ポレッタの隠しごと
「……さて、ポレッタさんを追いかけないとね」
ポレッタは上の階層、教会のある方向へと進んでいったことを把握出来ている。
あそこは現状、一般開放が悩ましい場所であるため、下手に入り込んで迷子になっていないか心配になる。
とにかく行かなきゃ、どうにもならない。
「花音君。ポレッタさんの位置は把握できますか?」
「そうだな、朝比奈が掃除を担当しているピアノに、急接近してるね」
ふっと現れる花音は、至って真顔だった。
「……ただ、少し妙だな。ポレッタという女の子はたしかに人の姿をしていたのだけど」
「急にどうしたの?」
「朝比奈も、僕が管轄しているピアノの元に向かうんだよね。確かめてみる際、警戒を怠らないでほしいから」
「警戒……わかりました」
私は気を引き締めて、足を前に前へと踏みこんでいく。
想定できる最悪のケースを想像する。
怪盗ネプチューンは流石にあり得ないか。
そうじゃないとして、可能性がありそうなもの……。
さっきの金髪美少女の仕業で、ポレッタが大変な目に遭っているかもしれない?
そんなことを頭の片隅におきながら、教会エリアにある黒いグランドピアノに接近する。
「これは……」
ポレッタの面影は、そこになかった。
代わりといって良いのかわからないけど、ピンク色の蛇がグランドピアノに絡みついていた。
「こんな蛇、いつ空船に入ってきたのか」
「朝比奈、その蛇が、ポレッタという女の子じゃないのかな?」
花音が指をさす。ピンク色の蛇は、ピクリとも動かない。
「もし蛇がポレッタさんだとして……」
動く気配がないということは、なんか変だ。
ルクス――。
私は魔法をピンク色の蛇にかけてみた。
すると、ピンク色の蛇は姿を変えて――。
「くぎゅー」
頭部を押さえ込むポレッタが、目を回して気絶していた。
「ポレッタさん、大丈夫ですか?」
「これは駄目かもね。暫く安静にさせといたほうがよいかもね」
「わかりました。椅子に寝かせるだけで大丈夫かな……」
「それでオッケー」
「ふぅ、それにしても……」
ポレッタが、まさかピンクに帯びた蛇の姿になれるとは思ってもみなかった。
クロハと同じモンスターになれる者だとしたら、クロハとの共通点を探すことで、モンスターになれてしまう原因を突き止められるかも……。
モンスターという言い方、なんとかならないかな。
できる限り、オブラートな雰囲気で包み込んでみたい。
直感では、モンスターに化けれる人間だけど……。
「エネマ。――なんちゃって」
「悪くはないね」
「花音君、それどういう意味ですか?」
「ははっ。そのままの意味だよ」
花音は面白半分に笑っていた。
「エネミーとヒューマンを混ぜてから、文字数でも削ったのだろう? 朝比奈にしては、すごくストレートな表現だなって」
「お褒めの言葉、ありがとうございます……」
ムスッと。
私の頬は軽く膨れ上がっていた。
まるで馬鹿にされているみたいで、でも決して花音のことを恨めない。
「朝比奈がモンスター呼ばわりするくらいなら、エネマって言い回したほうがマシだと思うね」
「……そうですね。それはそうと、ポレッタさんが目を覚ますまで、ピアノの演奏でもしておきましょうか」
「それいいね。寝ている者に、不幸の階段をこっそりのぼらせるドッキリを仕掛けるとは」
「流石にそこまでは考えてない……」
私は、ポレッタの幸せって何かなと思いながら、黒いグランドピアノの元に歩いていく。




