堕ちた魔法少女の邪悪な願い
勝者にはどんな願いでも叶える力が与えられる魔法少女バトルロイヤル。
最終決戦が終わり、その優勝者が決まった。
優勝者の魔法少女は、心優しい少女だった。
そう。
その魔法少女は、もう心優しい少女ではない。
「やったルン。さあ、真美の願いをその聖古の優勝カップに言うルン。真美の望んでいた、争いの無い平和な世界を実現するルン」
相棒だったクマのぬいぐるみの外見をしたマスコットに、その魔法少女は首を横に振る。
「いいえ。私はもうその願いは望まない。私がこれから願うのは、新たな争いの世界」
「何を言っているルン?」
魔法少女は答えない。
その代わりに魔法少女の後ろに黒い影が現れる。
「ふふふ。この人間は、己の私利私欲のために力を使うってことさ」
「お前は悪魔!真美に堕落の誘惑を囁いたルンか?」
悪魔はマスコットの言葉に、嘲り笑う。
「わかってないなお前は。まあ、当然か。私もこの人間を堕落の道に導き、邪悪の心を植えつけようと思っていた。だが、それは思い違いだった。本当の邪悪は人間の心の中にあったのだ。我ら悪魔では思いもつかない邪悪が存在していた。人間は、いや人間様は、我ら悪魔なんかより遥かに高みの存在だったのだ」
悪魔の結界が、マスコットを拘束する。
「貴様はそこで、人間様が願う、クソのような望みを聞いていろ」
魔法少女は、口を開く。
「私はいままで不思議でした。漫画や小説で主人公が辛い目にあう展開が。そんな物語を読んで何が楽しいのかと思ってました」
その少女の告白に、マスコットは困惑し悪魔は歓喜する。
「ですが、あるドラマを見て私はわかったのです。そのドラマは歴史ドラマで、イケメン俳優が戦国武将を演じていました。その主人公は戦などしたくない心優し青年でしたが、何かを守るためには手を汚さなくてはいけない。どちらを選んでもそれぞれ犠牲がでる決断の繰り返し。そのたびに苦悩する主人公。それを見て、私は知ってしまったのです。イケメンの曇り顔は素晴らしいことに」
堕ちた魔法少女は、悪魔に言う。
「これから作る世界は、最後にみんなが幸せになる世界です。だから、悪魔さんの意には沿わないかもしれません。これは私の好みです。曇らせは、最後にハッピーエンドになるからこそ輝く、私はそう思うのです」
すでに魔法少女に心酔している悪魔は言った。
「私はあなたさまに従います」
「最後にハッピーエンドになるってことは、途中はいくらでも曇らせていいってことです」
「おおっ」
魔法少女は世界改変の願いを口に出す。
「時間を戻し、もう一度バトルロイヤルを。ただし、私の代わりにかわいい少年を。その少年は世界の主人公で、変身ヒーローがいいでしょう。私はその少年の姉で、たった一人の家族。戦いの中、その少年の唯一の支えが、姉の私。でも、その少年は知ってしまうのです。私こそが皆を傷つけ戦いを続けさせているラスボスだと言うことに。それを知った時の、その少年の顔を、私は見たい」
悪魔は感動で打ち震える。
「なんて、クソみたいな願いだ」
おわり




