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Exact:3・4英血と巫女「プレイ オブ ザ フューチャー」

今回はエルゼスの過去に加え、軍部で起きたある人のお話です。


ちなみに後の話は次回と時間軸が合う部分があります。

楽しみにしていて下さいと、今回もいい読書時間を!



◎:今回も一部惨酷ざんこくでグロい表現や、15才未満お断りの

性的な表現が文内にあります。14才以下の方や上記の内容に

抵抗のある方はページを閉じる事を今からすすめさせていただきます。


*Exact3―エルゼスの見たもの「そして少年を世界はもてあそんだ」


物心がついた時に 親父が死んだ。


オヤジはちいさいおれにいろんなことをおしえてくれた。


かつての せかいのきおく。まじゅつとまほう。さまざまなばしょと。

ひとのおもいや いきざまとか、そういった たくさんのものがたりを。


いろいろつたえて、オヤジはしんだ。…【あいつ】にはりつけにされて、

みんなの めのまえで。


「これはかがやかしい みらいへの、きぼうのともしびとなろう!われらの

くに、カドラバに えいこうあれ!」

そういって、そいつは オヤジがはりつけられたジュウジカに ひをつけた


もえている。おれのオヤジが、うなだれた すがたで これでもかと

いうくらいに。ただそれを おれは みることしかできなくて、ちかくで

【あいつ】のわらいごえが こだまする。


からだが もうかたあたりまでしかない じょうたいになって。オヤジは

わらった。おれをみて、1つのことばを くちでしめした。


いきろよ


この世にはたくさん、生きて見つけるにたる宝石のようにきれいなものが

たくさんあるって。オヤジが最後におれに教えたことだった。




今日は、軽くですんだ。あの日からだ。あの日から、なぜかいろんな

やつらからぼうこうを受ける。おれのかみがイタンだ、イミゴだといやな

目で見られる。


なぐられるたび、けられてふみにじられるたびに思った。


痛い、何で。何でおれがこんな目に、おれのまわりがこうもおとしめられ

痛い思いをしなければならない。おれ達が一体何をしたというんだ。何も

してないおれ達をどうして。


そう思うおれを、あいつらはすてた、この場所に。そして見て見ぬふりを

するんだろう。子供らしく。皆で見ぬふりをすれば、大人たちも仕方ない。

ましてや、そのタイショウはイミゴだ。本当にどこまでも何てひどい

あいつらだ。これはあいつらの実験だった。魔物がいると言われる山。

そこにイタンジと呼ばれるおれを捨てて、どうなるのか。そんなこと、

考えれば分かるものをおれを使って楽しもうとしているという。

ていこうできないようさんざんなぐるけるをしてふんだ後に、だ。本当に、

本当に人のかたちをしたバケモノだと、これからはあいつらをそう

見るようにしようと思いながら


ゴォルゥルルル…


うなり声、近くで複数ひびく足音。数ひきでむれてきている。おれは

タダでも満足に動けない体なのに。


もうだめかとおもった、その時に


ガサッ


「エイユウはこの村…いけない、町にいると聞いたけど。そんな簡単に

見つかるとも思えないんだよね…ん?」


あいつとおれは 出会ったんだ。



「私、ムル。あなたは?」

「…ゼス」

言葉は 名前だけしか出なかった。目の前にはチだまりがあるのに、平気な

顔で目の前の、同じ年くらいの女の子は話しかけてきている。こうして、

家族いがいの人間とまともに話をしたのはいつ以来だろう。心のどこかで

そう、思いながら、生き物でなくなったそいつらをゆびさす。「ん?」と

彼女はふり返った先には、バラバラの肉のかたまりになった何びきかの

犬と言うには大きい化け物の首や手足が転がっていた。それを見て

「あー」とか言った後に、彼女はこちらへ向きなおりこう言った。


「ここで、この子たちのカテとなること。それにあなたは何か意味を

もてていたの?それよりも―」


「私としては、あなたと会えたことがステキだと思うんだ」

そういいながら彼女がさし出してきたその手を…おれはにぎった。


「見つけたー♪やっぱりここだったんだね」

「…すげえ」

…彼女がはしゃいでいる。とうぜんだ。目の前にあるコウケイにおれも

おどろいた。「ねえねえ、こっち来てー!」とおれの手を引き、つれていく。

月の形にわいきょくしたかこい。そのかこいの中央で石づくりのドラゴンが

大事そうに自分の体と同じくらいの玉を抱えている。するどくとがった

やいばのような羽が1ついに、それとは別のかたから生やした羽を

2つい持つそんなドラゴン。そのドラゴンがかざられている場所のななめ前に

置かれたせきひにはなにかみょうな記号がならんでいた。


よく分からない記号の列を、ムルは読めるらしくこう言った。

「紫鏡の守刃龍―エイキドゥと読むみたいだね」


こう言った場所を見つけるコツとか、むかしの人の話やちしきとか。

ないようが読めないむずかしい本も読んでくれた。まるで、おれを自分の

子供のように。何でだ?と思いつつ、彼女から感じる何かに安心して身を

あずけているおれ自身がいるのを感じていたその時。


ガサッ


聞こえて来た物音に2人でそちらを向く。現れたのは―


「やはりこの辺は何かいるようだな。原因となるモノは―と?」

「おー」

「…」


3人の男女だった。ブソウしていた。




「おれは、アルメド。ボウケンシャっていうのを後ろの2人とやってる。

ボウズとジョウちゃんは?」

「…ゼス」

「ムルでーす」

彼らはボウケンシャと呼ばれるものだった。何でも、おれがすむこの町の

まわりで最近巨大なバケモノが目げきされたらしい。そんなイライという

トリヒキを持って、彼らはおれたちのいる北東のはしっこまで来たらしい。

おれは話を聞いてみる。


「ボウケンシャってどんな所にも行くのかよ?」

「ああ、君もボウケンシャになり望めばどこへでも行けるだろう。

目ざせば、きっとなれるかもしれないしね」

「ふーん…」

そんなツゴウのいいものがあるわけないんじゃ?思いいながら。かこいの

中でドラゴンのとなりにおれが背をあずけると、いきなり空に文字が

うかび上がった。


―Blood type:Errand・N―


「ブロードタイプ、エレンド・エヌ?何だこ―」

いい終える前にまわりの空気がふるえだす。子供のおれでも分かった。

しだいに空気のふるえは地面のゆれとなって。


グアァァアアアアアアアアアアアアッ!


「な!?」

「まさか…!?これ…」

「ひ、ひぃ!?」

「あれー?」

「…!?」


山々の草木をけちらして現れたのはそれこそ毒色というむらさき色の巨大な

獣だった。体のはしが炎のようにゆらめいているにもかかわらず、巨大さが

こいつのソンザイ感やイアツ感、またキョウ悪さを表している。こいつは

キケンだ。子供のおれでも分かった。


逃げようと、おれが下がったところに、ザザッとまるで立ちふさがるように、

前へ出たかげが現れた。アメルドだった。


「こんなヤツがここにいたのか!アローナにレヴリー、いつも通りの作戦で

行くからな。サポート頼むぞ!」

「う、うん」

「任せて!君たちはアイツからとにかくはなれて、ね。」


そう口口くちぐちに言い、ボウケンシャの彼らはそれぞれのブキを手に

ミダレがない動きでやつに向かっていった。


たたかいはどう見てもアメルドたちがユウリそうだった。アメルドは

よゆうを持って、あの巨大な体からくりだされる数々のこうげきを

おれでは分からない動きでかわす。傷ついても後ろにいるアローナって人が

傷をいやしてくれているようだった。アローナさんは傷のかいふくにくわえ

あいつがすきを見せたところをゆだんなくマホウでダメージをためていく。


まるで夢のようなたたかいを見ているようだった。

「すごい、あれが…」

「ボウケンシャさんたちの戦い、なんだね」

そんな中でおれはふと気付くものがあり、あたりを見回す。


「あれ?さっきまでいたレヴリーってのは?」

「え、あれ?どこに―」

そうおれとムルが口口に言ったその時


ひゅん


「あ…?」

「え?」

「え?」

「―?」


ブシッ

ピチャッ


ムルの右の顔半分が、おれの血らしいものでそまった。

ふと目を落とすと、おれの首に木が生えたように矢がささっていた。

そしておれは今日再びわけも分からないまま―たおれた。


「そいつは――、―――――――――――――――――――――!」

「お前一体―!?」

「あなた、自分が何を―」


遠のいていくイシキの中でさけぶ声と、


ジョボン

グチ…


何かがはじけた音と何かイブツを入れる音、そして最後におれの首へ

【何か】がうめこまれる感じがして。おれはいしきを手ばなした。




「おはよう、キゲンはどう?」

あいつの声におれは目をあける。目をあけられた。とうぜん信じられない。

おれはあのボウケンシャの1人が放った矢にころされたんじゃ?

「…おれ、生きて…?」

「うん、少ししちゃいけないずるっこをしちゃったけどね」

そう言ってムルはおれの首にふれる。と、何か【おれの首から生えた

出っ張り】が彼女の指にふれたというのが分かった。おれは気づいた。

おれとその何かが組み合わさって、おれは生きているんだと。ムルを見る。

彼女は、おれがそのことに気付いたのを知ったのか、うなずいた。


その後、何日か彼女はおれのヘヤに遊びに来て。たくさん話した。たくさん

外ではしゃいだ。あのでかいバケモノはいなくなった。あのホコラと呼ぶ

それを、おれたちだけのヒミツ基地にした。そして。


彼女がこの町を出る日が来た。ムルはおれの首に羽のようなハリのもようを

つけた小さなお守りを首にさげた後―おれのほっぺに軽く口付けた。

おどろいたおれに彼女はえがおで言う。


「またかならずここに来るから―ぜったいにまたあの場所で遊ぼうね。

ヤクソクだよ」


これが俺の始まりだった。


必ずいつかブッつぶしてやると決めたもの

必ずまた会うと決めたもの

そして綺麗なもの


その俺の中にある行動原理は―今も変わっていない。




*Exact4―黒の過ち「与え子の覚醒めざめ


小さい頃、私は自分が持つ【それ】の意味を全く知らなかった。父上に

聞いても「知らないほうがいい」とだけ言われた。そしてその後に必ず

「それは無闇に使うものではないよ」と教えられた。…10の誕生日の夜、

それは嫌という程理解した。


私の家系はある戦争下でカドラバ帝国に知り合いのつてを借り受け亡命を

させてもらえたという経歴がある。そのさいに、おちのびた場所で私には

妹分とも呼べる子ができるらしかった。初めはわずらわしいと思った。


普段から親に自由かつ行動を制限されずに育った私なのだが、子供として

―今の私自身からの見方含め―周りから見るとと恐ろしいほどに常識を

弁えていた。だから、ちょっとしたことで褒めても貰えたし、町でも

大人達から頼りにされることが多かった。その分、子供たちにも期待の目で

見られる半面、ヤキモチなどうらやましがられる目で見られるのが

苦手だった。


その子に会うまではそう考えていた。そしてその子と親たちが住んでいる

町へ来る。初めに驚いたのはこの町の管理を夫に任されていた母が

病死したという話らしい。


その子を初めて目にした時 私は 衝撃と言う言葉を 連想した。その子は

病弱だった、というのは聞いていた。だが、彼女の部屋に入った時部屋の

中央に置かれたベッドに上半身を起こしていた人影がこちらを向く。顔が

引きつった。彼女のうつろな目は私の持つ【それ】よりも果てしなく黒く

昏い何かだった。そして固まった私に彼女はこんな事を言ってきた。


「おねえちゃん、だれ?あたしをころしにでもきてくれたの?」

私は口を動かすが…言葉が出なかった。こんな5つもいかない子供が自分を

殺す等と口にしたのだ。私は言葉を頭の中で探し、こう言ってしまう。

「君は死なない、死んでどうするというんだ」


「しねば、バカにあわなくてすむの。おかあさんのところへあたしがいけば

あのバカも、すこしはキをおとすとおもうし」

「バカ?」

「おかあさんがしぬとわかってみすてた―おとおさん:バカ―」

「父親…か?君の父さんは―」

「おなじチをもっているとおもうだけでからだじゅうからぬきたくなるの。

おねえちゃんがいうふうに、いうキにもなれない。…いっそしんだあとの

ことは、さっきいったようにしてもらおうかな」


どうやら彼女は家から出られず、母親に本ばかり読んでもらい暮らして

いたそうだ。だが、母親が死んだのを父親のせいだと勘違いしているよう―


と思ったところで、思考が止まる。よく考えてみればおかしかった。私と

私の親がここに来たのは紹介があったからだと父は言っていた。ではその

彼女の父親は今何をしているのか。ふと、とうとつに彼女の部屋のすみで

現れた気配に「誰だ」と私は言う。姿が見えるようになった影は少しだけ

芝居がかったように私にこう言った。


「おお、これはこれはアスカレナお嬢様。お待ちしておりました」

少し背筋がふるえるのを私は自覚した。この燕尾服を見事に着こなした

老人は全くの気配なく、そこにいた。まるで実体のなかった幽霊のように。

そして、私の名を知っていた。いやな予感がさらに頭の中で回りだすのを

私は無理やりに無視しつつ、老人にたずねる。


「あなたは一体?いつから…」

「私の名はモルドスと言います。この度、アスカレナお嬢様の執事を

承りました。以後お見知りおきを願います。今日からこの館はあなた様と

ご両親様がたの家となるのです」

「どういうことだ?」


「この町の名は、あなた様がたをお迎えした今日よりエッチェンバルグと

なります。元よりここはあなた様を次期党首とした町でございます。そして

テルラスクという家は元よりこの町には無かったのです」


私の悪い予感が、その答えをみちびき出したのと、この老いぼれがそれを

言ったのはほぼ同時だった。


老人が言った事に何の反応も示さない彼女もつげた後に表情をにこやかで

変えないこの老体。そして表情をうかがわせないように、ふせた私。次に

口を開いたのは私だった。


「悪いが…その必要はない」

「はて、それはまたどういう事ですかなお嬢様?」

「ああ、ご老体。今さっき私は1つ考えを持ったよ」


「お前、名前はなんて言った?」

「…セルア、です」

少女―セルアは私に敬語を使った。半ばおびえたようだ。無理もない。

自覚していた。私から【あれ】があふれている。気持ちと共に。

「セルア、お前はたしかに死にたいと思ってもいいと私は思った。だが

そうして楽になってお前の母親が納得するか?」

「なっとくなんて、しにんはなにも―」

「それでも問題ないなら、【人間としての生をやめても】問題はないな?」

「―っ…」

セルアは

そして私は10才の時から付けていた眼帯がんたいを外す。


10才となった夜、私は目にしていた。

「ああっ、あ、アナタァっ、ゲァッ、んくっ、ああああ!」

母上が父上に生まれた姿で抱かれている。水音がひびく中、腰をまるで

本能がゆるすままに打ちつけ合っている。それは見れば分かる。

「くっ、大丈、夫だ…!果てれば【これ】は完全に受け継がれる…!

レナには悪いが…」

私はこうした行為の結果生まれたというのも知っている。しかしそれ以上に


私の母上は父上から出ている【黒い何か:私がそれと言っているモノ】に

まとわりつかれ、悪魔のような羽や吸血鬼のような牙、腕には魚のエラを

生やしているという事だ。私はそれから目がはなせなかった。母上は父上に

まるで血を吸うかのように、かみついてさえいた。そしてもうすぐそれが

終わるのを、私は呆然と見ていることしかできないで


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「クッ…!!」


二人の中から頭上へ上った黒いかたまりは私の目に吸いこまれていき―

そして私の中に生れていた【それ】を、私は完全に父から受け継いだ。


ぽた ぽたぽた


その黒い穴のようなそこから流れたのは、私自身の涙なのだと分かり、

後になって少し恥ずかしくもあったが。その時はこの場の不条理に対する

怒りと悲しみで、彼女に【これ】を与えることに集中していた。

そんなこちらの気配を察した上でしてるのか察するつもりもないのか

モルドスが何か言ってくる。

「アスカレナお嬢様、一体どうなさるおつもりですかな」

「だまれ、タヌキ老人が。私はお前が父に雇わせた覚えはないぞ。それでも

私をそういうのならばワガママを2つ聞いて貰う」

私の目と体から魔力としてあふれた黒い色のモヤがセルアを触手で

おそうかのように伸び出す。彼女は身動きが取れなかった。取るつもりも

無いようではあったが。


「1つは、こんな世の誰からも見捨てられたような不幸な娘1人さえも

助けられないままで、この町の主を担うつもりはないという事。そして」

彼女に私からふきでた【それ】がふれ、まとわりついていく、セルアは

何かされるのだと思い、きつく目をつむっていた。最後に私は言う。

「自らが持った娘すら無視した親のツラをおがむというワガママだ!!」


そして【私の中にあった黒の理】は、

彼女に歪と言う名の祝福を与えた。


私は バカだったのだ

だから、あの子に与えた。生きる術を。彼女を未来をそれが壊すだろう

可能性すら考えもせずに、だ。




「警備巡回の再考計画書―だと?」

「はい、ここヴァルガナウフと、他町にある拠点での要望を元に上層部の

皆で話し合い、作りだした計画です。その試験的な初案にまとめた書類を

閣下に届けようと思い、まいりました」


あれから10年あまり、私は彼女との接触を禁じられた。しかし、その

対応に私は半ば安心もしてしまっていた。彼女には彼女なりの人生がある。

それについては【私がよこしたあれ】が最後の障害となるかもしれないが。


そう思いながら私はこの央都で【ある事】を成す為、その一手をこの帝国で軍の総括である征夷軍官閣下、ファルチザン様に届けていた。閣下は

いつもと同じ無表情で私が渡した書類に静かに目を落とし、下の方まで

見終わった後、顔を私に向ける。


「詳細な返答は後だな、今日中には考えを出しておく。早い内が

いいだろう?」

「ハッ、しかとご検討のほどを願いします。レギット卿に【申請した

当人】もそうされれば、うれしいと思います」

「さて、少しさわがしい外の者達に注意をうながしてくるか。その後は

我々も事務処理に回るのを忘れるなよ」

「了解しました」

そうして私たちは総帥の軍務室を出る。時間はもうすぐ昼休みが終わる

一歩前だった。総帥は今も時間通りに指定されているはずの配置に付かず、

休み気分で話を続けている者たちへ喝を入れようというのだろう。軍務室の

外へ出るなり「何をしている」とふだんよりも強くひびく口調で総帥は

言ったようだ。私も前に出ようとし―その動きが止まる。何故なら


かつて部屋の中から出なかった鮮やかな緑色の髪が見え隠れした。そして、

次に幻聴か?と思えるような声が私の耳に入ってきた。


「…おば様」

「…!!」

顔が引きつったのを私は自覚した。何故なら、その3人の中で緑色の髪を

持つ従妹が、髪の一部分を真っ赤に染めた青年といたからだ。そして


ズ…


私の眼帯の奥にため入れた、【あれ】が、うずく。胸をはり、周りに威圧を

作るので精一杯だった。私とした事が、こんな戦場の気配を取り繕うように

使ったのが余りにも恥ずかしい。反応したのは当然だがあの子に対して…と、

もう1つ。目深に帽子をかぶった青年の方だった。何故かはわからないが、

目をそらすようにあたりを見回しかけ―


「…敬礼」

レギット卿が言ったその言葉がなければ私は我にかえれなかったろう。

ただ、その後周りの者達への対応や、ファルチザン総帥にスミス卿や

レギット卿の会話内容を私はあまり覚えていない。仮にも彼らに頼まれた

【例の件】はもう既に総帥へ渡したので後はどうなるかという事だが。


覚えているのは大きく2つだった。「後で覚えておけよ?」とよりによって

私の目の前でここに見学しに来た帽子の青年を―先ほど感じた私の力の事を

抜きで考えるならば中々どうして、鋭い目を持つ好みの子じゃないか、って

私は何を考えているのだ!向こうは恐らく10以上年下だぞ!!?―変な

道へ引きこもうという妙な説明をしだしたアホ大佐へのお仕置きと。まあ

もう1つの方が重要ではあるわけだが。あの子―セルアが「おば様!」と

話しかけて来たことだ。彼女は私の方に来ると頭を下げこう言った。


「ある件ではお世話になりました!」

「ある件だと…?」

「え、ええと…」


セルアが言うに。幼いころの記憶は少しあいまいで、憶えていたのは私が

彼女に普通の人並みに生きる力を分けてくれた事と、少しずつ外で元気に

遊べるようにもなったこと。そして内心肝を冷やした内容がそれから人には

無い感覚を得たという事―【私が与えたそれの影響】―だ。ついで…私から

一つだけお願いをした。一応だ。決して…重要ではない。ほんの少しの…

ささいな事だ。


「すまないが、おば様はやめてくれ…少し傷ついたんだ」

「あ、えと…分かりました、お姉さん」


どうやら奇跡的にも友達に恵まれ素直に育ったらしく、となりの友好国から

いらした姫君もよき友達となってくれたようで心から安心した。私の人生は

それこそ灰色で色気の「い」の字もなかったが、この子は今を楽しく

生きている。私もそれが長く続く事を内心で願った。


私はいずれ、彼女にひざまずかなければならないだろう。そうする前に

他でもないこのセルアのため、と称した私の目的をふくむある事をしようと

考えているのだが。いずれ私は申し子として【あの力】を目覚めさせた

この子に殺されることになっても不満どころか未練すら口にはできまい。


それよりもおどろいたことがある。それは

「卿が、軍へ入るだと?」

「はい、正確にはあそこで話している男の子と共に行きたい、という願いが

あります。そのために…あたしはどんな事でもするつもりです」

「確かに私は卿に生きてほしいと願い、あるモノを使って人並みに生きて

いけるよう助けた。しかし、それと卿が言う人をふみにじってでも卿自身が

願う道を進むと言う望みと…真逆なのをよく分かって、言ってるのか?」

「そうしてでも、誰にも渡したくない綺麗なものや綺麗な人を、あたしは

見つけました。たとえ…お姉さんでもうばわせたくない、そういうものを」


私も軍務はある為、彼女のこの答えが最後だった。きびすを返し立ち去る

直前に、私は最後にこの子に言う事にした。


「セルア、卿は他者を害しようなどと思わないで欲しかった。卿にとっては

生きているだけでも戦いだったのだから…せめて強く生きてほしいとは

思うが、他人を蹴落とすという意味を…今一度考えてくれ」

身内びいきに近い呼び方をしたのも軍人としてどうかとも思い、後で

反省することとなった。



「…状況クリア。交代してくれ「ハッお疲れ様です」その後の一服…とな」

そして久しぶりの再会から1日経った今日。午後の見周りと各方面にある

門砦の直警戒をあらかた終え、私は青空に向けて香吸束のけむりを丸く

浮かせた。その時だ。


「レ~ナちゅぁ~ん」


顔を確認するまでもなくアホ大佐だった。エルシェリッド卿か。ホント何で

こんなのが私より上なのか。まあこういう性格なのかこちらの罵倒を

受け流してくれている分には感謝している。

「よし死ねクズめが」

「アアン、もっとののしって!むしろこのままオレがMにめざめるその

理まで導いてっ!」

そう言い、人間どころか深海のワカメみたいなゆらゆらと体をくねらせる。

…まずい、目まいしてきそうだ。最悪の軽休になりそうだった。と顔が

あまりにゲンナリしたからか、卿の方も感じを直してきた。


「まあ真面目な話するとね。この前の申請、通ったらしいよ。バルク嬢だけ

聞いてないでしょ?」


「でね、中佐どのよ。少しこみいった話で何なんだけど」

表情が一転する。やはりそちらが本題だったようだ。予想はしていたが―

「朝、遅刻どころか体調不良なんてあなたらしくないでしょう?一体何が

あったわけ?」


大佐が言ったその言葉に、思わず私は息をのんでしまった。朝方【それ】は

私の中で暴れたのだ。眼帯が破け、頭の中が、ねじれ弾けるかと思った。

可能性としては…私は昨日会った、笑顔のあの子の顔を思い出す。…私は

知っている。この央都に彼は来ている。彼女は【自身の父親と】―。そう

考えている内に大佐が続けてこう言ってきた。


「忠告だけど、あまりことを急ぐと足元すくわれるよ?」

「…余計なお世話だ」

「これでもオレっちとしてはね~同僚の心配は欠かさない主義なんですよ?

仮にも、同じ帝国のもとに集った同志だし~?」

「ハッキリと言おう。所属不明が何を言っている。生まれはどこだ」

「カドラバ西端の森でボクとあくしゅっ!みたいな~?」

「よし、そこへ逝ってこい。そして魔物の群れとそうしてこい。安心しろ。

卿の骨なんぞ大地の肥料にもならんだろ」

「やだん、オレ嫁いんのにぃ~オレってば、死ぬ時は大切な彼女の膝を枕に

って決めてんのよっ!そして死ぬ瞬間は仮面がパリーンとっ!」

うざい、…ではない。本当にうるさい。目の毒としか言いようがない。

こいつは仲間と思いたくない。真面目と不真面目がこんなに早く

転じてしまうこの男との会話はするだけで疲れるだろう。ただ…まあ


「助かったよ。今の所は問題ないだろう。今朝軽く寝込んだのも、昨晩に

久しく飲んだ酒が予想以上にこたえただけさ」

話を聞かない人ではない。素直な私の言い分に、大佐はまじめに答えた。

「昨日は色々あったようだけど、たまには肩の力ぬきなさいな。まあ、オレの

ジョーダンはそこまで面白くないだろうけど、さ」


得意げにウインクした大佐にため息をつきながら私は言う。

「そういう誠意はあなたの妻や家族に対し、見せるべきではないか?」

「そうしたいのは山々なんだけどね~」

「オレっちも色々あるのよ」と頭をかきながら、手をヒラヒラさせつつ、

私たちがいる頂上警視場を後にした。


今日のこのやり取りより数時間前、大変なさわぎが起きたのを私が知るのは

後になる。思えばこの時から本部であった帽子の青年は―


【act?に続く】

殺人的なK安氏の変態性だ…っ!!!うん、ホントアニメのごとく頭の中で

イメージできちゃうのがこわいよ。今回はそのせいでちょっと書くのが

遅れてしまった部分もあるよ!…うん、楽しかったの、楽しかったのよ!


では、一週間以内に上げる予定のact9予告を最後に

次回を期待していてください


―次回予告―

「私が弁護しよう。―ノレット:あんなの―の好きにはさせんよ」

力強い言葉は形となるに

「へえ、面白そうな。妾もたまにはお前達のすることを覗いてみたいとは

思うぞ?」

「…恐らく、すぐにあきるかと思われますが…しかし、よろしいので?」

容易くはなかった。

「何だ。お前か―」

「―――、――――」

思いよらぬ彼女の衝動に世が残した―歪:しんぴ―が心のかけらから

あふれ出す。

「――、――――――――――――――――!!!」

「セルア!?」

突然現れた破滅への衝動、止めたのは

「余興かえ?妾が止めたのは余計かの?」

遂に現れる最凶にて最強。戦いの次元と生きる世の神秘は無慈悲にも

加速する!


act9:王城へ「黒の―覚醒:めざめ―・帝国の心」


注:次回予告は予告であり、自身の未熟など執筆の都合で、文内容が

変わる可能性があります。同意の上、次回作をお待ち下さい


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