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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅳ 不死鳥の神
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時空旅行した先にあるもの



 長かったようで短い、あの世界線とはお別れである。

 そして、私はそれほど深い眠りにつかないだろう。


 あるのは溜まっていた疲労のみ。これなら、それほど時間がかからずに動けるようになるはずだ。


「朝比奈、もう朝だよ」


 遠くで鳴り響く目覚まし時計と、男の子が聞こえてきた。


「花音くん……おはようございます……」


 寝ぼけながら顔を起こす私は、顔を擦って欠伸をする。

 どのくらい、ベッドの上で横たわっていたのだろう。


 目覚めた場所は、教会エリアの上の階層にある小部屋で間違いないだろう。


「あれ、今日は何月何日でしたっけ……」


「カルマの音色を聞いた日から進んで、翌週の月曜だね」


「うーん……。ありがとう……」


 壁に掛けてあるカレンダーもチェックして、それほど時間が過ぎていないことを確認すると、私はひと安心した。


「現在地は、鷹浜美術館であってます?」

「朝比奈、そうだよ。鷹浜美術館の寝室スペースを借りるのは、流石の僕でもちょっとは躊躇ったかも」

「そっかぁ……」


 私、倒れたことになっていたのか。しかも崩壊カルマの噂は放課後に奏でられたから、保健室が使えなかった。


 それで、仕方なく鷹浜美術館にある小部屋に運ばれた。


 実に辻褄が合わせられている。


「朝比奈、早く着替えないと学校の予鈴鳴っちゃうよ」


「あっ、普通に授業あるんだっけ……」


 私は近くにあるタンスを開けた。


 そこには奏宮高校の制服と、青い神官の服装がハンガーに掛けられていた。


 あの世界戦では卒業式とかやっていたけど、あくまで純粋な人間でなくなる意味を示す儀式であった。

 実際問題、背中に意識を向けると、ピンク色の天使の羽が生えてくるのだから。


「うっかり人前で、この羽を出さないように気をつけないと」


 制服に着替えた私は、胸に手を当てる。

 注意しないといけないことが増えた気がして、以前よりちょっとしたことでも気を引き締めていかないといけないのは、なかなかにつらそうだ。


 それでも、なんとなく前に進めている。


 今はそう思うしかなかった。


「ところで花音くん、鷹浜美術館っていつ設立されたのですか?」


「うん? 美術館が最初からあったのかどうかなんて、誰も気にしたことがないよ」

「気にしたことがない……ということは……」


 旧校舎の存在が否定された。

 それから、あの景色……。


 鷹浜美術館の窓からは、奏宮高校の校舎が見えるようになっている。

 あの距離感から推測するにあたり、丁度旧校舎が建っていたであろう位置に鷹浜美術館が存在していることになる。


「花音くん、私と出会った場所ってわかる?」

「この下の階層にある、教会エリアの黒いグランドピアノの前だよね」


「う、うん……」


 やっぱり覚えていないんだ。


 旧校舎での出来事。

 やっぱり、世界は一度壊れちゃったんだ……。


 これから待っているのは、新たな世界での噂探し、かな。


「とりあえず、登校するしかないか」


 私は小部屋から出て、校舎に向かうことにした。

 教会エリアと展示スペースのところを通っていきたい気分ではないので、天使の羽を出して窓から飛び降りることにした。


 ゆったりと着陸して、すぐにしまう。


 よし、誰にも見られていない。

 校舎にたどり着くまで、私は軽くダッシュする。



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