観測者
「……この場で気がやんでいても仕方ありません。一旦、空飛ぶ船に戻ってみるというのは如何でしょうか?」
「玉藻さん、そうします……」
立ち上がった私は、窓際に近付く。
きっと外の景色は、雲ひとつない夜空が続いているだろう……。
「すぅー……」
ほんの少し深呼吸する。
雲ひとつないのは、予想通りだった。
けど、少し風が気持ちよかった。
そして……もうじき観測出来るだろう。
星の奇跡、流星群を。
「追いかけるつもりですか?」
「うん……」
私の身体は無意識に、窓へと乗り出していた。
「平民エリアの、学校へ行こうと思います」
私の直感は、正しいのか。
そんなことは目的地へ行ってみないとわからない。
けど、信じたい。
星が巡る奇跡と同じように。
「なるほど……こちらとしては、観測をみたいものですから護衛を付けさせてよろしくですか?」
玉藻は指をはじいて音を鳴らすと、ひとりの美少女が部屋に入ってきた。
赤い横ラインが入った黒いドレスに、ドレスと同じ色合いをもつ大きめなリボンを身につけておしゃれをしている彼女は、ウーパールーパーのぬいぐるみを抱きかかえていた。
「私、仮神クロハです……。よろしくお願いします」
おとなしめの口調で喋りだした彼女がペコリと頭を下げると、少し違和感を感じた。
なんというか、クロハは人間ではないのかもしれない。
身体の奥底から読み取れる雰囲気は、どことなくアリスに似ている。
一種の神様、みたいな……。




