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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅰ 出会い
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ろりさまと遊ぶのです


「お兄ちゃんを一緒に探そうと言ってたのは、ろりさまなのに……」


「お兄ちゃんなんて、はじめからいなかったのよ。すべて幻よ」


「キーボードを叩く男性の様子が映っていたろりさまの瞳は、なんだったの?」


「それは……にぃ……」


 ろりさまは、戸惑いを隠せていない。


 その情報を開示されることは、誤算だったのか。


「お兄ちゃん、都合よくこの場に出てこないですかね。ロリさまが幻を仰られているだけありますかね……」


「誰がロリさまですか! ちゃんとした名前があったのです。あったのですが……」


 泣きじゃくるろりさまは、両手で涙ぐむ。


「あたしはどうして、自らの名前を忘れてしまったのですか?」


「たぶん、噂のせいかも」


「どうして言い切れるのですか? 貴方は何を知っているの?」


「そんなの、なんにも知りませーん」


「知らないのですか。それなのに、その手、頭をなでなでしようとするのですか?」


「ろりさまが可愛いから、つい……」


「むー。貴方は命しらずな面を持ち合わせているのです?」


「半分死んじゃってるようなものですから……」


「ぷくっ、ずるいです。デスゲームで最初から死んでるって、それもう無敵じゃないですか!」


「あっ、いけません。ろりさまの頬っぺたが、リンゴ味になりそうです」


「リンゴ味なんかになりません」


「じゃあ、何味になりたいのですか?」


「むー。ゲームセンター味?」


「ゲームセンター味? なにそれ」


「それはいまから作るのです!」


 ――最終ラウンドっぽい流れかな。これは。


 花音くんはどこにいるかもうわからないけど、私ひとりで挑むしかない。


 無限の空は終着点を迎え、私の意識が暗転する。


 そして、再び目を覚ますと、目の前にはUFOキャッチャーが幾つもあった。


 ぱっと見た感じ、奏宮高校の隣町にあるゲームセンターといったところか。


「お兄ちゃん……」


 ろりさまは、UFOキャッチャーの景品のひとつに釘付けになっていた。


「取ってほしいのですか?」


「うんっ!」


 ろりさまは、目を煌びやかに輝かせていた。


 スーツ姿の男性キャラクターで間違いないのだが、如何せん詳しくない故に名前すらわからないのだけど、ここは挑戦したほうが。


 財布って胸ポケットに入れていたっけ……。


 もし入っていたとしても、そんなに挑戦出来なさそう。


 だがしかし、やるしかない。


 いまこそ、死神の眷属として本領発揮をしたいところ。


 ぬいぐるみキャッチのチャレンジがはじまった。


 チャンスは四回だ。それ以上は、花音くんが助けに来ない限り出ないとみたほうが良い。


 一回目は、そもそも景品に擦りもせずアームが穴へと直行した。


 二回目はぬいぐるみを持ち上げようとして少し引っかかった。だが、重さに耐えられずにその場で台の上に残った。


 三回目も一回目と同じく、景品に掠りすらしなかった。


 そして四回目――。


 遂に、ぬいぐるみが持ち上がった。


 二回目より明らかにアームが強いような気がしたが、運が良かったのかな。


 そのままぬいぐるみが景品穴に落ちると、ろりさまは蔓延の微笑みでぬいぐるみを抱き始めた。


「短い間、遊んでくれてありがとう。お兄ちゃん捜し、あたしの完敗だね。もうここにいる元気もすっかりなくなっちゃし、悔いはないかな」


 そう言うと、ろりさまの身体が透けていった。


「えっ……。ろりさま、急に別れの言葉なんて……」


「貴方、死神の眷属なんでしょ。そんなこと言ったら駄目だよ」


「うっ……」


 死神は死をつかさどる何かという認識でだいたい合ってそうだけど、その言葉は私に刺さる。


 眷属の身としても、まだまだ未熟ということなのだろう。


「ロリさま。あそんでくれて、こちらこそありがとうございました」


「むー。そのあだ名、もっとなんとかならなかったの?」


「他のあだ名が、思いつかないです……。すみません」


「もういいわ」


 ろりさまは、両目を閉じる。


 このまま――すっ、っと消えるのだ。


「死神の鎌は振れるのかしら?」


「斧ならありますけど……。花音くんに大事な時まで出さないでと言われてまして」


「そう。今はまだその時ではないから、気にしないで」


 ――ポトリ。男性キャラクターのぬいぐるみが、床に落ちた。


 ろくでなしゲームは、これで終わりを迎える。




「あれっ、私こんなところで何してたんだっけ……」


 周囲を見渡してみるも、ここへ来た理由が思い浮かばない。


 花音くんなら、何か知っている?


「それと、これ……」


 私、なんでこれ取ろうと思ったのだろうか。


 とりあえず、景品のぬいぐるみは持って帰ることにしよう。



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