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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅳ 不死鳥の神
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帰還



「一度、空船に戻りましょう」


 私のひと言で、皆が動いた。

 ルチフェロにお礼を伝えたあと、赫の修道院から離れていく。


 道中にはゾンビが複数いたのだが、私たちを目撃するなり、距離を取っていく様子であった。

 それはまるで、意志が残されているかのように思えた。


 人目を避けて隠れる。


 自我を失ったゾンビであれば、そんなことはしないはず。


「ここが、空船ですね!」


 息を呑むポレッタは、とてもイキイキしている。


 私にとっては、ただの住まいなのだが、ポレッタにとってはどうやら違うらしい。


「くつろぎの空間でもあり、そのまま旅もできる。とても羨ましい限りです」


「旅……ポレッタさんは誰かと一緒にいたのですか?」


「いいえ、ずっと野宿です」


 ポレッタは自慢のバッグを開けると、手を突っ込んだ。


「貴重な食材なんかも、このバッグに入れておけば鮮度を保ったままの状態で保管することができるのです」


「それなら生活には、困らなさそうですが……」


「ポーは、ひとり旅だから裕福とは無縁です!」


「だから……自信満々に言われても……」


「自信を持てるのは、この恵まれたジョブのお陰だと思います。実際には商売の経験なんて皆無なのですが、どうにかして生きてきましたから」


 ジョブ……。私でいうと神官である。


 ポレッタは商人と名乗っていた。


 花音とアリスはわからない。ミモも不明。

 ネプチューンは怪盗だから幻覚魔法を巧みに扱える。


 夏実は……。夏実の兄は……。

 噂の見極めを行う行為は魔法と呼べるのかは、いずれ答え合わせが必要だ。


 つまり……ジョブは授かる魔法とかに影響してきそうだが……。

 全員がジョブをもっているわけではなさそう?


 それより今は――。


「いまから道案内します。アリスを筆頭に、噂の美術館がもうすぐオープンしますので」


 私とポレッタを空船の出入り口付近において行かれたのもあるが、準備で手が回せない他の者の代わりに案内をする。


 それが、いまの私にできること。教会にあるピアノに案内しても良いのだが、行ったら掃除しなくちゃいけないと思ってしまうので、ここでは避けておこう。


「はいっ。朝比奈さん、よろしくお願いします!」


 本当に、元気よく。がモットーなのだろう。

 こんなにも活発でイキイキしている声で返事を返すのは、これまで一度もないように思えてしまうくらい新鮮で気持ちが良いものだった。



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