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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅴ 広まる噂
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噂の情報収集


「夏実さん、その格好は……」


「えっとね……。これから噂を探しに行くというからには、ちゃんとした準備が必要かなって」


 魔女の帽子を被り、軽く靡いている髪に手をかける夏実は照れ隠しする。


「悪魔の列車についての噂探しする格好では……うん……。まぁ、いっか」


 私は、あとで着替えるとしよう。

 あの格好をして、コスプレ集団と思われないかだけ心配になるけど……。


「すみません、九蛾さん。列車の噂について、新しい情報はありますかー?」

「ふむ。君たちは、それを聞きに来たのか」


 沙世は真剣な顔つきになって、腕を組み始める。


「その態度……もしかして、何か情報を得れたということですか?」


「その通りだ。ただ、伝えて良いものかどうか……」

「九蛾さん、どうかお願いします」

「しかし、あの噂には危険があるから」


「私からもお願いします」


 頭を下げて、夏実のお願いを聞き入れるよう説得する。


「そこまでされたら、仕方ないか。ミモ、出てきて」


 沙世が左手をあげると、がざがざと物音が聞こえた。

 ミモってことは……ひょっとして。


「こーちゃん、元気になったのかな?」


 ショベルをもった美少女が、こちらに向かって歩いてきた。


「ミモさん! 私はぐっすり寝れたみたいなので、元気です」


「それならよかった。――っと、いまは本題でしたっけ」


 やや不満そうなのか、ミモの頬がすこし膨らむ。


 おそらくは、もっと日常的なお喋りがしたいのだろう。


「昨日、悪魔の列車から乗ってきたというゾンビの小さな集団がいて、おおよその居場所を突き止めたところまで進行しているね」


「的は絞れてきている段階……わかりました」


「それでね、その場所というのが、隣町にあるゲームセンターの近辺だって言われている」


「ゲームセンターの近く……」


 私の記憶には、あそこで不思議なぬいぐるみを取った記憶が残っている。

 ゲームセンターに行った理由は、あやふやだけど。


「怪しい場所はあたしでチェックしてるから、やることは現地で確かめるだけね」


「ミモさん! こんなところにいたのですね!」

 横入りしたポレッタは、ミモに飛びついていく。


「ちょっと。あたしから、離れなさいよ」

「ポーは、ミモさんとも仲良しですからね!」

「ぬぬぬぅ……」


 困ったミモは、私に助けを求めて手を伸ばしてきた。

 仕方なくその手を握ると、しぶしぶ天使の羽を出した。


「ちょっとだけ、上昇するだけですよ」


 私の足元が床から離れていくと、ミモの身体もすこし持ち上がった。

 驚いたポレッタは、思わず腕を放してくれた。


「あわわわわ……」

「ポレッタさんに驚かれても……。そもそもポレッタさんはエネマでは?」


 再び地面に足をつけると、目の前のミモから横方向に顔を逸らす。


「エネマ? こーちゃん、なにそれ」

「我も初耳だぞ。そんな単語」

「エネマ……噂には聞いたことがあります」


 皆揃って微妙な反応をみせないでほしいのだけど。


 エネマという私が作った単語、噂として全然浸透していないのか。

 でも反応をみる限り、ポレッタだけ実感があるようで。


「……詳しくは実際に見てもらったほうがわかりやすそうかと!」

「ポレッタさん、いましなくて大丈夫です」

「そうなのですか?」


「うん。今は悪魔の列車を最優先にしないと。そうでしょ、花音君」

「朝比奈、そうだね」


 頭の後ろで手を組む花音が、ふわりふわりとこちらに向かってきていた。


「いまからみんなで隣町にお出かけだね。そこの段ボールの中身もちゃんと持っていってあげないと、僕の妹もきっと怒るだろうし」


 花音は私と顔を合わせないで、よそ見する。

 ひょっとして妹さんが近くに潜んでいるのか?


 それはさておき、そろそろ着替えたほうが良さげではある。

 青い神官の服装は、上の部屋にあるタンスの中だ。


 私がシャルル神に帰依したことがデフォルトになっているだろうし、それが自然体だと思わざるえないのだから。


「では沙世さん、ちょっと部屋を借りますね」

「借りるもなにも、朝比奈小鳥は実質あそこに居候しているのだろう?」


「あれ、そうでしたっけ?」

「そうだが」


 沙世が深く頷いた。

 私、あの部屋に住んでいることになっていたのか……。


 ということは、崩壊カルマの噂が消失した?


 これはやや困るかもしれない。


 いや、私の住まいが変化したということなら、むしろ都合が良いというか。

 より人目を気にせず、ピアノの掃除に費やせることになる。



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