第2話:白銀騎士団の美少女副団長を、仲間にする方法
「なによこれぇぇぇ! 戻れない! 電波が入らない! サービスエリア外って何よぉぉ!」
「そりゃ異世界だからな」
「明日太郎の馬鹿!馬鹿!馬鹿!無職!」
「褒めるなよ、照れちゃうぜ」
異世界の街、その中心にある冒険者ギルドのど真ん中。
俺の横で、お団子頭の自称愛の女神ルナリス(無職)が、
スマホを握りしめて地面を転げ回っている。
「うるさいぞ、ルナリス。目立つだろ」
「目立って当然でしょ! 私、女神よ!? 愛の女神なのよ!?」
「とりあえずギルドに登録しようぜ」
「あの冒険者登録したいんですが」
「はい、こちらのギルドカードに触れて初期化してくださいね」
金髪のとても育ちのいい受付嬢が、ボタンが外れたシャツに気付かないまま
真っ白なカードを渡してきた。
なぜ両手で俺の手を包み微笑む。
「これはつまり、俺に惚れてるってことですか?」
「違うわよ馬鹿。私にもギルドカード頂戴」
ギルド内の冒険者たちが「また変なのが降ってきた」と冷めた視線を送る中、一際鋭い声が響いた。
「——そこまでよ! ギルドの神聖な床を汚すのは、私が許さないわ!」
白銀の甲冑を鳴らし、一人の美少女が歩み寄ってきた。
凛とした顔立ちに、腰には立派な聖剣。
「私は白銀騎士団副団長、エリス・フォン・マッパーマン!
ちょうどクエストを受けに来たところだけど……。
あなた、職業は何?」
俺、明日太郎は、手元のギルドカードをチラつかせる。
「『無職』だけど」
「ぷっ、あははは! 無職! 仕事もつかないで女神(笑)と遊んでるなんて、救いようがないわね!」
――ああ、こいつは「俺を見下す側」か。
エリスが腹を抱えて笑う中、酒場の隅からひそひそ声が漏れた。
「……おい、あの副団長、また借金の催促から逃げてクエスト探してるらしいぜ」
「白銀の薔薇も形無しだな……」
エリスの眉間がぴくっと跳ねる。
「ふ、ふん! 私はA級冒険者でもあるのよ!
借金なんて、このゴブリン退治を爆速で終わらせればすぐに返せるわ!」
俺はニヤリと笑った。
「ほう、そんなに自信があるなら勝負するか?
同じクエストを受けて、先にクリアした方が勝ちだ」
「いいわよ、受けて立つわ!
私が勝ったら、あんたは一生私の下僕!
私の借金返済を手伝ってもらうわよ!
顔はまあまあいい方だしね!」
「いいぜ。
……俺が勝ったら、お前には俺の『サポート』をしてもらう」
「決まりね!
さあ、受付嬢、クエストマップとダイスを出しなさい!」
瞬間移動でフィールドへ飛ばされた俺たちの前に、ルナリスが作ったクソゲーの盤面が広がる。
「ハンデよ、先に振らせてあげるわ」
エリスが余裕の笑みで見守る中、俺が振った目は「1」。
【1マス目の効果:次のプレイヤーの出目は1か6に固定される】
「あはは!1か6?
私には関係ないわ!
私のスキルを知らないの?」
エリスがドヤ顔で叫ぶ。
「——スキル発動!」
*【星を導く運命の光輪】
* 効果:ダイスロール時、出目が「1」なら「6」にする。
「1が出ても6になる!私に死角はないわ!」
「ルナリス、お前の作ったスキル、どれも痛いんだけど」
「そう?かっこいいでしょ」
「……じゃあ、俺もスキルを使わせてもらう」
「え?あなたスキル持ちなの?」
俺は女神ルナリスが作った、痛々しいフォントのウィンドウを操作した。
「スキル発動
『虚無に沈めし因果の転輪』
俺は筆を振るい、エリスが踏む予定の「6マス目」の内容を書き換えた。
【6マス目:魔王を倒すまで、武器を一切使えない呪いを受ける。女神でも解除不可】
「は?何それ!?」
「『混乱』の女神のスキルだ。6が出がでるんなら、そこは地獄の入り口だぜ」
「き、きさまぁ……!
でも、時間制限があるから勝手にダイスが——」
ガラガラガラ……! システムが強制的にダイスを振る。
出た目は「1」。
そして、エリスのパッシブが発動する。
「強制変換——(6)!」
「あああああ! 私の聖剣がぁぁぁ!」
ピキピキと音を立て、エリスの自慢の聖剣が砂のように崩れ落ちた。
武器を失い、へなへなと地面に座り込む「元・最強」の美少女副団長。
「……さて。次は俺の番だな。(3)」
【他の冒険者(明日太郎)と協力して、ゴブリンと戦う。多く倒した方が報酬をもらえる】
俺は、武器を失って震えるエリスの肩を叩いた。
「さあ、やろうか、相棒(肉壁)。
まずはその自慢の鎧で、ゴブリンの足止めから頼むぜ」
「おまえがぁぁぁぁ! おまえがぁぁぁぁぁ!!」




