act4(中編:任務「早すぎる任命・来る海翼」
そしてこの遅さとなりました。(土下座
もしかするとこのペースが定着しかねない今日この頃です(汗
楽しみにして頂いてる方々には本当に申し訳ありませんが、よければ
少しでも楽しい読書の時間になればと精進したいです。
今話は間違いなく嫌悪をもつ描写があります。そう言ったものに
気持ち悪くなったりする人もページを閉じるのをすすめさせて頂きます。
カリカリという無機質な音と共に部下と上司の話が進む。
「成程、大佐殿とそう言った話があったわけか…そろそろ頼むぞ」
「分かりやした…すみません、あの場では俺とセルアじゃどうする事も…」
「私は君をとやかく言うつもりはないよ。私でも大佐は手に余るだろうし。
…どうだ?」
「―…数字に誤りは見当たらない。確認完了に、と。…セルア、もうあと
10部終われば休憩だ。がんばれ」
「うー…ううううー…次はこれで次はこの計算で…うー…」
ヒビキとエルゼスの会話に全く口を入れないセルアが目を通して計算している
書類は軍部の戦況報告書、その1部だった。ファーニフアルに渡されたものも
その中に含まれている。
帝国が今交戦している対象は数年前に壊滅させた「アナファルジャ」の
残党であり、しかしてその被害は常に央都の軍部本部で統括計算しなければ
余裕がない程抵抗にあっていた。軍上層部の将が1人でも出れば戦局は
1部好転につながるが、どうにも彼らはしぶとくどのような帝国の拠点からも
現れるため、まだ殲滅しきるのに手間取っている現状だった。軍部の人間は
この内容をしかとまとめ国の調停部に連絡する義務がある。ただでさえ、
数限りある紙を使っての記録するという仕事はいくら特殊隊員―ましてや
創立したばかりの―でも免れないものだった。少なくともエルゼス達も軍に
入る前提で教育は機龍軍高ティスフィーブルで習ってきている。この仕事は
避けられない義務だった。
そんな3人が―1人最早地獄の苦行とばかりに―書類とのにらみ合いをする中
その1室のドアがノックされる。ヒビキは「入ってくれ」と書類を見ながら
言うしかなかった。エルゼスは書類へ顔を向けながらも横目でドアを開けて
入ってくる人物を見る。視界に飛び込んできたのは特徴的な一本毛だった。
「やっほ、見に来たよ」
「どうも」
軽い調子で右手を上げたベルにエルゼスは複雑な思いで生返事を返す。
ファーニフアルが作った貸しについては一応エルゼスとセルアの2人だけでは
決められないという事で保留にした。しかし、間違いなくヒビキはあの男の
要求をのむとエルゼスは考えている。何故なら
(軍部での戦況報告や現場調査の資料などに、気になる点があったらどんな
ささいな事でも構わないから連絡してくれない?…そんなこと言われても
検討とかつくか…?こんな数字ばかりの紙っぺらで)
計算と項目などは見れば分かるが、それがどう言った具体的な意味を持つのか
エルゼスは今の所見当もつかなかった。ただ、それだけであの男が言った
事を完全に無駄と切って捨てるものではないともエルゼスは考えている。そう
考えながらも、エルゼスは作業をしながら、横目でヒビキを見る。
静かにセルアから受け取った書類に赤鉛筆で訂正個所を入れるべく美しい手を
大型けん盤楽器でも引くかのように動かしているヒビキは、エルゼス達に対し
すでにアカナチの王の親族である事を打ち明けた。2月ほど後には親がいる
母国―アカナチに1度顔出しに行かなければならない手前、いずれ話そうとは
思っていたようだった。そんな彼女ならこう言った政治―まつりごとに対する
専門的な見方もあるのでは?とエルゼスは考えているのだが。それを得体が
知れないあの男に教えるのも…という所でエルゼスの思考は別に向かう。
他にも気にかける事は山とあった。
レイアとネーペルリアである。あの2人がどうやってエルゼス達の隊に何か
仕掛け―もとい、どう手を組もうと接触してくるか。レイアの目的が未だに
見えない以上変な事にヒビキやセルアを利用されるのでは?特にセルアは
今でさえ彼女自身の中にある妙な力を持っている。それを下手したらあの女は
恐らく知っている可能性は高い。そして、『あれ』を利用される話になったら
1秒でも早くエルゼスは勝ち目無くともレイアをつぶしにかからなければ。
たとえネーペルリアと衝突する事になっても。大切なものを選ぶという事が
エルゼスに与えられた選択肢ではない―と、そこまで考えていたエルゼスは
書類とのにらみ合いから顔を上げて机の前に来たベルを見上げる。
「何ですかい?」
「あー、エル君や。余り私の方から言えた事はないけど大佐の事は多分きっと
心配ないよ」
「信じられねーっす」
「あー頼むからその状態でもいいから話聞いてほしいけど、大佐は関係…
というか人脈を作っておきたかっただけ、だと思うんだよ。だから…」
「…」
エルゼスは無言で少し手を止め、目だけ動かしベルクを見上げる。彼女は少し
困ったような表情で口調にもいつもみたいな明るさはなかった。自己主張の
激しい一本毛も気持ち枯れ草のようにしなびている。間違いなくベルクは
彼女自身がいる隊の隊長、上司のかばい立ては初めてなのだろう。
(他人任せにするなよ…)
内心でエルゼスはファーニフアルにそう文句をこぼしながら「今はそれは
置いとくとして、だ」とエルゼスは話を切り上げるよう話題を変える。
「姐さん…エクスドは?」
「大人しく待ってるようにお願いしといたよ。どこにいるかはこの後にでも
分かるから今は秘密!ご学友のオニャーノコもそこにいるよーん」
(あ、やべ)
自分の機龍に話題を変えたのは正解だったが、ベルクから返された言葉を
聞いたエルゼスは思い出すものがあった。友人である彼女を連れてほんの
少しだけ買い物をした商品。それをセルアとヒビキの2人に渡し損ねている
内に魔物の央都突撃やらファーニフアルとの話し合いやらと様々な事件が
あった。おかげで友人であるフレミルにも別れのあいさつがそこそこなのを
エルゼスは憶えている。しかしエルゼスはその考えを切り捨てた。今は目前の
仕事に集中し、終えた後ならそれを渡す機会があるだろうと楽観するしか
できないないからだった。そんな中、確認する書類もヒビキやセルアの机を
確認しすると無くなっている。どうやら最後のようだった。
「はああああああああああああああああああああああああああああああ…もう
数字ばっかで目が回ったよぉお…」
「回ってんじゃねーか」「回ってるな、どう見ても」
机に突っ伏したセルアの顔を見るなり言ったエルゼスとヒビキは2人して
ほぼ同時に「お疲れ様」という。
「ぶー…計算機って何でこんなめんどくさい機能あるの?」
「セルア…これは仕事だ。こう言う事も必要になってくる世の中なんだ」
「分かってはいるよ~。けどさー…」
なおもふてくされるセルアにヒビキの周囲の空気が変わる。正に空気が凍ると
錯覚しかける光景に「先ぱ…隊長?」とエルゼスが言いながら少し後ずさる。
ヒビキもトラの尾を踏んだように青ざめていた。
「セルア」
「ひゃい!」
「他でもない君自身が望んで足を踏み入れた現実に文句を言えるのか?」
「え、ええええええとヒビキちゃん?目が凄く無機質みたいになってるよ?
怒ってるのは分かるけど」
「誰ガ 口答エシテイイト 言ッタカナ?」
「ははははいいいいい!」
(……こえぇ…)
エルゼスでさえヒビキが持つ、真面目の限界を突破した冷徹な何かと言える
雰囲気に恐れをなした。ただ、その目と雰囲気をすぐに閉ざしたヒビキは
こう言う。
「それにだ、セルア」
「まだ何かあるのヒビキちゃん!?」
本格的に泣き出しそうなセルアにあえてそうしたのだろう、厳しい表情を
向けたヒビキは言った。
「君はその程度の事で、君自身が決めた事を捨てるのか」
「!…」
その言い分にセルアの白黒した目がぴたりと止まり無表情になる。その後、
セルアは穏やかに彼女自身の親友を見た後こう言った。
「ごめん、ありがとう。ヒビキちゃん」
「令には及ばないさ…さて、ベルク軍曹」
セルアのとの会話を打ち切り、ベルクの方へ向き直ったヒビキは彼女にどこへ
向かうか案内を頼む。
「あいあーい」
4人は業務室を出、指令官室へと足を運んだ。
*
ノックの後「特務小隊、参りました」とヒビキが言い指令官室へ入る。
「どうぞ。昨日はお手柄だったそうですね、タカナシ特務隊長殿」
エルゼス達をを出迎えたのは大きい机の上で手を組んだニアテルスだった。
(へえ…)
しばらくは病室送りかと思っていたエルゼスは本心から笑みを形作る。次に
あった時、エルゼスはニアテルスにやる事を既に考えていた。しかし、会う
機会がこうも早く訪れるとは予想外だった。思いがけない幸運にエルゼスは
口がにやけるのを隠せなかった。それを冷徹な片目で見ながらニアテルスは
ヒビキへ向けてこう言う。
「余り公言はできないが、確かにあなたはいい部下や人間関係に恵まれたと
私も思う。これからも頼りにさせて頂きたい。そして…今回もね」
「運が良かっただけでしょう。それよりも今回の件は?」
「『昨日起きた事』について、上層部は『いつも通りにしつつも、調査の手を
入れておきたいと考えている』。君達にそれを一任したいと我々は判断した」
「…なるほど」
これは断れない様子だった。
「央都の外へ出る準備は今日中にはできるよう手配してある。3…いえ、君達
特務小隊と指導役であるイタガキ軍曹の準備を明日までに整えてほしい。
して、君達のその調査には更に人員が配備される事となったのだが…」
「私だ」
背後からした声にエルゼスは一べつだけし、ニアテルスの方を向く。3人の
背後を取っていたのは
「…っ!」
アスカレナだった。セルアが息をのむ。2人の間に何があるのか、エルゼスは
知らない。聞いた所で何、と言う事も無いがふと思い出す事があった。
(セルアはまさかあの中佐って女性に…)
何か言われたから父親を怨むようになったのでは?少なくとも時折セルアと
話していたアスカレナはセルアの家族について何か知っているのでは?と
エルゼスは考えている矢先、隣にいるベルクが声を張り上げた。
「そしてあちしも、という事ですのよっ!」
「「ああうん、知ってた」」
「…(生温かい目で見ている」
「…(細めた片目を壁の方へ視線をそらす」
「何か歓迎されていないようでございます!?」
「それはともかくとして、だ。私達以外にも君達小隊に付き従う人員が私の
後ろに2人いる」
ベルクの行動をいつものことだとでも言うかのようにスルーしたアスカレナは
その2人へ入ってくるよう、うながした。入ってきたのは4人の知っている
―1人は見た―人物だった。
「紹介にあずかりましたレイアです~宜しくお願いしますね~」
「…(ぺこり)」
無言でネーペルリアは会釈した後、ベルクの方をじっと見る。正確には彼女の
頭から生えた自己主張がはげしい1本の毛を見つめていた。
「あらあら~、リアちゃん?あれが欲しいのかしら~?」
「…殺してでも…うばいとる…」
「あちしの命がピンチでマッハッ!!?!!?!?」
「冗談…だよ?」
「かわいいは正義ですかぁー!?首傾げりゃいいと思ってんですかぁー!?」
「…(ギュッ」
ネーペルリアはエルゼスに顔を一瞬だけ向けた後、レアの後ろに隠れて
ジト目でベルクを見上げ始めた。
「お、おうふ…そう隠れられるとガラスのハートが傷つく、ZE…」
どうやらネーペルリアの中でベルクは敵と認識されたようだった。内心で
エルゼスはため息をつく。2人ともエルゼスから離れたくない者同士、
これからどうしても付き合わなきゃいけない時があるだろう。
「何か幼げなしばい事をしている中すまないが、君たちで調べて貰う範囲は
知っての通りこの軍備工築区の門砦がある方面だ。昨日の晩、起きたとされる
魔物どもの大規模襲撃。起きた経緯自体の信ぴょう性も君達の調査結果次第で
上の判断が変わるかもしれない」
ニアテルスはイスを90度回し背後にある窓へ目を向ける。エルゼス達から
片目だけの顔が完全に隠れた
「諸君らからの吉報に期待しよう」
口に笑みを浮かべ、そう締めくくろうとした。
*
それを許すエルゼスでは無かった。
「なに終わった気でいやがる」
呟くや否やエルゼスは文字通りニアテルスに向けて飛びかかる。そして勢いに
任せるまま、ニアテルスの顔をわしづかみにした。「なっ」と片目を見開き
おどろくニアテルスをそのまま彼の前にある机へと叩きつける。
メキィイイ!
声も無く気絶したニアテルスを確認するなり持つ場所を足首へと変更した
エルゼスは部屋を出ようとし―アスカレナがそこに立ちはだかる。
「通すと思うか」
「通さなきゃ容赦しねーだけです」
「いい加減に―」
アスカレナが言い切る前にエルゼスは魔力で強化した肉体で彼女に肉薄し
ボガァ!!
加減をあまりしない速さで握りこぶしを彼女のあごに向けて振り上げた。当然
アスカレナはエルゼスのこぶしをかわせず受け、どうという音を立てながら
中央指令室のテーブル前まで吹っ飛ぶ。それを確認したエルゼスは
ニアテルスの髪も鷲づかみしたまま。
「え、エルゼス!待つんだ!?」「ゼス君!」
「お、おいぃ!?エル君や!?」「あらあら~?」
4人が声を上げ最後に静止の意を示した2人に「わり、便所へ早い内に
行ってくるわ」と【尤もらしい言い訳をし】、エルゼスは【言った通りに
軍部の手洗い室へニアテルスを引きずっていく。便器利用の個室は1つだけ
あいていた。そこへ間髪いれずに入る。目に入った屋内用はき物と同じ形を
した便器へニアテルスの頭を投げ入れたエルゼスは水を出す仕組みである
それに手を触れる。
ゾボォオオオオオオオオオオオッ!!!
勢いよく水が便器のUの時から溢れだしニアテルスの顔を便器の奥へ運ぶ。
当然ながら
ガン!!
その頭は便器の奥の壁にぶつかった。
「ガハッ!?ガボボボボボボボボボボ」
ニアテルスの意識が頭へはしった衝撃で回復する―なり、おぼれかけ
頭を水から逃れようと頭を上へ持ち上げる。幸い、水の奔流からはそれで
逃れられた。が
ガン
再び後頭部に衝撃。痛みで伏せたので再度流れる水の奔流に落ち思考が
止まりかける。が、両手が反射的に便所の床へ手の平を付けた。何の考えも
無しに上半身を引き上げる。便器から上がったニアテルスの頭を見ながら
エルゼスはこう呟いた。
「これ以上は水出人口魔石の方に迷惑か」
エルゼスは魔石から手を離し―あろう事か魔石と同じ高さまで持ちあがった
ニアテルスの後頭部を蹴り飛ばす。
ボキャァ
鼻の骨が折れる音がした。魔石の方は強度があったらしく砕けてはいない。
内心エルゼスは器物損壊とかの罪に問われる事が無い様で安心しかけ―
今更何をとかぶりを振りながらこう言う。
「はん、いい様だな」
「貴様殺す気か!!!」
4つんばいの状態で目もまだ見えない状態なのだろう便所の床を見ながら
しかし、近くにいるだろうエルゼスに対しニアテルスは声を荒げて言う。
殺意さえ乗ったその言葉に、あっけらかんとエルゼスは返事を返した。
「その程度じゃ死なねーだろう?あとクソやら何やら入ってなかっただけ
ありがてーと思いな」
言葉を失ったニアテルスに「もしもだが―」とエルゼスは
言った。
「死んだら商業区の真ん中でバラバラショーの晒しにしたぜ」
それを言ったっきりふり返りもせずエルゼスは手を洗って便所を出た。
2階の階段近くで仁王立ちしていたヒビキは先程セルアに向けた冷たい
雰囲気でエルゼスを縮こまらせた上、雷を落とした。
「いくら何でもやり過ぎだ一体何をやったか分かっているか?うん?ケンカを
うっただと?ふざけるなエルゼス君がやったのは間違いなくこの国を実質
支配する階級への反逆だエッチェンバルグ中佐にこぶしをあてた時点で君の
目的範囲外だというのを認識もしなかったろう君が余りにも常軌を逸した
行動をしたら私でもかばいきれなくなる事を少し覚えてくれそうじゃないと
こっちも身が持たない正直我が家の家宝で君のアキレスを切ってでも
止めようかと思ったぞ今回は聞いているか聞いているのか!?」
そこまではエルゼスも予想の通りだった、が。ここでエルゼスが内心で
しまったと思ったのは、セルアにも小さく「バカ」と言われた事だった。
*
一昨日の夜に魔物に囲まれかけていた軍備工築区側の門砦。そこに規定された
時間10分前に来たエルゼスをむかえたのはまるで「山を小さくしたような
機械仕掛けのトカゲ」だった。
「これは…」
「軍量産機龍―試験機【進軍要塞・砲撃型】…あちしのだけ力だ。あちしこと
ベルク・イタガキのなぁ!」
と胸を張ったベルクはせきばらいをした後「今の所はね」とエルゼスに向けて
ウィンクを投げた。
「食料運搬、拠点確保、要塞化による防衛、砲撃による自衛。戦闘力こそ
機龍の中では一番無いけど、戦いにおいて他の機龍の足りない部分を補うため
作られたのがこの子なんだって」
そこまで言った後ベルは肩に下げた鞄から水筒を取り出し1口だけ口に含むと
エルゼスに向けて手をさしだしてくる。もう片方には水筒では無く、央都で
彼女の所属などを示す身分証明カードが握られていた。
「エクスド君も中で待ってるよ!ほら、いこう?」
中に入ると車と言うには非常に広い空間だった。席は金属で固定されているが
座り場所は木と羽毛で作られ、操縦席の前にはコンソールやマップがある。
突起物の中に入っているだろう機龍などの3D画像や細かいデータなども
液晶画面に映し出されており、エルゼスが興奮に声を上ずらせてベルクへ
話しかける。
「ベルの姐さん、こいつは…!」
「この前魔力の検査でこの子を動かすのに必要な魔力基準を、上層部除外で
私が満たしちゃったんだってさ。ここ最近に何があったのかと問われる
有望株、なんて言われてもね。それで折角だからと大佐がベゼグ少将達に
取り合い、これを私に試験運用の名目で使わせてくれるって。エル君や
お姫様、ルアちゃん達の行軍に行かせて貰えると聞いた日には私も少し
感激しちゃった」
そうはにかんだベルクを素直にエルゼスはかわいいと思ったが。横やりが
この機龍を動かすだろうコンソールの方から聞こえて来た。
「や、少し遅かったじゃないか?そして今度は別の女性かい?」
フレミルだった。軽口をエルゼス達に投げかけてきているがその表情は
少し沈んでいる。
「…何があったんだよ?クスプ」
「…上に行けば分かるさ。彼女はあそこから離れないようでね…」
彼女が何かと聞く前にエルゼスはフレミルが下りて来た階段を駆け上がる。
階段を駆け上りエルゼスの目に飛び込んで来たのは機龍の出撃空洞と―
美しい曲線と背部に付いた2個の貝から生えたえらのような翼、そして尾と
呼べる部位のあたりに搭載した垂直上昇加速装置に青を基本色としたその
機械でできた海龍とも呼べるワイヴァーンをヒビキは正に親のかたきでも
にらむ様に見上げていた。彼女の口から黒い感情を乗せた声がこぼれる。
「父上…」
エルゼスは機龍らしきものとヒビキをしばし見ている事しかできなかった。
―act4(後編)に続く―




