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お日様エルフど田舎に行く

 上の連中はホイホイホイホイ、仔竜とってこいっておっしゃいますけどね、それ、俺に死んでこいって言ってるのと同じだ。


 アイレンズミア地方の古代ファイグレム王国の大神殿にいけってなんだ。


 俺が森の民(エルフ)の血を引くからって出来ること出来ないことがあるんだが?


 そんなことを内心思いながら飛行艇から地方都市に降り立った。


 飛行艇から遠くに見えた霊山ライノラントの頂上近くの大神殿遺跡までこの地方都市からど田舎までチャーターした自動移動車に揺られて片道一週間の旅だ。


 「若、こちらへ」

 護衛兼秘書のミリセントが車の扉を開けた。


 オフロードも走れる車にしたせいか車高が高い。

 ミリセントの運転で助手席に乗り込んで出発した。


 こんなど田舎にもちろん一人でいくわけない。

 あこがれのオフィーヌ様に無理しないでおやりなさいって激励されたから現地くらいは行かないといけないが……クソジジイどものせいで金がかかる。


 御方様の寿命は仕方ないんじゃないかとも思うがな。


 たしか100いくつだったはずだ。


 俺の家は代々おひ様を崇める会の名家だが……御方様の代替わりはじいさま世代であったと若作りじいさまが言ってた。


 それにしても田舎だ正統派ど田舎だ。

 ああ、都会に帰りたい。


 特急列車すらなく、移動車が大人は一人に1台だと、しかも道にふらふらと住人が徘徊しているぞ。


 まあ、仕方ないと思いながら硬めの座席に身を任せた。


 「若ー、野菜の直売所みたいですよ」

 休憩しますよ、若ーと俺と同じ森の民の血をひいてるのに筋肉質なミリセントが道の駅とやらの駐車場に車を停めた。


 大きな敷地に新鮮な野菜果物特産物……珍しい月虹菊まであるぞといったらミリセントが希少過ぎて高級レストランとかでも何ヶ月まち……それがこの値段って安過ぎる〜とさわいで田舎の民を驚かせていた。


 襟巻菜に風音人参……岸辺キャベツ……ああ、オレここに住みたいと買い物かごに次々入れてるが……ミリセント、まだ先は長いんだが?


 うん?いい匂いがする。


 「山菜のおにぎりだと? こっちは山菜のお焼き……」

 地のものを食べることは地消地産で良いことだ。

 第一、肉臭く無くて良い……あっちのわさび豆乳ソフトクリームも食べてみたいなと目をやると有能な秘書が若ー、わさびですよねーと言って注文しだした。


 うん、ど田舎って食べ物的にも……空気的にも天国じゃないか……不便は通信端末ネットで解消だが……何と言ってもな、空気がうまい。


 こんど、オフィーヌ様をお誘いしてど田舎デートとかどうだろうか?


 想像してうっとりしているとミリセントがいつの間にか俺の籠も持って精算してる……あとで支払いしないとな。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 うちの若は素直すぎてどうも厄介事を押し付けられるみたいです。


 そんなことを思いながらオフロード対応の移動車のブレーキを停めた。


 森の民系でお日さまをあがめる会の名家ハタヤ家に仕えて何十年、ちっちゃい若は可愛かったけど、ビミョーにおバカっていうかなんていうか……勉強はできるんですけどね。


 みりしぇんと〜ぼくがんばっておかたさまにつかえるの〜とキラキラ光る金の髪と青い目のかわいいちっちゃい若が懐かしいですよ……今はオレとほとんどかわんない身長に金の長髪を緩やかに編んだ青い目の美青年って感じですけど……可愛さ半減ですよ、外見的にはですけどね。


 そんなことを思いながら野菜の直売所の中に入った。

 事前の観光案内でこの道の駅アイルンカは品揃えが豊富で希少野菜がいっぱいっていう口コミがあったはずです。


 「月虹菊のサラダ巻き……若、食べますよね」

 「山菜のおにぎりだと? こっちは山菜のお焼き……」

 いつも通り若が自分の世界に入ってるので買い物カートに入れといた、月虹菊のサラダ巻きなんて大胆な食べ物首都では絶対にない、若は食べたがるはずです。


 あの襟巻菜はおひたしに風音人参は甘煮に岸辺キャベツはお好み焼きに……豆乳ソフトクリーム見てます、絶対にわさびですね。


 「わさびを2つ」

 若の食料を確保出来たので旅の醍醐味買い食い用のソフトクリームを注文すると若が見えない尻尾をパタパタして喜んだ。


 でっかいけど相変わらず可愛いです。


 それにしても地方都市いい、若がキラキラ、変な行動とっても都会ほど冷たい雰囲気にならないうえにおせっかいも聞かなきゃ言われないです。


 うーん、美味しい〜とソフトクリーム片手にうっとりしてる若をイートインスペースに置いて偏食の若用食料と自分用にも食料をもう少し買おうとソフトクリームを口に放り込んで立ち上がった。


 かよわい若がついてこなければ3日でライノラント山脈に行けるんですけど……まあ、若はあこがれのオフィーヌ様にいいとこ見せたいんでしょうし、若と旅行楽しいので急ぎませんよ。



 若、石塀梨安いですー

 ミリセントが大きな梨の袋を掲げた。


 俺が赤子のときからの世話係のミリセントは俺の好みを熟知してるし大丈夫だ……しかし買いすぎだろう。


 まあ、いい、なんとかライノラント山に行き子竜を確認してる間に()()()の件はなんとかなってるだろう。


 あとは組織内の権力をオフィーヌ様派が掌握すれば老害どもを一掃できるだろう。


 それまでせいぜい子竜確保……できないけど、してるふりでもしてやるさ。


 ちらっと隠れたふりした組織の監視役(スパイ)に目線をやってからミリセントが追加で買ってきた豆乳梨スムージーを飲んだ。


 よし、オフィーヌ様のためにも頑張ろう。

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[気になる点] おチビさんは彼等の持参した食料品で初めて「美味しい」を知ることになるのでしょうか? [一言] 今後の展開を楽しみにしています。 この二人がおチビちゃん(&心配症なご両親)とどんな風に…
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