act2:告白と「不信任」
大変長らくお待たせしました。第2ステージの第2話目です。そして
今ステージのラスボスは前話で間違いなく登場した「奴」です。あえて
ネタバレする事としてみました。
ではでは、今回も楽しい読書の時間である事を!
あのお方だけが自分を抱きとめてくれる。それだけで十分だった。だから
今日も変わらず自分は指令をただ淡々と何の感情を入れる事なくこなす。
ただ何も感じない機能であればいい。あの方の為に
「成程、ご苦労だった。こちらの方で検討する。軍部の方との折り合わせも
あるだろうから、1週間は待って貰う事になる」
何も。何も知る必要はない。業務をこなす。あの方の為に。それだけでいい
それが全てであり、他に何を思う必要も無い。ただただ、あの方が作られた、
この帝国の為に。役目を果たす。
「経費再考の機会だと?軍部側の連中や研究員から失望をそんなにまでして
買いたいのか?どうしても必要ならば自分に言え。余程の案件でなければ
処理を済ませる。その場合手間もしわ寄せも出るだろうが、それが貴様への
報いだろう。その年でダダをこねられる立場だと思ってはいまい?無能」
あの方から離れすぎると体が妙に不調を訴えるが気にする事も無い。動けば
それで十分。たとえ自分の体が動かなくなった所で些事だ。無理にでも動かし
それでも動かないなら命ごと終わればいい。
「後はこちらの配備案件か。【あれ】の搬送状況、潜伏する間抜けへの対策、
市街状況の建築、環境の把握…今日も目を通すもの多しだが、まあ良い」
「問題ないな?順調に進んでいるな?早くしろ、まだこの国に潜んでいる
汚く小賢しいネズミ共に妨害されるのでは目も当てられん」
「では頼むぞ。分かっているな。自分の言い分は帝国最上層の決定だ。それを
絶対に忘れるな」
「はっ」と言いながら彼らは出ていく。名前はなんだったか。覚える必要が
あったか?否、必要となった時に覚えればいい。それがエアリシド様の為と
なる時にのみ、だ。
…?ふとした事に引っかかるものがあった。これはなんだ?思い返してみれば
【あれ】など何になるというのだ。軍部関係のさわりを何故自分が手にした?
【あちら側の陛下のお付き】は問題無く業務を全うしている筈だが…
かぶりをふる。そうだ。考えるな。どうでもいい。自分自身の目的を果たす
他に何を思う必要がある?他は全て邪魔なだけだ。必要な理由もない。あの
お方―女王陛下だけが自分の全てだ。その為のだまされ役もこなしている。
今はそれだけで十分だ。
「自分が行いを尽くすのはエアリシド女王陛下の為のみ。他の一切全ては
何もかもどうでもいい」
そうだ。子やら妻やらいた気もするが気にする事も無い。気にする必要が―
…
「それはかくも最早―妾の暗示と言ってもいいのじゃ」
魔の女王は言った。己の人生における失態の1つを
「魔力による魂の変質。では魂とは何か?これまでその個人を形作ってきた
記憶と妾は思うておる。…妾の魔力は近くにいる者に対し、その記憶を―
魂を歪めてしまったと気付いたのはセヴァルが初めてであらせなんだ」
ヒビキとエルゼスに、過去を話すその姿は同年代の青年や少女に相談する
少女と大差が無かった。
「あ奴を妾が全てとするようになったのは妾の魔力が招いた結果なのじゃ。
初めはふと尋ねた事がきっかけであった。「妾に仕えてからお主は何年に
なるかのう」…とな。その妾の言い分に対しあ奴がこう答えおった時は妾も
生まれて初めて絶句と言うのを覚えたものよ…「自分は過去・現在も関係なく、
永遠にエアリシド女王陛下の為にあります」とな。それを聞いたのは
セヴァルが妾に仕え十年近く…後悔するには遅すぎたのじゃ。それより前の
妾に仕えた側近はことごとくが急く逝こう者ばかりでおった故」
無粋な冗談を言える場面では無いと分かっていたのでエルゼスはその時口を
閉ざした。エアリシドは話を続けた。
「妾の魔力には人を惑わし、記憶を操るというものもある。イアシェ家の者も
妾の事は全くと言って覚えておらんじゃろう。恐怖は心の根元、深層心理の
奥底に在り続けるだろうがの。…何はともあれ、そのように妾は魔力を通し
人の記憶や魂に触れる事もできる。が、あのような失わせた記憶を取り戻す等
考えた事も無い。…重ねて言うがこれは命令ではない。妾のしりぬぐい等
カンベンだと思うが、妾でも分からない以上あ奴を知る主らに頼みたく思う。
どうかこの父娘を救ってくれ」
(どう考えても無茶と思うよな…)
セルアの復讐がどのようなものなのか、エルゼスは魔の女王の言い分で
理解している。エルゼスが考えるにセルアは父親が自分達に対する記憶や
感情を消された木偶人形になってしまったと理解しているはずだ。だから
それは単純な作業だろう。感情が入っているといっても最早その程度にまで
(セルアが止められる理由が無い…)
何故ならエルゼス自身も同じ復讐者だ。しかも―…そこまで考えて、ふと
視界に何かを差し出された様子に顔を上げる。
「ペルリア…?」
エルゼスと同じ起源を心の底に持つ少女が何かの肉を突き出している姿に
エルゼスは目をしばたたかせ、我に返る。ここは商業区の予約が入れられた
料理店だそうだ。ドールモートはヒビキやセルア、エルゼスに前の一言を
言った後、服を着替える時間も与えず商業区へ来た。周囲の目に気をとめる
そぶりすらせず目的地へ先頭切って歩くドールモートに対してだろう時折
黄色い声が上がっていたが―全く気にも留めず今エルゼス達がいるこの店に
入り、今にいたるのだった。しかし、ペルリアがここにいる理由ではない。
うれしさも半分にエルゼスはペルリアにたずねた。
「ペルリア、何でここに?」
「あたし達…初めから…ここにきてたの」
「俺達が後から入って来たって事か(あたし達…ってこたぁ)あ、それは
頂いていいのか?」
「ん(こくり)」
「んじゃ(ぱくり」
肉の柔らかさと程良い熱から察するにテーブルに配置された黒い鉄板で
再加熱でもしたのだろうかと考えている内に、視界に見知った顔が現れる。
「どうも~こんにちは~」
(やっぱりいやがったか)
内心でそう思いつつエルゼスはレイアから視線を外す。その視線の先に
広がっていたのは
「ダンナ、さっきからオレの狙ってる肉ばっか取ってなあああああい!?」
「(無言で口を動かしている)」
「(同じく無言で口を動かしているが、時折野菜も入っている)」
「セルア、分かってるとは思うがどんなものでも出されている以上感謝して
食べる事が大事だ。こら、どこを見ているんだ?(スキル:お姉様)」
「え、えう…(エルゼスをうらやましげな、しかして助けを求める目で
見ている)」
「…(皆の為に加熱されてない食材を鉄板に乗せ続ける姿はただでも小さな
身なりをより小さく見せていた。エルゼスは後で何かおいしいものでも
寄こそうと思った)」
「全く、このような食事場を囲むことになるとは…(と言いながらせっせと
黒い鉄板で焼き上がった食材を自身の皿にのせている)」
軽い混沌とした場の中でエルゼスはなけなしの知識を使い、ポケットから
取り出した紙の切れ端で「感謝して残さず食べる事」と書いた後にセルアへ
投げ。すり寄っていたペルリアの頭をなで回しながらようやくレイアの方へ
向き直った。
「んで、何の用だよ」
「いえ~、食事が終わってらっしゃるなら食器などをお下げしようと
思いまして~」
「…」
「あの~、流石に仕事をさせて貰えないでしょうか~?何とか今日の宿も
これで確保できる契約なので~」
「うんにゃ、すんません。すぐにそっちに渡すんで、作ったおっさんに
ごちそうさまでしたって伝えといてくれるとありがてーです。それと…」
「承りました~それと~?」
「ペルリアは大丈夫なんスよね?」
「宿金を払えないほど、酷くはないですよ~それに…」
「―?」
「うふふ~、また近い内に会いましょう~♪」
そう良い笑顔を作ったレイアにエルゼスは呆れながら再度セルアの方へ目を
向ける。心から嫌そうに口を×の字にし玉ねぎを乗せふるえるスプーンを口に
運ぼうとしていた。「もう少しだ」と言いながらとなりからはげます
アスカレナがエルゼスには年は勿論、身長まで上なのにもかかわらずかわいく
見えた。
*
「さて、これより軍部上層総括会議を再開するわけだが…まずは気がよくなる
話からするとしよう」
料理店での混沌とした昼食が終わり、要塞網道を上層部の身分証明札で
通過した後。王城の1階に戻った軍部一同はニアテルスが発した先程の一言で
会議を開く。今度はエルゼス達3人も参加しており事前に席が用意されていた。
まずドールモートとベゼグの軍部のトップをそれぞれ両端に座らせ、その
奥にある横長の席にアスカレナ・ニアテルス・ファーニフアルと並ぶ。その
対岸にエルゼス達3人が座る形でニアテルスがヒビキに腰を折った。
「ヒビキ特務隊隊長殿。上の無理とも言える此度の早期配属を快諾して下さり
心よりお礼申し上げる。ただ…」
ヒビキを中心に左右へ座ったエルゼスとセルアをそれぞれ目に入れた後に、
ニアテルスはこう続けた。
「失礼を承知でたずねさせて頂くが、あなた様のそばにいる軍正装をまるで
衣装でもきているようなお2人は…?」
「2人とも今年軍高において類稀な成績を出した者達であり私の気が置ける
数少ない人間だ。特例として配属可能という記載はあったと思うが」
ヒビキの言い分に頭を振りながらニアテルスは言う。
「軍は戦力不足に困っているわけではない。本部の方にて配属可能な人材は
事前用意されている。資料には目を通したつもりだが、常識的に考えても
軍高の勉学が修了する前にこちらへ配属されるのはいささか問題があると
思われるのだが…」
「少なくともどちらも私より優れたものを持ち合わせた自慢の人材だ。幾ら
ヴォーゲ准将殿でも彼らをおとしめる様な発言は慎んで頂きたいが…」
「否、否と言わせて頂きたい特務隊長殿。私からはもう少しでもいいので
彼らに…」
ニアテルスの進言に対し一歩も引かないき然とした態度で反論を口にする
ヒビキ。誰もが2人の会話に聞き入っていた。片やアカナチにて王族という
立場であり、時折未熟さが見え隠れしながらもその才能を見せる才女。片や
つい前日にこの央都ヴァルガナウフへ帰還し、上げた戦功を報告した
前線指揮官。2人のそんな会話の途中で。
「ハッ」
エルゼスが隠すつもりも無く鼻で笑った。その失笑はニアテルスとヒビキの
会話を中断させるにも十分なほどよく響いた。部屋にいる誰もが笑い声を
上げたエルゼスに視線を集める。その中でエルゼスは指で耳の中をいじり、
その耳をかいた人差し指を顔の前にかかげて見せる。その後に息を強く
吹きかけた。魔力までのどから出すのを見たのは何人いただろうか。突然
吹き付けた息で人差し指に付いた耳クズは―
「ッ!!!」
反射的に腕で顔をおおい防いだニアテルスに向けてとんでいく。たとえ
エルゼスが魔力を乗せた息で耳クズを吹き付けたといっても、それは
ニアテルスの元に行かずに霧散する。それでもエルゼスのした事を見て
そうしない者はまずいないだろう。
ニアテルスがエルゼスを腕越しににらむ。エルゼスは見下ろすように顔を
傾けながら、右手の親指以外をクイクイと動かした。それだけで言いたい
事は伝わると言わんばかりに。ドールモート以外が呆れるか見とがめようと
そう言った雰囲気を出す中で
「いわねーと分からない?」
あえてエルゼスはそう付け足した。『文句があるなら行動で示して見せろ。
口でモノを並べる必要はない』という挑発に更に油を注ぐエルゼスの真似に
「うわー…」とこれまで全く喋らないでうーうーとうなっていたセルアも
感嘆の声をもらす。それに対して再度発言したのはニアテルスだった。
「ええい、話にならないとは正にこの事か。ファルチザン閣下、本当に
このような者達を軍部に入れるよう指示されたのか?」
そんなニアテルスの進言に対してドールモートは
「…」
ただ無言にヒビキを見ただけだった。思わずニアテルスが握り拳を作りつつ
尚も訴える。
「如何なるものかその反応は!あなたの取りまとめる組織にこんなやからが
来るという事実に、何の言い分すらないのか!?」
そんなニアテルスの食い下がりをドールモートはまるで初めから何1つ
聞いていないかのように資料へ目を落とす。
「ざーまねー…」
エルゼスの呟きを流石のセルアも人差し指を口に当てながら指摘した。
「ゼス君、少しピリピリし過ぎだよ…」「あー、わりぃ」
「その内に口が嫌でも閉じるぞ、社会不適合なゴミめ。このまま2つ目の
議題に入らせて頂く。数か月前に生徒同士の下らないイザコザで起きた
魔法事故だ」
「何?」「あん?」「え?」
エルゼスが顔をしかめたのがそれ程気に言ったのかニアテルスは見下す目で
こう続ける。
「フン、貴様のような奴がここに呼ばれたのはそちらが主なのだよ。誰が
そうでもない限り貴様のようなものを神聖なるこの城の元へ呼ぶものか」
(ああ納得、アホだわこれ)
そんな言い分に呆れた顔をエルゼスはした。言い方こそ違うがこれは全く
『植物人間になった誰か』と似たような言い分だと理解したのだ。
「何だその顔は」
「お貴族ちゃまの我がままに付き合ってられるかって話に、老けてやがる分
若さとかこじつけもできねーみたいなー?」
「何が言いたい!?」
「アンタみたいな奴の不平不満に軍が付き合える大層な理由でもあるん?
だいたい何かしら報告とかはいってねーわけ?」
「報告はあったが到底信じられるものではなかった。一体何の事故があって
ワイヴァーン2機をフイにしていいと思っている?仮にもあの兵器にどれ程
貴重な魔玉―龍玉が使われているかお勉強すらしなかったのか?」
「しらねーわけじゃねーでっさ。思えば俺が触れて壊れなかった魔玉でも
あるんだしな。要するにお前は今更あの機龍共2機を実質失くした事に今も
ウジウジウジウジ文句垂れてるだけってこったろう?」
「気に食わないがその言い分は許してやろう。それで、報告した衛兵は確か
ベルクと言ったか?彼女には、1つ処理を下そうと思ったのだが―」
「ああん…!?おい、まさかテメェ―」
それを聞いてエルゼスが声を荒げない理由がなかった。セルアとヒビキも
おどろきに顔を引きつらせた顔をする。ノレットとのケンカに近い模擬戦を
取り仕切ったのは他でもないエルゼスも気心が知れた軍人、ベルクだった。
そんな彼女の表向き用の事故報告と上層部用の彼女が見た全てを記した筈の
報告書を作るという努力にすら、何かしらの処罰を下すと目の前の軍人は
口にした。このような事を言われて黙っていられる程エルゼスは人間として
出来ていなかった。貴族などの観点からしてもあまりに外道と呼べる行為。
ヒビキとセルアさえニアテルスを見る目が変わった中で注目を集めた当人は
言う。
「クックク、何。流石に女がどうだ幼い体がどうだ、などと言う気品を疑う
話にするつもりはない。あの様な婦人でも何かあれば我々上層部全体の
責任問題になりかねないからな。両上司である佐官に任せたのだからな。
さて、直接的な言い分は品性を損なうが…」
「何を言いてーのかハッキリしろやクソが!!」
「フン、ならば間抜けにも分かりやすく言うとしよう。私はその報告書が
全くの偽物ではないかと疑いを持ち、貴様らをこの席へ呼んだのだよ」
「質問があります」
いつもの元気さを取り除いた真剣な声が部屋内にひびいた。エルゼスは
反射的に目だけでセルアの方を見る。機龍軍高ティスフィーブルで彼女と
過ごす事5カ月程度、時折エルゼスに授業内容を復習していた時と同じ
彼女の顔を少しだけ確認した。セルアの言い分は続く。
「未熟を承知でお聞きします。当事者であるゼ…彼はともかく、あたしと
縁があったイアシェ家側の事情などは確認されたのですか?」
「かの家の者達には、これまでの経緯を調査する者達を数人遣わした。それと
並行しようやく、今日と言う日に片方の当事者達であろう君達から事情を
聞けるようになったというのが私の現状だよ」
「ならばその人達の話すら聞かずに准将様はどちらにいたのですか?それを
しなかった責務があなたにもあるのではないですか?」
セルアの追いつめるような言い分にエルゼスは内心でおどろきつつ、未だ
余裕な態度を崩さないニアテルスを見る。彼はこう続けた。
「成程、強かなご令嬢だ。失礼かもしれないが見直したよ。私は数日前まで
ここを離れ、交戦を続けている前線で指揮をしていた。この事実は軍部で
周知だったのだ。説明不足だったのをここで詫びさせていただきたい」
「それだけに限った話ではないぞ。ヴォーゲ准将」
セルアの話を引き継ぐようにヒビキも話し出す。見事な幼馴染みの
「あなたがイアシェ家…それもノレットと親しい間柄であり、後ろ盾でも
あったという話を最近耳にしたのだが。他にもペール・シップという亜人や
ロット・アイハウトと言う冒険者の2人組。あなたが雇っていたという
疑いがあるのだが?」
「そのような者達に覚えは無い。元よりこの模擬戦やら事故やらは私の
預かり知らぬ事、結果が余りに目に余るとはいえ興味もなかった」
(ヤロウ切ったか?)(切り捨てたな…)(バッサリいっちゃうんだ)
エルゼス達はそれぞれ同じ事を考えた。が、今はそれを考えるよりも本題に
付いて切り替えた方がいいと考えたヒビキは、首を横に振るニアテルスへ
こう返した。
「それは失礼した、話を早めに戻すとしよう。では、本題の機龍を失った
件についてだが―最終的な問題まで信用はともかく把握はしているのか?」
「央都の幾割かを壊しかねない大規模魔法であろう?」
迷うことなくニアテルスは口にする。
「内容はともかく、そう言った者が出現した記録と目撃者達の証言を集めて
いる最中だと?」
「その程度の事で緊急的とはいえ軍が必要になると宣言なされるのならば、
魔術に精通した技術研究区の専門家どもから足元を見られますぞ。我々は
そのように見られていい組織ではなき故に…と、これ以上は別の方向へ話が
逸れてしまう。ご容赦を願いたく思うのだが…」
このままだと堂々巡りの平行線となるのは話の流れから誰もが察していた。
せめて話を進めなければ。そう思ったのだろうベゼグが口を開きかけ―
エルゼスが先にこう言った。
「ゴタク並べるくれーなら他の誰でもないあんた自身が納得する要求をしたら
どうなんだよ」
「フン、なら貴様にも分かる内容で言ってくれようか?」
そう言いながらニアテルスは立ち上がり、自分自身の胸に手を当て言った。
「君達3名を対象とした入隊試験。その模擬戦をこの私、ニアテルス・
ヴォーゲに担当させて頂きたい」
会議はその言葉で一度締めくくられた。また、ファーニフアルが頭に槍を
突き刺されながらいびきをかいていたのは、軍部でしばらく話題となった。
*
(見た所立ち振る舞いから察するに、勝負になって7対3と言った所か?
フン…)
そう思いながら私は遠めに奴が使う機龍―ワイヴァーンと訓練用剣の使用感を
確かめながら盗み見た。まるで生き物のよう。成程、報告書通り、あれは
最早軍高へ配備できるもので無くなったのは確かだ。これを見ればそうだと
いうのは確認できる。しかしだ。
「何の手品に近い機能を使っているかは知らないが、そんなものを搭載する
余裕があるならば、適当な兵装でも入れればいいものを…」
やはり当てにもならない下下が言うモノを信じる今の軍はいずれ破滅する。
それをつい3日前まで前線で猛威と指揮を振るった我が機龍と共にこの戦いで
思い知らせてやるのだ。この帝国に必要な力は他でもないあのような
忌まわしきガキなどでは断じてない、この私であると。そう考えながら剣を
振り終えた私に対して。
奴は正に下郎が見せる汚らわしい舌を出したクソを見る様な目でこちらを
見ながら前に出した手を中指を立てた形にして見せたのだ。気品の欠片も
ない見苦しいにも程がある。このような害虫が輝かしきこの帝国の大地を
ふんでいる事すら汚点であるように思えた。容赦も考えていたが最早その
必要すら徒労だったようだ。
(よかろう。不慮で命を落とした所で誰も悲しまんと言う事も教えてやる)
その認識が甘かった事を私は知る。始まるや否や上空を取った奴は雨でも
降らせるように爆撃玉を落としてきた。我が機龍を傾け旋回することで
回避した後に、そのまま回転に任せ元の体制へ戻るも2度目の攻撃である
火の玉が真下から牙をむき向かってくる。何と言う攻撃ペースだ!?再度
回転し火の玉と垂直になる様突破するが―
奴の機龍は何とあらん限りの突進力で我が機龍の腹へ向かって突進を既に
始めていた。よける時間が無い!?
ガンッッッ!!!!!
視界が、回る。ありえん。ありえてたまるか。このように目茶苦茶な早さが…
これ程の軌道が小僧風情のこんな異端児に!?落ちつけ、現実を見なければ
戦場では死ぬのみ―…
しかしだ…!
まだやりようはある。これだけ無茶な早さと物量で攻撃してくるならばその分
隙が生まれるだろう。弾幕を張る弾も体内に内包し操る魔力も早く底を尽く。
その筈だと思いながら私は手綱に魔力を込め体勢を立て直させる。回転した
勢いを運よく利用できるようゆるんだ瞬間を見誤らず我が機龍は空中に
静止した。私はすかさず上から見下ろす奴の視線を射抜く。
(貴様…!その余裕顔を今にも引きつらせてくれよう…!)
手綱から魔力を通して私の意を機龍へ送る。こちらも反撃に撃ちだした
腰部兵装、空対空爆弾頭は再度奴の機龍が吐き出してきた炎とぶつかり―
爆炎の中で私はほくそ笑む。勝つのはこちらの筈―
しかし、再びその認識が甘かった事を私は知る。認めたくもないが爆炎を
かき分け再び私の元へ炎の玉が複数迫ってくる。再度軌道―間に合わない、
ホバー状態維持、翼を盾に受け止める。魔力振動反応、それだけではまだ
終わらぬと―…!?!?!?!
ドウドウドウ…ッ!
(馬鹿な…攻撃の間が開かない…!?どころか、先程よりも奴の攻撃が
加速しているだと…!?)
考えている間も無く…気付く。機龍が…降下している。違うこれは…魔力を
通し伝わってきたのは悲哀。翼が…最早動かない…!?何故だ…仮にも私の
魔力を通したこの機龍がこうも簡単に―…奴はどこだ!?!?
「上空!!?」
空をにらむよう私は見上げる。そして目に入ってきたのは…
バン!!
「な…!?」
小僧チクショウだった。機龍の頭を足場にしたのだろう、一直線に頭から私が
乗る機龍に突っ込んでくる。伸ばした手は私でも反応しきれない早さをもって
私の頭をつかみ…
バンッ
模擬戦場のネットが緊急展開されたのを背中で感じる。落とされた。私も私の
愛機である軍上層部専用機の1つも。それを認識する事も許さず奴の声が耳に
届く。
「玉けり遊びしようぜ」
こんな時に何を言っている?貴様は貴様という奴は貴様だけは―!
(この私が―!!)
「お前玉な!!」
ガホン
胸に穴があくかのような衝撃の後、私の意識は暗転した。
―act3に続く―
次回はStage1終了時のステータス成長を入れようと思います。ただ
前みたいに長くはせず、変化したステータスのみ表示する事になるかと
思います。よければ成長した理由なども記載しようかな…といいつつ
2つ先の投稿予告をしておきます。
―次回予告―
「あの男から私の幼なじみを守ってくれた事に関して礼もできていない。
だから、な…」
それはまだ1つ先の人生を歩んでいる少女からの願い
「あらあら~、また会えましたね~♪」
そして縁の糸は何色をも切れる事無く波紋と音を世界に落としていく。
「久しぶりだね…君がまたここに来るとは思わなかったよ」
そして探しだしたその人物とは!
次回
act3:あちし参上!え、待ってない?「貸し借り計」
注意!:予告内容とタイトルは作者の都合で変更される恐れがあります。
それも考えて次回をお楽しみに!!




