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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅰ 出会い
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このゲームはろくでもない


「むー。何かありましたか?」


 ろりさまの視線を感じる。


「えっと、なんでもなく……あっ……」


 うっかり、盛り上がっていた部分を思いっきり踏んでしまった。


 これはマズイ罠なのかもしれない。


 カチッ、と音まで聞こえたし。


 冷や汗をかいて、緊迫感が押し寄せる。


「……天井から?」


 ぶらーん。


 紐がついた小さな振り子が、目の前に現れた。


「今度は、なんですか?」


「むー? きっと、どこかで使う小道具でしょう」


 ろりさまは警戒心なく振り子の先端を指先でつつく。


「使うって言われましても、天井にくっつけられてるし」


「紐を切って使うのです」


「なるほど……」


 いま手元に、紐を切ることができる道具なんてないけど。


 でも、これはろくでなしゲーム。


 理不尽と謎が飛び交う噂だと忘れてはいけない。


「むー。不満があるならリタイアすれば平気だけど……。リタイアしたいのなら、それなりに覚悟を決めるべき」


 ろりさまの目元でなにか映像が流れている気がした。


 その場で立ち止まっていて、様子も少しばかりおかしい。


 私はろりさまの目元に注目した。


 キーボード音がする。もっと注目しないと。


 私はろりさまの眼球を覗きこんだ。


 すると、キーボードで文字を打ち込んいく男性の姿が見受けられた。


 青い影を落とす空間で一人、作業している者ということは……。


 この人が、ろりさまが探していたお兄ちゃんなのか。


 いつ、どんな時に、どのような仕掛けが来るだなんて、わからない。


 凶暴な種仕掛けひとつでろくでなしゲームが終了、なんてことは普通にあり得そう。


 それを防ぐためには、ひとつしかない。


 ろくでなしゲームで勝つこと。


 勝つには、どうしたら……?


 ろくでなしゲームの勝利条件、提示されていないような。


 ルールも穴がいっぱいあるのかな。それとも。


「むー。どうかしました?」


 正常に戻っていたろりさまは、さりげなく私を心配していた。


「大丈夫です。少し考え事をしていました」


「余計な心配でしたか?」


「いえいえ、だいぶ心が楽になった気がします」


「それならよかった、です……」


「あの……ろりさまに、ひとつお願いがあります」


「なんですか?」


「額縁のひとつをここに持ってきてほしいのです」


「青い花びらがある絵ですか? わかりました」


 気の利いたろりさまは、すぐに持ってきてくれた。


「はい」


「ありがとうございます」


 お礼をしたが、これだけでは不十分だ。


 私はもうひとつの額縁を持って、振り子の前に近付いていった。


「ろりさまは反対側から、くっつけてほしい」


「はい……? そういうことですか……」


 ろりさまも気づいた様子。


 これをくっつけると、ギミックが解ける。


 予想通り、カチッと音がして、二つの額縁がくっついた。


 絵を外側にして振り子を挟み込む。


 内側には振り子を挟めるくらいの溝があった。


「ただ、まだ終わってなくて、ここで更に引っ張ると」


 ガッチャ――。


 赤いカーペットの床が開いて、私とろりさまはその場で落ちていった。



 だがしかし、これは正解である。


 そう確証したのは、落ちてしばらくたった後だった。


 周りの景色が、夢幻に続く大空になったのだ。


 第二ラウンドといこうか。


 ろりさまと、二人っきりで。


「今度はどんな景色があるのですかね、ろりさまっ」


「貴様がどう思おうが、勝つのは我らである」


 目の色が紫色に変わっていくろりさまが、渋い男性の声を言い放つ。


 その瞬間、僅かな疑惑から確信へと繋がる。


「……やっぱり、ですか」


 ろりさまがろくでなしゲームを支配する噂の主である、と。



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