第50話 文化祭 白雪姫の配役
「そういえば、今月の最後に文化祭をすることになっている」
「ええぇえぇえぇぇぇぇぇえぇ!!!!????」
しんとした朝の教室に響き渡った なんだかかなり懐かしい騒がしい声。
「うちの学校は1年に2度文化祭をしていることになっていて、1度目は各クラスごとに劇や合唱 合奏の出し物をするんだ」
ふーん めんどくさー・・・
「で、今日は何がいいかみんなで話し合ってくれ!評議委員は前に出てきて進めてくれ」
委員の人が前に出てぺらぺら喋り始めたけどどうでもよかった。
だって先生 それどころじゃないよ?
少しは気づこうよ・・・うちのクラスの異変にさぁ・・・
そんなことを考えてる間に多数決で劇に決まってしまっていた。
「じゃあ・・・劇はどうしますか?何をしますか」
「ハイ!やっぱ定番のかぐや姫とかシンデレラで!!」
「あ、白雪姫とかもいいよねー」
「あ、白雪姫いいね!森とか・・・いいねいいね!!!」
みんな白雪姫でわっと盛り上がる。
今頃白雪姫か・・・小学生みたい・・・
心の中でため息をつく。
「じゃあ・・・白雪姫で決定します いいですか?意見のある人は?」
誰も何も言わないため白雪姫で決定。
「じゃあ・・・王子様 白雪姫 小人等を決めます。まず・・・王子様と白雪姫 立候補者は?」
もちろんいない。
さすがにそんな恥ずかしい役を自らみんなの前で『やる!』なんていう人はいない。
よっぽどの目立ちたがり屋。
みんなこれがいいあれがいいといいながらもいざ自分がするとなると拒否するものだ。
「じゃあ推薦は?」
「ハイ!白雪姫は桜塚夢乃さんで!王子様は沖野克哉君がいいと思います!」
その意見にため息をつく人
からかいの言葉を放つ人
くすくすと笑う人
「いいじゃん 美男美女ー」
誰かがそんなことを言う。
「っていうかアイツ等本当にお姫様と王子様の関係じゃん 本当にくっついちゃえよ」
「あ、そうだ!白雪姫と王子様でキスシーンいれようぜ!本当にしちゃうやつ!!」
「いいねそれー!」
ぎゃははははと下品に笑うバカな男子共。
イラつく・・・
夢乃もかなり不機嫌。
克哉はボーッと窓の外を眺めてる。
本人達は無関心 って感じだ。
「なぁ!桜塚!いいだろ!?キスくらい!!」
その言葉に夢乃が男子を睨みつける。
「な・・・なんだよ こわいかおすんなよ」
「アンタ達 ふざけてんじゃないわよ?いい加減にしてよね・・・」
「ふzけてねーよ!お前等がいつまでもぐだぐだしてるから・・・」
「うるせぇな!!!」
克哉が怒鳴る。
「お前等おとなしくしてろよ 夢乃泣かせたらテメェ等全員血祭りだ」
その言葉に男子はしんと静かになる。
くすくす笑ってた女子も静かになった。
「・・・言っとくけど 俺王子様なんてしねぇから。夢乃が姫すんのは勝手だけど 俺は誰があいてでも王子はしねぇ!!」
克哉はそう言って乱暴に椅子に腰掛けた。
委員はおどおどせずに話を続ける。
「では・・・他に推薦者は?」
「ハイ!白雪姫で・・・春日部さんがいいと思います」
「え?私?」
縁のない話だと思って聞き逃すところだった。
確かに今 春日部といった。
「燐かーいいよね!可愛いし!!お姫様って感じ!」
「相手は・・・飛鳥だよなぁ やっぱり。」
「え?私・・・お姫様なんて・・・」
「他の推薦者がいないのなら春日部さんで決まりますけど?」
「異議なし!!!」
クラスの半分以上が言ったため委員は黒板に私の名前を書く。
こうなったら・・・やりたくないなんていえないじゃないか
飛鳥が王子様ならいいけど・・・
と思うともわもわと空想の世界が広がる。
そういえば最後に結婚するんだっけ あの2人・・・
ってことは劇でうそだけど飛鳥と結婚式!!?
したい!劇だとしてもしてみたい!
と 思っていたけど・・・
「じゃあ・・・王子様は島村君がいいと思います!」
「えー、けど飛鳥じゃはまりすぎてなんかなぁ・・・」
「だって 燐ちゃんとつきあってんだろ?あいつ・・・」
「本人でもつまんねぇよなぁ」
夢乃と克哉の時とえらく態度が違うな・・・
「な・・・っけど俺・・・」
飛鳥が何か言おうとしてある女子が声をさえぎる。
「ハイ 王子様役・・・カノン君がいいと思います」
「・・・美緒ちゃん」
カノンの名前を出したのは美緒ちゃんだった。
前に 飛鳥のラブレターを出した女の子。
「な・・・竹中!?」
飛鳥が言うと美緒ちゃんは無言で席に着く。
「俺やりたいなー」
カノンが言う。
「カノン君いいかも!カッコイイし・・・王子様って感じ!」
「うんうん いいね!!」
「え・・・おい ちょっと待てよ・・・」
飛鳥がうろたえるがみんな気にしない。
「じゃあ・・・王子はカノン君でいいと思う人!」
ほぼ全員が手をあげた。
「じゃあ・・・王子はカノン君で・・・」
「な・・・ふざけんなよ・・・ッッ」
飛鳥が言うが話はどんどん進んでいってしまった。
うそ・・・
よりによってカノン!?
やだ・・・なんか・・・やだ・・・
「おい ちょっと待てよ!!」
飛鳥がついにきれた。
「ふざけんなよ!!俺以外の男が燐の相手役なんて・・・冗談じゃねぇ!!!」
「おい飛鳥ーやめろよー」
「カノンが王子なら燐 姫やめろよ!!姫を燐がやるなら俺が王子する!!!!」
「もう多数決で決まっちゃったじゃんかよー飛鳥ー」
「島村君 うるさーい」
「〜〜〜〜〜っっ」
飛鳥は怒りがおさまらないらしくぷるぷると震えていた。
「飛鳥!」
私が名前を呼ぶと飛鳥が振りむく。
「大丈夫だよ 心配しなくても・・・なんにもないから。」
「・・・けど 燐・・・」
「いいから 黙ってよ?」
にっこり笑って言うと飛鳥はぼりぼりと頭をかいて目をそらす。
「・・・騒いで すいませんでした」
ボソリとそう言って飛鳥は静かになった。
それからしばらく飛鳥はむすーっと不機嫌そうな顔をしてた。