来客退治
姉貴がいつのまにか心愛さんとめっちゃ仲良くなって、うちにお泊まりするってなった時には、ほんっと姉貴に感謝した。
心愛さんは、姉貴からたくさん美について学ばせてもらったっぽい。
そんな姉貴は、ますます美容に目覚めて化粧品の新作が出ると、オレの顔でメイクの練習をする。
オレも最近は美容に目覚めつつあるが、あまりそのまま学校とかバイトには、行かない。
しかし‼︎
うっかりバイト前にうたた寝して、メイク落としてたら間に合わない!っていうときは、そのままバイトに向かう。
たまに髪型までアレンジしてくるから、正直…これだけは治したかったー…。
でも仕方ない。
今日は、間に合わん。
髪型キメッキメでバイトに向かうと店長に、
「おぉ〜、今日は気合い入ってるねー‼︎」
って言われてしまった。
…
気合いゼロです…。
なんならさっきまで寝てました…とは言わないけどね…。
あー…この髪型で接客なんてやだなぁ。
頭、濡らしてこよっかな…。
まだ時間……ないですね。
ギリギリに滑り込んだから時間に余裕がありませんでした。
なんかさ…初デートでもこんなキメッキメにしないでしょってくらい、バッチリきまってるんよね…。
成人式とかなら…まだね…?
ハァー…と、大きなため息をつくと
「うわっ、えっ⁉︎めっちゃいいじゃん‼︎」
と、バイトの先輩…心愛さんの親友が現れた。
「あ、おはようございます」
死んだような感情でご挨拶した。
なんなら目も死んでるよね。
「おはよー。もう、塩崎くんはツンデレかなぁ?」
なんて笑っている心愛さんの親友の人。
笑えんよ…
この人の心の中は、いったいどうなっているんでしょうかね?
感情とかの機能が麻痺しているのかもしれませんね。
てかさ…今日のメンツ最悪やん。
オレと、この人と心愛さんって…
心愛さんは、それからすぐに出勤してきて三人での仕事が始まった。
…しんどいね。
でも仕方ない。
仕事は仕事だからって働いていて、もうすぐ退勤時間ってところで、とんでもない人が現れました。
まさかの元カレです…。
うわ…どんな神経してるんだよ?
元カノと今カノがいる所に来るなんてさ…
彼氏をすぐさま見つけた親友の人は、一目散に彼氏の元へ行ったよね。
「あ〜♡来てくれたんだぁ♡」
そう言いながら彼氏に近寄り、
「はい、コーンポタージュ♡熱々だよ〜♡」
と手渡していた。
でも彼氏は、まさかのホットココアを手にとり、心愛さんがいるレジへまっしぐらだ。
?
オレが様子を見ていると彼氏はホットココアを差し出して、
「ここあをください。オレにもう一度チャンスをください‼︎」
と、復縁を申し出た。
こ、心愛さん…よかったな。
オレは複雑ながら心愛さんを祝福した。
でも心愛さんは、無表情で元カレに
「ここあは、もう冷めました」
と、冷たく返事をしていた。
心愛さん…
二人のやりとりをみて今カノは、
「は?あんた、わたしより心愛がいいんだ?じゃあ、わたしはこっちの彼とよろしくするからいいよー‼︎」
とオレの腕に絡みついてきた。
…
な、なんてこと…。
オレは一瞬固まったものの、すぐさま我にかえり
「あ、お客さんの接客しなきゃ」
と、腕を振り払い接客した。
お客さんがかえり静まり返る店内でオレは賭けをした。
心愛さんに
「今日オレ、ここあ買ってかえります‼︎ここあが大好きです!熱々のください」
って心愛さんに向けて言った。
すると心愛さんは、
「うん♡ぜひ♡」
とオレに笑顔を向けてくれた。
すると元カレは、ぼそっと
「そういうことね」
とだけいい、店を出て行った。
親友は、
「いっつも心愛ばっかりじゃん‼︎どんだけだよ……あんな男もういらない‼︎わたしの負けじゃん。心愛には、負けた‼︎もう何しても敵わないわ。今まで…ごめん…ね?」
と謝ってきた。
許すわけねーだろって思ったんだけどさ、でも心愛さんは…
「わたしの勝ち♡」
って親友に向けて笑った。
心愛さんは…心がめっちゃ広い。
そして、オレはまた追い討ちをかけるように、
「あの…心愛さん、今からオレの部屋来ませんか?」
と聞いた。
「えっ?行くー♡」
「「それじゃ、お疲れ様でーす♡♡」」
オレと心愛さんは、仲良く店をあとにしたのであります。
これで仕返しが無事終了だ。
心愛さんのノリが良くてよかった。
でも、やっぱりこれはただのノリなんだよな…
でも、もしかしたらオレのさっきの言葉が本当だと思ってもらえてたらいいなぁ、なんて思って帰り道、オレは正式に心愛さんに告白した。
「心愛さん…好きです」
と。
だって、さっきのは…演技だったって言われたらオレずっと勘違いしちゃうからさ。
だから、ここではっきりさせとかなきゃだよね。
心愛さんは…心愛さんの返事は…
…
返事は…どうなんだ…
心愛さんは、立ち止まり
「わたしも好き。彼氏と別れてまもないけど、塩崎くんが好き。すっごく大好き」
って、オレをまっすぐみてこたえてくれた。
こうしてオレは、あま〜い心愛を堪能するのでありました♡
おしまい♡