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第4話:エリスの借金をチャラにする方法

「アスタロー、もう稼ぎまくったんじゃない?

 さすがにあきたわ」


 ルナリスが頬杖をつき、甘いものをねだるような声を出す。


「そうだなー。

 えーと……200万ゴールドはあるな。

 ゴブリン退治様様だ」


「信じられない……

 ゴブリン退治で、そんなに稼げるなんて」


 エリスは呆然と呟いた。


「ふ、エリス。感謝しろよ?

 このまま行けば、お前の借金もチャラだろ」


 その言葉に、エリスは答えなかった。

 視線を逸らし、指先で机の木目をなぞる。


「……ん? 一体、借金はいくらあるんだ」


 しばらく沈黙してから、聞き取れないほど小さな声が落ちた。


「……おく」


「……は?」


「おく」


「お、おく? ――億!?」


「3億ゴールドだ」


 一瞬、周囲の音が遠のいた気がした。


「……エリス」


 近くにいたギルド職員が、顔色を変えてこちらを見ている。


「その金額、どこで……?」


「聖剣……借り物だったんだ」


「あ、パフェおかわり――」


「ルナリス、パフェで最後にしとけ」


「いや、正確にはまだ3億ゴールドじゃない」


「……は? エリス、3億ってどういう――」


「期限が迫っている」


 嫌な予感が、はっきりと形を持つ。


「ちなみに、聖剣はいくらだ」


「1億だ」


「……ん。計算が合わないな?」


「そうだな?」


――なぜ疑問形なんだ。


「あ、チーズたっぷりピザもください――」


「ルナリス、ピザは俺も食う」


「で、エリス。残りの2億は?」


「……かった」


「か……かった?」


「使った」


「何に」


一角(いっかく)うさぎのレースだ」


 ――ああ、駄目だ。


 エリスは白銀騎士団の副団長だった。

 だが、今この場ではそんな肩書きに意味はない。


 俺は、静かに席を立った。


「そうか、エリス。借金、返せるといいな。

 ピザはエリスが食べていい。

 おい、ルナリス、俺は先に宿に戻る」


「アスタロウー!!

 待ってくれ!! 待ってくれないと死ぬ!!!」


「は、放せエリス!

 このギャンブラーがああああ!」


「今回、貯めたんだ! 3万ゴールドを!

 つ、次のレースで……!」


 ******


「はーい、作戦タイムです」


 ルナリスが、いつもの調子で手を叩く。


「やったー! 明日太郎、感謝するぞ」


「作戦終了です」


「まってくれええええええ!」


「は、放せエリス!

 このギャンブラーがああああ!」


「ちょっとー、アスタロー。

 仲間が困ってるのに、何それ」


「ちがうぞ、ルナリス。

 エリスが溶かした2億は、俺と会う前だ」


「だが貴様のせいで、聖剣の代金を追加で払わねばならん」


「しるかーー!

 お前がマスに止まったんだろうが!!」


 泣きそうになってるけど、自業自得すぎる。

 俺はため息をついた――


「……くそ。話は聞いてやる。

 その聖剣代の期限はいつだ」


「今日だ」


「幻聴か?」


「いや、正確には今日の十八時までなんだ」


「やっぱり幻聴だった」


「待ってくれ!

 一角(いっかく)うさぎのレースは、今日特別イベントでな。

 当たれば掛け金の百倍が手に入るんだ!」


「じゃあ外れたら?」


「それはもちろん、百倍払う」


「増える未来しかないな」


「そうだろ?

 私は、ワクワクしてるんだ」


「増えんのは借金な」


 エリスは一瞬、視線を伏せた。


「……私は、綺麗な体になりたい」


「無理だろ」


「……私は、白銀騎士団にもどりたい」


「無理だろ。話が変わってんじゃねーか」


「……私は、聖剣を持ちたい!」


「無理だろ。

 お前持ったら壊れるし、代金だけ残る」


 胸の奥に、嫌な確信が芽生える。


「このクソ女神の刺激的(ギャンブル)は、

 こんなとこにも影響してんのか」


 ――聞いてねぇ。


「……ん、待て。

 仮にレースが当たったら、聖剣を買うつもりだったのか?」


「そうだが?」


「作戦、いらなくないか?」


 ******


「……とはいえ、策がないわけじゃない」


「え、そうなの?

 やるじゃんアスタロー。

 その策で決まりね」


「まだ何も言ってねーよ」


「どんな策なんだ」


「スキルを使う」


「へ?

 レースはクエストじゃないよ」


「いや、てきとうなクエストで、マスを書き換える」


「……なんて?」


一角(いっかく)うさぎのレースで、兎券(うさけん)が当たる。

 ただし、身代わりに」


「みがわりに?」


「ルナリスは、女神でなくなる」


 一拍、間があった。


「……なるほど」


「ん?

 わたし? わたしなの?」


「明日太郎、感謝する」


「なに。

 綺麗な体になってやりな」


「え?

 え?

 どういうこと?」


「受付嬢さんー。

 クエスト行きまーす」


 ******


「ひどいーーーー!

 ひどいよーーーー!」


「ありがとう、明日太郎。

 全部だ、全部綺麗になった」


「今日は祝杯だな。

 ビール下さいー」


「アスタロー!!」


「お前が、仲間が困ってるって言ったんだろ。

 助けないでどうする」


「だいたい、ジョブが女神でも大して変わらないだろ。

 スキル千個持ってるし、チートじゃねーか」


「ばかね!

 女神じゃなくなったら、

 世界のメンテナンスできないじゃない!」


「他の女神、いないのか?」


「いるわよ」


「じゃあ、いいじゃん」


「新しいスキル作れないじゃない!」


(いらねぇ)


「――はぁ、パフェ食うか?」


「うん!」

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