act13:無謀と策謀「最後の挑戦」
そして今日お届けである。…嘘言うの得意だよね、オレ!いえすみません
自分の未熟なばっかりにこんな事に…次こそはどうあがいても遅れる
ことになります。次回作はみてみんサイトの3Dで下手なバケモノ画像が
投稿されるのが前振りとなるでしょう
それでは、楽しい読書の一時を送れたらいいなと願いつつ
注意!:今回も一部15才未満の方々を対象に断らせてもらう性的な表現が
文内にあります。14才以下の方や上記の内容に嫌悪・抵抗のある方は
ページを今から閉じるのを強くすすめさせて頂きます。
「くそっ…くそっくそっくそっくそっ!何でだ…何だあいつは…!!!」
央都ヴァルガナウフの商業区にある医療院。ノレットはいまだかつて無い
敗北感を味わっていた。今までのノレットの人生には障害と呼べるものが
一切無い恵まれた、恵まれすぎたとも言える人生を送っていた。そして
これからも彼の人生はそうある筈だった。
昨日、ノレットのいるクラスに転入してきた2色髪持ちの男が来るまでは。
彼のこれまでの人生を全て否定するかのようにそいつがノレットの前へ
立ふさがる様現れなければ。思えばその男だけでなくその男を取り巻く
周りも異常過ぎた。
ある意味男の価値という点で負けうばわれた婚約相手である筈の女といい。
今日初めて顔を合わせ、霧で気絶寸前の魔力中毒状態までまるで遊び半分で
追いこんだ存在そのものがデタラメなこの帝国の女王と呼ばれる者といい。
もしかしたら自分は相当前から知る必要無いこの国で暗部と呼べるの海へ
誘い込まれていたのでは?そんな考えがよぎる時すでにおそいという結論が
目に飛び込んでくる。すでに彼に味方してくれる大半は―
「ぐ、ぐぎ…すまねえ…ノレット様…」
「クソっ、あのガキャァ…」
「…」
片方の腕を失くしたリルリラとロットの包帯が巻かれた場所から先がない
足のひどいあり様を見て、ノレットの顔が怒りとそれ以上のくやしさに
ゆがむ。ロットの横ではペールがガタガタと蒼い顔で震え続けていた。
彼らは失敗したのだ。偵察や―斥候:せっこう―探索などを役目とする者に
とって足のケガは死活問題だ。ましてやその足を義足にするしかないという
事実。当然義足を作るのは時間も金もかかるのだ。リルリラの腕と同じく。
ここに先ほど来ていたジャクシールとレフィーアも確か奴の前には攻撃が
通じないと言っていた。
信じられない。音速をこえる速さで撃ち出された鉄球を無傷でつかんだと
彼女達は言ったのだ。彼女達がウソを言うはずがない。余りにもあの
いまいましいエルゼスとかいうクズがそこいらの化け物さえ軽くたおせる
強さを持っている事を表していた。最後に無言だったのは青い顔を今も
ふるわせ続けているペールだ。ガタガタと震えながら、ノレットから自分達
兄弟に向けて言葉が出るのを待っている。ある意味、待っている事しか
出来ないわけだが。兄の義足の費用と作り手を両方与えるのは他でもない
このノレットなのだから。
ノレットは彼らにどう話すか、そしてそもそも今声をかけている暇があるか
焦りながらも考えていた。そんな時
コンコン・ガチャ
「失礼しますわ~」
軽やかな扉を叩きあける音とこの場に似合わない間延びした声がした。
ノレットはその声の主を今だない怒りの形相でにらむ。ネーペルリアと
レイアがいた。ネーペルリアは小さな少女を背負っている。彼女はかわいく
寝息を立てていた。
「今お前らに構ってる暇はないぞ…ノイレピアを寄こしてきてくれたのには
礼を言うがな」
不機嫌を少しも隠さずノレットは彼女達に言う。それを気にもせずレイアは
ノレットへ言う。
「レフィーアさん達へ内密に行った手もその様子では失敗みたいですね~。
でも~まだ手はあるでしょう~?」
「手があるだと?あれだけの事をやっても、このクズのたまり場は…っ」
「そうですね~、もうこうなっては公衆の面前で実力差をハッキリと
させてみてはどうでしょうか~」
「それすら―」とノレットが口にしようとし、歯ぎしりするのをレイアは
「うふふ~」と笑いながら続ける。何を言おうとしたのか、まるで手に
取るように分かっているかのようなその笑顔にますますノレットの顔が
ゆがむのを見ながら。
「私に考えがあります~。そうでなければこのような提案はできません~」
ノレットは疑念を込めた目でレイアを半ばにらむように見る。初めて会った
時よりこいつは信用していなかった。客人として肉体的な魅力があったため
自分のコレクションの1つにもしていたが。改めて疑問に思わなかったのが
不思議でならない。
―この女は 何者なのか?
そうノレットが見ているのを分かっているのかいないのかまるで分からない
いつも通りの口調で、しかし確かにレイアはこういう。
「【勝てば】、いいのでしょう~?」
そう目を細め、人差し指をあでやかに口元へ付けたレイアはとてつもなく
甘い毒を差し出す悪魔のようだった。ノレットは見入る。おとぎ話に出る
魔女のようだと。彼女にコウモリの羽や何か角が生えていたらさながら
魔族のようだ。だが、今のノレットにはそんなことどうでもいい事だった。
それ以上に
「…分かった。…もういい…それでいい。そうあるように手配してみせろ。
出来れたなら、まだ俺の家での客人立場を保障してやる」
「それを聞けて光栄ですわ~♪」
笑顔でそう答えるレイアを無視し窓の外を見る。見ればもう夕日が沈みかけ
夜が訪れようとしていた。
レイアの提案を断った方が良かったか。そういうためらいはノレットには
不思議と全くなかった。
ぴちゃぴちゃぴちゃ
黒い滴が落ちていく。落ちて堕ちてノレットの心を汚す。しかしノレットは
気付かない。
ぴちゃぴちゃぴちゃ
もうその黒いシミをシミと認識できないほどに彼の心は荒んでいた。
―黒色の滴は静かにノレットを満たす。
ジョボ…ズボ…ジョボズジョズジョジョズジョ―
もうどうだっていい。何が何でもどうでもいい。…あいつをつぶせる為なら
オレは悪魔にだって魂を売ってやる―…
*
央都の商業区にある治療院の1階受付前。そこに沈んだ様子でレフィーアは
イスに座っていた。
「…」
レフィーアが気を落としているのは自らのミスでノレットに負担をかけた
事ではない。彼女にとってノレットは常にき然さと自信に満ちあふれいた。
そして何よりレフィーアの失態もこれまでは笑うだけで全く気にもしない。
問題はそういう人と信じていたあのノレットが。この治療院に運び込まれる
事体だった。何があったのかは聞かされていない。イアシェ家の他の者も
何故か裁判が行われた時の記憶を失っていた。そして、レフィーアには
ノレットが裁判を起こした事さえ聞いていなかった。
「レフィーア、ここにいたのかい」
「ジャクシール様…」
ジャクシールが治療院のとびらを開けてレフィーアの元へやってくる。
レフィーアは不安な顔で友人・相棒という言葉で通る彼女を見上げた。
いつも通り彼女自身の手で改造された機龍軍高・ティスフィーブルの制服を
見事に着こなした彼女の顔も晴れていない。
「ノレット様、酷い有様だったよ…ケガの方は大したことないようでさ。
明日には、ここを出るようだけどね…」
かぶりを振るジャクシールの口調も重かった。外傷よりも心のダメージが
大きすぎる。このままでは明日からの彼の学園生活に支障が出るのでは?
2人がそう考えかけ再度口を開こうと思ったその時
「2人ともここにいたのか。オレの妹もこの通りだし、ヴァルガナウフに
ある住宅に戻るぞ」
ノレットが階段がある1階の奥からこちらに向かってきた。いつも通りの
自然体で。ジャクシールとレフィーアは目を見開く。
「ノレット様!大丈夫なのかい?明日までここで休んだ方がいいと聞いては
いたけど」
「こんな真っ白と痛ましい自分の手ごま達を見る方が健康によろしくないと
思ってね。彼らを見ているひまがあるなら一刻も早く奴をどうにかするよ」
き然とそう言いながら妹を肩に背負ったノレットは、いつも通りのように
見えた。しかし、1人を除いて。
「ノ、レット…様…」
まるで別人にでも会ったかのようなレフィーアの言葉にノレットは疑問を
投げる。
「どうしたんだい?レフィーア」
「いえ…」
レフィーアは視線をノレットから外し、再びうつむいた。ノレットから見た
彼女のには信じられないような何かがあったようだが…ノレットは再び
レフィーアにたずねる。
「いいえ、と否定できるような顔をしていないが、本当に大丈夫かい?」
「大丈夫、です…大丈夫なので…どうか…」
かたくなにノレットを見ようとせずうつむいたレフィーアをノレットは
困惑の目で見下ろすが、すぐにジャクシールに目で合図をする。「俺は
一足先にピアと帰るよ」とだけ言い残し治療院を出ていく。そんな彼を
見送ったジャクシールはレフィーアにたずねた
「一体どうしたってんだいレフィーア…?ぬれ布でも持ってこようか?」
それ程にレフィーアは顔色が青いと分かるほどに酷い顔で。
「いえ、その…ジャクシール様」
レフィーアは言葉を口から吐き出すように言った
「ノレット様は…あのように黒い瞳だったでしょうか?」
「…何?」
レフィーアが何とか口にした言葉をジャクシールは理解できなかった。
*
「堕ちましたわね~♪【あの方】と関係ある子が来たからという理由も
あるにはありますが~、時間の問題まで解決できました~♪」
誰とも気付かぬ夜のある道をレイアとネーペルリアは歩いていた。時刻は
午前2時、ある道の裏を2人は歩いているのだった。
「それにしても…ウフフ、あれは少し笑えましたわ~。必死に角と身から
あふれる魔力を隠し、指の数を他人に合わせるあの人がよもや…あら~?
リアちゃん、先ほどからどうしましたの~?」
「!…えと…何でもない」
「…?」
ネーペルリアはあるオスと目を合わせた時の事を忘れられずにいた。
あれ程不思議な体験はそうは無いとは思うが、思い出したくもない
「先ほど抜け道を作る時さえ心ここにあらずという感じでしたし~思えば
リルリラちゃんの事をノレット様に言った時から同じようでしたよ~?」
「…―…?」
ネーペルリアは言葉にしようとしてハッと周囲を見回す。気配を感じた。
先ほどからも少し何者かが歩いてくる気配はしていたが、追ってきている
様子ではなく、月明かりを追うように歩いているのだとネーペルリアは
持ち前の本能で察する。しかし。月明かりへ近づく道へはぐうぜんにも
レイアとネーペルリアが歩いているこの通路だった。
(このままここにレイアがいる事を知られちゃいけない)
ネーペルリアはレイアの背を押し、立ち止まる。「リアちゃん~…?」と
?マークを浮かべて見るレイアへネーペルリアは言った。
「レイア…後で話す…だから今は…」
「リアちゃん…?」
「誰か来てる…ここで止めないと…レイアを見つかる…わけには…」
「…分かりましたわ~。どうか無事で、ね?」
最後にレイアはあえて真剣に言い、ネーペルリアの頭をなでる。少しだけ
くすぐったそうにネーペルリアはした後、レイアをうなずいた後見上げる。
レイアが先を急いだのを確認したその時。現れたのは―月明かりを反射し
輝く結晶を片手に持ったエルゼスだった。
*
オノレは山にすむカモチクショウだ。カリュウドたちがかつてたくさんいた
オノレたちをそうよんでいた。山の岩を好物とし、たいていのものならば
けずり、動けなくし、ほどよい大きさにし、食すようになった。なにも
おかしいことはない。生きるためなのだ。
ある日いつものように山中の岩を食べていると、小さな光を内にひめている
コウセキを見つけた。せっかくだからと、食べてみたのがいけなかった。
はじめはこれはおもしろいと思った。だがしかし、この光をとりこむ
コウセキはオノレのシカイをむしばむようになりだしたのだ。
はじまりはコウセキが生えた方のシカイのハシになにか見えるように
なっただけと気にしないでいた。が、それがたちまちシカイをまるで
さえぎるように大きくなりだしたのだ。
このままでは…と思ったヤサキ、フシギなニンゲンのメスの話を風の
ウワサで聞く。そのメスは聞くところによるとなんとオノレらの言うことが
リカイできるようなのだ。
たずねに行った時みょうなオスもいたが、モンダイも起きずにとりのぞいて
もらえた。あのメスにはレイを言ったが、カリができた気もするな。
今日からはいつもと同じように飛べるようになる。…今後あのコウセキには
気をつけるとしよう。
*
「…やべぇ」
木作りの天井。その中で出っ張った一昨日より使っているケンスイスポット。
そこでケンスイをやりながらエルゼスはそうつぶやく。時刻は午前の
1時45分。悩みは1つ
眠気が 全く こない
エルゼスが夜に気付いた時、どうやらピアはエアリシドが連れていった
らしく2人?とも姿が見当たらなかった。後で魔の女王である彼女から
次会った時何を言われるか分かったものではないから考えないことにして。
エアリシド―この帝国の頂点にある魔の女王のひざまくらはどういうわけか
心地が良く、エルゼスが気付いた時にようやく木材ベッドへ寝かされた事を
知った。もしかしたら、魔の女王とのたわむれが必要以上にエルゼスの体に
こたえたというのもあったかもしれないが。体の痛みは然程無いのと魔術の
本を片手で読みながらもう片手でケンスイをくり返している。
やっている事は週で習慣にしている自己修行の中でもハードな部類だが
今は構っていられなかった。魔の女王との圧倒的な差。体をきたえてから
1度目の、誰が見ても明らかな敗北。気絶した事実だけでも、エルゼスは
自身の未熟を恥じた。相手が先ほどまで髪をいじくりながら眠りに誘った
魔の女王だとしても、関係はない。回りが知らなくても、他でもない
エルゼス自身がそれすら乗り越えるためより強くなる。次こそはもう誰にも
負けないように。
片手で幼き日の少女から渡された本を読み返し内容をかみしめながら、
もう一方で体をきたえ上げるのをテンポを崩さず繰り返しても、疲労や
眠気はおとずれない。それほどまでエアリシドとの戦いを終えた後の
眠りが深かったのか。その思考をいったん止め、別の行動を考える。
(ヴァルガナウフは夜の散歩とかは無理かね?)
このまま続けた所であまりらちが明かない。ならこの寝床を出て夜の街を
回ることさえ、もしかしたら受付にいる寮の管理人が許してくれない可能性が
ある、そう考えに詰まったその時。
ヒイイィン…
「何だ…?」
光を放っていたのはピアと呼ばれる少女が持っていた結晶だった。セルアから
何気なく貰ったそれは、あわい光を放っている。その光は月明かりを受けて
輝いているようだった。それを目の前までかかげてみた後、エルゼスは1つ
呟いた。
「…行ってみるか」
寮からの外出許可は簡単に出た。おそくまで女性のはだか姿が描かれた
いかがわしい本を読んでいた受付の人がエルゼスの外出許可用紙だけでなく
一応と言いながら軍備工築区へのカードまで渡してくれたのだった。その
渡した人が本当に受付員だったかどうかはあえてエルゼスは無視し。
(月の光に照らされたいのか…?)
まるで月の光を欲するが如く輝くセルアからのプレゼントをかかげながら
エルゼスはを月に向かい―軍備工築区のセキュリティを管理人のカードで
通る。一本道の中、月に近づけば近づくほどこの鉱石は光を放ち―
ふと、エルゼスは前に気配を感じた。そちらに視線をやると、いつか見た
ノレットの仲間と呼ばれていた紫髪の少女があの時と同じ姿で立っていた。
まさかこのような場所で会うとはエルゼスでも思わなかった。彼女と目を
合わせた時にエルゼスは自分の目が少女と少女が映すエルゼス自身しか
見る事が出来ないという、とてつもない何かにおそわれたのだ。忘れる
わけがない、少女とエルゼスが初めて目を合わせた時にヒビキがエルゼスの
放心状態に気付かなかったらどうなっていたか分からなかったのだ。今更に
思う。この少女はあの時エルゼスに何をしたのだろうか?
ザァ…ッ
風が吹き抜ける。ガレキと機械のクズが散らばったような炭色の霧を払い、
二人の道を月明かりだけが照らす。動いたのはネーペルリアの方だった。
ブンッ
少女は右手に持っていたクマのぬいぐるみをエルゼスから見て右側にある
本部の壁へ無造作に投げ置いた。そして
昨日のセルアと同じように両手を扇状に広げエルゼスをむかえるように
一歩だけふみ出した。
(セルアの時といい今といい俺ってそうされたいホゴヨクとかってのでも
かき立てんのか?)
その心の中の問いに目の前の少女が応える事はない。少女なりに戸惑いも
あるらしく、しかして何か心に決めたような澄んだ目でこちらを見上げ、
さし出すように手を広げてくる。
(やっぱり俺、女に甘いな…)
エルゼスも先程少女がやったのと同じように結晶を足元に落とした後、
前へ出ていく。2人の距離がちぢみ、両の手を互いに示しあわせも無く
つなぎ合う。何かの儀式を行うような、しかしどこかぎこちなく近づいた
2人は同時に相手の目を見―やはりそれはまたしても始まった。
(やっぱりかよ…!)
またしてもネーペルリアとエルゼスは落ちていく。いつかと同じ自分と
相手しか目に映らないうつろな視界へ―
*
「さて、早めに終わらせ、リアちゃんの元へ戻るとといたしましょう~」
軍備格納庫の一室、大兵器部屋。暗がりの中でそうつぶやいたレイアは
クルクルと器用に杖を回しながら自分の数倍ほどの大きさはあるその影に
杖の先を向けようとし―
「何をやっとるかね?」
聞こえた声にふり返った。大兵器部屋にある小さな部屋の扉が開く。
ガチャ ギィイイイー…
レイアが確認すればその部屋の光がわずかだがもれていた。出て来たのは
チェトフとマイクスの2人だった。
「このような所、こんな時間にしては不似合いな客じゃのぅ」
「ふむ、どうにも楽しい酒を交わすにはくせ者がきおったようじゃの」
「あらあら~、かく言うおじ様方もこちらを気にせずお寝むしていれば
よかったのではありませんの~?」
レイアの言葉にマイクスが「そうしたかったのじゃがの」と言った後に
レイアのすぐ横を光の玉が「クスクスクス…」と笑いながらマイクスの
手元へ飛んでいく。妖精だった。
「妖精がさわいだのじゃよ。どなたか見ない客がここに入って来たとな」
「あらあら~、魔力の目で見られては私も逃れられませんわ~。妖精さんが
おじ様がたの味方では~」
「安心せい。何もしなければ手荒なことはせんよ」
「あらあら~、そう言いながら鈍器みたく立派に変形した手袋ですこと~」
マイクスが使役する妖精達の光る包囲。目の前には作業手袋を変形させた
ドワーフ。少女が切り抜けるには余りにも難しそうな状態で。しかして
レイアはこう言った。
「けど~あなた方程度に負けるほど、私も落ちぶれてはいませんよ~?」
「何を小娘が――!?」
バァアアアッ
にこりと笑いながら言ったレイアを中心に白い霧がまるでけむりののように
わき出てくる。それにふれた光の玉となっている妖精たちが一斉にに悲鳴を
上げ始めた。
キャアァァァァアァアアアアアッ…
妖精たちが消えていく。精神と魔力だけで作られた彼女達は体を構成できず
当然ながらその霧が対象としているのは妖精だけではなく、マイクスと
チェトフもひざをつく。
「なん、とぉ…!?これは…」
「よもや…魔術…!?おぬしは…まさか…!?」
「手荒な事は苦手ですが~、あなた達を無力化するくらいは簡単です~」
精神をむしばみ奪うかのような白い霧に包まれた彼女の声を最後に。
マイクスとチェトフは気を失った。
*
俺 あたし
俺の瞳に映っているそいつ 目の前の不思議なオス
俺 そいつ 俺 そいつ あたし オス あたし オス
落ちていく 落ちてく
なぐり けり そうされ 輝き 力 満ちて 人となって
あいつ 親父 セルア レイア お母さん
生まれ 抱かれ 腕 生まれ 温もり 毛皮
世界 見て ありまま 映す 本能 天光 受け 大きく 返して
―!? ―!?
互いの目で互いを映す光景が繰り返される内、自分が深く何も見えない
巨大で得体の知れない渦の中心へと落ちていく錯覚に見舞われ。エルゼスと
ネーペルリアは意識を一度手ばなしかけた。しかし、急に意識が取り戻され
よみがえった視界に周囲を見回す。まるで1つ1つの自分という存在を
形作っている要素でこの空間が形作られていく様子を2人は感じた。そして
となりに目を向けた時に手が触れ合い―いつの間にか生まれたままの姿に
なっているお互いを思わず見合わせる。先ほども起きたお互いの視覚が
互いに映し出され吸いこまれる現象は起きず、2人を中心に周囲の空間に
浮かんだ互いの過去やら生まれた要素やらが回る。まるで互いのあり方
全てを混ぜて1つのモノとしていくかのようだった。
(でも何故だ?)(でも…何で?)
疑問は必然だった。それを疑問と思わない方が不思議であったはずだが。
(悪い気がしない。むしろ心地よさ何てものまで感じる?)
(悪い気…しない。お互いが溶け合うような温かさ…感じる?)
そして2人の中心にそれは現れた。
「「これは…!?」」
それは何色でも無い球体だった。ただそこにあり、欠片を【どこか】へ
その透明さはどの金属よりも2人を美しくに映し出し、周囲の要素も
あるがままと回りながら映し続けている。
(まるで鏡…いや、あらゆるモノを反射し本質を映しだす理そのもの)
(鏡…ううん、万物を反射してありのまま映す世界の法則…?)
この球体は世界を形作っているだろう万象の欠片だと2人には分かった。
そしてこれを見た瞬間、2人は互いに理解した。
(俺は…いや、俺達は)(あたし…ううん…あたし達は)
((これから生まれた))
それを理解した時、球体からあふれた巨大な光が2人を包み込んだ。
*
「…」「エルゼス…」
気付いた時には抱きしめ合っていた。2人は理解した。自分達の人生、
自分達の成り立ち。そしてその根源となる本質。同じだった。同じモノから
生まれ、別れ、そして―今こうしてめぐり合った。
「ネーペルリア」
「うん…」
目を合わせる。恐怖も何もない。分かっていた。通じるという言葉さえ遅い
それ程にお互いの思いが分かって。わいてきた感情は2人でも持って伝えきる
事の出来ない、大きな、かつてなく巨大な幸福感だった。だからそれを
言葉にするだけだった。
「ありがとな、生まれてきてくれて。生きて会ってくれて」
「すごく…嬉しい…会えて…幸せ…触れられて…すごく…幸せ。大切…
いっしょ…」
それぞれ互いにそう言い、見つめ合う。その時
キイイイィィィン…
「―?」「…?」
エルゼスがネーペルリアの手を取る際に落としていた結晶が月明かりを受け
先ほどの流れ星のような音と共に美しく輝き―粉々に砕け散った。
「一体何が?」
エルゼスの疑問に応えるためか、ペルリアがぽつぽつという。
「あの結晶から…感じた…日の光…月の光まで…取り込もうとして…多分…
あたしからも…月の力…感じたのが…原因…」
「中身が限界で取り込めず破裂した?」
「(コクコク)」
「…一応お礼を言い忘れた、というべきなのかね?」
「お礼…?」
「あいつが俺をここに連れてきてくれた。そしてネーペルリアと出合わせて
くれたんだ」
そんなエルゼスの言葉が嬉しいのかネーペルリアは自分の顔をエルゼスの
腹筋にすりよせてくる。主人になついた猫や、兄をしたう妹が自身の愛情を
表すのと同じように。
「このまま…時…止まれば…いいのに…ずっと…ずっと…こうしてたい。
ここに…来たのは…あたし達で…ある事を…する為…でも…もう…そんな
事さえも…どうでも…いいと…思いたいのに…」
「何故ここにいたのかは気にしてもしょうがないんじゃないか?俺がここに
来たのは気まぐれだけどネーペルリア達にも何かやりたい願いとかが確かに
あるんだと思うしよ」
「ペルリア…」
「ん?」
「レイアには、リアって、呼ばれてるから。エルゼスには、そんな風に、
呼ばれたい…」
この人じゃ無かった少女が人の身になり話すようになってからここまで
一生けんめいに言葉をつむいだ事があっただろうか。エルゼスは喜びを胸に
うなずく。
「分かった。ペルリア」
そう呼ばれただけで。ペルリアははにかみエルゼスへこう言った。
「あたし、エルゼスの傍、はなれない。ずっと、これから、一緒」
*
どぅと老人2人を難なく気絶させたレイアは「後で軽く記憶処理をすれば
いい事でしょう~」とつぶやいた後、改めて巨大な竜を形作った兵器を
レイアは見上げる
「私の目的のため、一応ノレット様の願いの為に軽く壊れていただきます。
【あの方】が関係する人ならば―」
ノレットにたてついている少年は負けるはずがないだろうと。そう思いつつ
レイアは
ブウィイン……
2機ある軍高演習機と名がついた機龍―。【その両方の足元に魔法陣を
展開した】。
「私の血が成せる魔術において命ずる―」
*
なでなですりすり
ナデナデスリスリ
なでなですりすりナデナデスリスリなでなですりすりナデナデスリスリ
なでなですりすりナデナデスリスリなでなですりすりナデナデスリスリ…
いく度くり返しただろうか。互いに止めるつもりもないし、やめる必要も
全く感じなかった。片や頭をなで回し続けて。片や軍備工築区本部にある
本部の壁へ腰を下ろした少年の体に顔をうずめてスリスリと音を立てて。
もしかしたらこのまま眠気に襲われ眠りに落ちるるまで互いにある意味で
求愛にも近いこの行為をやめることなく続けていただろう。幸せだった。
2人はこれを続けているだけで今は幸福だった。しかし
「あの~…」
ものすごく気まずそうに声がかけられた。エルゼスはペルリアから視線を
外し顔を上げる。その先には1人の女性がいた。くり色のふわふわした
丸みができている髪をとちゅうで整えおろしたその女性はセルアにも勝る
大きさの胸をしていたがエルゼスは全く気にしなかった。何より目を見た
時から全く考えを読ませない目をしていたからだ。ただ、1つだけ分かる
事があった。彼女の目は―
(俺やセルアと同じ、復讐―仕返しを考えているやつの目だ)
そう思っている内にペルリアがパタパタとまるで姉の元へ行く妹のように
レイアの元へ駆けよる。レイアにすがったペルリアの目はエルゼスには
寂しそうに見えた。エルゼスは2人に言う。
「用は終わったのか」
女性はエルゼスに対し、妙な目で見た後に表情をすぐにとりつくろう様に
戻し言う。エルゼスはほんの一時だけ女性が見せた目の感情知っている。
嫉妬だ。
「そうですね~。そして、それとは別の事になりそうですけど~」
そう言った後に女性―レイアはペルリアの頭をなでた後、こう言った。
「あなたとは、また会うことになりそうですね」
「俺はアンタみたいのとはもうあまり会いたくないけどな」とエルゼスが
言う前に、レイアはがれきがまき散らされている穴へ歩いて行った。
ペルリアもその穴を通る時、手を振ってくる。エルゼスが振り返したのを
見たペルリアは穴を通り―その穴とがれきがどうやったのか元の何も
されていない壁に戻ったのだ。それを見たエルゼスは夜空を見上げながら
考えた後、つぶやいた。
「…いい時間だし、帰るか…」
エルゼスは来た道を戻り、自室へ入っていった。管理人はいなかった。
今度はぐっすり眠ることができた。眠りの闇に落ちる前に「朝風呂を受付に
頼んだほうがよさそうだな」とエルゼスは思った。
*
普段よりおそく起きたエルゼスは朝のタンレンを行わずに朝使う風呂場の
許可を取りに寮を下りていく。風呂で簡単に体を流し、受付に礼を言った
時に、にやけ顔で言われた「通い妻の子とすれ違っちまったようだねぇ」と
わけの分からない言葉を流し、自室へ戻って服を整える。そしておとといと
同じく学校に行くわけだが―
行く途中の噴水で見たセルアにエルゼスは半ば呆れた目を向ける。怒った
顔で大の字を作るように立っているセルアと後ろでどこか遠くを見ている
ヒビキがいた。エルゼスは2人の元へ歩いて行くとセルアがまずこう言う。
「何で朝風呂入るって言ってくれなかったのー?」
そういうセルアに対しエルゼスはこう言った。
「お前は俺の保護者か何かか」
そうツッコミを入れながら、ヒビキと階段で手を振りながら別れ、セルアと
一緒に教室に入ると。
「おい」
ノレットが話しかけて来た。エルゼスは「何お前さ、ここにいんの?」とか
そう言ってくるんだろうと思いながら通りすぎて席に付く。ノレットは
エルゼスを見下ろしながらこう言った。
「お前を、ここ…ティスフィーブルに居れなくしてやる」
予想と少し似たような言い方だったが、もったいぶった言い回しに
エルゼスはやっとノレットを見た。
「軍備工築区にある、軍高演習機。そのワイヴァーンによる模擬戦でケリを
つけようじゃないか。オレとお前、どっちがこのカドラバ帝国で未来を握る
力を手にしているか―」
「気が乗らねー」
「かん違いするな。これで最後だ…お前がオレに挑むんだよ、低能」
そう勝手に言い、席に向かったノレットを見送りながらセルアが言った。
「どうするの?ゼス君」
「あー?」
「何か言ってたみたいだけどやる気ないでしょ?」
「あー…」
エルゼスはまるで得待組教室の天井でシミを探すように見上げる。考えが
付いたのかセルアを見た目は穏やかながらも軽く真剣さを持った目だった。
「これで最後だってんなら付き合うか。ただし…今までの分全部それで
【払ってもらう事にするけどな】」
「払うって何を?」
「だから、今までの分だ。まあその時になったら言うさ。仮にも―」
同じ復讐者だものな―そう言いエルゼスはある席を見た。やはりというべきか
【あの同級生】の姿がいない。
(まあ、あいつが何をしているかはどうでもいいな)
そう思いながら、エルゼスは前を向く。朝礼のチャイムと共に入ってきた
マイクスが「今日の欠席は1人のようじゃの」と言った後に始めた朝の
連絡から始まり。今日の授業は何事もなく終わった。その放課後までは―
…フヒヒ。フヒ、フーヒッヒッヒッヒッヒ!フーヒッヒッヒッヒッヒ!
やったぁあああああああああああああ!今の所ステージ2以降も登場する
ネームドキャスト、ほぼ全員がステージ1の内で出せる事が決定しました!
その名の通り、今作では伏線に近いものを全て配置できました。残る
3人…となる重要な登場決定済みネームドは次回act以降にて…この
方々も話を盛り上げる相当なくせ者なので期待していてお待ち下さい。
ステージ1もクライマックス、次回にはついにあいつが登場します!!!
…不安ですが皆さんに凄いと思って貰えるようこれからもがんばります。
―次回予告―
「挑戦してやるよ。お前のそのちっぽけな自信…テッテーテキに俺が叩く」
火花散り、軍備工築区で待っていたのは異常たる―策:ちから―
「どうして…何で…こんな」
「お前、あれを一体どうやって…」
「簡単なことですわ~」
互いの衝突がはげしくなるだろうその時―
「これは…!」
これもまた、始まりの1つに過ぎない奇跡。そして少年は有言を実行する
次回act14:たけだけしき咆哮と共に「ハジマリの教え」




