覚醒した眷属
「いいか。よく聞け、朝比奈小鳥。お前はいま、天使になっているのだ」
「天使……つまり、この重たい背中は天使の羽……ですか?」
「そうだ。……覚醒して、肉体がまだ不慣れなんだろうな」
沙世はクラクラする私の状態をみて、言ってるのだろう。
「この……立ち眩みしそうな体調だし……天使って眷属の最上位とは思えないような気がするのですが……」
「おとぎ話等でも神様の使いは、天使だと呼ばれること多いくらいだろ。有名なほど噂として相当強い部類に入るのだからな。ちなみにだが、死神も神とついている故に、一種の神様であるので何の問題もない」
「そう言われても……天使の輪っか、ないですし」
「輪っかは神様と交信する為のものだから、主の意思次第じゃな。少なくとも我は要らん」
堂々と胸を張る沙世の、鼻息が漏れていた。
「話が終わったかな? そろそろ音楽室に戻りたいんだがね」
少し落ち着きがなくなっている花音は、何かを伝えたがっていそう。
「花音くん……私飛べるようになった代わりに、動けなくなったかも」
「そっか」
花音は私の手を取って、優しく引っ張っていく。リードしてくれるようだ。
動けないというより、飛び方がわからないというのが正しいかもしれないのだけど……。
「ほう。主を置いていくとは、随分と度胸があるな」
「なにかを誤解されていませんか?」
「ふはは。まずは自由に飛ぶことを目標にして、羽の制御をしてみると良いぞ!」
ニンマリと笑う沙世は腕を組み、朝比奈小鳥の将来性に期待を寄せていた。
ーー死神の噂。
息絶えた動物の魂を冥界に運んでしまう能力をもっており、死者の掃除屋とも呼ばれる。
人懐っこい性格なので、学校の生徒や先生に化けていることもあるらしい。
主な出現時刻は、夕暮れ時と深夜帯。
日中は死神としての自覚すらない場合が多い。




