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誇りのための戦い

リディアは男に言われるまま馬に乗って二人乗りで連れて行かれていた。

ずっと無言のまま突き進む。

すると、何かが見えてきた。

それは大きな館だった。

大きさはおよそ東京ドーム1個分。


「おら、ついたぞ。ったく、めんどくせぇことさせんな」


さっきとは口調が変わった男がリディアを馬から下ろして屋敷の中に入っていく。

屋敷の中は薄暗く、あまり周りが見えない。


「連れ戻してきたぜ兄貴」


「ようやくか。まったく、手をかけさせやがってYO」


「じゃぁ、俺は外を見張っとくぜ兄貴」


モヒカン男は外にでる。

リディアは声がしたほうを見た。

語尾がちょっとめんどくさい男が目の前の階段の上に居た。

薄暗くて顔はしっかり見えない。


「まったく持ってめんどくさいNA。お前みたいなのでも最高の商売ができるから逃がさないんだからNA」


「ほんとーに外道ね。私たちの弱点、聖水をばら撒いて挙句の果てには銀の爪で弱らせてこの館・・・・・私の家をのっとるなんてね~」


「なんとでも言え。もうこの館は俺たち兄弟のもんだからNA」


リディアは歯を食いしばる。

ヴァンパイアサキュバスの唯一の弱点。

それは聖水だ。

ヴァンパイアの弱点である銀やニンニクはサキュバスの血により、弱点ではなくなった。

そのかわり、聖水によるダメージは二倍以上になってしまった。


「まったく、こんないい商売道具はどこにもねぇからな」


スカーレット家は代々ヴァンパイアサキュバスの家系。

ヴァンパイアサキュバスの持つ血にはある効果がある。

その効果はある人たちには高く売れる。

この男たちはそれ狙いでこの館を占拠したのだ。


「私たちはあなたの商売道具じゃない!」


「それを言っていられるのもこの時だけだがNA。ちなみに道具が使い終わった後の末路って知っているKA?」


男が何かを二つ投げた。それは階段をゴロゴロとボールのように転がってくる。

転がってくるものは不思議な転がり方をして転がる。

そして、リディアの足元にたどり着いた。


「い、いやぁぁああああああああ!」


リディアが悲鳴を上げる。

その理由はもちろん転がってきたものだ。

それは、首だった。

生首。それが今正しい答え方だ。

男と女の首。それを見てリディアはつぶやいた。


「おねぇちゃん・・・・おにぃちゃん・・・・」


「そうだYO!おねぇちゃんとおにぃちゃんだYO!HAHAHAHAHAHAHAHAHA!」


あざ笑う男。

膝を着くリディア。

目の前に転がる兄と姉。

さらに追い討ちをかけてくる。


「ほれ、それだけじゃ寂しいだRO?」


さらに男が何個も何かを転がしてきた。

それは言うまでも無く、首だ。

それを見たリディアはボロボロと涙を流す。


「おとぅさん。おかぁさん。なんで・・・・どうして・・・・」


「見せしめだYO。俺たちに逆らったらこうなるというNA。それとも、もっと殺してやろうKA?」


「やめて・・・・言うこと聞くから・・・・なんでも言うこと聞くから・・・・お願い。もう誰も殺さないでー!」


ガッシャァ!


リディアが叫ぶと同時に扉が破壊された。

リディアは涙がにじむ目でその方向を見る。

そこには馬車があった。

そして、そこから出てきたのは他ならぬ誰でもなかった。


「私はこの国の国王直属の騎士団団長。不正を行う愚かな者よ。おとなしく降伏しろ!」


そこには剣を抜いたジャンヌが立っていた。

馬車の付近には轢かれたモヒカン男が倒れていた。


「なにしてくれてんだYO。せっかく手に入れた館を壊すなYO」


その男は階段をゆっくりと下りてくる。

その男の顔が見え始める。


「その刺青・・・・・裏密輸商人か」


「ご名答DA」


その男は顔に不思議な刺青を入れていた。

そして、やはり頭はモヒカン。


「はじめまして、俺はサージヴァン。裏密輸商人だ」


その男は階段から降り終えると、足元にあった首を蹴り飛ばした。

リディアは絶句した。

自分の家族を蹴られたのだ。

家族が殺され、辱められる。これ以上に屈辱はない。


「貴様!」


ジャンヌは斬りにかかった。

サージヴァンは腰に手を伸ばして何かを抜いた。

それはシャムシールと呼ばれる湾曲が大きい刀。

それを二本。

ジャンヌはそのまま縦に斬りにいく。

サージヴァンは片方の刀でジャンヌの両手の攻撃を受け止める。

だが、ジャンヌの攻撃のほうが上と感じたのか、すぐに後ろに跳ぶ。


「あっぶねーNA。女だからと思って片手で受けたが、どうやら無理そうだNA」


「なめるな!」


ジャンヌは剣でサージヴァンを突く。

サージヴァンは刀でその攻撃を防ぐ。

ジャンヌはさらに連続で剣を振るう。

右上からの袈裟懸け。

左からの横なぎ。

右下からの逆袈裟。

三連続の斬撃を繰り出す。

サージヴァンはそのスピードに徐々に追いつけなくなってきていた。

だが、その顔は余裕に満ちていた。


「これで終わりだ!」


「そいつはどうかな?」


男は刀同士をジャンヌの目の前で弾いた。

その瞬間、ジャンヌの目の前で爆発した。


「ぐぁっ!」


ジャンヌは後ろに転がる。

直撃する瞬間に危険を感じて後ろに跳んでいたのだ。

そのおかげでダメージを軽減できていた。

だが、


「くっ!どこだ!どこにいる!?」


目の前でいきなりの爆発により目と耳が一時的に使えなくなったのだ。

目の前で爆発したことにより、閃光弾と同じ効果になった。


「惜しかったNA。もう少しで顔がはじけ飛んでいたのにYO。俺の「ボマー」DE」


能力名「ボマー」

その名の通り、爆弾だ。

刀同士を弾くことによって生まれる爆発は強くは無いが、人間にとっては致命傷を負わせる。


「んじゃ、これで終わりだNA」


サージヴァンは刀を振り上げた。

その時、ジャンヌの後方から何かが飛び出てきた。

それは清澄だ。

存在を忘れかけていたが、清澄が馬車から飛び出したのだ。


「おりゃ~」


気合のきの字も無い声と攻撃はいとも簡単に避けられる。

清澄は着地を失敗して床に伏せる。


「ありゃ~ダメかやっぱり」


「清澄!一体どうなっている!?」


「めんどくさいことになっている」


清澄は近くに居たリディアの縄を刀で斬る。

開放されたリディアはふらつきながら家族の・・・・・・首だけの家族の元へ行く。


「おとぅさん、おかぁさん、おにぃちゃん、おねぇちゃん・・・・私、約束破っちゃうね」


そういうと、リディアは清澄の元へ戻ってきた。

リディアはしゃがむと、清澄の耳元でささやいた。


「ごめんなさい。また、あなたの血少し貰うね」


リディアは清澄の首筋に噛み付く。

しばらく血を吸ったリディアは立ち上がってサージヴァンを見据える。


「あなたは私の大切な人を・・・・家族を奪った。それだけは誰がなんと言おうと許さない!」


「はっ!お前如きが何をできるんDA?能力すらないお前GA」


「能力がない?それはあなたたちの思い込みでしょ?」


リディアが手を掲げる。

すると、手から血があふれ出し、それが空中で静止する。

それを見てサージヴァンが後ずさりする。


「私は・・・・私の能力は家族の皆と違って特殊過ぎたの。そしてあまりにも自由すぎるの。だから、使うことは禁止されてた。だけど、今は違う。私は誇りのために・・・・・私の家族の誇りのためにこの能力を使う!」


血が形を成していく。

一秒後、それは槍の形を成していた。


「はぁっ!」


リディアが槍でサージヴァンを突く。

サージヴァンは刀で槍を防ぐ。

そのまま槍を叩き斬ろうと刀をやりに向けて振り下ろす。

だが、斬れない。


「無駄だよ。私の武器の硬度は鋼と同等、それ以上だもの」


「なら、接近戦でどうだ!槍は近接では使えないだRO!」


「それもあなたの思い込み。私の武器が槍だけだというね」


リディアの手にしていた槍がドロッとジェル状になった。

そして、一秒後には二本の短剣になっていた。

いきなりのことで懐に入りすぎたサージヴァンは体勢を立て直せない。

リディアは短剣を下から振り上げて逆クロスで斬った。

サージヴァンの胸にクロスの傷がつく。


「ぐっ!このクソ女GA!」


サージヴァンは後方へ跳ぶと同時に刀同士を弾こうとした。

その前にリディアは再び短剣をジェル状にもどした。


「死NE!」


爆発がリディアの目の前で起きる。

直撃だ。

煙がリディアを取り巻く。


「へっ、ざまぁみRO!調子にのるから・・・・・DA?」


サージヴァンは目を見開いた。

煙が少しずつ消えてきた時に見えたものは盾だった。

血の盾だ。

その盾はサージヴァンが起こした爆発を防いでいた。


「私にはあなたの技は効かないよ」


サージヴァンは床に向けてボマーを放つ。

床が粉々に砕けて煙があたりを包む。

サージヴァンはその隙に、柱に隠れる。


「じょ、冗談じゃねE。なんなんだよあいつの武器HA!」


リディアは再び血をジェル状にする。

次に作り出されたのは弓と矢だった。

それをゆっくりと構える。


「どこに隠れても無駄だよ。最後に私の能力を教えてあげる。私の能力は「ブラッディカスタム」。血を媒介にしてさまざまな武器を作り出す能力」


狙いを定める。

そして矢を放つ。

矢はまっすぐと柱に向かい、柱を貫く。


「がはっ!」


柱の向こう側にいたサージヴァンも貫いた。


「な、なぜ俺の居場所が・・・・・」


「あなたを切った時に血を武器に取り込んでいたの。その血があなたの居場所を教えてくれているんだよ」


「ばか・・・・な・・・・・・」


「さようなら」


男は矢で貫かれたまま死んだ。

しばらくして矢は液体となり、男はその場に崩れ落ちた。


「この血脈は誰にも絶やさせない。私の誇りにかけて」


「な、何が起きているんだ!?清澄!」


「わからないでーっす。ただ、もう戦いは終わったようでーっす」


相変わらず緊張感のかけらすらないお人ですね。

いい加減、ジャンヌもイライラしてきたのだろう。声が下方向へ近くに落ちていた石を投げつける。


「ちょっ!それでかすぎっごふぅ」


見事に命中しました。

勘は鋭いのですね。


「ありゃりゃ~かわいそうに~。大丈夫だよ~私が一緒に居て守ってあげるから~♪」


「な、貴様!何を言って」


「私も一緒についていくことにしました~♪よろしくぅ~♪」


「ハァー!」


ジャンヌの叫びが館全体に響いた。

そして、動けない清澄は一体どうするのか。

それは次のお話で。

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