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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅰ 出会い
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お兄ちゃん捜し


「朝比奈の知り合い?」


「ううん、初対面かも。私は顔すら知りません」


 私は首を横に振る。


「お兄ちゃん……お兄ちゃんはどこ……?」


 緑髪の美少女がソファーから離れると、一直線にこちらへ近付いてきた。


「ねえ、お姉さん。あたしと一緒にお兄ちゃんを探してくれない?」


 私の左腕を掴み、もう片方の手で指さしをする。


 指をさした方向には、茶色の扉がひとつ、ぽつりとあった。


「朝比奈は一緒に探しに行きなよ。僕はもうちょっとこの近辺を見渡そうと思うんだ」


「花音くん……」


「噂の効力を増幅させた者が潜んでいるかも、ってね」


 花音はふわっと天に昇りはじめると、ニヤリと笑った。


「朝比奈、気をつけていってらっしゃい」


「う、うん……」


 花音の体がうっすらしていき、すぐに目視できなくなる。


 早く変な空間から出たいのだけど、こうなったら仕方ない。


「お兄ちゃん捜し、手伝ってあげるけど……。お名前なんていうの?」


「名前なんてないの」


 ……真顔で返答された。


「見た目が私よりロリっぽいから、ろりさまって呼ぼうかな……」


「むっー」


 林檎のように頬を膨らませ、腕を少し引っ張ってくる。


「い、行きます……」


「はい。ろりさま、ご案内お願いします」


「その呼び方で呼ばないでっ!」


 ろりさまに連れられて、茶色い扉の前までやって来る。


「この先にお兄ちゃんがいるとよいのですが……」


 扉が開かれると、赤いカーペットが敷かれた廊下が続いていた。


 いまは進むしかない。


 私は、ろりさまに続いて廊下に足を踏み入れていく。


 ――バタリ。


 廊下を歩き始めて早々、扉の物音がした。


 私は急いで振り返ってみると、扉が閉まっていた。


「あはは……花音くん、大丈夫かな……」


「気にせず行くのです」


 先陣を切るろりさまは頬はすっかりと元通りになっていた。機嫌斜めな気分が消えていったのかもしれない。


 それにしても、不思議な空間だ。


 こうしてろりさまに案内されてないと、すぐに迷子になりそうだ。


 しばらく歩くと、右手側の壁に額縁がひとつあった。


「これは何でしょうか……?」


 額縁には、巨大なお城の絵と花畑の絵が飾ってある。


 花畑には紫色の花びらが描かれている。


「ただの絵でしょ。進みますよ」


 絵に一切興味を示さないろりさまは、通路の先端を見つめていた。


「進んだら何があるのですか?」


「額縁……」


「もし当たったら、褒めても良いですか?」


「好きにしてください」


 ろりさまの予想は、的中する。


 今度は赤い花びらが描かれている絵を発見する。


「流石です、ろりさま」


「褒められても嬉しくありません!」


「ろりさまが可愛い……。それはさておき、絵は他にもあるのでしょうか?」


「知りません。たぶんあと二つかと……」


「あと二つ……。ところでろりさま、この絵の中心部分に描かれている、六方形の黒い物体は何でしょうか?」


「むー。ひとことで言うのなら、現代にあってはならない道具」


「なんですか、その物騒な道具は……」


「正式名称とかは知りません。ただ、これを使えば人間に死が訪れなくなり、やがて新たな生命が誕生しなくなる。みたいな効果がありそうです」


「ろくでもないですね……」


 なんでもありだったら、ゲームの製作陣が真っ先に作りたそうなモノではある。


 噂に大きく関与するというのなら、問題視する必要がありそうだ。


 花音なら、そう言うに違いない。


「もし見かけたら今すぐにでも壊したい欲求が溢れそうです。でも、手が動きません」


「どうしてかな?」


「なんか、勿体ないというか……」


「お兄ちゃんが関係している?」


「ううん。この道具、お兄ちゃんが作ったのかもしれない……」


 ろりさまが少し俯く。


 ろりさまのお兄ちゃんが作ったモノかもしれない、と言ったのは何故か。


 そういえば、これはろくでなしゲームだったか。


 ここがゲーム空間と仮定するなら、もっと周囲に注意を向けないといけないかも?


 私は足元から見渡してみた。


「あれ……」


 すぐに気がついた。


 私が立っている近く、明らかにカーペットが盛り上がっている箇所があった。


 ろりさまに気づかれないように、そっと近づく。


 これ、踏んでみる?


 それともめくってみる?


 私、どうしたら良いのかな。


 もし花音なら、どうするのだろう。



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