…そこまで私自身が偉いと感じた事は無いのだが。事実、
身近な間柄を作っていたのが…エルゼスとセルアの他には央都で【偶然にも】
知り合ったエルシェリッド大佐ぐらいしか浮かばなかったわけであるし、な。
…―機龍軍高:ティスフィーブル―では教師すら私に遠慮していた節がある
為か、思えば最近になって知り合いと呼べる関係が相当に増えていたな。
そういう意味でも私やセルアが―エルゼス:彼―に出会えたのは何と言ったら
いいか…運命だなんて口がどうなっても言えない。だが、作為的と思うのは
果たして私の女の本性か何かか。…今は置いておく。
「1つ聞きたい」
「アイアイサー!」
「(本当に両極端な人だな…)私の国と帝国の間は私が知らない所で相当な
溝が?」
「んー…文化交流とかはしっかりしていて仲は決して悪いとは言えないと
思います。事実、私のような者が生まれているのが証拠です。ただ、姫様が
知らない事でカドラバとアカナチが対立している何て事は全く無いです」
「なら…「1つだけ差し出がましい真似を許して頂けますか」…ああ」
「私が個人的にあなた様、というべきかあなたに遠慮を感じているのはあの
2人に関しての事、です」
「エルゼスとセルアか」
「はい。…私はあの2人無しでは生きていけなくなるかもしれないのです。
そしてそれを利用しようとしている人がいる…」
そこから先に何か口にしようとしていたようだが口をそこで閉ざした。少し
首をかしげる。この後続いたのはどんな言葉だろう。ともあれ、考えるべきは
別にある。
恐らく軍曹どのが持つ異形の力だろう。確か、セルアとエルゼスが央都で
仕事をする前に、大佐にあったと言っていた。その時彼女の異常状態を
見たと。
「だったら尚更遠慮はいらないぞ」
「そうでしょうか」
「あの2人にはあなたが必要だろうし、私もいて上げてほしいと願う」
「でも私は……」
「すまないが踏みこむぞ。何も言えない状態ならこちらも何も言えないし、
言うつもりも無い。あなたと言う人間を何かしら私達の輪に入れてその結果
未来に何か起きたとしても、それは私達皆で引き受けるべき事だろう」
ただでさえ私達の仲は今、大きな問題を2つも抱えているようなものだ。
「これから毎日4バカで行こうぜ?」
「(ヒィイイン)イイノコスコトハアルカ」
いろものガハジメノヒトタチニカカルナガレデワルイガシカタガナイナ。
チチウエニハハウエ、ツマラヌモノヲ―デンカノホウトウ:コレ―デキル
コトヲ、ドウカドウカオユルシクダサイ。
「ヒイイイイイイイイイイ!すみません、言ってみたかっただけでござる!
あとここで殺したらシャレなりませんので許して下しあ、姫様!」
「…まあ、中佐どのに言うので妥協しよう」
「オオフ…と?あ、エクスド君が出てって空いた方のハッチを開けないと
なりませんね」
「―?ああ、なるほど」
ガパッ…グウィィイイイン
ブワサッゴオオォオオゥ…
そんな音を立ててエクスドが出ていった出撃ハッチが空く中にわずかながら
ホバー状態でゆっくりと降下してきた量産機龍が入ってくる。熟練と言える
操縦技能をハッチ内のカメラごしに見とれながらベルク軍曹が感激の声を
上げる。確かにあの動きは中々の腕前だ。あちらの方が階級こそ上だが私や
私の国の軍の他に、これだけの動きをできる者が―カドラバ:ここ―には
いるか…
「お勤めご苦労さまです、お姉様!!」
乱れた螺旋の並ぶ金髪を黒い電気をはしらせる事で整えた中佐は、カメラを
にらんだ後。やはりと言うべきか、雷が落ちた。
『何度も 言うが お姉様は 止めろ!!』
私はこの後起きるだろう軍曹へのセッカンに苦笑するしかなかった。
*
エルゼスの目が覚める。目に入ってきたのは知らない天井だった。
「ここは?」
その疑問の言葉が返ってくる事は無いとエルゼスが思っていると、となりから
コポコポと何かを淹れる音と共に返ってきた。
「要塞都市イアシェの近辺にある宿泊所です。目が覚めましたか」
日差しが窓と布ごしに軽く差し込む中で飲み物をカップへ入れていた女性―
レフィーアはこう続ける。
「大事無かったようで安心しました。恐らく今の音でテルラスクのお嬢様に
あの子もこの部屋へ入って来るでしょう」
「わき腹を手痛くやられてな。焼けた部分の皮ふが露出して中身まで少し
歪んでいた気がするんだが…」
「まずは落ち着くためにも1口、いかがでしょう?」
そう、穏やかかつ優雅に言いながら目の前にいるかつて争った男の従者は
敵であるはずのエルゼスを前にほほ笑んでくる。エルゼスは湯気の出ている
それを見ながらほおをかきつつ言った。
「猫舌…だと言ったら?」
「意外…とは思うのですが」
「…(迷うように視線を泳がせつつも両手でカップを受け取ろうとする」
「あの…?もしかして本当に…?」
「熱いもんは苦手なんスよ。熱い飲み物は冬くらいしか飲まなくて」
そう言いながらアツアツのカップをエルゼスはわざと両手でおおう。包んだ
カップは丸いけむりの輪を作り出している。
「あの、無茶は…」
「(舌だけ入れて)あちぃ…(慌てて顔ごと離す」
「どうぞ(エルゼスの足でふくらんだふとんの上に木のトレイを差し出す」
「すんません、助か―(ドタドタドタドタドタ!!!)きやがったな」
ドアが壊れる程の音を立てて開け放たれ、入ってきたのはエルゼスの予想通り
ネーペルリアとセルアだった。
「「エルゼス!!」」
「はもった後でにらみ合うな、お前ら…」
額に指を当て落ち込むエルゼスに「お邪魔、でしょうか…?」とレフィーアは
少し遠慮がちに言ってくる。エルゼスは即座にこう言った。
「助けて下さい」
「すみません、勝てる気がしません」
「セルアの奴、腕力は意外とあるんスよね。ペルリアの事は知ってるので?」
「知りませんが「…(じっと無言+ウルウル顔)」やる前からもう勝負が…
(そこから先は言葉にならずガックリと片ヒザをつく」
「可愛いは…何があっても正しいのか?」
「ゼス君、それあたしには無いって言うの?」
「頭までアーパーなお嬢っちゃまと可憐な野獣でこうも違うんだな」
「ムキュ?」「ゼス君」←2人して同じジト目をエルゼスに向ける
「…悪かっ…ぐ…」
謝ろうと体を動かそうとした時点でエルゼスはうめいてしまう。まだ、あの
華みたいな機械に撃たれたわき腹は完治したわけではなかった。腰に巻かれた
包帯をほどけば歪み、血がにじんでいる応急処置場所があらわになった。
「ケガ…」
「うん、止血はしたけど中の肉部分は文字通り灼かれちゃったから…そこで
あたしの出番だよっ(胸張りながら木の容器を取り出す」
「それは?」
「2月ほど前にもう1度だけ集まったじゃん。その時集まったあの子達の
爪からいい薬が作れたんだよ!」
「スンスンと鼻でかいだ後)何かの…爪?…細かく、砕いて…何、混ぜた?」
「ムシトリソウを少しだけ、ね。それで、これを傷口にすり込めば…」
言いながらセルアは木の容器に入った塗り薬をエルゼスの腰部に塗り込む。
恐らく採取したのはセルアでも、作ったのは彼女の友人であり、央都の方で
待っているフレミルだと思うエルゼスだった。
「細菌とかも小量だけならしっかり防いでくれるから!」
「絶対お前だけで作れたものじゃないな?」
「ばれた!?……うう、そうですよーぶー」
「…(視線をそらしながらプーッとセルアを笑う」
「オイコラ(ペルリアが笑ったのを見て手を伸ばす」
「ムキュ!?(エルゼスの親指が鼻の中間辺りに直撃、小動物風の声を上げ
こんな顔をする→>×<」
「あんま人を笑うのは失礼だぞ」
「…ムキュー…(何か思いついたように)…(ササッとレフィーアに駈け寄り
)…(レフィーアの腕に抱き付いた後、ドヤ顔をエルゼスに向ける」
「…あの?(ネーペルリアがした事に全く理解が追いつかずされるがまま」
「…(ものすごく輝かしいニッコリとした笑顔でペルリアを見る」
「うわっゼス君、すごい作り笑顔!?!?」
「ムキュキュ!!?(本来のケモノ耳が飛び出るかのようにビックリして)
…!!(脱兎のごとく部屋を出てった」
「あーあ、行っちゃった?」
セルアの言い方に何かまずかったか?という表情でエルゼスは言ったセルアを
見上げる。
「女の子は優しくしなきゃダメだよー?」
「分かんねえし…難しいな」
そうエルゼスが首を天井を見上げながら首をひねる。
「何と言うか…すごい輝かしい作り笑顔でしたね」
「…実は俺でもおどろいてやす…少し悩みが」
「何でしょう?」
「あいつ…ペルリアが最近本来のバケモノっぽくなってる気がして人に変な
目で見られないか心配なんです」
「でも…―かわいいは武器だと思います」
「…あなたの口からそういう言葉が出るたぁ思わなかった」
そう言い、エルゼスは布団から出る際にトレイごと持ったカップを口に運ぶ。
良い温度まで冷めて来たろう紅茶を1口含んだエルゼスは、余りの美味しさに
思わずレフィーアの方を見た。レフィーアは柔らかくヒザ近くまで丈がある
スカートの端をつまみ、見事な会釈をした。
*
結論から言うならやはり、と言う所でしょうか。
契約における絆の大きさは私達を鎖とも言える程にしばり付けます。私は
それをよしとしますが、もし…彼女がそれを是としなかったら。そして、
彼がそうする程の力と心をリアちゃんから貰ったと言うならば。…少しだけ
ヤキモチをやくかもしれません。痛い目は必ず見せようと思っていました。
面倒ではありましたが、策はいくつかねっていました。仮にリアちゃんが
私の下を離れる程に…エルゼス様との絆を強固にしても。私との契約の線は
切れる事は無いので、上手く立ち回るのを少しだけ要求されるだけです。
人を流すのは私達の得意分野ですからね。それしかないとも言いますが。
それゆえ、今回の事は予想の範囲内であり。また、思いがけない幸運とも
言える結果でした。何故なら―いえ、その時になれば嫌でもそうなります。
彼には…その後謝らねばならないでしょうか。
さて、失った信用を取り戻すためにも次に向かうだろう【あの人】が統治する
予定だった要塞都市でうまく立ち回るとしましょう。しかし、あの従者には
少しばかり辛い事を言い過ぎたでしょうか。今にして思えば彼女が彼の下で
奉仕する経緯を私は知っています。
かく言う【彼】も人を寄せ付ける魅力を持っていたのは認めます。事実、私も
【数ある乙女の証】を捧げようとした申し出に嘘はありません。残念ながら
彼はそれを持ち合わせぬ【秀才】で終わってしまいました。それを悔やまない
程私も冷めた女ではありません。かどわかしたとは言えケンカを売った相手を
考えるべきだったでしょうか?…やはり彼の破滅は【あれ】と出会い、その後
彼と出会う以上必然だったのかもしれませんが。それでも彼の犠牲は全くの
無駄ではありません。私はそれを利用せねばならない、否が応でも。
要塞都市の加護をもつ者は必然的にしぼられます。―彼女1人に…と、私が
そう考えて来た所で
「あらあら、奇遇ですね~」
「本当に奇遇か?コラ」
宿泊所のロビーで何か記入していた彼の手先に近い2人と出会います。前に
あった時と大差ないようですが、目つきが変わり邪念が抜けた風に思うのは
気のせいでしょうか。口調は相変わらずのようですが。
「あなた方の行動をしばっていたわけではありませんから~どう考えようにも
偶然ではないでしょうか~?」
「そのノンビリ口調じゃ説得力ねえぞ」
「あらあら~」
かくも最早です。これもある意味私の素なのでどうしようもありません。そう
私は取り留めも無い話をお2人としている所に2色髪さんが寝ている場所から
出て来たリアちゃんが
「むきゅー!!」
「キャッ!?リアちゃん!?」
ものすごい勢いで私に抱き付いてきました。私は体が強いわけではないので
簡単に押し倒されてしまいます。一体何があったのでしょうか?
話を聞くに、2色髪さんにふられたのと似たようなはずかしめを受けたとか。
よしよしとリアちゃんをなだめながら、少し問いただそうと思いました。
そう思いながら体を起こすと、お2人とも顔を見合わせていました。そして
弟分の方が2階へと昇っていきます。どうやら彼女を呼んでくるようです。
*
夕刻。傷もある程度癒え、宿泊所を出たエルゼスを待っていたのは柵周りで
待ちかまえていたらしい、ロットとペール、そしてジャクシールだった。
レイアとネーペルリアもおり、ネーペルリアはペールと向かい合っている。
エルゼスの前に来たのは文字通りロットだった。
「…よう、オレの片足をこんなにしてくれた張本人さんよ」
「―…」
「何とか言ったらどうだ、お?今ここで私怨でもぶった切ってもいいんだぞ」
「それはムリだろ、どう考えても」
「あん?」
「俺、軍人。…後は、分かるな?」
「げえ!?何がどうなったら…」
「そうなるんだろうな、と思うよな…(気落ちしたように肩を落とす」
「何か事情があるって話かよ?」
「めずらしい迷惑ごともあったもんだ。それはアンタ達の方もだろうが、な」
「何?」
「アンタ達には嫌疑がかけられている。ニアテルス・ヴォーゲと俺が冬の前に
ケンカしたアイツの事で聞きたいことがある」
「!!!」
「あ、お姉様」
「ちょっと待て、アンタに許した覚えは無いよ!!テルラスクの!!」
「ええと…もう色々と手遅れになってます、…ジフブリアセンパイ」
「小娘ぇ…くわしく話を聞かせて貰おうか」
「あたし達は何もしていません、センパイ。でも、学園の方は…」
「な、何てこったい…学園に戻りたく無くなるじゃないさ…」
「…」
「…」
「…がおー」
「んだ」
「「…(2人して何故か無言で両手を当て合う」」
「「お前らは何が通じあってそんな事をしているんだ」」
―act13(後編)に続く―
次回はリアルが忙しくなりそうなので6月1日以内の投稿を予定します。
運が良ければ今月中に投稿もできるかと思いますが気を長くしてお待ち
下さればと思います。それではまた




