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第1話:女神を道連れにする方法

気づいた時には、俺、明日太郎アスタロウは真っ白な空間にいた。


直前の記憶は、深夜のコンビニ帰り、強引に突っ込んできたトラックのライトと、骨が砕ける嫌な音だけだ。


「あー、やっと起きた? ばかよねー、スマホ見ながら歩くからよ」


目の前には、お団子頭にひらひらした羽衣を纏った女が、ポテトチップスを齧りながら座っていた。自称・愛の女神ルナリスだ。


「……死んだのか、俺」


「ええ、木っ端微塵にね。でもラッキーよ! ちょうど今、私が管理してる世界のクエストシステムを『すごろく』にアップデートしたところなの。これからは愛と平和だけじゃなく、魔王を倒すクエストも刺激的ギャンブルになるわ! あなた、その練習台になりなさい。7マス目のゴールに辿り着いたら、異世界転生させてあげるわ」


ルナリスは指先で空間を弾き、1から6までの白いマス目と、その先の『7マス目のゴール』を表示させた。さらに、俺の前に「スキル選択画面」を浮かび上がらせる。


「この6つの空欄、好きなイベントを書き込んでいいわよ。あとスキルも一個サービス! 私の愛に感謝しなさいよね」


俺は渡された筆を握り、ルナリスの顔を見た。こいつは俺の死を「ちょうどいい練習台」としか思っていない。だったら、俺もこいつを「ただの神様」として扱う義理はない。


俺は無言で、1マス目から6マス目まで全て同じ内容を書き込んだ。


【地球で復活する】


「……あんた、バッカじゃないの?」


ルナリスが鼻で笑う。

「そんなのシステムが検知して無効になるわよ。はー、頭悪い。私の愛が籠もったシステムをなめないで。無効になったら何も起きないんだから、もっと『最強の剣』とか書いたほうがましよ」


「まあ、もう書いたからね。後悔はしてないよ」


俺はダイスを振った。コロコロ……出目は「6」。


「ほらね、無効。何も起きない。システムエラーよ。さ、次振りなさい。早く終わらせてよ、私のパフェが溶けちゃうんだから」


ルナリスが飽きたようにスマホに視線を戻した。その油断を、俺は待っていた。


「……じゃあ、さっき選ばせてもらったスキルを発動する」


——スキル発動、『虚無に沈めし因果の転輪カオス・ホイール・ゼロ


「ぶふっ……! あははは! あんた、わざわざそれ選んだの!? 私が考えたなかでも一番『かっこいい』やつじゃない! 説明文読んだ? 『万象は虚無に帰し、定められた因果は……』とか、最高でしょ!」


ルナリスは腹を抱えて笑っている。俺は目の前に表示された痛々しいフォントのウィンドウを、無機質な目で眺めた。


>>【虚無に沈めし因果の転輪カオス・ホイール・ゼロ

>>

>>「未到達マスを書き換えられる」

>>「混乱必須」


「……説明文はどうでもいい。要するに、まだ踏んでないマスなら書き換えられるんだな?」


「ええ、そうよ。でも『混乱』を招く内容じゃないとダメなの。普通の人が喜ぶようなラッキーイベントは書けないわよ?」


「好都合だ。これ以上の『混乱』はないからな」


俺は筆を振るい、7マス目の「ゴール」の内容を、一瞬で上書きした。


【ゴール:愛の女神を地上に降臨させる(魔王軍を倒すまで帰還不可)】


「なっ……何これ……!? なんでゴールが書き換わって……」


「愛の女神が地上に落ちて、天界の権限を失う。これ以上に世界を『混乱』させる事態があるか?」


「あ……」


ルナリスの顔から血の気が引いていく。俺は構わず、ダイスを投げた。


俺の手から放たれたダイスが、床を叩く。出目は——「1」。


一気にゴールマスへ吸い込まれる俺の体。


ピコン! と、世界の空に巨大なシステムログが出現した。


『ゴール達成:条件により、自称愛の女神ルナリスの物理降臨を確定します。魔王軍討伐まで天界の全権限をロックします』


「あ」


ルナリスの羽衣がシュルシュルと消え、彼女の体が物理的な質量を持って俺の横にドスンと落ちた。


「な……な……なによこれぇぇぇ! 戻れない! 電波が入らない! サービスエリア外って何よぉぉ!」


「女神様が魔王倒してくれるなら、俺みたいな『無職』でも安心だな。……さあ、行こうか。異世界へ」


「ふざけんなてめぇぇぇぇ!!」


光が溢れ、俺と絶叫する女神は、不条理なすごろくの盤面(異世界)へと舞い降りた。

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