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act4(後編:出撃「それぞれの道・前途多難」

何やら最近忙しい日が空いたにもかかわらずこの投稿でございます。

ただ、次は…次こそはもっと早く!流石に何やらだらけ過ぎと思いますので

次こそは期待して下さい。それでは今回もよい読書の時間を


張りつめた空気が場を支配している。そこにいたのは話かけづらい空気を

まとった王族の少女と何も語らない青を基調としたワイヴァーン、そして

帝国にすむ平民の幼い兵隊だった。口を開いたのは兵隊―エルゼスだった。


「せんぱ…隊長、そいつは」

「知らん」

「隊長?」

「私は聞いていない!!」


ガン!!!


ヒビキがすぐ傍にあった壁を右手で殴りつけた。叩かれた場所がほんの少し

ゆがむ。それを見てエルゼスはおどろいた。ヒビキはまじめで3人の中で

怒る立場は何度もあった。が、ものに当たる程怒った事は、エルゼス達の

前では今まで1度たりともなかった。


「隊長…どう言う…?」

「母上はいまだ健在の筈なんだ」

「―…?」

「これはまだ、母上の為のワイヴァーンなんだよ」


思い出すように黒髪の少女はとつとつとエルゼスに話し始めた。


「私の家では代々清水の巫女と言う、アカナチにおいて神事の1部をになう

役職がある。様々な事象1つ1つに宿る八百万の内、水や海に関する神々に

舞いをささげ、その恩恵を国におろすという儀式。それを…アカナチには他の

方面、属性にまつわる神々の巫女はいるが、そこは。当代の母上が、護身のための宝具…聖遺物・アルクと言えばいいか。とにかくその1つとしてとして

あてがわれたのが…このツヒオリメだ」

うつむきながら話す様子は目の前に自分で呼んだ名前の機龍がある事実を

認めたくないのか、壁を叩いた彼女のこぶしにぐっと更に力が入る音がする。

「父上の考えが分からない…っ、私の方にこんなものまで寄こしこの帝国内で

何をやれというんだ…」


「隊長」

荒んだ表情でツヒオリメの方に向いたままエルゼスを目だけで見るヒビキに

正面から向き合いながらエルゼスは言う。

「頭悪い俺が口出すのも何だけど、ここで答えが出ないのなら後で時間を

開けて考えるしかないんじゃないのか?」

無言のヒビキ。目を伏せたのはエルゼスの言った言葉を頭の中でどう返すか

考えているからだろうか。

「ここにはそいつを寄こした人はいないんだろう?意味を探すにしても今は

これが隊長に渡された上でどうするかを考えるべき、じゃないのか?」

エルゼスがそう言ってしばらくお互いに無言であり続け、数分前後の時が

経っただろうか。ため息とともにヒビキが言う。

「すまない…ずい分な所を見せたな。これから任務なのに」


「で、エルゼス」と前置きをした後にヒビキはエルゼスの方に向き直り言う。

「私に、何か、言う事は、ないか?」

ジト目で見上げてくるヒビキに1も2も無くエルゼスは上半身を折った。


「謝る事しか出来ない…です。埋め合わせができるなら聞きたいですが」

「なら、まずエッチェンバルグ中佐殿に謝ってくる事」

「はい」

「それと、今回の調査でしっかりと気付いた点を報告する事」

「はい」

「最後は―セルアから何かしらお願いごとを聞く事」

「はい」

それはお互いの間にできた決まりごとのようなものだった。その場にもし赤の

他人がいたら長い間付き合ってできた関係の1つのように見えるだろう。

妹とも見えるヒビキが年の近い兄貴分と見えるヤンチャ者のエルゼスに向けて

お願いをしているような光景。ただ、こんな行為が半年程の短い学園生活で

出来た3人の家族に近い決まりごとだった。


ヒビキは年長ながらこの帝国内では幼なじみ以外の人とは疎遠だった。

エルゼスはこの帝国の掟で忌子として孤独だった。

セルアは生まれつき体が弱く、で幼なじみ以外に友人と呼べる人が―例外も

あれど―出来なかった。


ある意味3人で姉弟などのような仲になったのはそれぞれの心が行きついた

結果だった。


「それで全部だ…顔上げてくれ」

エルゼスが折っていた上半身を元に戻すと


すっ


エルゼスの頬に冷たい何かがそえられた。ヒビキの手だった。予想よりも

小さかった。エルゼスは思ってしまう。否、思い知らされた。今目の前で

語りかけてくる彼女はエルゼス自身とは1つほどしか歳を上回っていない。


「1つだけ打ち明けるなら…私は君を頼りたかったのと―嬉しいんだ。君が

軍部に来てくれて。軍部では私は特別扱いとなっている異国から寄こされた

お嬢さんだから、な。気心の知れた人もいるが、少ない」

「!」

察したようにエルゼスの視線がヒビキ目を見る。寂しさを黒い瞳がエルゼスを

見返していた。

「同級生達は軍部に身を置くのは考えたくなかったようなんだ。軍部へ行く

私は…同学年では異国生れの事もあるのか、はたまた比べられたくないのか

同じ進路の学友はまずいなかったんだよ」


孤高。機龍軍高ティスフィーブルで選び出された歴代の生徒会長でも他者の

能力的ついずいをそうは許さなかった1人。そうであるが故に他人からは

大なり小なり実力や立場の面で壁を作らざるを得ない立場。エルゼスの口から

自然と次のような言葉が出た。


「…1人にさせねぇ」

「え?」

「何があっても、この先何が起きても…もう―あなたを1人にはさせねぇ」

「え、そ、そそそれは―」

「これから先、何があっても俺は隊長の部下だから。あなたが許す限りは」

「…」

妙に赤くなった顔から一転、口をあんぐりと開けたヒビキを見ながら。あれ、

間違えた?とエルゼスは内心思ったのもほんの一瞬、「プッ」っとヒビキは

エルゼスの目の前で息がつまるように口を閉ざした後、大笑いしだした。

今度はエルゼスが口をあんぐり開ける番だった。そうして一しきり笑った後

ヒビキは目をこすりながら言う。

「君は本当に女性との付き合い方を知らないな」

「?」

全く意味が分からないという風に見るエルゼスにヒビキはまたもこみ上げる

笑いを押さえながら言った。

「とりあえず下へ行くだろう?恐らく皆が待っているぞ」

下に降りるよう促すヒビキ。エルゼスはそれを見て思い出した。

「あ、そうだ」

このままでは下に行った時に友人に笑われる。エルゼスが上げた声にヒビキも

「ん?」といぶかしげにエルゼスを見上げてくる。エルゼスは肩から下げた

学園かばんの中からある物を取り出し

「隊長、これ」

ヒビキの手に渡した。

「これは?」

ヒビキの手にあったのは人差し指が入る程の小さな輪に花のつぼみに見える

ふくらみ、ふくらみの中心から垂れた持ち場所付きの糸を組み合わせた何かの

装飾品だった。エルゼスが言う。

「小さな輪に指を入れながら反対側の糸を引いてみてくれ」

「分かった」

エルゼスが言った通りにヒビキがそれをいじると


カチッ


音を立ててそれは咲いた花の形へ開いた。

「エルゼス、これは…」

花開いたと同時に花のめしべ部分に糸が収納される。青紫の落ち着いた色を

持ち、ギミックで花びらの途中から鮮やかに咲き開くさまは作りものとは

思えない美しさを見せている。そんな、エルゼスからの贈り物を手の平で

眺めているヒビキにエルゼスは言う。

「何を渡したらいいかはさっきここに来てた学友から聞いてみたんス」

「これを…軍部での話が終わった後に?」

「がらでもない事するじゃじゃないと思いましたよ、ホント」

「いいのか、そんなこと言って?」

何か思う所があるのか軽く片目をつむり、ほほ笑みながらヒビキは言う。

エルゼスはそんなヒビキを見て年相応の少女らしさをまたも感じた。

「一生大切にしてしまうぞ?君からの贈り物だなんてこの先私やセルアでも

そうないだろうからな」



エルゼスとヒビキがツヒオリメがあった出撃射出所から下りてくるとすぐに

にらみ上げてくる視線を感じた。視線と言うよりも視線の持ち主が腕を組み、

大またを開いた少女らしからぬ姿勢が目に入った。

「セルア」

エルゼスは戸惑いを隠さず同い年の少女の名前を呼ぶ。今彼女がしている

表情をエルゼスが向けられたのは1度も記憶に無かった。エルゼスは1度だけ

セルアから視線を外し辺りを見渡す。ベルクは操縦席のイスと共に回りながら

我関せずという様子だった。フレミルは目を細めてこちらを見上げている。

ニヤニヤとしている目はエルゼスに「あ、これやばいわ」と思うのに時間を

取らせなかった。ただ彼女の目には少しかげりがあるのをエルゼスは見つける。


(やばいか…?最悪絶交してでもセルアとこいつの安否は保証した方が…)

仮にもエルゼスが知る数少ない友人として彼女にいらない迷惑や気遣いを

かけたくない。そう思い次に見たのはネーペルリアなのだが。ネーペルリアも

セルアから距離を置き一緒にいるレイアに隠れるようにセルアとエルゼスを

見比べている。そしてそのレイアは普段通りに頬へ手を当てているのだが

「何をやっているんですか?」といつになく呆れた表情が物語っていた。

「ゼス君」

降りて来た少年の名前をセルアが呼ぶ。エルゼスはセルアの目の前まで足早に

向かうよう階段を駆け降りた。


昨日最後に起きた事は、けんか別れのようなものだった。たとえその人物が

エルゼスの前に立ちふさがり暴力を受けた結果であっても、その人物である

アスカレナに対しエルゼスがこぶしを振るったのは事実で。セルアがそれを

気に入らなかったのは、エルゼスが好きという事実とは別の問題だった。


(何て言ってきやがるかね…)

エルゼスは内心でそう思った自分に苦笑する。初めて会った時にセルアに対し

思った事をまたしても考える事になるとは思わなかった。そしてそんな

セルアが言ってきた言葉はたった一言だけだった。

「謝って」

「ああ」

セルアが身を横にして促がした先にいたのは、何故か困ったように立っている

アスカレナだった。エルゼスは最近多いなと思いながら腰を折る。他の

誰でもない、アスカレナに向けて。

「すみませんでした」


「謝るだけでは済まない事は、昨日隊長が口早に言ったそうだが…」

「言い訳も何も無いんで、何かしら受ける事は…俺自身でやった事なんで

何を言われてもおかしくないとは」

「そこは私であったのと…もう1つは他の誰でもない―ドールモート閣下に

感謝するべきだな。何も包み隠さず言うなら、あの日君がした行為は軍を

脱退して貰うしかないと判断するしかなかった。そうならなかったのは、

君が暴力をふるった対象が私であった事。そしてヴォーゲ卿への件を閣下が

関知しないよう言い渡した事だ。そしてそう言ったあれやこれやが昨晩の

会議で出た君へ通達する厳罰の結果だが…」

そこで一度前置きをし、懐の小さなかばんから取り出した書類の内容だろう

それをアスカレナは読みあげる。

「隊全体の連帯責任として、今回の調査結果を厳しく評価するという運びと

なった。最低初期値はマイナス点数からで、格点数評価にも減点処理される。

詳細は後で渡す調査所に記載されているからな。そして、今回行う調査の

評価で規定点を下回った場合―調査した特務隊を解体し貴官クォーレ少尉と

テルラスク伍長、両名を軍より除名扱いとする」

「つまりそれは…」

エルゼスが言うより前に、アスカレナはエルゼスの上半身を起こし、そのまま

片方の肩をぽんと叩く。エルゼスはここで初めて彼女が自分より大きい事を

知った。ちなみに揺れた体の部位はセルアよりは小さいようだったが。

「今回の調査はしっかりと結果を出して貰わなければいけなくなったからな。

しかと見せて貰うぞ」

「…はい」

いつかと同じように真剣な表情でエルゼスはアスカレナに返事をした。

「じゃ、他のもう1つは女の子を待たせない事だな。少年」


半ば茶化すような口調でしめくくり、アスカレナは叩いた手を使いエルゼスの

体をセルアの方へ向かせた。セルアは気落ちした不安そうな表情でエルゼスの

澄んだ目を見上げてくる。

(いつになくお嬢様らしいな)

セルアでも泣きそうな言い分をエルゼスが思っているとセルアの方が先に口を

開いた。

「ゼス君…」

「ええとな…悪い、セルア」

結局エルゼスはセルアに謝る事しかできなかった。しかしセルアは首を横に

振る。

「あたしね、ゼス君とならどこへでもいいんだよ?」

「だからって、セルアまでこうして巻き込んでしまったのは事実だ。…本当に

悪い」


尚も悔やみ目を伏せるエルゼスをセルアは

「ゼス君」

名前を呼びながらそっとエルゼスの手をセルアの手が包む。

「あたしはあたしの選択でここに来てるの。ゼス君がそれであたしに迷惑を

かけたというのならこれからはあたしが止める。必ずあたしがゼス君を止めに

入るから」

「…セルア」

エルゼスがおどろき見たセルアの顔は正面からエルゼスを見た笑顔だった。

「ゼス君がどうしても止まらないならグーでなぐってでも止めるよ。そうした

上で…ゼス君があたしと一緒が良いって、そういうなら。暴力する相手は

選んでほしいな。あたしの事を思ってくれるなら」


「ふむ、学友として結婚式ならいつでもあげられる準備をしておくべきか」

フレミルが2人の世界へ入ったセルアとエルゼスを見て爆弾を投下した。

「けケKEけこ、ケコ、けっこん!?」「いきなり何言ってやがる?」

「何、まあ少し思いの大きさに差異がある気がするが」

そう言いながらフレミルは端末をひざに乗せつつエルゼスを見上げながら

こう言う。

「さしもの学園最強と噂された君でも今回はたじたじと言う所かい?」

「何がだよ?」

「聞いてるよ。ずい分な大立ち回りを軍部の中でしたそうじゃないか」

誰に聞いたのかは聞くだけ無駄とエルゼスは考えた。軍備工築区と学園を

行き来できる権利をフレミルは持っている。

「元より目的はそいつだけだったんだがね」

エルゼスはあえて誰かを隠して言った。

「君も人の子だということか。いきなり上層部にかみつくとはね。これは

例の忠告をする人を間違えたかな、ボクは?」

「かん違いしてそうだから言うが、まだ終わりじゃねぇ。終わらせるつもりも

ないし、アイツがこのまま何かしてこない保証も無いしな」

「君もたくましい生き方してるなあ…まあ、今回の事は仕方ないとして…せめて

彼女の事は頼むよ?」

「ああ、…謝るのはお前の方だったかな?」

「分かってるならいいさ」とフレミルが言った時に彼女のひざに置かれた

端末が「ポーン」と言う音を立てる。


「と、…終わったね。出発ギリギリまでテストをすることになって本当に

申し訳ないベルク軍曹。この子の現状データはあらかたとれましたよ」

フレミルはベルクの方へ話しかける。どうやらベルクはエルゼス達がいる

この機龍の直前テストで手いっぱいだった為話しかけられないようでも

あった。

「いやー、こちらこそすみませんね。たまごっち!こんな私でも風邪ひく日は

どうやらあったようだ、ZE!!」


「その呼び名、次会う時は何とか別のになりませんか?」

「思いついたら貫くのがあちしジャスティス!」

「はあ、これは運が悪かったと思うしかないかな」

彼女はエルゼスが来た時から座っていただろう席を立つ。


「行くのか」

「ああ、実り良い旅を」

そういい端末で何かしら操作する。すると、数レープ先にある扉がプシュー…と

音を立て開いた。

「あ、そうそう―」

空いた扉の前でフレミルはセルアの方を見、こう言った。

「セルア、帰ってきたらエルゼスとのいちゃつき話を期待しようか?」

「だからあ!?」「クスプ、お前さっきから一体全体何を言ってんだよ?」

友人と呼べる2色髪の少年が本心から言ったろう言葉に半ば呆れながら一方の

学園でできた親友の赤面に満足したのか

「まあ帰りも元気な顔を見せてよ。2人ともね」

その言葉を最後にフレミルは央都へ向かって行った。


フレミルが機龍を出て言った後。ベルクは改めてセルア、ヒビキ、エルゼス、

レイア、ネーペルリア、アスカレナという順に見回しながら口を開く。

「そろそろ調査に向けてヴァルガナウフを出るよ。機龍の操縦は私に任せて。

行く先は指定がなければ北北東から東へ向けて時計回りに拠点を移しながら

調査を開始するつもり。異論は?」

「「ないです」」「了解っす」「(こくり)」「分かりました~」

「それでは出発しますので席に付いて下さいね」と言いながらコンソールの

方へ、ベルクはイスを回し向き直る。

エルゼスも適当な席に座る。すると、となりの方で「ウウウウム…」と半ば

うめきながらすごく悩ましげに顔をゆがませ考えているアスカレナがいた。

エルゼスは思う所があるので話しかけることにした。

「すみません」

アスカレナはエルゼスの方を意外な表情で向く。

「―?どうした?」

「後で相談したい事があります。恥と知って聞きたい事が」

アスカレナはしばし考えた後言った。

「…分かった、聞こう。その代わりこちらの相談にも、のってもらいたい」

2人してうなずいた。



「行ったみたいね…」

自分の部下が地走りの機龍ファーニフアルは門砦の上から見送った。背中を

門砦の端に預けながら外を眺める仕草は美形なので様になっているが、彼の

内面を知っている者からしたらナイーブになって一体どうした?と言う考えが

まず浮かぶ。しかし、そんな彼の近くにいたのはベゼグだけだった。

「准将がまた手ひどくやられたそうじゃの」

「ホント、あのボウズ君大丈夫かしら?本音言うならお兄さんも心配には

なってきてたり」

「上層部では、アスカレナの次かの?あのコゾウ…違うな、姫隊長殿達を

気にかけておったのは」

「あー、まあね。色々この国内でやるのにちょうどいいのよ」

そう苦笑しながら話す男に対し、老将―ベゼグは探りを入れる目で目の前に

いる最近軍部へ来るなり高い地位と信頼を得た男を見る。この男は生まれから

おかしかった。帝国央都ヴァルガナウフの西に広がるジュウリンの村落から

来たと言うが、その話は定かではない―そんなこんなを考えているベゼグに

ファーニフアルはいつも通りで

「ねえ、ベゼグのダンナ、少しいいお話があるんだけど―?」

そうファーニフアルが切り出したその時


ガタン


2人がいる門砦の端から魔導滑車―レールベルーグが止まる音がする。そして

止まった魔導滑車から文字通り転げるように出て来たのは

「ほ、ホウコクニマイリマシタ…」

「すっごい、タイミングで来るのね。ちょっちオレでもイラッ☆ときたわ」

「す、すすすすみません…」

ニアテオだった。ファーニフアルの笑顔には左上に赤く怒りを表すマークが

浮かんでいる。が、すぐに頭をかきながらこう言った。

「いやぁ、オレっちの方も色々立てこんでてね。一応聞くけどネズミの

足取りは?」

謝りながらファーニフアルは話題を変えた。ニアテオは内心で安どしつつ

それでも、報告書類を2人へ配りながらけん命に報告する。

「は、はい。南に潜伏しつつ集結しているとの話です。【例のもの】が

完成すれば」

「それって【手筈通り】、なわけね?」

「一網打尽の好機を作れると思います。中継地点の経営補給準備まで含め

進ちょくはぬかりありません…」

「うん、お疲れ。よくできたね、スミス少佐のボウズ君」

今度こそ屈伸した姿勢で地面に息を吐き出しながらニアテオはため息を

付いたのだった。



ボオオオオオオオオォォオオオオォオォオォオォオォオオオオ…

ミォーン…ミォーン


「それでさ、ゼス君」

なでなですりすりナデナデスリスリ

「どうしたんだ?セルア」

なでなですりすりナデナデスリスリ

「えっとさ…ゼス君がその子にやってるそれ…」

「これか?」「これ…?」

なでなですりすりナデナデスリスリなでなですりすりナデナデスリスリ

「いつまでやってるの?」

エルゼスのひざを枕にするネーペルリアとそんなネーペルリアをいつも通りに

なで回すエルゼス。その行為はそのままに「ずっと?」とネーペルリアが言い

「だよなあ。誰か止めない限りは」とエルゼスが言った。誰にも止められない


完璧な通じあい。しかし、それに挑むかのようにセルアはそーっと手を

ネーペルリアの頭に向ける。しかしてネーペルリアは鋭く反応しエルゼスを

盾にするのだった。エルゼスはそんなネーペルリアとセルアの間にわって入る

姿勢でセルアを見返す。

「ねえ、何であたしじゃダメなの!?かわいいよ!もふりたいよ!」

「ペルリアが嫌がってる。やめろ」

「…ウキュルルルル…」

しかし、セルアはなおも食い下がる。本当にかわいもの、綺麗なものには

目の無い女の子だった。

「じゃああたしも!」

「だから俺がさせねーと」

「…では私が~」

「は?」「え?」

レイアが会話に入ってきた。そして、何故か会話がより混沌としてくる。

「緑のお嬢様をなでるのはどうでしょう~」

「何でそうなるの!?」「…」

「ゼス君何とか言って?」

「…ちぇっ」

「うわゼス君の口から久しぶりに子供っぽい言葉がもれた!?」

「最近2色髪さんにリアちゃん取られちゃってるのですわ~…ぐすん」

「ゼス君、その子をそのお姉さんによこして!代わりにゼス君をあたしに

もふらせて!」

「何気にお前良い思考回路してるよなあ」

そんなやいのやいのな会話を2人の生真面目な女性達が遠い目で見守る。

「特務隊長殿」

「中佐」

「「どうしたものか…」」


ちなみにどちらも風が吹けば屑となり飛んでいきそうなほど灰色だった。

ベルクは後ろを振り向きたい衝動に凄く駆られながらも運転を続け―


ガンッ


「うん?」

急にベルクが機龍を停止させる。何かが引っ掛かったようだった。

エルゼスがたずねる。

「ベルの姐さん?」

「あー、うん。ちょっと待ってね。なんだろ?何でこんな林の一本道に

丸太が―」

そこまでベルクが言い誰もがだまった。

「うん、これは…」

ベルクは後ろのエルゼス達の方へ半分だけ向き直る。右手はコンソールの

索敵ツールで周囲の生体反応などを探っているようだった。エルゼスは

名前を呼ぶ。

「…ペルリア、隊長…」

「…(コクリとうなずきながらクマのぬいぐるみの腹に手をかける」

「ん?私はいいのかい?エル君や?」

「姐さんは監視人の方だし。セルアは万が一って事で待機な」

「それもそっか。じゃあ、状況を説明するねー…囲まれちまってらい☆」

テヘといいながらペロリと舌を出したベルクをみた後にエルゼスは思わず

アスカレナを見る。アスカレナはエルゼスに向かって重々しくうなずく。

エルゼスは容赦なくベルク一本毛を引き抜かんばかりに引っ張り上げた。


―act5に続く―


次回も一応1週間以内を目標とします。まずはこの負の連鎖から何とかせねば!がんばります

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