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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅳ 不死鳥の神
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変な廊下



「ところで、アリスさんは……?」


 周囲の状態を用心深くみたけど、アリスの姿だけ見当たらないような気がして。

 そのことに関して、花音が躊躇なく口開く。


「朝比奈、アリスならちょっと確かめたいものがあると言って、先走っていったかもね」


「ふむ、そうでしたか……。アリスさんは、私たちと同じペースで展示物を見てないのですね」


 心に余裕がない。アリスは意見を口には出さないが、堂々と行動で示してくる。

 魔列車の噂のことで、頭がいっぱいになっていないなら大丈夫だろうけど。


「あっ……建物の構造とか怪しんでいます?」


 ふと、気づいてしまった。


 展示物との間には廊下が続いているのだが、廊下に扉ひとつないことに。


 明かりは、どうやってついている?

 天井をみても、周囲を見渡しても、光源は存在しない。


 だけど、電気のついている学校の廊下より断然明るいのである。ちなみに窓はない。


「窓もなく、ライトも実在しない。……だけど明るいこの廊下、花音君はおかしいと思いますでしょうか?」


「朝比奈、これはあれだな。シャルル神が照らしている」


「シャルル神さまが?」

「いや、厳密には違うかな。シャルル神が落としていった何かを展示しているのだとして、その何かがとてつもない光を放っているとしたら?」

「なるほど……」


 花音の言った通りなら、あり得るかもしれない。


「謎が解けたなら、次に進みましょう」

 理屈を納得した私は、次の部屋へと向かっていく。


「朝比奈、急にどうしたの?」

「うっ……なんでもないですから!」


 変なことを考えてしまったことを、公にするわけにはいかない。

 ともあれ、シャルル神が落とした光の物体ね……。


「列車の噂って地下だよね。もし借りれるなら、探索が捗るかも」

「仮に噂の出入り口が見つかったとして、どうだろうね」


「まさか資料館が、こんなにも広いと思ってなくてね……。そういえば、見学に来られる方は他にいないのかな?」


「朝比奈、出入管理ならシスターに聞けば?」

「あっ、そうでした。すみません」


 花音に一礼したあと、私の少し後方を歩いていたルチフェロに顔を向ける。


「すみません。いまの御時世ではとても大変なのでしょうけど、他の見学者さんって来られたりするのですか?」


「たまにはね、あるかも」


 否定はしなかったルチフェロは、自らの人差し指をしゃぶっている。


「あのね、ゾンビになっていない冒険者さんが興味をもって赫の修道院にやって来ることは月に何度かあるの。そこでシャルル神の信仰をしたりしなかったり、子供たちの引き取りをお願いしたりする過程で、この展示物をみせることはあるよ」


「それで、見知らぬ人と人が鉢合わせしたケースは何回あるのですか?」


「ぶっちゃけ、ほとんどないかな。会ったらラッキーくらいに思ったら良いと思う」


「ほどんど会わないね……貴重な言葉をありがとうございます」


 これは何を意味するのか。


 アリスが耳にすると痛そうな話ではあるが、大事な情報にもなり得る。


 これから美術館運用していくにあたり、顧客をどうやってかき集めるのか。生きている存在だけでは、圧倒的に母数が足りない。


 だとしたら、ミモの力が必要になってくる。


 もしも上手く物事が動いてくれるとして。

 シャルル神も平和を願っていると望んでおられるから、斜め上の貢献をすることにもなる。


 ――ということを考えているうちに、次の部屋が現れた。


 予想通り、祈りを行った建物とその周辺をモチーフにした模型の展示物が置かれていた。

 その近くにアリスもいた。


「ちょっと待って。我は展示物ではないぞ……?」


 展示物に目を向けてなかったアリスは、何かに戸惑っている様子だった。


「ふむふむ。この身に流れる商人の血が騒ぐ程度には、貴方の身につけているものに興味が沸いています!」


 ぷにぷにぽっぺたに、ピンク色の髪色が揺れる。

 頭の上にのっけているバッグは、無限に道具が収納できそうな気配がした。あれは魔法の道具というよりかは、噂なのか?


「どうかご安心をしてください。アイテム鑑定の魔法も扱えますので、どんな道具を身につけている相手であっても対処できます!」


 白いショートパンツを履いていて、緑のマントを身につけた背の低い美少女が、アリスの観察をする。


「アリスさんっ、変なこと言われなかった?」


 私は二人の合間に入り込もうともがく。


「お、おう……我はなんともないぞ」


「それならよかった。で、そちらの方は?」


 まさか私たち以外にも、見学者がいたとは思いもしなかった。


「おー? 同行者がいたのですね!」


「じー。私は、朝比奈小鳥です……」


「あっ、いけない。自己紹介がまだでしたね」


 背の低い美少女は、何度も頭をぺこぺこさげる。


「商人のポレッタといいます!」


 支えているであろう頭部とのバランスが崩れそうで落下しないバッグが目に映る。

 目の前にいる美少女よりも、そっちのほうが気になって仕方ない。



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