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act12:来るは記憶「追憶と」

陛下回はここまで!次はステータス公表回となります。また、これから

振り仮名をふらないで、難しい単語等にはひと工夫を入れるようにやり方を

変えます。他actの訂正はもう少しお待ちください。中にはひらがなや

カタカナに変換するのも多いですが、どうか今後もよろしくお願いします。


注意!:今回も一部15才未満の方々を対象に断らせてもらう性的な表現が

文内にあります。14才以下の方や上記の内容に嫌悪・抵抗のある方は

ページを今から閉じるのを強くすすめさせて頂きます。


「さて、とりあえずは授業らしくいくとしよう。目の前にあるのはこの帝国が

ほこる最強と言っていい伝説の魔族、エアリシド女王陛下が一応にも

課題として張りめぐらした大きな魔術の壁があるわけだが。きれいに

扉をこちらで開けられないようななめにかたむけた上で、ここまで薄く

作るのは流石、と言うべきか」

私の国アカナチで特有の正座と言う座り方でひざの枕を作りながらそこに

イアシェ家か、イアシェ家に近しい親族であるおじょうさんの頭を乗せ、

私はそう言った。この子が寝ている間ひざは絶対に震えてはならない。

ひざの震えでこの子が起きるのを言い訳にするようでは未熟だからな。


「ええと、ヒビキちゃん。すごい状態でその子寝かせているよね?してるの

確か…え―と…ザブトンでもなく石畳だよ?」


因みにセルアは座布団があっても10秒もたなかった。強要したわけでは

決してないのだが、好奇心で試しにやった結果3秒としない内に足の裏が

痛み始めた…と聞いている。


「セルア、この座り方の素晴らしさはここから足を立つ姿勢へ間をおかず

転じさせ、抜刀体制へ移行するというタンレンにつながる点もあり、他にも

私の国では礼儀作法としても使えるという点もあるのさ」


余り面と向けては言わないが、セルアにはどういうものかはあくした後から

事に当たってほしいと私は思う。昔から飛び込む勢いはいいのだが

飛び込んだ後に悲鳴を上げられてはこちらもたまらないものだった。それは

さておき


「問題なのはこの壁だ。魔力の流れを見たが、規則性がある。そして、その

規則性だが…」

私にははっきりと見えた。そしてこの波長は私の知っている魔力に加えて

もう1つ何か妙な流れを感じる。この場にあるカギになる可能性は4つだ。

眠っているおじょうさん。セルア。私。そしてこの部屋そのもの。その

中で…と、そう考えていると。


「ん~?」

「すまない、起きてしまったかな?」

「んーん、いいのー」

そう言って眠気なまこをこすりながら少女は起きた。そしていつの間にか

現れたと思っている壁を見たとたんに「おおー」と声を上げかけていく。

彼女はこのままでいいだろう。私は親友に言葉を投げかける。


「セルア、壁にふれた時何か感じなかったかい?」

「え…分かったの?確かにこの壁へふれた時、何かあたしの中をのぞかれた気はしたけど」

決まりだ。そして、条件はまた1つ満たしたろう。少女はかけている内に

ぶつかった壁を見ながら「なにこれー」と言い、手でペタペタと壁を

叩いている。私は少女に声をかけた。


「お嬢さん、少しいいかな」

「ピアのこと?」

「ああ、1つだけ頼みたい。これを何とかしようと思うんだが…」

そう言った後、私は紫色に張られ何かがよどんだように流れている魔術の

壁を顔でうながす。


「んー、いいよ。ピアもそとでたいのー、これじゃまみたいだし」

「じゃあ1つだけ頼まれてくれないかな」

「たのみごとー?」

「壁の近くで彼女と手をつないでみてくれ」


セルアの方を親指で示す。「え?あたし?」と言うセルアをよそに「ん、

わかったー」と近づいて手を握る少女。


「おねーちゃん、むねのでかいのすごーい」

「わ、わわっ!?だ、ダメだよ、ダメたら、んっ…ってやめて!」

少女がセルアの大きな胸を飛び上がり手で突き上げる形で揺らしている。

…オッパイコノヤロウ。おっと変な方へ思考が逸れてしまった。……問題ハ

無イゾ?彼女達のつないだ手の上に私はふれ―もう一方の手で壁にふれた。

すると


ピィイイイイン…


よどんでいた魔力を流れていたような壁に2つの曲線が両の端まではしる。

そして壁はあとかたも無く砕けちった。私にとっては簡単な課題だった。

この2人の魔力の流れをそのままこの壁に送りだす。それだけの役目を

するだけでも相当な技量が必要になるだろうが…私はアカナチの姫で

【  】と呼ばれる者なのだからな。

「やはりこれで開いたか―」

私が呟いたその時、


グァアアアアアアアアアッ!!!


城全体を揺るがすかのような獣のおたけびに誰もが部屋の端にある大きな

窓で外を見る。

「あれは…!?」




「んじゃー、流石にもう異常はない…みたいね、と。それじゃあ皆は今から

通常通りの巡回に戻って下さいな」

今日もいい天気だ、と思いながらオレ…ファーニフアルはここに指令官の

任を受けた人の代替として、今門砦 (もんさい)と呼ばれる央都への

出入り口として建てられた砦のような門の1つで指令を出す任務を

こなしていた。


今日の朝、会議中に通称レナちゃんことエッチェンバルグ中佐殿が何やら

【原因不明の】体調不良を訴え、室外に出ようとした時に倒れた。一体

何が?とも思ったが家系にまつわるワケアリのようなのでこれは彼女が

起きた後に確認することにした。同じ上層部の者同士としてもオレ自身の

事情としても不明な点やらは取り除いておきたいからね。しかも今日起きた

事は彼女のそれだけにとどまらず。オレ達の本部がある区のとなり、

軍備格納庫で謎の物体が屋根を破って空中へ飛びだし、飛んでいったという

トンデモな報告を受けた。先ほどその調査派遣指令を行い、数名を事態の

把握と早期解決に当たらせ今にいたる。


そんな事に動揺するオレ達でもないけど、調査は間違いなく必要だろう、と

調査および解決手続き書類を書いたのに加えて。その倉庫の管理者達を集め

現場を調べさせる為の書類も含めて手配し、他の在中警備員の待機命令を

解く。はー、ここまでやらなきゃいけないのがここのまとめの任務を

後でレナちゃんいじって癒させてもらおーっと。オレがそう思いながら

屋上に出た時。ふと、王城の屋根にある妙な影に目が止まった。…それが

ただの鳥のような小さな影だったらオレっちも気にせなんだが…見た影は

何と巨大な犬のような影だった。


何あれん。いや、マジで。どうなってんのん。キャッスルパニックとか

そういう題名の映像娯楽作品の予行練習とかじゃ断じてねえよなあ。…嫌々

待て待て、ちょぉーっち待て、あの影は…モンスター!?monster!?

…MAJIDE!?何か城の足場のようになっている場所に獣のような

四肢を城の屋根に巨大な影が遠くの俺達がいる門砦の方から観察できた。

「マジ、一体何だってんだ…!?…おい、誰か!遠見筒を!」


オレはとなりにいた軍官から遠見筒を受け取り、影のいる場所を注視した。

その獣は四肢の端がまるで大気に揺らめく炎のようになびいている幻や

何かと思ってしまうような印象を受けるだいだい色の獣だった。その獣が

向いた方向には明らかに対峙し立っている影がもう1つある。それはオレが

おととい見知った顔だったのだ!


「あのボウズ君か…!?オイオイ、本当に何の冗談だ…本部の方に誰か

至急連絡を入れろ!ワイヴァーンの出撃準備は―」

オレが大慌てで指令を出そうとしたその時


―その必要はないぞ―

頭にひびいた声は軍務における総括で有名なドールモートのダンナ、我らが

征夷軍官閣下と呼ばれるその人の声だった。

「!?」


周囲を見回すがダンナの姿はない。遠隔会話?魔法の属性は何だ…!?

…ホントこのカドラバって帝国の央都っておっかないみたいね…




ポーン

「ん?」

端末の音にボク―フレミルは読み老けていた古代学門の本を机の端へに置き


「緊急起動…?待て、一体何をやってるんだ彼は…」

起動したのは昨日データを計測した転校生、エルゼス君の持つ聖遺物―

アルクの1つ、ソル・ヴォルグだった。たしか彼は今日セルアと共に央都の

噂で有名な主のいない王城にノレットの嫌がらせに近い告発を受け向かった

はずだ。アルクにふれるような機会さえないだろう。にもかかかわらず軍部の

格納庫にあるだろう聖遺物が起動した?そしてそのアルクを通して彼の

昨日でもデタラメと言える身体能力が表示される。その結果にボクは目を

見開いた。


「彼の…魔力や知覚・操作力が上がってきている?何だ…何を…?」


まさか彼は戦っているんじゃ?なら一体何と?ボクの疑問は転校生の彼が

この機龍軍高を離れる直前に教えられる事となる。




「のぉおおおぉぅうああああああああぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁあっ!?」

目の前の光景に俺は全く持って信じられず、悲鳴を上げた。俺の目も老いて

幻を見るようになったのだと。そう目の前の光景を信じたくなかった。


話は少し前にさかのぼる。オレがいつものように書類を書いている際に

警備している軍の連中の方から連絡があった。どうにも俺達のアルクが

しまってあるロッカーから何か妙なものが飛び出し、屋根を突き抜け空中で

王城の方を向いたように動き、一直線に飛んでいった影があったらしい。

そんな突拍子もない事があるか、そう思いながらオレは武器格納庫に行き―

今にいたるわけだが。


何てこった。軍の警備員達がそうそうに屋根の修理に取りかかりながら

オレの管理しているアルクの入ったロッカーを運んでいた。そのオレの

ロッカーにも穴があいている。いやな予感しかなかった。


「あなたか?あの一番下にあるロッカーの持ち主は」

兵士の一人に促がされてオレが慌ててオレの管理下にあるアルクが入った

ロッカーを確認する。

「ボウズが名付けたあのアルク…ソル・ヴォルグがねえ…!?」

肩を落とす。これは、この武器格納庫で他の奴らのロッカーや屋根を簡単に

ぶち抜きどこかへ飛んで行ったのは間違いなくテルラスクのじょうちゃんが

拾ったあのアルクだ。他のぶち抜いたロッカーや屋根の弁償代…そして

アルクの始末書と特性の早期レポート提出義務…今から頭がいてえよぉ…



「がはっ!!」


戦ってからもう何度目になるか、エルゼスは強く城壁に叩きつけられた。

血反吐を階段状になっている城の屋根にはき付けた後、ぬぐう。余りにも

理不尽な実力差がエルゼスと魔の女王の間にはあった。


ソル・ヴォルグは確かにエルゼスの魔力に見合う射撃能力と所有者の宙を

囲う刃を使った包囲攻撃に、白兵戦用の刀身も箱の細長くなった先端から

生み出した。リーチもそれを振るい活かす場も完全に充実した状態。そうで

あるにもかかわらず。


そのエルゼスを圧倒するエアリシドのスピードに加え、彼女の生まれ持った

能力がデタラメだった。エアリシドは万象、魔力から出来た存在。どうやら

彼女はやろうと思えば、近場に【瞬間出現】時も可能のようだった。先程

城に穴をあけた一撃の際はそれを使ったようだ。そして、魔の女王の能力は

それだけではなく。エアリシドは宙にまで出現できる。空中での旋回力まで

あり、白兵射程内でも踊るかのようにクルリと回ってかわす。それだけでは

あき足らずソル・ヴォルグから出た刀身を優しく手をそえ、なでた次の

瞬間には顔前まで接近してくる。


ただ、どこに再構成移動をするかは魔力を視覚、感知するエルゼスには

すぐにエアリシドの移動位置を感知できるため、反撃の機会はそこにこそ

ある。しかし文字通りただ暴れるだけでも厄介なエアリシドに反撃で宙に

浮いている刃を意志でけしかけても。


ブゥンッ!!!!


腕の一薙ぎに魔力を乗せた振るいは主の命を受け刺しつらぬこうとした刃達を

それこそクズでも払うかのようにふき飛ばす。空中で反転し、主の元を元に

戻った刃はガタが言うように震えていた。もう何度目かでこちらを何を

納得したのかあごに手を当てエアリシドはこう言ってくる。


「一昔前にやったドールモートと同程度かえ。少しは付いてこれるようには

なってきたかの?もっとも、主の年じゃこれ以上は壊れとうしもうかや?」


どう受け取っても上から目線の言い分にエルゼスはこう言い返した。


「ざけんなよ、アンタ…何様のつもりだ」

「主の王であり主のつもりじゃよ。あの茶番で言った事の意味はこういう

事じゃけに。妾がああ言った時よりエルゼス、主は妾のモノだ」


ある意味彼女のこれは恋とも言えるだろう熱望だった。自らに近しい実力を

持つ者。今いる人間の中で自らが選んだものを自分のモノとする独裁。

傲慢にして強欲。しかして純みきった―


「生かすも殺すも妾に委ねさせて貰う、悪いようにはせぬよ。寿命全うまで

妾をどうか楽しませてくれ。妾のモノとなるとはそういう意味じゃきに」


数少ない切なる願い。エルゼスはそのように感じた。だからこそエルゼスは

理解し、ため息をつきながらこう言った。


「俺って…化け物には苦いと言うか…酷い思いさせられるよなあ…」

「ム?」

魔の女王は自分のモノとしたい少年にたずねる


「何ぞ、エルゼスや。冒険者まがいの事でもやっておったのかえ?」

「違う、小さい頃から殴られ蹴られるわ魔獣共の群れに投げ込まれるわ、

暗殺までされかける…いや、された後に生き返るわ本当に散々だった。

でもって、それが嫌だと強くなった今でさえ、あんたみたいなバケモノと

付き合うとかカンベン願いたいぜ…あの龍を囲う祠が無けりゃガキの頃には

町や周辺を抜け出すの考えてたろうな…」


「ウム?龍を囲う祠?エルゼス、生まれはどこかえ?」

「南東の端の…」

「……フォルデロッサか?」

「何でアンタが俺の生まれたクソッタレ街の名前なんて知ってるんだよ。大体

そっち方面とか、一国の姫が憶えているような事じゃ…」

そこまで言いかけエルゼスはまさかと思い口をつぐむ。エルゼスの言葉を

エアリシドは驚くべき方向にむけて続ける。


「あそこは妾が生まれた土地じゃぞ。昔はヤンチャして分身の犬かて生んだ

後に連れ回し、共に野を駆けた事もあるきに。忘れるわけ無かろうて」

エアリシドの口から出た言葉が信じられずにエルゼスの顔が引きつる。嫌な

予感がした。それこそ周囲の空気が振動して音を立てるようなそんな予感が


「まさか…」「よもや…」


再度2人 (?)の会話内容が重なる。


「あの陽炎のようにでけぇバケモノとかが女王様の一部だってのかよ?」

「最終的に野へ放したフォッグファーマシーは妾の一部ぞ―」


今日2度目だった。言った事があまりにも歪な形で通じあった。再び女王の

顔がポカンとした表情でエルゼスを見ている。エルゼスも同じ顔だった。


―そして再びエアリシドは破顔した。


「そうか!そぉおうううかあああ!!還ってきた残滓から手にした記憶に

おったあの真紅の娘の隣におった小僧かあ!お主はあの時妾の一部が守護を

していた祠の禁を破った英雄の血であるかぁあ!いや分からなんだ!本当に

分からなんだったよ!!髪の色違うになあ!クカカカハハハハハハ!」


彼女自身が望んだ戦いそっちのけでエアリシドが笑い終えた後。にやけた

顔はそのままにエアリシドはおもむろに自分の髪を片手で握りながら

エルゼスを見てこう言い笑う。

「ああ、ああ。本当に、本当にエルゼスよ。主と言い分が被る時には生きる

事の喜びを思い知らされるぞえ。今だかつて、妾の人生においてここまで

笑った事はあらせなんだぁ…」

そう言いながらエアリシドは


プツン…


自らの髪の毛を一本頭の端から抜くと彼女自身の前に掲げて見せながら

言う。

「これは、何だと思うかえ?」

「…」

エルゼスは答えない。それを見たエアリシドは苦笑した後その髪を持った

手を頭の上に持っていく。そしてその顔も頭上を向いた。まるで、掲げた

髪をごちそうのつまみ食いをするように口を開け―髪が手から離れる。


ゴクン


エアリシドがそれをのどに通した音がやけに生々しく聞こえ。

それは始まった。


ブゥワァァアオォオン!!!


エアリシドの体が彼女が出していた魔力の霧をぎょうしゅくした色の玉に

おおわれる。

エルゼスはそれを見てこう思った。


(まさか―この玉は魔玉か…!?)


エルゼスが考えるよりも早く。エアリシドを取り込んだ球が少しずつ、

少しずつ4足で歩行する獣のような形をなしていく。そして―



グァアアアアアアアアアッ!!!


かつての脅威が目の前にいた。あの時と全く変わらない姿はさながら

この世へ生き返った悪夢のようだ。向けられるのは殺気―に近い闘志。


「…冗談、とは思えねえ」

「ふむ、呆ケタリハセナンダカ」


確かにうなり声が出そうな口から聞こえた声にエルゼスは思わず目を

まばたきした後、目の前にいる獣―エアリシドが変異したそれを複雑な

表情で見る。


「何ゾ、コノ状態トテ1ツノ形ニ過ギヌゾ?妾ノ毛一本分デモ妾ジャキニ」

「アーソウっすネー」

「棒読ミシオッテカラニ!コノ形態ナラ容赦ハ然程必要セナンダロ!」

「げ…!?」


ブンッ!!!


その前足の部分がふるった質量たるや、最上階の3階が吹き飛ぶのでは?と

エルゼスが思えてしまう程だった。ソル・ヴォルグで受け止める。何分

頑丈なようなのか、アルクには傷1つ付いていない上にエルゼスに伝わった

衝撃も相当低かった。


(やれるか?)

と思ったエルゼスに律義に液晶画面が表示される。


―shock:0.5%…no problem!―


「やるなら今しかないよな…!」


「かかか!ヨイゾ、オ主ヨウヤク妾ト戦リ始メテカラソノ気ヘナッタヨウナ

顔ヲ初メテシオッタワ!」

「アンタみたいに好き好んで戦ろうってのが稀だろうがこのキチガイ!」

「きちがい結構!言ッタヨウニ妾ハ楽シケレバヨカロウナノジャヨ!」

互いの闘志が最大限になった、その時。


「エル君!!」

「ヌゥ?」

「―!?」

上空からひびいた声にエアリシドに、エルゼスも驚きで目を見開き、上空を

見る。現れたのはバケモノのように下半身を異形に変化させ、城の窓から

降下してきたらしい女兵士―ベルクだった。彼女は空中を泳ぐように頭から

エアリシドに突進するように落ちつつ手にしていた件を振う。


ブンッ!!!ガキャァァァアアアアアアンッ!!!


ベルクのそりがある剣と透明な薄い壁がぶつかる。エアリシドが緊急的に

魔力で壁を作ったのだ。だが、その壁にヒビが何故か虚空で作られている。

その一点に向かって


ザザザザザザザザザザザザザザザザ!


彼女の八つざきともいえる斬撃の雨がふる。しかしその雨はヒビの一点に

集められ、パリン!とその障壁が破れるのを確認したエアリシドは体を少し

動かすことで直撃を避ける。


ドゴォオオ!


城の足場となる屋根が破片をまき散らすだけに終わった。破片はベルクと

エアリシドに向かうも、どちらも歯牙にもかけずに片や動じず、片や

件で受け止めながらこう言う。

「まさか、私の剣を障壁で受け止めつつかわすなんて…!」

そう言いながらベルクは腰回りからに生えた黒い羽根を動かしエルゼスの

元へ空中を泳ぐ人魚のようにとなりへ戻ってきた。しかし。


(動きに無駄がある…そりゃそうか)


エルゼスには慣れないまま持ってしまった力に戸惑いながらも使う様が手に

取るように感じる事が出来た。彼女は小1時間前まで一般人とは変わらない

はずの普通の人間だったのだから当たり前だろう。エルゼスはベルクに

話しかけた。


「(それよりも…)兵士さん…何でだ?」

「さっきの大きな獣声聞いて外を確認しない人はいないよー。そして見たら

王城の屋根にあんなのがいるじゃないのさ。イチかバチかで飛び降りて

奇襲を考えたけど…これ凄いね!空中泳ぐマーメイドみたいな感じー?ねー

エル君、おねーさんかわいー?」

「…」

「うわそっぽ向いた!?確かに私は色気なんて無いけどさー…う―…」


それを眺めエアリシドは笑っていた。


(良い…これが良いのじゃけ…)


目の前の2人を見つめる。獣の頭部だがニヤニヤを全く隠さない。言葉を

交わしあう命と命が繋がる事で出来ていく社会、それを繰り返す事により

作られていく小さな世界。そしてこの小さくも命と命が関わる事で生まれる

無限の可能性。その中心にいるだろう―少年:エルゼス―。彼には一体

どのような未来が、世界が見えているのだろうか。それが―


(こうも美しいものを眺められるこの世界が愛おしくてたまらない!!!)


そして、彼らの会話に「んじゃ、それで」「う、ん。…分かったよ」と

終わりに近づいたのだろう言葉が出て来たのを聞きとり、エアリシドは

2人に話しかけた。

「ハテ、主ラノ覚悟ノ方ハ決メテキタカエ?」

「随分調子こかせてもらう事になりそうですぜ?」

「正直な話、私はエル君が言ってること信じたくない。ワンコさんが私と

言葉を交わしたあの女王様だなんて。でも…今あなたはどう考えても

大人しくお縄に付いて貰わなきゃ!!」

ベルクが言った決意を合図に


ピィアァオッ!!


エルゼスがエアリシドに向けていたソル・ヴォルグからひとすじの光が

放たれる。それをエアリシドは当たる部分を予測し、そこを陽炎のように

揺らめかせ―文字通り消すことでよける。そしてエアリシドは反撃しようと

腕をふりかけ―台形状のソル・ヴォルグのパーツが再びエアリシドに向けて

さっとうする。

「マタソノ手カヤ!?コノ体トテソノヨウナタワケタものハ通ジヌゾ!」

「そいつはどうかな…2段階で囲め、追いつめろ!」

「アニ?」


4つの台形状の影から直方体のパーツがエアリシドを囲み光線を次々に

射出する。


ヒュン・ヒュン・ピブー!ピブ・ヒュンッ・ピブー!

ヒュン・ジュシュウァッ!ヒュンッ、ヒュンッシュンシュンッ!!


「くかかかか!確カニ数増エレバ妾ノ体モデカクナロウタ事カテ当タル

ジャケンノ!サレドコノ程度デハ壁ニ風ヲブツケルヨウナモノヨ!」

「なら、威力は私が補えばいい!」

「ヌウ!?」


「板垣烈震流…八波鉤 (やつはばり)!!」

「チィッ、チョコザイナ!」


逃れようのない魔力を帯びた斬撃の網に対し、エアリシドは肉体を魔力の

霧に変化させる。それは魔の女王の中ではそれなりの切り札だった。自らの

魔力を大気中にある魔力の波に乗せ移動するのはこの大きな肉体では

たやすくはない。だから肉体を再構成したエアリシドはエルゼスからの

追撃を予測し、身構えた。あの空中に浮かぶ魔力射出機を見回し、そこから

光を射出する位置や線を再び確認しようと神経をとがらせるが―


その気配が無い!8つ全て先ほどまで自身の周囲を飛び回り追撃の機会を

うかがっていたはず―


「マサカ!?」

そこまで考えエアリシドは初めてその巨体で後方跳躍を行った。魔力を

霧散させ再構成するには大きな隙ができる為、再度使う事は悪手。この

後方跳躍しかエアリシドには回避手段が残されていなかった。しかし、

時既に遅く。


「もう遅いんだよ。そのデカさじゃ早く動こうが―!」


エアリシドのちょうど胴の上から全身を狙うようエルゼスは彼女の上から

ソル・ヴォルグを向けていた。フレミルが名付けたバスターニクスモードへ

組み合わさったソル・ヴォルグ。そしてソル・ヴォルグを突き出している

エルゼスを空中へ不慣れな飛びかたで一生懸命に持ち上げているベルクを

エアリシドは見―


ドォオオオオオオッ!


ソル・ヴォルグから人数十人は包む太さを持った、破壊の光が放たれた。



「どう!?」


発生した爆発から離れた位置にエルゼスを着地させながら、ベルクは

声を上げる。エルゼスは、彼女に礼を今の内に言っておくことにした。


「すんません、流石に助かりました…兵士さん」

「当然のことをしたまでだよ。それに、ベルでいいよ?」

「…そう呼ぶのは後になりそうッスけどね」

苦笑するエルゼスが見ている方向にベルクが目を向けると


「くぁー!やられた!やられたぞ、大儀だが…不完全燃焼じゃきに!」

「うわぁあい!完全な大ボスバトルはこれからだー!?というか本当に

女王様、ごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいいい!後生ですから

クビにするくらいならいっそ殺してえええええええええええええええ!」


文字通り泣きっ面になるベルク。エルゼスが言った獣=エアリシドだという

事実を本人の目で確かめたのものあって、恐怖は計り知れないだろう。

それとは別の理由で流石にエルゼスも満足していそうに無いエアリシドの

態度に絶句するしかない。そんな時。


「15年となる」


再び声が上空からひびいた。その声にエルゼスが、誰もが上空を見上げる。


ドールモート・ファルチザン―この国におけるもう1つの最強が

ワイヴァーンに乗っていた。


どうやらそのドラグーンは軍用に量産されたものようだが、その操縦者が

この王と…帝国における人間の中で最強と呼ばれる彼ならば。機龍による

力と彼の力の相乗ならばこの女王を律する事ができると。エルゼスは後に

ベルクの口からそれを語られる。ドールモートはエアリシドへこう続ける。


「15年。あの時よりもうすぐ15年となる。その前にさえ忘れたと、そう

申されるのか。あなたという方は?」

「むぅ、意地悪じゃの。覚えとらんわけ無かろう。主らと交わした約束と

これとは全く別の問題じゃきに。まあ、これ以上は戯れが過ぎるかえ」

どうやらエアリシドはもうエルゼスを相手にこれ以上遊べる状況ではない事を

知ったようで。安堵したエルゼスは


ド…


自分自身の意識が黒く閉ざされていくのを感じた。


「エ………!?」


遠く、先程まで殺しあいに近いそれをやっていたエアリシドがこちらに

駆けてくるのをぼんやりとエルゼスは見る。おかしいことでは全くもって

なかった。元より、エアリシドがフォッグファーマシーへ変異する直前には

エルゼスは既に限界に近い状態だったのだから。



エルゼスが目を開けて飛び込んできたのは角の生えた顔だった。

「起きたかや」

そう言ってジト目をしている見かけ少女の女王―エアリシドはそう言う。

頭の後ろに温かく柔らかいものを感じる。どうやら、エアリシドは誰にも

事前に言わないで城の方で好き勝手暴れた反省として一番の被害者である

エルゼスに膝を枕代わりにするよう、ドールモートから言われたらしい。


そう努めて無感情にそっぽを向きながら話したエアリシドを見てエルゼスは

彼女のその顔を見てこうつぶやいた。

「…何かすげー不機嫌そうなツラッスね」

「おんどれ!!」


わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ!!!!!


エルゼスが言った事が図星だったのか。エアリシドが12本の両手の指を

あらん限りに使ってエルゼスの髪を揺すってはワシワシと弄くり回す。全く

どうにでもなれというエルゼスはされるがままだ。そしてそんなエルゼスの

髪弄りが気に入ったのか「フム…」と言いながらワシワシと続ける。確か

セルアもお風呂に入った時に今エアリシドがやってるのと同じようなのが

好きだったようなと思いだしながら、エルゼスは周囲を確認する。どうやら

エルゼスの自室のようで―


「わー!」

どたどたとイアシェ家の1人らしい幼い娘が部屋を女王の間と同じように

駆け回っていた。

「ちょ、あー…」

「呼びようは何でもええぞ」

「お姫さん…その嬢ちゃんは…」

「何ぞ妾と主にも懐きおったようじゃけに、親の所行かないでお主の部屋に

きおったぞい」

「おにーちゃんのへや、なにもなーい」

「下手に本とかさわんねーでくれ。…あーそうだ。その台みたいのに何か

光るの置かれてるだろ?」

「わー、きらきらー」

「持ったまま外に行かなきゃ、それで遊んでな」

それだけ言って視線を天井にうつす。


「エルゼスや。…悔しかったかや?」

「何が?」

「妾のモノになってほしいという独善の押し付けじゃよ」

「……」

エルゼスからはエアリシドがどんな顔をしているのか見えない。胸の影に

顔が隠れて全く見えていないのだ。この国を作ったというエルゼスの同郷と

呼べる魔族。そんな見かけ少女の彼女が今何を思っているのか、エルゼスは

考えかけ―また意識が闇に落ちていくのを感じる。今度は眠りの闇だ。


「…闇と言うのは元来邪悪なものを指すものだが、もう片方で安息なども

意味する。また、一面しかないようで隠れた何かを暗示させることもある」

「含蓄かえ?」

「ああ、今も本は今遊んでる奴の前に置かれてる」


「なあ、お姫さん」

「ん?何ぞえ」

「膝痛くならないか?」

「クカカ。若造がいらぬ気を回しおってからに」

そういってエアリシドはエルゼスの髪を軽く撫でる。彼女が笑ったのだろう

彼女特有の笑い声を聞きとどけたのを最後に、エルゼスは眠りの闇へと

落ちていく。そして生徒裁判の日は終わりを告げた。


リアルの事情で色々と厄介なことになっているので、これからは投稿が

更に遅くなるかもしれません。楽しみにして頂いている方には本当に

すみません…


次回は…結構早めにお届けできると思います!!

データだけなので…(苦笑


ちなみに次actの予告をあえて短くしました。これはまたいずれ。

期待して下さい。


―次回予告―

「オレがお前に挑むのではない。…お前が俺に挑むんだよ低能」

そして最後の学園騒動が始まる―


次回act13:無謀と策謀「最後の挑戦」


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