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act3前編:逢い引き先は「貸し借り計」

お待たせしました。第2ステージの第3話…の前半です。今回はギャグ成分を

多めでお届けします茶番回です!(笑)話はあまり進みませんが

エルゼスを取り巻くヒロイン達(+α)のキャッキャウフフな話を

お楽しみください。そんな中で明らかになってくる1話目の伏線なども

楽しみつつ…(含みすぎ?


今回も楽しい読書の時間である事を!


「…はぁ」

ボク―ニアテオ・スミスはもう何度したかも分からないため息をついた。

思えばボクの人生はオドオドしながら他人の顔をうかがい結局酷い目に

あうというまるで絵にかいた悲劇を作るために生れたような人生だった。

何でボクがこんな目に?そんな問いをするボクをもっとこわい目で皆は見て


やがて体がそういった環境に適応しても、ボクの心は全くもってこのまま。

何でどうして何故。くり返しても来るのはば声と酷い扱いと痛い思いだけ。

そして今日も僕は酷い扱いを受ける。


今ボクがいるのはアカナチと共同戦線を張っている筈の防衛戦線だった。

アカナチとカドラバの間にある2つの小さな島、ネーシアに潜伏していた

アナファルジャの残党が武器商人やら現場のテロリスト達の支援を利用し

大暴れ後、央都まで迫ってきてるのだそうだ。ボク達軍は央都とネーシアの

間にある大陸の南拠点を利用し防衛している最中だ。なのに今回ボクが

出撃もせず、ワイヴァーンの前で待機しているのは―


これが終わった後に報告に帰ろうにも僕はどうせ役に立ったわけでもなく

これから起こる全てを【憶えていられない】んだ。仮に憶えていたとしても

それを証明する術は無く、その証拠すら無くなる。何故ならボクは―


「この戦線を捨て後方へ回ります!いつも通りに処理をお願いします、

スミス少佐殿!」

前線をあの方に代わって指揮していた隊長が荷物を背負いながら

この後彼らは近くの町や砦まで後退・逃亡を始めるだろう。そしてボクは―


空へ発つ。…ワイヴァーンに乗って。そしてボクの意識は暗闇へと飛ぶ―




ソラダァ♪ソラダソラダソラダソラダソラソラソラソラソラァァアアアア♪

ボクノソラダボクダケノソラダカラソラナンダソラダァ♪


ナニアレ?ナニアレェナニアアレレェェエエエ!イラナイイラナイソラニハ

イラナイ!ボクイガイソラニハイラナイイラナイカラコワシチャウンダァ!

イラナイイラナイナニモイラナイイラナイカラコワレチャエホロビロ!

ボクイガイハソラニイラナイソラダケアレバイイソラダケガイイソラダケ

アレバソラトボクダケアレバホカニナニモイラナイソレイガイハスベテ

コワレテナクナレ!!アハハハアハハハハハハハ!コワレテクコワレテク

イラナイカラコワレテチギレテナクナルナクナルコワレテク!!ボクダケ

ソラダケアレバイインダソレダケデイイカラホカハナニモイラナインダア!

チギレテコワレテソシテボクダケボクトソライガイイラナイイラナイナニモ

ホカニヒツヨウナイボクダケソラダケボクトソラダケアレバソレデスベテ

イインダカラナニモカモソレイガイハナニモカモコワレテシマエエエエ!!




…そしてボクはまた1人、その場所で取り残される。むかえなんて来ない。

ボクはどうせ捨て駒同然にかく乱用のおとりとして投入されるだけ。そんな

毎日。ヘトヘトに疲れて帰っても何も覚えてないボクに飛んでくるのは

また冷たい視線や暴力だけ。死ぬことさえ許してくれない監禁生活。そんな

余りにも酷いボクの人生を救ってくれる…何とかしてくれると、こんな

ボクを救ってくれるとレギット少将様やヴォーゲ准将様方は言ってくれた。

だから…


「早く…無くなってしまえばいい。こんな国、こんな皆、こんな世界…」


それがボクの思う、23年の人生でたった1つの願いだった。



「さしあたり、合格だそうだが…明日からが大変だな」

「…」

「で、私の呟きにも耳貸さないでさっきから何を探しているんだ?」

「器用だよね、ゼス君」

努めてヒビキは明るめの声で目だけ動かし様々な方向を見ているエルゼスに

言う。因みにセルアが言ったのは皮肉ではない。しばらくエルゼスの目の

動きを追っていたが追う内に軽く目を回し、止めたようだった。エルゼスは

ヒビキに返答する。


「あんま口にする場所じゃないんスけど…便所っすよ」

「…行きたいのか?」

「今の内に位置確認しとこうと思っただけなんでそういう意味で探してる

わけじゃねーです」

これにはセルアとヒビキの2人して疑問符を頭の上に浮かべたがエルゼスが

肩をすくめながら見るのをやめたので、うちきる事になった。


エルゼスが軍入隊試験の実技を担当したニアテルスを文字通り玉けりの

玉扱いしてけとばし。ニアテルスは本部の医務室で寝る事となった。当然

エルゼスはワイヴァーンの操作共に初めは【手加減】してやっていたのに

ニアテルスはそれにさえ気付いていないようだった。ましてや、思う所が

なければエルゼスもワイヴァーンから敵の機龍へ飛び乗るという無茶な

芸当をしたにもかかわらず。エルゼスが最後に目にしたのは怒りに目を

見開き、こちらの顔を見上げて来た状況判断に思考が追いついていない

無様な顔だった。最後にエルゼスが蹴ったのはニアテルスの背中だった。


その後ニアテルスの代わりに緊急捕縛ネットで収納されたエルゼスは網の

中で足裏をくっつけるよう両手で組んで模擬戦場の壁にまで吹っ飛ばされた

ニアテルスをがっかりした様子で見下ろしていた。セルアがそんな姿の

エルゼスを見て「何か罠に引っ掛かったかわいい小動物みたい」といった。

そんなセルアに誰もが生温かい目を向け、今にいたる。


エルゼスは確かに軍部における戦闘力として上層部の実力者を圧倒する強さを

示した。しかし、それ以上に問題ある行動をこれまでしてきたのは誰の目でも

分かる話である。しかし、エルゼスと言う人材を手放すには戦闘力面において

誰もが否定はできない。それに加え、推選の手紙を書いたのが他でもない

征夷軍官閣下という実質この国のトップである事が大きかった。それでも

問題行動の責務は事実であり。


「それは後の問題…にしてもいいが、まず私の隊に入る人間がああも上の者に

対して行ってしまった事実、どうか許し下さい。エッチェンバルグ少佐と

イタガキ軍曹どの」

見学も兼ねて軍本部の内部を見て回りながら、エルゼスを隊に組むだろう

ヒビキは今案内をしてくれているアスカレナとベルクの2人に頭を下げた。

「いやいや、お待ちくだしあ、タカナシ特務隊長!私にまで頭を下げる必要は

ないでしょう?私は代理でこの後の業務説明を請け負っただけですよ」

ベルクは今日の模擬戦の時、エルゼスの機龍のそばにはいなかった。発進と

模擬戦の客観評価者はレギット少将であり、他の軍上層部の者が模擬戦場の

地上から2人の戦いを見ていただけだった。


ベルクは技術研究区方面の門砦警備にあたっており、今日エルゼス達3人が

軍部へ来ること自体知らなかった。

「タカナシ姫様が来る事は噂として広まっていたけど、エル君に…えーと

セルアちゃんだっけ?もう来るとは思わなかったよ!歓迎はしたいけど」

「…」

エルゼスを静かに、しかし険しい目で見ている彼女をベルクは見る。

セルアも彼女をこう呼んだ。

「中佐さん…」「お姉様…」

それぞれの言い分にアスカレナはエルゼスへ目を離さないまま2人に言う。


「テルラスク。階級の後に「さん」を付けるのは間違っている。以後気を

つけろ。イタガキ軍曹。その呼び方は何度も言うが止めろ。そして…」

機械のように淡々とモノを言う彼女は貴族の気品を持ちながら生真面目に

規律や規則を重んじる軍人の空気をかもし出していた。そんなアスカレナが

エルゼスに向けて言う。


「クォーレ特務隊員。君のやった事が、【私達の上司】に対してどれ程か

分かっているか?」

エルゼスはアスカレナの目を正面から見返しながら言った。その言葉は一切の

迷いもなく、初めから用意していたものだった。

「俺は【その事について】反省もしなけりゃ後悔もするつもりもねーです」

その言葉に「うわぁ…」と感嘆したセルア以外の誰もが顔を引きつらせ

絶句する。エルゼスは軍上層部の1人であるあの男へ模擬戦でやった事に

一切の反省も悔いもしないと言った。エルゼスの言葉は続く。


「そんなことより」

「そんな事なのか…」「おいぃ、ガチムチならぬガチムシなんだが?」

「先ぱ…隊長、すみません」

エルゼスはヒビキの方を見るなり、腰を謝罪の形に折った。エルゼスは

一般教養にうとい為その腰の折り様は深すぎたが、それゆえに彼がヒビキに

対して申し訳ないと思う気持ちが伝わるものだった。ヒビキが呟く。

「エルゼス。君は…」

「俺がした事で隊長の立場に危なくなった事については謝るしか、俺には

やりようがないです」

「…」

エルゼスの中ではこれはすでに考えていた事だった。復讐という自分の目的を

貫いた上で何が起きるか、どう見られるのか。いつからエルゼスがここまで

考えていたのかは分からないが、ヒビキは考えた後


ぽふっ…


「―?」「「!?」」「あ!ヒビキちゃんずるい!?」


なでなで


腰を折ったエルゼスの頭に自分の手を当て少しなでた。されるがまま目を

しばたたかせているエルゼスをなでつつ、ヒビキはこう言う。


「前々からやろうとは思っていたけど、中々できない上に忘れてもいた」

「…?」

「あの男から私の幼なじみを守ってくれた事に関して礼もできていない。

だから、な…」

エルゼスの頭にヒビキのもう1つの手が置かれる。そしてエルゼスの髪で

端に当たる部分が握られ―

「―!?」

「しかし、先程仮にも私達の上司になる可能性を持った人達に対してした

事は!その事については容赦はせん!!」

突然ヒビキはエルゼスの髪を思いっきり引っ張りだした。流石のエルゼスも

これには敵わない。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?」


エルゼスは悲鳴を上げかけるも、何とか歯を食いしばりたえる。が、目を

白黒して涙せんから痛みで涙がもれるのをおさえる事は出来なかった。

セルアがそんなヒビキの奇行を見てこう言う。

「あー!ゼス君の髪にある気持ちいいトゲトゲ感が!」

(そっちか!!!(流石のあちしでも分からなんだZE…))

そしてエルゼスがドゥ…と髪を乱暴にされ、その場に倒れ伏したのを確認した

ヒビキは彼女達2人を見ていたベルクとアスカレナに向けて言う。

「とりあえず、これで許し願えないでしょうか。エッチェンバルグ中佐殿」

伸びているエルゼスをよいしょと肩でフラフラと担ぎながら言ったヒビキに

アスカレナはしばし考えた後、こう言った。

「後で個別に言っておくことにしよう…それと、私がかつごうか?」

「部屋わりはどうなっているのですか?せめて隊員の世話くらいは隊長の

私が…」

「さしあたり休憩室で少し寝かした後、割り当てた部屋に連れていくさ。思う

所もあるので、こちらは任せてもらえないか?」

そう言いながら軽々とエルゼスを肩にかついだアスカレナはベルクの方へ

命令する。

「ベルク軍曹、この2人の方を任せたい。いいか?」

「え、中佐…あの…」

「了解ですおね…中佐!」


エルゼスを抱えたアスカレナをベルクは敬礼もそこそこにセルアとヒビキが

いる方へ振り返る。そして何か両の手を交互別の高さで突き出し、腰を

落とした妙な姿勢と、ドヤ顔でこう言った。

「おのれらよ ここをとおりたくば われをたおしていくがよい!」

「「じゃあ遠慮なく」」

セルアは何も持ってないからか握りこぶしを作る。ヒビキはあたかも腰に剣を

さし、今にも抜き放つような姿勢を取った。

「ホワッツ!?ダブルラッシュですかぁー!?オラオラですかぁー!?」

「ウソですよ」「言っている意味は分かりませんが冗談です」

そうして3人してか前をといた後、話を再開したのはベルクだった。

「えーと、あのー。タカナシ特務隊長?自分に敬語は少しやめて貰えないで

ありますかー?」


「あなたは私より年上でしょう。仮にも私達はあの人の指示で軍部に来た

仲だと言うのは…」

「それじゃあ、特務隊隊長にセンパイ扱いされてる私はなんなのさーという

事にもなってしまいます。ですのでカンベンしてほしいのです」

先程とは打って変わるまじめな口調にヒビキもこう返す。

「なら…(ゴホン)軍曹どの、あなたも敬語はやめて頂きたいのだが」

「やー、自分の親が住んでた場所の姫様に敬語しないのはどうかともいう話で

ございますぞよ?」

そんなベルクの言い分にヒビキは複雑な顔をしながら言う。

「やはりあなたは…アカナチと―ここ帝国のハーフか」

ヒビキの言葉をあっけらかんと、しかも非常な言い分も含めてつなげた。

「はい、ハーフですよ。そして、私はその街に売られました」

「「…!!」」

ヒビキだけでは無くセルアもおどろき、開いた口を両手で押さえていた。

「あー、頭の中から何か悲壮なイメージが逆流してくるけどそこまで酷い話が

あるわけではござらんですのよ?」

頭をかきながらベルクは続ける。

「確かに私…いいえ、私達の町はある事によって復興するまで大変な状況に

なりました。それでも、手を取り合って魔物を倒したり作物を植えたりと

できる事をしっかりとやって。私はこんな所に来てしまっても『町の皆』は

絶対に何とかしてる。そう手紙も年に1度はよこしてくれているんです」

「強いな、そこの民とあなたは」

「モチのロンですよ!この央都における軍人は一騎当千でヤンス!」

ベルクはガッツポーズに八重歯を見せる仕草で元気さを見せつけた。


「そんな事よりも」

「何でしょうか、先輩!」「いかがしたか、イタガキ軍曹殿」

「エル君の髪のさわり心地をあっしにも教えてくれませんかねえ、ゲヘヘ」

「最高です!!!」

「私は先程さわったのが初めてですがあのトンガリ部分が手の平のつぼを

程よく刺激してですね…」

軍本部のセルアとヒビキの部屋に行くまで女性3人の姦しい話は続いた。



「ぐ…」

ニアテルスは目を覚ました。上半身を起こし周囲を確認する。ゲホゲホと

何度か血を含めせき込んだ所に入ってきた影は彼が見知った顔だった。

「大丈夫ですかな」


「あばらが何本か砕かれておった。治療班を呼ぶか?」


「ち…油断し過ぎた」

そう言わねば体裁が取り繕えない。だからこそその一言にベゼグの追及が

無かった事に、ニアテルスは内心で安堵をする。が、今はそれ所では

ない。長い間綿密に、密かに練った【計画】の明確な【障害】が軍部に

来てしまった。それを認識しなければならないという屈辱がニアテルスを

おそっている。


しかもよりにも寄って自身が嫌う忌子。この帝国の立法に立ち会った際、

特権として抹殺同然に手を回した畜生達。そんな奴がこの央都、更には

自分達の『懐の1つ』である軍部にまで来たのは完全な誤算だった。

「おのれ…私の足元をすくったのが、あのような奴とは…!」

「貴殿がその状態では計画に支障が出るかね」

「回復にいたっては問題はない…何故ならばこれを使えばいいからな…」

ニアテルスの腰にはいつかと同じ禍々しい藍色のさやをもつ魔剣が彼が

倒れていたにもかかわらず出現していた。黒きモヤは持ち主である彼の体を

おおい、害をなすかのように見える。しかし、その実エルゼスにやられた

ニアテルスの胸が元へ戻っていった。その間にもニアテルスは話を続ける。


「彼女に監視を当たらせたのは正解か。大佐の方は?」

「大佐殿なら今は通路を使った警備巡回の最中よ」

「では、私は夕刻に再度王城に向かう事となるか。政治側の連中との話も

努めておかなければならない」

「後はあの者の出身地は『あの方』より聞いていると思われるが」

「まさか央都に来たばかりの、あのようなやからが何故いともたやすく軍部に

入れるというのだ…っ」

ニアテルスはこの国の暗部全くを知らない。魔族がこの国を作ったという

ほらを彼は信じてはいない人間だった。ベゼグも同様で全く知らない。巷の

噂にある魔族などとは迷信と切って捨てていた。


「そのフォルデロッサが…どうやら街になっていたらしい」

「何…?何を馬鹿な、あの村は―」

「街と呼ばれるようになる最低限の条件を満たしたようぞ」

「街になる最低条件を満たした?そんな冗談は休み休みか、寝言で言うべき

だろうが…フン、そんな報告もあったか」

そう言いながらニアテルスの口元は喜びにゆがんでいた。

(利用できる…我々の謀りをもってすれば、いか様にもできよう)

「まあそんな冗談じみたものは後回しとして、だ。そんな事よりも―」



エルゼスが目を開けると目に飛び込んできたのは丸い果実のような誰かの

体の1部だった。

(何か前にもこんな事があったな…去年の冬だったか)

前より大きく実ったようだとのん気に考えていると頭上から声がかかる。


「目が覚めたか?」

見覚えのある隻眼がエルゼスの顔を見下ろしてきた。エルゼスは礼儀正しく

「はい」と言った後、アスカレナのひざまくらから起きる。休憩室を出た

2人は階段を上り、廊下をしばらく歩い先にある部屋の表札を確認した後、

中へ入った。アスカレナが説明する。

「ここが、これから任務中以外に君が生活及び寝泊まりする部屋になる。

番号は先ほど表札を確認したと思うが、206で2階の余り部屋だ。2つ

となりには隊長と…テルラスク卿の部屋があるが、緊急扉を有事の際以外に

あけることは出来ない為、反対側の廊下から入ってくるように。質問は

あるか?」

「…」

エルゼスは上を見上げた。起伏のない石材で作られた天井がそこにある。


「どうした?」

「何となく分かってはいたんすけど…天井に出っ張りとかないのは全ての

部屋で共通ですかい?」

「確かにそれは全共通だが…なぜ必要なんだ?」

アスカレナの問いにエルゼスは髪をワシワシしながら答えた。まだ髪は

ヒビキの乱雑な引っ張りから回復しきっていない。

「一応これでも朝から日課として体きたえてるんすよ。今までは部屋の

天井にあったそういうもの利用してケンスイとかしてたんすけど…」

「成程。ここ軍部だとそれができなくなる、という事か。ふむ…」

アスカレナはしばし考えながら次のような事を言い出した。


「今とは言わないが、部屋の天井近くに鉄棒を設置するよう依頼を工築部へ

手配しておこうか?」

「あの…」

「施しなどとは考えるなよ?しっかり業務に支障ない範囲で体を鍛える自由を

与えるだけなのだからな?」

「はい」

「いい返事だ」

そう言いエルゼスは「少し用事あるんでいいですかい?」といいながら本部の

入口まで向かう。

「ちょっと時間がおそいですけど、【放課後の約束】なんで今から行けば

待ってると思うんすよ。…ここの門限はどうなってるんですかい?」

エルゼスが見たアスカレナは険しい顔をしていた。

「門限は21時までだ。守るように頼むぞ。…蒸し返すようですまないが、

先ほどあった模擬戦はやはり…」

「俺は【あいつじゃなかったら】ああやるつもりはありませんでした」

「…」

無言のアスカレナにエルゼスは続ける。


「分からないですかい?」

「分からないわけではないが君は―」

「俺もあいつ、セルアと同じツケ払わせるためにこの央都ヴァルガナウフに

来たんすよ」

「だからと言って―」

「ケンカ売ったのはあいつです。そして、俺は【あいつのした事】で長い間

故郷とも呼びたくない町で散々な目にあい、しまいにゃ殺されかける目にも

あった」

その答えを予想していたのか、アスカレナの顔が苦渋にゆがむ。エルゼスは

続ける。

「今日【俺があいつにやったあれ】はまだそのツケの1つでしかない。

…それだけっすよ」

「それでも。君のしようとしている事は―!!!」

何か言葉を言いかけたアスカレナの隻眼が見開かれた。まるでエルゼスの

背後に得体の知れない怪物が現れたのを目にしたかのようだった。思わず

エルゼスは振り返る。


「あらあら~、また会えましたね~」

「エルゼス、また会えた」

ネーペルリアとレイアだった。すんでの所でエルゼスはネーペルリアを

抱きとめる。

「…アンタさ、一体何やったわけ?」

ネーペルリアをなでながらエルゼスはレイアをにらむ。

「?」

なでなですりすり

「首かしげてもより怪しいだけだぜ。俺の背後にいる中佐がいきなり顔を

青くするってのは―」

ナデナデスリスリ

「そのですね~、誤解なのですよ~」

なでなですりすりナデナデスリスリなでなですりすりナデナデスリスリ

「その前に~、リアちゃんもそろそろいいのではないのでしょうか~」

「まあな…」「レイア…妥協は―むきゅー…」

エルゼスは優しくネーペルリアを抱え上げるとレイアの方へ寄こした。

「私達はある人の遣いという事でここに来ただけです~。彼女に用がある

わけでも、何かをするつもりも決してありません~」

「さ、行きますわよリアちゃ~ん」といつも通りの調子で彼女は本部の中へ

入っていく。ネーペルリアもレイアの手を取りながら振り返り「エルゼス…

また後で」と本部へ入って行った。そんな2人をエルゼスは険しい目で

アスカレナは呆然とした片目で見送った。



「よ」

エルゼスが軽く手を上げた先にいたのは

「やあ、久しぶりだね…君がまたここに来るとは思わなかったよ」

フレミルだった。そこはエルゼスとセルアがまだもう1年だけ通う筈だった

機龍軍高敷地内の噴水広場だった。


「しかし、ボクみたいのに頼み事なんて君も変わったんじゃないか?」

かつてキロメやムル以外の女をあまり知らないエルゼスならこんな事は

無かった。だが、セルアやネーペルリアと出会い、レイアやヒビキと話し。

ベルクやエアリシドと笑い。世の中の女性がどういうものなのか少しずつ

打ち解けた結果でもあった。

「まあ…それもあいつのおかげだし。他にも今回のは理由もあるしな。あ、

それと…クスプにも何か寄こしとこうか?」

「今日ボクに軍備工築区の方まで付き合う内容でチャラにしといた方がいい。

そうしないとセルアにジト目で見られるよ?」

フレミルが言った事に対してエルゼスは首をかしげ、肩をすくめるしか

なかった。


「じゃあ、今日の晩まで君を軍へ行った2人から借りることとしようかな」

「俺は所有物じゃねぇー」

「軽い冗談さ。フフフ」

そう言いながらエルゼスはフレミルにうでを取られ商業区へと向かった。


―後編へ続く―


この度は投稿がおくれ、楽しみにしていてくれた方には申し訳ありません。

最近はあちらの作成もあるので執筆に割く時間をつい

とにもかくにも自分のペースでこれからも1週間に1話UPは目標に

再度頑張りたいと思います。それでは次回予告をどうぞっ


―次回予告―


「君にそんな一面があるとは思いにも寄らなかったよ」

メガネのハーフは提案をもちかけ


「…(ニィ」

「――!何…」

謀略者は微笑み、彼女は思い人へと駆けていく


「うん、あのね―」

そして2人の時間を引き裂く計略が発動する


次回

act3後編:軍務と指令と「オクリモノ」


注意!:予告内容とタイトルは作者の都合で変更される恐れがあります。

それも考えて次回をお楽しみに!!


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