とある中年男性のRPG
初めての小説。ローファンタジーで短編。自伝と変わらんかも(笑)
主人公は四十歳男性だった。
小学校は家から近く、中学校は坂の上、高校は少し背伸びして入った。どれも特別な思い出はないが、途中で投げ出すこともなく、きちんと卒業した。
「……まあ、普通だな」
人生を振り返ると、いつもその感想に落ち着く。
大学には行かず、会社員になった。大きな成功も失敗もなく、十数年が過ぎた。父が倒れたのをきっかけに実家へ戻り、小さな電機工事会社を継いだ。十五人ほどの従業員を抱え、無理を重ねながらも何とか回してきた。
母が一年前に亡くなり、景気が落ち込み、続ける理由は少しずつ削られていった。祖父が創業し祖母が支え父が受け継ぎそれを母が支えてきた零細企業。姉は遠くに嫁に行き。自分と母と会社だけが残った。その母ももういない。
「……ここまでだな」
廃業を決めた。
従業員は一人ずつ次の職場を見つけていった。全員が再就職を決めてくれたことに、主人公は正直ほっとした。人手不足で経営は苦しかったが、従業員の再就職を思えば人手不足も悪くない。
最後に残ったのは、帳簿と設備と書類だけだった。
それらを一つずつ整理し、会社の清算を終えた日、主人公は深く息を吐いた。
「……終わったな」 声に出すとぐっと肩を落とした。
翌日も、その翌日も、特別なことは起きなかった。
朝起き、自炊し、食べ、眠る。
「……仕事してないのに、生活リズムだけは社会人だな」
一人でそんなことを言いながら、日々は過ぎていった。
金は少し残っている。一年か二年は働かなくても問題ない。
「……そのうち考えるか」
考えないときに使う言葉を、自分に向けて使う。
ある日、ふと思った。
「……蔵、片付けるか」
祖父母が使い、父が使い、母が最期まで処分するか迷った蔵。ずっとそのままになっていた。
鍵を開けると、よどんだ空気が流れ出た。
「……うわ」
掃除を始め、箱を動かし、床を見て、板が浮いているのに気づく。
「……抜けそうだな」
外してみると、下に古い井戸があった。
「……うわこれあかんやつだ」
縁起が悪そうだと思いながら覗き込むと、底が揺らめいていた。
次の瞬間、足元が消えた。
気づくと、洞窟に立っていた。
「……は?」
振り返っても、井戸はない。
モンスターが現れ、握ったままだったほうきで殴り倒す。宝箱が現れ、中から出てきたのは袋入りのキャベツだった。
「……スーパーかよ」
次のモンスターを倒して鶏もも肉がでた。パック包装してある。賞味期限がある。製造元販売元はない
「……親切設計だな、でもなんかあっても苦情を言う先が無い」
疲れたので帰ろうと思ったら帰宅できた。落ち着いてから台所で調理すると、普通に食べられた。
鶏もも肉とキャベツと合わせだしに塩を入れて煮込む。シンプルだが優しい鍋だ。
母のレシピで一人暮らしになっても助けられた簡単料理。冷凍めんで〆ると美味い。
翌朝、視界に文字が浮かぶ。
《レベルアップしました》
「……はい?」
戦闘スキルはやけに揃っていた。
片手武器、二刀流、盾技、両手武器、投擲、遠距離射撃、格闘。火、水、氷、風、雷、光、闇
「……RPGだな」
深く考えないことにした。でもなんか楽しい。
完結まで一気に投稿。ショートストーリーですからね。




