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 あの別れの日から一年が経った。



 アレス曰く、やはり数日後に王家の騎士たちが村にやってきて、両親の行方を追っていたらしい。


 私たちは再びアレスの力でこの南の島に一瞬で飛んだので、村を出た痕跡など見つかるわけがない。


 しかもここは大陸を越えた遥か南の小さな島国なので、祖国から船を乗り継いでも一ヶ月ほどかかる距離にいるらしい。


 辿り着くのに何カ国も通らなければならないので、見つかることはないだろうとのことだった。



 この島にきたのは私が海が見たいという願いをアレスが叶えてくれたからだ。



 ケイレブたちは、王都帰還後に予定通り結婚した。

 でも、円満なハーレム生活とは程遠いらしい。


 なぜなら彼女たちは魔力を失い、平民と変わらない能力値になってしまったから。



 それを知ったのは、あの部屋から消える寸前に放たれたアレスの言葉。



『あ、言い忘れてたわ。お前らはもう、一生魔法も勇者の力も使えねえようにしといたから。せいぜい自身の力で励んでくれ』


『どういうことだ!』


『魔法が使えない!?』


『ああ……うそっ、魔力がないわ!』


『そんな!!』



()からの試練だ。有り難く受け取れ』




 不敵な笑みで新しい神託を彼らに授け、罵詈雑言の中、私たちは消えた。






『彼女たちの魔法もアレスが授けたの?』


『いや、俺はケイレブに神力を授けただけだ』



 人間が使う魔法は精霊の加護によって発動し、魔力の多さは加護の数と精霊の位によるものらしい。


 だが人間の本質を見抜けるのは上位精霊のみで、下位精霊は善悪に疎く、気まぐれな気質のため、悪人だろうが精霊が気に入れば力を貸してしまうらしい。


だからアレスは彼女たちの力の源を絶ってやったと言っていた。



『どうやって?』


『ん? 精霊王にお前が精霊(子供)たちを躾けないなら、俺が直々に教育して(始末して)やるがどうする?って提案しに行ったんだよ』


『それ脅し……』


『せっかく魔族を間引きしたってのに、バカな精霊が邪悪な魂に力を貸してちゃキリがないだろ。次は人間同士の争いが起こるのは目に見えている。争いの種は早々に摘んでおかないと俺が面倒くさいんだ』


『精霊王なんて実在するんだね……』


 話題が空想じみててイマイチ頭に響かない。


『いるぞ。自然を守っているのは精霊たちだ。魔王たちを排除したのはアイツらの要望でもあった。瘴気と魔物が増えすぎて自然が汚染されていたからな』


『だから下界に神託を授けてアレスが聖剣になり、ケイレブに力を貸したの?』


『そうだ。上司の命令で間引きに駆りだされた。神は本来下界に干渉できないんだ。だが世界の秩序が乱れそうになった時のみ、制約内で神力を使うことができる』



 それが今回の魔王討伐に繋がっているらしい。


 そもそも、世界の瘴気が増えたのは邪悪な人間が増えたからだという。



 知性のない下位精霊が無秩序に人間に魔力を授けた結果、彼女たちのような悪意に満ちた人間が増えてしまった。


 そして恨みが恨みを呼び、それが瘴気となって魔物も増え、魔族の力が拡大した。


 ケイレブも最初は綺麗な魂だったけれど、邪悪な人間に囲まれたことで流され、彼女たちの色に染まってしまったらしい。



『元を辿ればお前の管理不足だろうと精霊王をぶん殴ってきたから、今後は少しはマシになるだろう。戦争でも起きて、自然を失って困るのはアイツらだしな』



 彼女たちだけではなく、危険な思想を持っている人間の魔力は全て取り上げられる予定らしい。


 たとえ魔王討伐を成し遂げたとしても、その功績は神には関係ない。世界の均衡を乱す者は間引きする。それが神の仕事(管理者)だと言っていた。



『魔力もなく、魔法も使えない自分には、壮大すぎてよくわからない話だわ……』



『わからなくていいさ。お前はそのままでいい』




 そう言って彼は、私の頬に触れ、優しく微笑んだ。











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『私の愛する人は、私ではない人を愛しています』も連載中です。

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