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1 積み重ねの幸運で手に入れたのは

リーリエは、8歳の女の子だ。

何かに特別に恵まれているわけではなく、顔立ちも普通。

ただ特筆するなら、素直で善良に育っていたので、人を手助けするのが日常で、相手から少し感謝をもらう生活だった。


そしてリーリエは、6歳の頃から、街のギルドのお手伝いに通っている。


なぜならリーリエは、弓使いに憧れているから。

6歳の時に、リーリエと弟は街のはずれで野犬に襲われそうになった。それを、遠くから矢が飛んできて野犬を追い払った。遠く、気づいた旅人が弓で射て助けてくれたのだ。リーリエにとって光り輝いて見えた。

旅人は去ってしまったけれど、リーリエの心に強く残った。


だから、ある日せがんで、父親におもちゃのような小さな弓を与えてもらった。すると、周りが上手い、と褒めてくれた。

だからリーリエは、弓が上手くなりたい、それで、人を助けるんだ、と、心の中で決めたのだ。


そして6歳のリーリエは、おもちゃのような小さな弓を持ってギルドを訪れた。修行と経験を積むために。

ところが、ごめんね、まだ小さいしね、と断られた。

当たり前の対応ではある。

余程の優秀さ、または切羽詰まった事情などがあれば話は違うのだが、リーリエは普通だった。


とはいえ、リーリエは、憧れのキラキラした活躍生活になるんだとだけ信じてギルドに来たのだ。なのに、想定外に断られて、ショックのあまり両眼に涙が溜まっていった。

そんな様子に、やはりよくあることではあるが、ちょうど手伝いが欲しかった、とギルド職員が思い出し、リーリエは、お手伝いならギルドに通ってきてもいいよ、と許可をもらったのだ。


以来、もう2年間、止めることなく、リーリエは数日おきにギルドにお手伝いに通っている。


さて。その日もギルドの手伝いに出た。

家からギルドまで、リーリエの足で2時間ほどかかる。リーリエの家が田舎よりの場所にあるためだ。

その道すがらで、本日は帽子を落としたおばさんのかわりに転がる帽子を捕まえて返し、物をたくさん抱えて歩いている人に、すぐそこの足元に大きな石があるので気をつけてくださいね、と声をかけることになった。


ちなみに前日も、雨に降られて道に出した品物を慌てて片付けようとして派手に色々を取り落とした青年を手伝った。そのバタバタの最中に、通り抜けようとした男の人とぶつかった。慌てて謝ったのだが、ぶつかったそのはずみで、その人は何か閃いて悩み事が解決したらしい。そう言って嬉しそうに礼を言われ、ちょうど持っていたというお菓子をもらった。遠慮しないでいいというので、素直に受け取った。ついでに品物の回収を手伝った方の青年からは野菜を1つお礼にもらった。


リーリエはそんな毎日だ。これが日常だ。


そしてギルドにたどり着いたリーリエは、本日は奥の部屋の片付けを頼まれた。

掃除はいつものこと。この部屋もすでに何度か片付けを繰り返している。数度で終わるはずがないレベルで、物品が溢れている。


さて、依頼をしたものの、この部屋を前に、すでにやる気を失っている今日のギルド職員はこういった。

「ものが溜まるばっかりで困るよ。誰も捨てる勇気が持てないだけだ。そうだ、今日は、何か気に入ったら、リーリエに一つあげても良いよ。ガラクタに見えて、謂れのあるものが奥にたくさんあるみたいだし。そういうのも縁ってことで、良いよね」


投げやりな様子が気になって、リーリエはギルド職員に尋ねた。

「良いんですか? 大切な品物だから、置いてあるんですよね」

気軽にあげたりして良いレベルのものではないと、今までに言われた覚えがあるのだが。


「そうだけど、ずーっと使われてないってことは、使う人がいないってことで、それって価値がないってことなんじゃないかなって、思うんだよね」

ギルド職員はなんだか諦めたような困ったような風だった。

まぁ、確かに、何度片付けようともものが溢れているこの部屋だ。1つでも減ると嬉しいのかもしれない・・・。


「ふぅん・・・はい、ありがとうございます・・・」

リーリエは、素直にお礼を言うことにした。


それから片付けに入った。普通に仕事をこなした。二人で、黙々と。


仕事をちゃんとこなしたら、お給料がもらえる。

それも嬉しいことだったけれど、真面目にやっていたら、たまに、冒険者に声をかけてもらえて、リーリエに弓の使い方を教えてもらえるのだ。

それがリーリエには特別のご褒美みたいなもので、だからこそ、2年も通い続けている。

リーリエは弓が上手くなりたかった。強くなって誰かの役に立つという夢はまだ捨てていなかった。ちゃんと家でも木に向かって練習をしているのだ。


さて、2時間経ったころ、今日はここまでにしよう、という話になった。

ギルド職員もリーリエも部屋を見渡す。特にあんまり変わりはない。残念なことに。今日は一区画、崩れそうなものを正しただけだ。それだけでも大変なのだけれど。


それから、ギルド職員は片付け前の約束を思い出してくれたようだ。

「そうだ、何か一つ、とんでもなく変なものや高価なものじゃなかったら、あげるよ。どれにする?」


「あ、ありがとうございます」

リーリエはふんわりした約束については忘れてはいなかったけれど、きちんとこんな風に促してもらえるとは思っていなかった。ドキドキした。

リーリエは改めて部屋の中を見る。

とはいえ掃除中、どれが良いか、欲しいかなんて、分からなかった。


せっかくだから、何かを早く探さないと。

踏み出そうとしたリーリエの脳裏に、一緒に住んでいるおばあちゃんの言葉が思い浮かんだ。先日、ちょうどおまじないを、引き寄せの魔法だって言いながら教えてくれたところだった。

みんなが知っている簡単な言葉。お隣のお姉ちゃんも前に呟いていたから、きっとみんなが知っているおまじない。

だけどリーリエは幸運を願って、呟いてみた。そして歩き出す。


ところで。その日に至るまで。もちろんその日も。

リーリエは毎日小さな親切で人助けをしていた。ずっと。

そして、リーリエは、全員ではないけれど、相手から感謝を受け、幸運を祈ってもらっていた。

今日帽子を拾って渡したおばさんは、ありがとう、とリーリエに言った。幸運を祈る、というジェスチャーをしながら。

昨日道で手助けしたお兄さんは、幸運をあなたに、と言った。

昨日リーリエとぶつかったことに喜んだ人。神の叡智と祝福があなたに訪れますように、と笑って言った。


よくある言葉。よくある感謝。だけど、確かにリーリエにほんの少しずつ、加護をもたらしていた。

ほんの少しだけの、幸運UP。


そしてリーリエはもう忘れていたのだけれど。

リーリエは3ヶ月前、しっかりとした祝福を受けていたのだ。

その日、お腹が痛そうにしている人に気がついたリーリエは、自分のための「何かあった時の薬草」をその人に渡した。だってとても具合が悪そうで辛そうだったから。

他の人たちは、みんな、気づいているのに何も声はかけたりしていなかった。ヒソヒソ話すのに、近づいたりしない。この街の人は、リーリエより冷たいことが多い気がする。そちらの方が普通なのかもしれないけれど。


リーリエは薬草を渡した上、食べることをおすすめし、結果、その人は気分が少し回復した。

ありがとう、もう大丈夫、とその人は言った。

心配ではあったけど、もう大丈夫と言われたのと、もう渡せる薬草はなかったので、リーリエはそこで立ち去った。


だからリーリエの知らないことなのだけど、その人は、実は旅の魔法使いだった。

彼女はリーリエに具体的に感謝の念を送っていた。リーリエと別れた後、きちんと回復した後で。

「あの親切な女の子が、この先何か大切なものを選ぶ時、最高最善のものを手に入れられますように!」

彼女は、強力な魔法を、リーリエに1回かけていた。


そんなこんなで。

普通ならどれを選んでも特に変わることはないだけど。

だけど今。リーリエは、積み重なった色んな人からの感謝による加護と幸運、結果としてそれらを強く発動させることになる1回限り魔法が働き、人生を変えるものを見つける。


リーリエは、何の気なしに見て、箱と書物の細い隙間に、とても細く長い箱が落ちていることに気がついた。

何かな、という軽い気持ちで、それを取り上げた。

するりと取れた。

そのまま、中身が気になったので、開けた。


中は、矢が入っていた。たったの1本。

「矢」

とリーリエは見たままを呟いた。


ギルド職員が近づいて覗き込んだ。

「リーリエは弓をやるんだろ。ここにあるってことは、まぁ多分良いものだ。それにするかい?」

「これ、どんなすごい矢なんですか? もらっても大丈夫?」


二人で箱の中や箱の外を調べたが、説明書きなんてものはない。

「うーん。細かい模様がびっしり入ってるから、普通に高価な品物だと思うな、これ」

「強くなれますかね?」

「まぁ、木の棒よりは強いだろう、普通に。とはいえ、これを引くことができる、弓の力をつけないと使えないけどね。リーリエが」


なるほど、これを放てるように、頑張れば良いのか。一つの目標みたいにすれば良いかもしれない。

「もらって良いなら、これにします。練習します」

「んーと、これで練習できるようになるまで、まずは他の軽い矢で練習かな」

「はい」

「あとはまぁ、うん。誰か、弓使いの人に聞いてみるのもアリかな、何か特別なものだったら分かるかもしれない」

まぁでも、弓使いがほとんどいないけどさ。大体が剣と魔法だからさ。


ギルド職員は改めて箱の方を眺め回してから、リーリエに渡して、こう言った。

「まぁ、呪いではなさそう。変わった感じはするけど・・・。お金を貯めて、いつか鑑定してもらったらどうかな。何かわかるだろうから」

「はい。そうします。じゃあ、これ、貰いますね?」

「うん、良いよ。目録とかちょっと探すのもありだけど、目録も整理から始めないとなぁ」

たくさんありすぎて多分見つけられないよなぁ、とギルド職員は小さく悲しそうに呟いた。


こうして、リーリエは1本だけ、立派な矢を手に入れた。積み重なったたくさんの小さな幸運たちに導かれて。

最近全く書いていないので、ちょっと頑張ろうか・・・と書いてみることに。

書き方も投稿の仕方も忘れました・・・短めにしたいですが、できる範囲で書きたいと思います。


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