考古学者は見た(ついでに村人も考えた)
アイレンズミア地方はかつて古代ファイグレム王国の第二の都市であったらしい、今は見る影もない田舎だが……中興の祖と言われているチゥ康王が築いた壮麗な魔晶石で作られた大神殿を中心に広がる壮大な都市遺跡群は……偉大なるこの田舎村をはじめこの地方のここそこの地下に眠っていると思われる。
僕、ケグレム·ジーンはしがない考古学者だ。
この地方のライノラント山脈の山頂近くに失われた魔晶石の壮麗な大神殿があると予測をつけ来たが……何であれが飛んでいるんだろう?
「ああ、お山の竜さんたちが家にけえるべ」
「うんだ、赤子竜がちょこんと乗ってるだ」
かわいいべ〜産まれたんだべ〜と騒いでいるのはアインレンズミア地方、エルアオン村で案内を頼んだ純朴だが屈曲な老人たちで空を見上げて指さしている。
赤子竜だと?確か不老不死の妙薬とか書いてあった古文書があったんなぁと思いながら空を見上げた。
巨大な黄色と黒い竜が空を飛んでいるのを見るのは何回見てもびっくりするけど、どこに目を凝らしても赤子竜は僕には見えない。
この村の人たちは普通のフリして微妙にチートだ。
「あちらの方に古代王国の大神殿の遺跡があったいう言い伝えが……」
「そこはお山の竜さん一家のスイートホームだべ、邪魔したらしぬべ」
妙に悟った表情で山奥からグロリアニューラを弓矢で狩って来るチート?な老人がぬっと顔を近づけた。
パーソナルスペースは保ってほしいと大都会しか知らない僕は後ずさった。
だけど………あの遺跡が実は研究対象なんだけどなぁ、どうやって行こうと頭をかいた。
なんか女の人たちも距離が近いし田舎ってこんなものなのかな?
アイレンズミア地方は竜がたくさんいる。
大昔、その竜を祭り上げた古代ファイグレム王国が竜のためだけに作り上げた魔石造りの豪奢な大神殿が山の山頂近くにある。
とある一節によると古代ファイグレム王国が滅んだのは竜が好きすぎて大神殿だの竜の像だの色々作りすぎて財政難になり税を取りすぎて滅亡したって言われてるけどそんなことないよな……まさかね。
この村も竜が好きすぎる人たちが集まって出来たとかなんとかの説も……
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
首都ランリンディンから来た学者センセが山頂の竜さんたちのスイートホームな大神殿で興味があることは百も承知だべ。
でも竜さんのお邪魔したらしぬべ
わしらでさえしぬのに学者センセなんて十回はしぬべ。
それよりもうちのとなりの娘のウルディナちゃんとか裏の娘のイリナちゃんとかと仲良くなって高齢化した村に残って欲しいべ。
出戻りのミロンちゃんでも未亡人のジャニシアさんでも少しでもわかいけんどもダナちゃんとか、もう、村中みんなまとめて仲良くなってほしいべ。
そしてこの『竜守りの村』の後継をたくさん作って欲しいべ。
まあ、あやつが諦めれば……いやいや、もう良いべ。
ともかく、みんな、みいーんな高齢化して竜さんたちのお世話係アンド御用聞きとして全然竜さんたちのスイートホームに行けないべ。
昔だったらしなずにホイホイ行けたスイートホームにいけなくなったべ。
ダゴザもエルクスもパルリもわしオルジュもみいーんな年取ったべ。
竜守りの御用聞きとして活動出来てるんは今んとこゼロだべ。
あの子がもうちょい、運動神経が……いやいや……
ともかく、昔は良かったべ〜
「学者センセ、竜さんたちの邪魔したらだめだべ」
「僕の目的は遺跡でして……」
「うちの地下室に大昔の壁画らしきものがあるべ」
うん、確かに下手くそなのがあったべ。
本当ですかと学者センセが目をギラギラさせた。
ひいひいひいひいひいひい……じいちゃんだかの落書きが役立つと思わなかったべ。
ともかくわな……いやいや、きれいどころをを集めて学者センセを籠絡するべ、そして竜さんにちっこい子竜さんが増えたことだし頑張ってこっちも増やすべ。
オルジュさんに見せてもらった壁画は後期ファイグレム王国の様式が見とれる空をかける黒竜の壁画で素朴な中にも素晴らしい描写で研究対象になりうるものだった。
ハイゲル炭で描かれたおおらかな竜の絵をみたらビラキス教授も興奮するに違いない。
だが、しかし……
「センセ〜あちらにもありますのよ〜」
「おばさんはどいてなの、せんせい、ダナとあっちの絵見に行くの」
「小娘はじゃま、学者さん、あたいとあっちの彫刻見に行こう」
「それより古文書があるわよ、うちに来て」」
研究したいのに村の女性たちが何故かわきゃわきゃついてきてうでを組もうとしたりしてこわい。
確かに壁画も古代文明の彫刻も気になるけど……
あの、僕は研究しにきたのであって嫁をもらいに来たわけじゃ……え、え、ええー、やめてく……
よしよし仲良くしてるべってご老人たち、何腕組みしてるんですかぁ〜
僕は絶対に古代の大神殿にいって研究するんだぁ〜