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act3:偶然「逃亡、のち出会いケース1」

今回は完全に主人公を見下ろした視点になると言ったな、あれは嘘だ

とにもかくにも今回もいい読書の時間を!

レンガではない鋼鉄で築かれた要塞のそれに近い城門。短い人生の中で

見た事のない巨大な建築物に、エルゼスはまるで巨大な鉄仮面が目の前に

置かれているような錯覚を覚えた。エルゼスの隣ではチェトフが門外で

何やら警備していた兵と話をしており、都内へ行くにはまだ時間が

かかりそうだった。そこでエルゼスは振り返り門の外側、ベルーグを

搭載した車両で登ってきた丘を見渡す。央都―ヴァルガナウフの外側。


所々で可愛いイタチのようなのが長足で草原を走り抜いて行ったり、

カンガルーの袋を持った二足歩行の巨大なネズミが木の実を食べては見回し

食べては見回し、を繰り返した後に木によじ登ったりとのんきそうな

光景が目に映る。この辺は余程でもない限り平和な場所のようだ。だが…


整地もしていない自分の生まれ故郷。自然災害と言うべきか化け物たちの

脅威もあるだろうここまで【何事もなくこれた】事実。暴走したベルーグで

森の中を転がるように突っ切った時さえ魔獣の気配どころか匂いや足あと等

いた形跡すら無かった。それの意味する事は。


(最近何か大規模な掃討があった?)

あんな田舎まで道のりを一体何の目的があって?町の外の事どころか

忌子である自分の町の事さえ疎いエルゼスではあるが、魔物という脅威は

【身を以て】知っている。


知らずの内に首筋をなでていた。魔物から受けたものではないのだが、

その傷跡は今もしっかりと残っている。それを確認し、チェトフがこちらに

向かって手を振るのに気づいて、彼のいる所に向かう。

(まあ、気にした所で分からない事は分からないか。それよりも)

目指す先はこの帝国中央都ではない。自分には探しているものがある。

今度は自分の方から彼女を捜しに行く為に―それだけを心中で確認し、

エルゼスは門をくぐった。


見渡す限りの人と建築物の列。都を複数の砦で囲む用に作られた城壁の門も

さることながら、足の踏み場を辛うじて見つけられる程度にしかない

目の前の光景に田舎者のエルゼスは圧倒された。そんなエルゼスの心情を

察したのかチェトフがゆっくりと央都について説明してくれた。


「とりあえず、地図広げてみ。俺達が今いる場所が…ここ。右下にある

コの字になっているやつのちょうどへこんだ部分な。つまり移住・商業区の

中ってわけだ。ここは交易や住居、商売や旅の支度をする場所として

開放されている。他の区は余程のえらい特権を持つような奴やその区に

合わせた専門の配備員で無ければ入ることは許されない。しかし、この

区だけはどのようなものでもむかえるという唯一の場所だ。その分治安も

それ相応と言う事なんだがな。区を分ける門は、個別魔力のセキュリティや

専門のアンロックコードカードでないと開かない。坊主にはまだ配布を

されないだろうが、実物はこうなっておる。ほれ」


チェトフがエルゼスに向かって掲げたカードには間違いなく彼の本名と

役職、そしてバーコードと識別数字が示され、最後には

「この者による軍備工築区の利用及び作業を許可する」という一文が

入っていた。見せている間にチェトフはもう片方の手で飲み物のふたを外し

腰に下げたバッグごと持ち上げ少しだけ口にした後、説明を再開する。


「で、このカードを使って入れる区にして、右隣にあるのが軍備工築区って

場所だ。文字通り軍事を一手に引き受ける組織や工場群がある場所であり、

お前さんが将来世話になるだろう場所だ。お前さんらが扱う軍高の

―機龍:ワイバーン―もこの区で扱わせてもらっている…と、まあ俺が

教えてやれそうなのはこれで大体全部だ。最後に言うなら…」

そう言い彼の視線は遠くに映る。区の奥にある高造建築物より更に高さを

持つ土台にそびえる巨大な城門と同じ鋼色の城。それをエルゼスと見つつ

チェトフは説明を終えた。

「地図にもある通りの上空から見た構造を城が忠実に取っているって事と、

その手前にあるあのでかい建物二つ。お前さんが明後日から通うだろう

―機龍軍高:テスフィーブル―で、俺や軍のの統括である軍備総本部と庭を

壁で区別せず合同になっている…って事か。何か聞きたけりゃ学園伝いで

軍備工築区に何時でもきな。出来る限りなら世話焼いてやるからよ」


学生寮に付き、資料と受け付けの人の誘導を頼りに寮の自室で荷物を

一通り置き終えたエルゼスは時計を見る。2人部屋だがもう一方が何も

無い所を見ると相方はいないようで、時刻は18時。もうじき夜に

なりそうな時刻だった。今日は週に少なくとも5日やっている鍛錬は

難しそうだった。


(まあ、明日は休みだし明日みっちりやればいいか…)


もうすぐ夜なら人通りも少なくなってくるころだろう。エルゼスは学生服に

着替え、かばんから帽子を目深に被り、扉にカギをかけた後カギを財布の

中に入れる。そしてその財布をチェーンでつなげた学生ズボンにつなげると

寮の外を少し歩いてみることにした。寮から出れば住居と商店街やらが

組み合わさった区、この都市の情報が一早く手に入る場所だろう。



ヒビキと少女が生徒会会議室からでると、横からまるで待っていかのような

タイミングで声がかかった。

「ここにいたのかい。セルア」

横の方からひびいた声にビクッと肩をふるわせ、向いたのはヒビキの

親友である少女―たった今セルアと呼ばれた緑髪の少女だった。


セルアが向いた方にいた男性の特徴は一言で言うなら美男子だった。切れの

ある顔に穏やかさをおびた緑色の目。流れるような橙色の髪を綺麗に

肩ぐらいの高さで切りそろえ、引きしまった細い体で隙の見えない立ち姿を

している。彼がこの軍高でただの貴族特権による入学者ではない事を

立ち居振る舞いで表しているようだった。そんな男にセルアは彼の名字を

呼んだ。

「あ、イアシェ君…」

「ノレットでいいと言ったじゃないか?入学からずっと一緒で1年半、一体

何の遠慮があるんだい…?」

「何度も言うけど…イアシェ君の周りにいる女の子に嫌な思いを、あまり

させたくないから」


セルアの言う通り彼―ノレットが普通に1人でこの2人に会いに来たなら

少しは言いやすさもあっただろう。それでもセルアどころか他の人間が彼を

そうとしか呼べないのはノレットの周りにいる女性達だ。


嫉妬深い者がおり、彼女達が許容しない者には容赦のない仕打ちがされると

機龍軍高では黒い噂となっている。ノレットも彼女達に注意をあまり

しないからか、時に過激な手段も及ぶ彼女達を、生徒会長としてヒビキは

快く思っていない。しかし、彼女達も帝国貴族のはしくれであり、貴族でも

相当な権力と実力を兼ねたノレットが彼女達と共にいる為下手に手も

出せないのだ。それを分かっているかいないのかヒビキとセルアを見る

彼女達の視線の大半は見下ろすような嘲りの笑みを浮かべている。それに

気付いているかノレットはこう言う。


「でも君だって、この子達と同じように名で呼んでほしいと思うのがオレの

望みなんだけど…まだ、駄目かな?」

「あの、ごめんなさい。あたし、まだ…」

「すまない、失礼を承知でいうがイアシェ君、ここでの話は…」

迷いながら身を引いたセルアの前に半ばかばうようにヒビキが立ち会話に

割って入る。

「ああ、すみませんタカナシ生徒会長どの。こんな何人も連れた状態で

立ち止まったまま話をするのは迷惑でしたね…。早めに失礼しましょう。

ああでも、最後に一つだけ」


半ば苦笑しつつノレットは片手を顔の真ん中に置き「すみません」の意を

示した後、踵を返すようにして言う。

「仮にもオレの許嫁なんだから、下着が面倒とか、せめて校内での着替えには

気を使ってくれよ?では、タカナシ生徒会長どの、お手数かけますがその子を

お願いします」

その発言にセルアは名状しがたい仰天顔になり思わず自分の胸を抱き隠す

姿勢になった。その状態はノレットと周囲にいる少女たちが階段を下りて

見えなくなるまで続いた。


ノレットが去った後、ヒビキが言う。

「あれが、君の許嫁なのかい?セルア」

「え、えっと、ヒビキちゃん。イアシェ君の周りの女の子は何でも無いの」

「そうではない」

「え?」

キョトンと疑問顔になったセルアにヒビキは言う。

「最後にセルアに忠告した際、見た顔だが…相当卑しくにやけていた。

それだけで断定するわけではないが…君に猫被りをしている下郎かも

しれないぞ、彼は」



少し距離を置いたところでオレの【コレクション】が口々に言いだす。

「ねぇ~ノレット様ぁ」

「セルア様は、いささか立場が分かっておられないのでは?」

「物怖じしないのは~美点かもですが~」

「鳥…動物臭い…」

「てか、動物!校則で非推奨って感じだしぃ!校則にのってたじゃない」

「何だってんだいあのアマ!まさかノレット様の面汚しにでもなるつもり

さね!?」

「ノレット様、これは1つ手を―」

「まあ、少し落ち着こう」


彼女達の話がいけない方向へヒートアップする直前だったので口を出す。

「仮にもオレの許嫁、将来の結婚相手の一人となる子だ。校則やらうんぬんは

ともかく、彼女の性格や気持ちも彼女の魅力だろう。そんな頭ごなしに

するのは…」

「で~も~、私達も心配なのです~。素直なのは私も好きですが~」

「それも彼女の性根なんだろう。何、皆の言い分ももっともだろうから、人の

話を聞かない子ではないし、僕も機会があれば皆も言ってたと伝えよう」

「それは…ノレット様ご自身から手を下されるという事ですか?」

「当然、そういう事になってしまうのならだが、ね。流石に将来結婚する

相手に己自身が口出すのは無粋すぎる最終手段だろうけど、さ」


そうならない事が一番だよ、というオレに安堵してくれたのかオレの持つ

コレクションの中で一番頭が切れる彼女―レフィーアは居住まいを正す。

ここは一つ心配してくれた事も含めてごほうびをあげようか。


「ああ、そうだ。レフィーア」

「ハッ、ノレット様」

「いずれ、一緒に可愛がってあげよう。もちろん俺のベットでね…」

「ノ、ノレット様、そのような…」

「あーずるいぃ」

(フフフ…当然、セルア。君もこの子達の中に入れてあげるさ…そう、

もうすぐ君が17になる誕生日だものな…その時に)

君を大人の女にしてあげようか―

自分のコレクション達が姦しく話をしているのを近くで聞きながらオレは

内心でほくそ笑む。そう、今までも、これからもオレは望む全てを手に

入れられるだろう…



今日は踏んだりけったりでした。ヒビキちゃんに遂にばれちゃいました。

あたしの許嫁であるあの男の姿が、多分一番最悪の形で。沈んだ姿勢で

とぼとぼと女子寮を出て商業区の【ある場所】へ向かうあたしの頭上を

この子達が飛び回りながらうまく【声】で誘導してくれています。


『マエ、マエ、ミギヨケ、ナナメマエヘ、ホウコウナオシテ』

『ソノママソノママ、ソロソロ、ヒダリオレ』

幼い頃病弱だったあたしにはある人…おば様と呼べる親族の方が生きる力を

与えてくれた…みたいでした。よく覚えてはいないのだけど。その

影響なのかどうか命ある子達の声を聞くという力をあたしは持ったの。その

おかげか人よりよく見える世界と言うか視野と言うか…昔から気がつく事が

広がってる。それで結構人には奇異な目で見られがちだけどそんなの気に

ならない位、世界には綺麗な宝物が沢山あるのをあたしは知ってた。幼い

頃からある子と―この子は8歳の誕生日に親の都合でどこかへ行ったきり

会っていないけど―9の頃に隣の友好国から来たヒビキちゃんとめい一杯

はしゃぎ回って様々なものを見て笑って…。


あたしにはいつの間にか許嫁ができていた。どこかにいる父―と呼びたくも

無い肉塊の仕事の都合らしいけどあたしはそんなの知った事じゃ無かった。

それでもこの央都ヴァルガナウフにある軍高に入ったのは間違ってもそれの

顔を立てる為じゃない。ヒビキちゃんと一緒にいたかったからで。まだ将来に

何になるかも決めてないまま。


…もうすぐあたしより1つ上のヒビキちゃんは軍高を卒業する。その日まで

あと半年もきった所。ヒビキちゃんは優れたドラグーンだから軍備工築区に

あるヴァルガナウフの軍本部へ配属するんだろうと思う。すぐ隣、会おうと

思えば会えるだろう距離。でも、どこか遠くに感じて。ううん。もしも

このまま卒業したら私は央都にさえ近い将来いられないかもしれない。

イアシェ君の家へ送られるかも―考えが悪い方向に傾きかけた時。


『トウチャク、トウチャク、センキャク、デアイ?』

『イツモドオリ、キレイ、ユウヒ、ヨル、タキケシキ、アザヤカ』

あたしは口々に言ったこの子達の言葉に顔を上げた。そして、あたしの目に

飛び込んできたのはに来てからの長年の宝物。夜が夕陽を飲み込んでいく

直前をゲニトルフ湖から流れてきているだろう湧水が美しく照らし続ける。

そんな岩場だったの。


それにしても…先客?ここに来るには移住・商業区内でも政務の工事手が

入っていない場所で、この子達が1日飛び回って見つけた穴場なのに…

「あ…」

その先客さんがあたしの目の端に入った。あたしが通っている機龍軍高と

同じ服。特徴の無いつば付きの帽子を深く被っているから顔はあまり

よく見えないけど…ふと、先客がこちらを見るように顔を傾けたその時。

風が悪戯に吹いてきて


「わわっ」


反射でつい飛びあがって向かい風に持ってかれそうになったつば付きの

帽子を捕まえる。降りた時にスカートだったから下着見えた気はするけど

気にしてもしょうがないよね。それよりも目の前にいる先客の方を見て

あたしは思わずきょとんとしちゃった。だって、目に前にいたのは

生徒会室でヒビキちゃんが見ていた転入生さんの書類に映っていた子の

顔写真と瓜二つの子―つまり本人さんだったみたいだから。


あたしと後にこの子―ゼス君と呼ぶこの子の初めての出会いは、大体こんな

感じだったの。そして、これから央都どころかあたし達が生まれ住んだこの帝国をかつて無い混乱と不思議がおおう毎日が始まるなんて、この時の

あたしは勿論、誰も…欠片も思わなかったんだ。


長くなりましたがようやく主人公とメインヒロイン、出会いました。

そんなこんなでact3、いかがだったでしょうか?

一章に立ちはだかるエルゼスのライバルにして下衆げすの初お披露目ひろめです。

そして今回は初めにチェトフが説明していたエルゼスの持つ地図を

イラストとして下記に掲載します!

挿絵(By みてみん)

移住・商業区と軍備工築区をまたいでるのが機龍軍高と軍事本部です。

記号はそれぞれ

△:学生寮

◎:機龍軍高

◇:軍事本部

射線+区切り:軍事兵器格納庫ぐんじへいきかくのうこ

となっています。区切りがあるのは後の物語で明らかにしていきます。

その内3D画像とかに…無理だ。都市のジオラマはともかく今は

龍の方で忙s…げふんげふん(←


それでは続きもよければどうぞ

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