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怪談ピアノの掃除当番  作者: 愛原ひかな
Ⅲ 噂の大怪盗
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進路決定



「学校に行きます、早く行かせて……!」


「こーちゃんは、そんなに焦らないこと!」


「そうだぞ。奏宮高校の制服もボロボロになってきた頃合いだし、そろそろお前に決めてもらいたいものがある」


「決めてほしいもの?」


 今になって、また奇妙な選択肢を迫られるようなことになれば、アリスに対して遺憾を覚えてしまいそうであるのだが……。


「難しい顔をしないで。これは我なりに考えたのだけど」


 アリスは手のひらをみせると、口が動いた気がした。

 すると、眩い光がどこからともなくアリスの元へと集約していくのが目に見えた。


 やがて光が収まると。


「神官の服装と、死神の衣装、どっちが似合うのかな……」


 アリスは白々しくこちらに問いかけてくる。


 提示された神官の服装は、青色の縦ラインと白い生地をベースとしている。ベレー帽は服装と同じ色合いである。

 対して、死神の衣装は黒である。


 私としては、どちらでもと言いたいところだけど。

 これ、なんで問いかけできているのだろう。


「せっかくこんな未来へと来てしまったことだし、ジョブチェンジなんてどうかなと思いまして」


「ジョブチェンジ……さ、左様ですか……」


 つまり今から決めるのは私の職業ということか?


 ファンタジー風に捉えると、前者がプリーストという回復職、後者がソウルテイカーみたいな魂を刈る者みたいな感じになるのかなと。


 どこで職業のことを知ったかというと、崩壊カルマの噂である女性の顔が浮かびあがる。……が、楽譜を書いていく上で、想像の糧として教え込まれていたことだから悪い印象を抱かない。


「現在から遡って遥か昔にしか存在しない高校の生徒というのは、身分としてもあまりよくないということでして」

「なるほど……」


 たぶんアリスなりに気を遣っているのだろう。

 それなら、希望に答えなくてはいけない。


「選ぶことで、自分自身だけでなく、誰かの役に立つなら……」


 私は迷う事なく、青い服装を手に取る。

 ワクワク感というものが一切ないとはいえ、より一層冒険していくのだ、という気にはなれそうだ。


「そうだ、ついでに高校の卒業式もしよう。この場で」


「はい……?」


「上の部屋で着替えてきなさい。インナーはタンスの中から好きなものをひとつどうぞ、とミモからの伝言」


 と、アリスに後押しされて教会から追い出された。


 ……仕方ない、ここは素直に言うことを聞くしかないか。


 私はしぶしぶ階段を上がっていく。


「失礼します……」


 誰もいない部屋に入ると、窓が開いていた。


「風は気持ち良いけどね」


 夏実はここから飛び出していったのかな。

 今はあまり深く考えたくない。

 制服を脱ぐと、すぐさまベッドの上に置いて折り畳む。


 タンスを開けて、黒のインナーを取り出す。そのままインナーを身につけると、その上に神官の服装を合わせた。



「よし、行きますか」


 最後に青い帽子を被った私は、部屋から出ていく。


「花音……夏実……。どうかご無事でいてほしい……」


 このお着替えは、これからを作っていく大きな一歩だと信じて。



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