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act10:裁判「権力・疑問・答え」

今回試験的に【振り仮名を一切入れない形】であげました。

その上で出来れば感想・意見のある方はお願いします。


何はともあれ今回もいい読書を。


注意!:今回も一部惨酷でグロい表現や、15才未満の方々を対象に

断らせてもらう性的な表現が文内にあります。14才以下の方や上記の

内容に嫌悪・抵抗のある方はページを今から閉じるのを強くすすめさせて

頂きます。


私、ベルク・イタガキはそれと言う事は無しに普通の剣道の家で剣の修業を

させられ、普通に自警団として町で魔物の相手にして恐れられ、普通に

央都へ軍の入隊令を受けた頭の悪い以外は普通の女の人…です。少なくとも

私自身はそう思っています。今日の朝からある任務は城の一室へ3人の

少年少女をお送りした後、扉の前で正午まで各拠点と同じように警戒態勢を

2人組で取るものでした。


それを何でどうやったら私はこんな所にいるんだろう?今私は何か黒い

水たまりへ足をほとんど突っ込んだような所にいました。黒い波は時折赤い

目の様な光が浮き上がってて、すごくこわい。何か私を離さないとでも

言うように黒い水面まで浸かったへそから下までが私の体じゃ無いみたいに

全く動かない。…本当に一体何なのここ!?


ズリョオォウォォォオオオオオオ…


…シバラクオマチクダサイ。ななな何か分けわかんない音が左右両方から

したんですけど!?いや、ほんと状況ノックリアーとかそういうチャチな

ものじゃないっていうかぁー!?応答!応答せよ!これは何かの演習で

ございますか!教官!?私気がおかしくなりそうですぅ!そして私が結局

こわいもの見たさに左右を見回してみると。


どちらからも黒いウネウネした植物のツルみたいなのがカベを作ってる。

それが左右両方から同じ速さで近づいてきていた。…こういうの何て

言うんだっけ。そうだ、触手だ。…SYOKUSYU!?アイエエェェェ!

ナンデ!?ショクシュナンデ!?ちょっと待って、本当にこのまま私この

カベみたいになってるあのウネウネした気持ち悪い何かに左右から逃げ場も

無く挟まれちゃうのぉおおおおお!?いやあ迫ってきてるぅううう!


水面に足とられて何か動けないしいいいいい!これってあれ!?このまま

触手のカベに囚われて大人の人じゃなきゃ読めそうにないアンナコトや

コンナコトをされちゃう寸法でございますかあああ!?


このまま触手みたいに心ごとおかしくなって果て狂う末路ですかあ!?

二十すぎたばかりの花の乙女にこんなワケワイカナラなところに閉じ込めて


あ、ちなみにワイカナラっていうのは私の故郷にある特産物で種がたくさん

入っているさやを塩漬けして茹でるとおいしいのですよ!あ、話それた。

こういう時はあれですよ。ボンノー退散!ドーマンセーペナ!あれれ?

違った?何、気にすることはありません。細かい気配りはいらんのですよ!

…いやいやいや待って待ってホントに迫ってきてる。何かすごいピンチとか

ホントシャレにならんでしょ!?あかんでしょ!?


うおおい!神様ぁ!?私何かあなたに変なことしてしまいましたか!?

ちょっとこんな事になるとか誰も全くもって予測不能ですよぉ~!?これで

どうにかなっちゃったら末代まで化けてたたってやるぅ!


これってあれですか、救いの糸が何かの手違いで天国からやってこない

地獄からの脱出ゲームですか。あれ、糸がやってこない時点で詰んでない?

ゲームにすらなってないのでございますのよ!?あ、私そんな人物像じゃ

決してないから。分かってやってるから。…それどころじゃない!?!?


いやああああ、ちょっと待って!こんなわけのわからないところで私の人生

おしまい!?せめて憧れのエッチェンバルグ中佐様をお姉様と呼び慕える

仲になるまでは死ぬ気ないから!?そんなバカなこと考えていたその時!


『生きてますかい?これから痛くなるけど我慢してください。今、そこから

助け…』


てんから すくいのこえが きこえてきたぞ!やりました!封印がどうやら

とけられたのですね。え、何のフーインかって?そんなの何もないですよ

言わせないで下さい、もう恥ずかしいったらないです。今時こんなのは

たとえ中学生でもやりませんよねー。そして私の頭上から救いの光となって

やってきたものは!


降ってきたのは赤い光の雨でございました。え、何これ。地獄やらの底に

囚われていたと思ったら火山の精霊軍か何かが牢のあるここにまで

侵略してきたみたいな。あ、カベの黒いのがどんどん溶け落ちていってる。

私は何もできないままそれを見てええ!?この赤い光私まで浴びてるじゃ

ありませんかぁあああああ!?しかもすごい痛い!?つまりこれはキル・

オア・ダイ!?…あれ、でも、何だろう?


何か…さっきから黒い水に浸かっていた自分の腰から下が自分のものじゃ

ないみたいな違和感が無くなって私自身のものになっていってるような…?


…うん、もう何が何やら。私、考えるのやめます!!


『歪んだ部分を恐れないでください、それじゃ…』


うん、もう何でもいいから―ここから私を早く出してええええ~!!


そんなこんなで私は央都に戻ってきました…でいいのかな、それでいいや。

えーと後は…私なんかチュウトハンパに人間やめちゃったみたいです!何か

背中の腰辺りからエラみたいな赤い羽根が生えたり足が魚さんの体のように

なったり2本足に出来たりと何か変な風になったけど私は今日もこのまま

何事もなく与えられた任務を全うできそうです。


髪の色のせいで異端とか言われてるけどイケメンの少年とか私が生まれた

この国の女王様とお父さんがいた国のお姫様とも知り合ったりして。本当に

色々あるけどお母さんにお父さん、私は元気にこの央都と言う町で仕事を

頑張っていますよ!



エルゼス達が来た曲がり角の対岸側から来たカドラバの女王―エアリシドは

「フム」と一言発した後に、エルゼスが両腕と右膝で抱えている女兵士を

指差し、言った。

「ちなみに、小童が抱えとるその兵…か?そやつは大丈夫なのかえ?」

「!!」

みると女兵士は口から今も血を流している。そして足にはセルアが気を

失ったのにも構わず黒いモヤが彼女のへそから下をおおいつくしていた。

ただ、それは何か害意があるわけではないらしく。よく見ると黒い部分が

ふれた体の外部は元に戻っていくようだった。バキバキと言う骨のきしませ

強引にも下腹部を元に戻していってるのだろう音がする中、その歪な変化を

エアリシドが指摘する。


「何か変な力が体を侵しているようじゃけに?これは1つ同じような類の

力を混ぜて受け入れさせるとすんなり上手くいんじゃないかえ?先に付いた

力のせいなのか、人間は少しだけやめてしまう結果になるだろうがのぉ」

「カドラバ姫…そんな根も葉もないようなことは…」

エアリシドが言った言葉にヒビキが何か言おうとした時、エルゼスの口から

こんな言葉が紡がれる。

「それが、いちばん、なおせる、かもしれない…?」

「な…!?エルゼス、君は―…!?」

何かを言いかけ―ヒビキは口を閉ざした。


エルゼスの目が充血でもしているのかというほど真っ赤に染まっていた。

女兵士を壁へ人形が座るような姿勢にさせ、自身も膝を折る。ヒビキがふと

気付いてエルゼス達から前の方へ視線を映すといつの間に近づいてきたのか

エアリシドが近くに来ていた。誰も彼もを見下ろすだろう目が吸いこまれる

違和感を覚えそうなほど澄んだ目でエルゼスがしようとしている何かを

見ている。


エルゼス達の後ろへついていた兵士に、女王エアリシド。そして彼女の

お付きらしい気を失ったセルアを肩に担いだ緑髪の男。そしてヒビキが

見守る中で、エルゼスは赤い輝きを放ちながら渦巻く手の平大の魔力の塊を

作りだすと、それを女兵士の体へとあて初める。瞬間、女兵士の口から血が

一気に吐かれる。ヒビキや男兵士が反応するも気管に入っていた血を全て

吐き出せたからか、エルゼスが抱えていた時より呼吸がゆるやかになる。

それも構わずエルゼスは赤く輝く鮮やかな線を引いた魔力の弾を女兵士に

入れるように当てていき―


エルゼスの意識が不意に落ちていった。


(ここは…?)

大抵は無感動なエルゼスも内心で焦りながらもあたりを見回す。そこは上も

右も左もないような黒一面の世界。ただその中で下の方には赤い光を幾つも

灯す黒い沼があり、その赤い光がまるで生き物達の目のような気持ち悪さを

見たものに印象付けているようだ。


その中で、黒いウネウネしたツルの塊が壁の用に集まったものをエルゼスは

見つける。集合体の中心にいる女兵士を今にも挟み閉ざそうとうごめき

迫っていた。下半身を黒い沼に囚われているらしく、女兵士は半狂乱に

陥っているのが動きで分かる。エルゼスは彼女に対し今いる高い位置から

声をかけた。


『生きてますかい?これから痛くなるけど我慢してください。今、そこから

助け―』


エルゼスが言い終える前に声と言うより思念が返ってきた。それはあまりに

あんまりな内容だった。


てんから すくいのこえが きこえてきたぞ!やりました!封印がどうやら

とけられたのですね。え、何のフーインかって?そんなの何もないですよ

言わせないで下さい、もう恥ずかしいったらないです。今時こんなのは

たとえ中学生でもやりませんよねー―


セルア以上に能天気そうなその調子にエルゼスは体勢?を崩しかけた。

気を取り直したエルゼスはひびいてきた頭悪い会話にのまれる前に1秒でも

早く終わらせるよう魔力を開放する。最後に人間じゃない部分の事も話した

時に、エルゼスは自身の意識へと戻ってきた。


「うわぁお、お姉さんと縛りプレイしたイケメン君じゃないの」

「頭わいてんですかい?アンタは」「頭がおかしくなったのか?この方は」

目覚めた女兵士の第一声にエルゼスは予想していたからか、若干速かった。

「何ら頭がおかしゅうなってもうたのかの…小童の手から出たあの赤い光の

影響かえ?」

「あ…はい、意識が城に戻ってきたのかな、私?頭わいてるとかは…私は

昔から頭悪いですよ~高校ギリギリでしたし…え、その子何か頭に角とか

背中に羽のようなエイゾウと言うか何か浮かんでるけど…」

「ここは妾の城ぞ」

「…ウェイイイイイ!?サー!イエス、サー!?ジークカドラバ?!」


安堵と言うか呆れも込め、エルゼスはため息をもらした。先程衝動的に

エアリシドに促がされたまま魔力を作った事と、他の誰もエルゼスの意識が

恐らく彼女の精神内へ入った事に気づいていない事。その両方をエルゼスは

思考のはしへおいやった。片方は落ち着いた後、ヒビキが自分へ問い詰めに

来るだろうと考えつつ、エルゼスはヒビキと共に女兵士の無事を確認する。


エルゼスのしたことはどうやら上手くいったようで、彼女に大した外傷や

異常は見当たらなかった。しかし、女兵士が確認にエルゼスとヒビキを

交互に見ながら話しかけてくる。

「それで…私。まだニンゲンでゴザルか?」

「何とか人間に近い状態にはしたんスけど…どうですかい?」

「んー…何ともない、かなあ?何か体が勢い余って動かしやすくなっている

気はするけど…あれ?」

ふと、女兵士が彼女自身の腰回りに手を当てた。その時


ビョウワッ


黒と赤の液体が濁り混ざった色を持つ魚のエラに似た形状の羽が両脇から

生えたと同時に、足が文字通り魚の体のようになった。見かけからしたら

人魚だが、色合いがあまりにも禍々しすぎた、と誰もが思った時


ビヨォン…


今度は彼女の足が普通の足に戻った。エルゼスは思わず女兵士の顔を

見た。女兵士もエルゼスを見返してくる。お互いに同じキョトンとした顔を

しているだろうと分かってしまった。その間に。


ビョウワッ…ビヨォン…ビョウワッ…ビヨォン…


何かの体操のように女兵士はくっつけて人魚になり、離して人の足に戻し。

それを2、3度繰り返した後、何か閃いたのか女兵士は声を上げる。

「これがブッピガン!!」

「「何をどうやったらその変な音に似た言葉が出てくるんですか?」」

ヒビキとエルゼスの言葉が完全に一致する。


「うん、ええと…まずはありがとう。本当助かったよ。あのまま黒い触手に

あられもない事されてどうにかなっちゃうとどれだけ思ったか!お姉さんは

ベルクって言うんだ。いつかまた会えたらお礼させてよ、お二人さん」

「…エルゼスだ」「ヒビキと言う。私は何もやっていないのですが…」

色々と起きた事に対する興奮がようやく落ち着いたのか、女兵士―ベルクは

礼を2人に言う。


エアリシドと緑髪の男はセルアをベルクの隣に座らせ、中央にあったあの

生徒裁判が開かれるだろう部屋の門へと先に入っていった。ノレットには

今しがたエアリシドの後に廊下を歩いてきた高身分が着用を許される服を

着た裁判官らしき男たちが介抱している。そして今しがた3人は自己紹介を

したのだが、返事に何を思ったのか

「え?も、もしかしてそっちの子はアカナチの―?」

ベルクが何か言いかけた時。


「う…」

ベルクの隣、緑髪の男が置いて言ったセルアが軽く呻き、薄く目を開けた。

「―…セルア…?」

エルゼスが慎重に緑髪の少女の名前を言う。本人である確証がなかった。

ノレットさえ今介抱を受けているという現状を作り出した本人である


「あ…ゼス君?あたし、何を…―!」

エルゼス達がした心配が杞憂だとホッとするのも束の間、セルアの顔が

真っ青になる。

「落ち着け、お前は何も―」

「違うの!」


文字通り泣き叫びながらいつに無い目でセルアはエルゼスを立ち上がり

正面から見る。睨む表情に限りなく近い、泣きそうな顔で。


「あれは間違いなく!私自身が望んでやったの!あれを壊したくて人には

到底見えない形に壊したいって!体と心が両方そうしようと動いたの!」

ヒビキは顔が引きつる。彼女も父親を少なからず疎んじていた。が、

セルアがそこまで父親を憎んでいたことを知ったエルゼスは


エルゼスは、ただセルアを見ていた。いつもと同じ。鏡で見ている相手を

映すような、表情の無い顔だ。静かで、言った事をあるがままの自然体で

受け止めるように。なおもセルアの懺悔に近い言葉は続く。

「恨んでる、恨んでるんだよ。私、こんな汚くて、醜くて。…酷いんだよ、

酷すぎるんだよ」

ぽろぽろ

セルアが顔をぐしぐしに両手で落ちてく涙を隠し、言う言葉に

「だからどうした」

エルゼスは直球の言葉を言った。


「気持ちって言うのは時に酷いものを俺らに与えてしまうものだろう。

それを御するかも呑まれるかも本人のこれからの気の持ちようじゃないか。

でもって、それでもだ。いずれ力にのまれちまうようでも、生きていてさえ

くれれば。嬉しく思うヤツがいるんじゃないのか」

唖然としたセルアとヒビキの中で、まず言葉を発したのはヒビキのだった。


「君と言う人間はな…」

「まあオレの意見が自分の私見なのも知ってやすぜ」

とわざとらしくそっぽを向いたエルゼスに「ゼス君!」と飛びついたまま

バランスを崩したエルゼスごとまた共倒れしたセルア。そんな3人を見て。


「フッ」

ふらつきつつも壁に手をかけ、余裕ぶり得意顔をしたノレットが3人を

見下ろしていた。



「ノレット・イアシェ様の処置が完了しました。どうやらショックで気を

失ったのが大きかったためか、出血も少なく外傷も然程ありませんでした。

そういうわけで今回の法廷を開始いたします。被告人、前へ」


そう言われ、エルゼスは中央の被告人位置に立つ。ノレットの親族がいる

傍聴側から。「あのおにいちゃん、なんでしばられてるのー?」などと

いう言葉が聞こえた気がしたが


「フフフ!」

「…」


気を良くしたのか、機嫌よく笑ったノレットごとエルゼスは無視した。

何を思ったのか裁判官まで口元をゆがめているのを隠していない。予想した

とはいえ呆れるほどの用意周到さだった。3人で目配せする。「恐らく

味方はいない」という意味を込めて。裁判官の声が響く。


「罪状を説明します。エルゼス・クォーレ。貴族イアシェ家次期党首様の

ノレット様に対し、不敬かつ物理的暴行及び関係者への危害、とあります。

では、被告人側。何か意見・申し出があるならどうぞ」

「はい。まず関係者への危害とありますが―」

ヒビキが事を言い終えるよりも前に。対岸側から嘲りの笑いがもれた。


「フッ」

「イアシェ卿、何かおかしな点でも?」

ヒビキの問いに対し、もはや言葉の暴力とさえ言える言葉がノレットの

口から発せられる。


「フッ、初めからお前たちの言い分は無効である。どうもこうもない、俺の

言っている事全てが正しいという事だ。弁護人である生徒会長殿は嘘八百の

証言をしている。―事実だ」

「一体何の―」

「もう何を言っても無駄なのだよ、タカナシ生徒会長殿。そいつは死ぬ。

これはその確認なのさ」

『これは事実上の私刑で、被告人は死刑ある』それを言葉通りにノレットは

付き付けた。これでこの場は終わる。傍聴のイアシェ一家に裁判官、そして

ノレットが確信した時。たった一人しかいないエルゼス側の傍聴席の方から

呟きがもれた。


「どうして…?」


裁判官たちがセルアをとがめる前にノレットは余裕の態度はそのままに手で

「必要無い」と制し、瞳を細めてセルアを見ながら言う。

「何だいセルア?許しを請うのなら今の―」

ノレットの言葉が言い終えるよりも前に。セルアはノレットの言った事と

然程変わらない爆弾を投下した。


「ゼス君が死ぬくらいならまずあなたから原形ないくらい壊れるんじゃ?」


傍聴者側のノレットの親族がいる場所、そして裁判官がざわっと騒ぎ出す。

「一体何を―」

「ううん、あなたの言葉なんていらないよ」


「有無なんてない。あなたみたいなのが有無なんて言わせないものがあると

そういうのなら、まずはあなたの方が先に有無も言わさず好きにされる筈。

そうでしょう?」


「君はさっきから―」

「元々あたしはあなたがどうなろうと知ったことじゃないし、どうでもいい。

後そっちにいる人達が何を言おうがあたしはやめるつもりないよ。元より

弁解や話すらさせないつもりだったんならそこにいる人達は全員初めから

必要ないでしょ」

「何だそこの娘は!直ちに―」「傍聴人、発言が許されていない場での

意見は…」と裁判官の方まで


「うるさい」


言ったのはエアリシドだった。ため息に近い落胆が若干混じっていた通り、

彼女の顔には失望の色が濃く浮かんでいる。彼女が座っているのはセルアや

ノレットの親族がいる傍聴席から見て一番上の中央、裁判長席の更に上に

置かれていた席に陣取っていた。傍らにはエルゼス達が初めに見た時と何も

変わらず、セルアの父親が直立している。魔の女王はなおも口調に落胆を

込めながら裁判官たちを見下ろし言う。

「主らはなんぞ、年と肉だけふくれ上がっただけのただの子供かえ?仮にも

そこな娘は言った通り主らがやろうとした事をただ単に言い返しただけぞ?

まさか、そこな小娘の言い分に間違いがあるのかや?反論できぬのなら

妾が頭から食っても変わらないと言う事じゃけ?」

裁判官たちは顔を赤くしたり青くしたりして口を閉ざす。セルアはそれを

気にすることなくこう続けていた。


「でもね、あたし一応提案があるんだ」


「何?」

セルアは顔でエアリシド―正確にはその隣の男―の方をうながし、余りにも

この場には合わない言葉の爆弾を更に投下した。

「あれが壊れて人の形保てない位グチャグチャのバラバラになるというなら

イアシェ君の言い分考えてもいいよ。あくまで考える程度だけど」

よりにも寄ってセルアは、自身が持っている殺意を何のためらいもなく

表したのだ。


「お前さっきから、何の権利があって―」

「イアシェ君もさっきから権利権利って言ってるから使わせて貰うね。何の

権利があってあたしのゼス君をあんなにしたかな?」


「お主、一体何をやっとったんじゃ?」「……いえ」という女王と従者の

短い会話も無視しセルアは続ける。


「これでも考えたの。あたしの事を肯定してくれた2人の為に、あたしが

持っているものここで出しとこうって」


「だからお前何―」

「言わないと分からない?」

表情を変えずにセルアは言う。


「イイナズケって立場の言葉なりに考えた結果なの。だってイアシェ君、

その程度しか使えそうな所無いじゃない」


ビキリ

なんの音かと一同がノレットの方を向く。ノレットの顔は誰がどう見ても

分かるほどに憤怒の感情で引きつっていた。そして音の正体は―彼が右手で

握っている鉄の囲いが罅を作った音だった。場が恐怖にざわつきを止める。

そんな中で


「カカカカカカカカカカカカカカカカカカ!何ぞこの無様な小童は!こんな

顔芸が出来る玩具が妾の国にあるとのお」

「な…!」

「「「…」」」

今笑ったエアリシドにセルアの発言を静かに聞いていたヒビキとエルゼス。

そしてエアリシドの傍にいる緑髪の男。初めから無言だった3人の視線が

ノレットに集まる。目が表している感情は全て無感動だった。そしてそんな

ノレットに目もくれず一番部屋の上にいたエアリシドにセルアは答える。

「あたしもそう思いました。イアシェ君の百面相くらいは面白いなって。でも

それくらいしかイアシェ君には何もないんです…ん、あれ?何かあの人?変な

角生えてる…?高い場所にいるから偉い人なんだろうけど…」

「セルア、さっきから―!」


とことんノレットをコケにし、視界の外に置き始めたセルア。そしてそんな

セルアを目の敵にし、本来の目的人物を見ないノレット。もはや場は裁判の

形を保っていなかった。元よりノレットの私情―恨みで設けられてしまった

私刑の場だという事。それが完全に明るみになった。一人の少女が投じた

爆弾によって。


だから、この後静かに響いた言葉で。この場は急速に収拾される。



「「それで、茶番は終わりか(え)?」」


「あ…?」「うむ?」


エルゼスとエアリシドは同時にいい、同時に互いの目を合わせる。片や

エルゼスは、これ以上繰り返してもセルアの立場が考えものとなるだろうと

思い、軽くノレットの怒りの矛先を変えようと思い立ち。片やエアリシドは

この文字通り茶番劇も十分楽しんだし、そうさせた褒美くらいは【全員に】

与えようとごう慢にも言おうとし。それが奇跡的にも同じタイミングで口から

出たのだった。そして互いに互いを見続けどれ程の時間が経っただろうか。

エアリシドの顔がキョトンとした表情から目を、口をこれでもかと細め

ニマァと言う音を立てつつ笑みを形づくり―あらん限りに破顔し爆笑した。


「カハハハハハハハハハハハ!これはユカイ、余りにもユカイじゃよ!!」


カハハハハハハハハハハハハ!!…ケェハハハハハハハハハハハハハ!!!


笑う嗤う哂う。魔族が笑い哂っている。今にも笑い転げ座っている席ごと

後ろへ倒れてしまいそうなほど、エアリシドは笑い続ける。痛くもない筈の

腹を6本指の手で抱え人では呼吸の続かない笑い声をいくらでも伸ばし、

エアリシドは笑う。そうしてどれ程エアリシドが笑ったろうか。笑い声は

「クックッ」と言うそれへと変え


帝国を統べる魔族は平民の青年を見下ろしこう言った。


「のう、小童ぁ。もし完全に死刑判決が出ているようだったらお主、どう

動いていた?」

「判決出る前に魔力全開で肉薄した後にノレットの体ごと縛られたこいつで

思いっきり原形なくなるくらいまで潰していた」


そう言ってエルゼスは肘あたりまで縛られた自分の腕を掲げる。それを見

エアリシドは再び「カカカカカ!」と笑った後、エルゼスから来た返答に

満足したのか、次のように言い放った。


「いい、いいよ小童。お前はすごい愛い子ぞぉ。よかろう、お前はこの先

何があっても妾が愛でるとしよう!何があってもそれだけはどのような

間抜けうつけにも文句を言わせん!妾がこの帝国の王である以上はな!!」

「な、何を言っておりますか、女王陛下?そんな…」

「知るかぁああ!貴様、誰が喋っていいと言ったぁあ!そして誰に今何を

喋ったあ!?」



「妾が、この国の王ぞえ!!!不満があるなれば、己が力で妾を殺し王に

なってから言ってみよ!!でなければ主が力尽きるのみよ!!!」


ドウゥン……ッ


そう言いエアリシドが座り組んでいた足をまるで暴君のごとく盛大に広げ、

座りなおしたと同時に。彼女は自身が内に秘めていたのだろう濃密な魔力の

霧をあらん限りに吹き散らした。霧の一握りでさえエルゼスが持つ魔力の

倍はあるかもしれない魔力の霧は茶番と評したこの場をおおいつくし。


ノレットが、ひざまずいた。当然だった。顔色が青いのは先程言われた

言葉よりもエアリシドの体から放たれている魔力に中てられたからだろう。


裁判を取り仕切っていた者たちも含め30近いこの茶番の参加者の誰もが

気を失いそうな顔で苦しみ、机にひれ伏したり、うずくまるといった惨事の

中で。


たった5人だけが無事だった。


1人は当然ながら、セルアの父親だった。何も起きていないかのように

直立の姿勢を一時すら乱していない。裁判がこうなるまでの間エアリシドの

傍に置かれた彫像のように。ずっとそのままだった。


残り3人は当然ながらエルゼス・セルア・ヒビキだった。ヒビキも少しばかり

青い顔をしているが、他の者のように今にも気を失いそうにうずくまりは

していない。エルゼスはセルアに驚いてこそいたがそれだけだった。そして

セルアは彼女の言った事を自然にぼんやりと聞いているだけで。どうやら

先ほど彼女の魔力に中てられたのが彼女が現状無事であるという理由だった。


そして最後の一人は。ノレット側の傍聴席でたった一人「わー!きらきらの

もやもやー」と魔力の霧を一部持ち、自身の顔の前で掲げて見てはしゃぎ

回っているこの茶番場で一番最年少だろう幼い少女だった。


―act11へ続く―


少しだけ悩みがあって今回はこういった形となりました。はー、ここまで

来たら後数話で【あいつ】が出てきますよ。………出せたらいいなー


そういう事も期待しつつ次回にご期待下さい!1週間前後で投稿予定です


―次回予告―

思い知る。そして思い知らされる。敗者は当然と置き去りにされる。

「何ぞ、この集まりは根性の無いのぉ。のうセヴァルや。こ奴ら本当に主の

目に叶った者ぞ?」

「…自分のミスだったようです。申し訳ありません」


戸惑う男約1名

「こやつ、本当に男かえ?よもや…」

「ゼス君ですから~♪」

「彼だから仕方ありません、エアリシド陛下」

「…何だ、何納得してんだ?」

「おにいちゃんざんねん~?」


そして魔の女王は語る

「妾は【2代目】じゃけ、初めに生れた【それ】には敬意を払う。それは

今も変わらんよ。だからこそ―な」


時は移り、昼の前。揺るがぬ王はある言葉を口にする。


「では、エルゼス・クォーレ。お主に妾の生涯で少ない…本当に少ない

【お願い】をさせてくれ。―妾と戦れ」


城のある場所で少年は―


次回act11:おもちゃ箱のような灰色の庭で「戯れと」


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