どうした⁉︎
あーあー…
オレは今、わが高校の校内の中庭を散歩中だ。
いや、正確にはボランティアで巡回中だ。
…
どうしてこんなにもこの学校は、カップルが多いのでしょうか?
あっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャ。
イチャイチャ祭りが開催されております。
イチャイチャ祭りのチケットって…どこに売っているんですか?
オレもそのお祭りにぜひ‼︎ぜひとも参加させていただきたい。
あぁ、
急に女神さまが現れてオレに彼女与えてくれたりしないかなぁ。
…
シクシク、メソメソ
ん?
木陰にうずくまっているのは…
人間…か?
「あのー…」
オレの問いかけにその人は、こちらを振り向いた。
ポロポロと涙を流しながら。
「え…な……なんですか…っ?グズっ、呼びました…か?」
「なんですかって…てかさ、どうしたんです?こんなところで、なんで泣いているんですか?」
「それは…当たり前ですけど、フラれたからですが」
…
当たり前…なんだ?
「あ、それは…大変ですね」
「いや、別に…」
…
大変ではなかった。
「ううううっ…」
少し離れたカップルをみて、また泣き出す女の子。
…やっぱり大丈夫じゃないじゃないかっ‼︎
「あの…そういうの…みるとまた思い出すんだから、あんまりみない方がいいって。場所移動した方が…」
「…思い出すどころか、アレが元カレなんです」
⁉︎
「えっ⁉︎そ…そうなんだ。」
「はい。あの人…五分前まで彼氏でしたっ…う、ううううあうぅっ…そ、そして今カノは…わっ、わたしの親友うううううぅ…ー」
土砂降りのように大泣きする女の子。
…
そりゃ、別れてすぐ別の人と…なんなら親友とイチャイチャしてたらな…しんどいわな…。
しんどいどころじゃないよね…
ダブルパンチだもんな…
…
「場所移動できます?オレいい場所知ってるから行こう」
「?いい場所…とは、やっぱりあそこですか…ね?」
「ん?知ってる?」
「はい。わたしが大好きだった居場所…ですよねっ…グスクっ…い、行けるんですか?彼の部屋にっ…またっ、あの頃のように彼はわたしをハグしてくれるんですよね?過去に戻れるんですよね?ぜひそこへ案内よろしくお願いします。」
…
それは、無理だ。
でも、このこにとってのいい場所は…そこ一択だったんだろう。
「そこには…いけないけど、でもここよりはマシだから、ほら立てる?」
手を差し伸べると、めっちゃ細くて冷たい手がオレの手を握った。
こんな…こんなかわいいコを捨てて他の人と、よくイチャイチャできるな…あの男は。
オレは元彼とやらをキッと睨んで、か細い女の子の肩を抱いてとある場所へと向かった。
「ここだよ」
案内したのは、保健室だ。
「ここは…具合の悪い人しか立ち寄れないんじゃ」
「うん。具合良くないでしょ。」
心の…とは、本人には言わないけどね。
「せんせー、ベッドあいてるー?」
「もぅ、塩崎くんまたサボリー?」
オレの声を聞くなり、サボリと決めつける先生。
しかし、オレの隣の女の子をみて先生は、
「あら、ベッドあいてるわよ。じゃあ、ここの用紙にクラスと名前書いたら横になってゆっくりするといいわ」
と、先生は優しく微笑んだ。
保健の先生が、癒しの母のようにみえるのは、オレだけ…だろうか?
そんなことを考えていると、いつのまにかそのこは、用紙に記入を終えていた。
⁉︎
さ、三年生⁉︎
オレは二年だ。
まさか先輩だったなんて…
みたことない顔だからてっきり一年生だと思ってたぜ…
背も低かったし…
てか、名前かわいいな。
山之内心愛さんか。
「塩崎くん、先生少し職員室いくから、あなたはチャイムなるまでに教室に戻りなさいね。先生すぐ戻るから」
「はーい」
オレの返事に先生は、安心したかのように保健室を後にした。
「あのさ…ありがとう。あの場所から救ってくれて。ここにきたら…先生みたらさ、少し落ち着いた。もうわたし大丈夫だから。」
…
「あの、一人じゃしんどいっすよね…オレ時間までここにいてもいいっすか?」
「え、うん。ありがとう…今夜はぐっすり眠れそう。」
心愛さんは安心したのか、ものの数秒で寝落ちしていた。
…
どんだけ疲れてたんよ…。
これじゃ今夜はぐっすり眠れないだろうと察した。
ま、今眠れたらいいのかな。
「おやすみなさい。心愛さん」
オレは先輩の頭をなでなでした。
すると…
眠りながらも涙がひとしずくこぼれ落ちた。
早速、悪夢みてんじゃん…
「い、いかないでよっ…」
うなされだしましたね…
「うん。大丈夫だよ」
オレは先輩の手を優しく握った。
すると、安心したのかまた、スースー寝息をたてていた。
続く。