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謎の集団の密談

 竜の大神殿に小さい仔竜が加わったらしい。

 

 薬臭いベルベットのカーテンに覆われたベッドのかげに苦しげな息遣いが聞こえる。


 「御方(おかた)様……やはり……」

 「出来ることはやらねばならん」

 ベルベットのカーテンの向こうでちいさな声がする。

 報告してまいりますと白衣をつけマスクをした一人が部屋から出ていきとなりの部屋にノックをし入った。


 「御方様は時間の問題でございます」

 深い礼をして告げると部屋にいた人々が息を呑み失望感が広がった。


 隣の部屋の様子を聞いた金色の陽の光の刺繍をしたローブ姿の老人がふりかえった。


 豪奢な作りの部屋の壁には日の神を表す文様が金銀宝石で形作られ、色んな生き物がかしずくモザイク画が周りに配されている。

 

 重厚な作りの長い机、いくつもある飾り燭台は麗しき天上の乙女がかたどられ、灯された魔力灯が出席者の顔を浮かび上がらせている。


 出席者はみなキラキラしい格好をした壮年から老年の男たちであり、その前にはよくわからない緑色の飲み物が置かれたりナッツ類が置かれたりしている。


 「仔竜の肝はどんな病も負傷も治す万能の薬と伝わっている、誰ぞ御方様のために取りに行くものはおらんか?」

 「しかし、あの山の竜どもは竜守りの連中に守られておるぞ」

 太り気味の銀の長衣姿の壮年が偉そうに腕組みした。

 若いもんに任せてはどうだとキンキンの上着のギスギスのじいちゃんが咳き込んだ。


 年寄りの冷や水ですか? ぽっちゃりおじさんが背中をさすった。


 年寄り扱いするんじゃない。とキンキンじいちゃんは叫んでみんなの冷たい視線に黙り込んだ。


 「ともかく、御方様を助けるためには仔竜は必要だ……誰ぞよい若者はおらんか?」

 「……キノヤのエドウスであればあるいは……」

 扉を開けツカツカと入ってきた女性に気を取られながらぽっちゃりおじさんが答えた。


 他の出席者も突然現れた女性を睨みつけた。


 「まーた、こんなところで油うってるんですか? まあ、売るほど脂肪があるんですけどね」

 「あの、その、だって御方様がぁー」

 金髪を顎のところで切りそろえたキリッとした顔の背中におひさまを崇める会とプリントされた緑のつなぎ姿の女性が腕組した。


 「だいたい、皆さんが雁首並べたって御方様のお加減が良くなるわけじゃないんですけどね」

 「ふん、小娘め、今、対策がでたわ」

 金ローブの老人が鼻を鳴らして節がちの指を振った。


 「竜の大神殿の仔竜を手に入れて肝を御方様に捧げるのだ」

 バーンと音がしそうな様子で老人はフルフルしながら両手を上げた。


 「誰が取ってくるんですか?」

 女性がため息をついた。


 ええー、誰か若いもんだよ〜と誰かがつぶやいた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 老害たちが良からぬ密談をしてると私のいい子たちに聞いたので乱入してみたが……アイレンズミア地方の古代ファイグレム王国の竜の大神殿遺跡に仔竜を取りに行けだと?


 優しい御方様が聞いたらいっぺんで儚くなってしまわれるよ。


 腕組をして御方様のいる隣の部屋を窓からうかがうと緑の髪をした若者が中庭をやってくるのが見えた。


 老害どのたちが通信端末をあーじゃないコーじゃないと言いながらなんとか呼んだキノヤ家のエドウスか……


 「キノヤ家のエドウス参りました」

 「おお、エドウスどの、ソナタは御方様のために命をとせるか?」

 ひざまずいて丁寧に礼をする森の民の血を引く若者にキンキラキンの日の神の象徴を背中に金で刺繍した老害が手を握った。


 命をかけるならまずお前がかけろと心の中で悪態をついた。


 戸惑い気味のエドウスに銀のデブの老害が迫った。

 「御方様は明日をしれないお命だ、若者よアイレンズミア地方の古代ファイグレム王国の大神殿に1つの命が誕生した……まだ何も染まってない仔竜だ」

 ババーンと効果音でも付きそうな勢いでキンキンのギス老害がエドウスに顔を寄せてきて後ずさらないエドウス優しいね。


 私なら回し蹴りしちゃうけどね。


 「御方様の御為で有れば仔竜も命を捧げるであろう、エドウス、大神殿に行き仔竜をお連れせよ」

 「親竜は……」

 「御方様の御威光でなんとかせよ、今こそ命をかけるとき、森の民の血を引くソナタのご奉仕期待しておるぞ」

 ギス老害と金老害が言いくるめようとしている。


 エドウスは森の民の血を引くのが心の引っかかりらしいからね。


 戸惑いながら私をみたので目配せしておいた。


 「ろうが……御方様の最側近の皆様が命をかけられたらいかがですか?」

 「わしらはか弱い老人だぞ」

 私の言葉にキンキン老害が反応してそうじゃ〜そうだ〜と他の老害どもが呼応した。

 「エルアオン村の老人(自称竜の守り人)どもは難なくいけてるようですが?」

 「筋肉バカどもと一緒にするな〜大体ぎっくり腰になったらどうする〜」

 背中刺繍老害が本音を漏らして細い目でエドウスを見た。

 「ソナタはそこの性悪女と違って御方様を助けてくれるなな」

 「え、えーと……ええ」

 気の弱いエドウスがうなづいた。


 真の勇者の誕生じゃ〜真の信者じゃ〜とエドウスの周りで小躍りして続きの部屋の扉を開けて御方様のお付きにお静かにと怒られている。


 大方老害どもは当代御方様が儚くなられると権力がうすくなるのが嫌なだけだと思うが……まあ、いいエドウスには後で無理のないように頑張るように言っておこう。


 

 やれやれ、クソ女のせいでもう少しでわしらが行くことになりそうだったわい、なんとかエドウスを丸め込んだ、なんとか当代の御方様を延命してわしらの代を長くするのがこの会の発展につながると信じて任せたぞい。

本編で語り忘れましたが緑の飲み物は青汁です。

ナッツも健康のために食べているようです。

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