気分晴らしの屋上へ
先生が教室に入ってきて授業がはじまりそうだけど、夏実は何を考えてるのかさっぱりわからない。
「国語の教科書を出しとくように。今日は……」
先生が指示を送り、授業を進める。
他のクラスメイトは何事もなかったように、自身の座席に座り込んでいた。
みんな、私に向かって頭を下げていたはずだけど、覚えていない?
もしそうならは、あの行為は噂の力によるものと断定せざる得ない。
どのみち、正確な情報は夏実から聞き出すしかないのだが。
「あいたっ……」
突如、消しゴムが私のおでこに向かって飛んで来た。
「ごめんなさい、消しゴム取りにいきます」
夏実はそう言うと、慎重に立ち上がって消しゴムを取りにいった。
そして、戻って来る際に。
「小鳥ちゃん、今日の放課後に旧校舎の音楽室に行っても良い?」
「う、うん……」
小声でのやり取りがあった。
本日の授業がすべて終了すると、夏実が私のおててを軽く握ってきた。
「小鳥ちゃん!」
「やっぱりごめんなさい……」
私は手を払い、慌てて教室から出ていった。そのまま私は一番近くにある階段を駆けがった。
私、どうしちゃったのだろう。
屋上への間、行き止まりとなっている柵の網目に手を掛けると、ガチャリと音がする。
屋上への鍵が外れている……。
この先に、何かあったっけ。
「外の空気でも当たってみようかな」
らしくない。そう言われても、今更だと思う。
「屋上っー!」
人目を気にせず、柵を動かして屋上へ踏み入れた。
強い風が靡いたが、気にならない。
私は青い空の下で深呼吸する。
……やっぱり天使って、自由にお空を飛べるのかな。
練習、とか必須かもしれないけど……そもそも飛ぶことは練習しておくものなのか?
天使の羽を出してみても、必要なのかの判別は難しいところがある。
「一応……楽曲をつくりたくなる環境ではある」
他の生徒なんて、来るはずかないだろうし。
……生徒はね。
生徒じゃないのは来ちゃってもおかしくはない。
「やぁ、朝比奈。こんなところで暇つぶしでもしてるのかい?」
何かとちょっかいをかけたがっていそうな花音が、屋上にやって来た。




