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第48話 いざ、会場へ!

宮廷の西側に建てられた別館の大広間。

今日はここでシャーロットが魔力に目覚めたお祝いパーティーが開催される。


第三皇子が中心となって進められているが、お祝いとは名ばかり。


本人は魔力枯渇を起こして体調を崩しているにも関わらず強行される。

今でさえ、立ち上がるのでさえ精一杯だというのに。


通常、魔法の制御や習得には何年も日を要する。


だからこそこのパーティーの開催は早すぎるのだ。

皇帝陛下の娘ゆえ優秀で魔法の行使も早いと思われるのも仕方ない。

招待されている貴族達は、驚きと称賛を持って訪れるだろう。


シャーロットへの期待値は最大限に上げられている。

このパーティーはもはや兄による私刑に近かった。



シャーロットの部屋からエスコートしてくれたのは彼女の近衛兵だ。


手荒れはレースのグローブで隠しきれている。

化粧による陰影と、体型カバーが出来るパニエがついたドレスで、限りなくシャーロットの造形に近づけた。

目の色は元帥閣下の魔法を掛けてもらった。


全て完璧に仕上げているが、どこか不安が残る。

裏仕事をするのは久しぶりだからだろうか。


通常はある程度、協力者がいるのだが、今回の入れ替わりの事実を知っているのは、シャーロット本人とその侍女、元帥閣下しかいない。

しかし――その三人はこの場には来ない。


「大丈夫ですか、シャーロット様」


近衛兵が心配そうにシャーロット――に扮したランディに声をかけた。

頭の中で、様々なシミュレーションを行っていたため油断し、わずかに肩を揺らした。


「すみません、急に声をかけて……顔色が冴えないようでしたので」


「公の場に出るのは久しぶりだから緊張しているみたい。だめね、わたくしったらお兄様がせっかく開いてくださったパーティーなのに……」


「その、もうお身体は大丈夫なのですか?」


「心配をかけているわね。もう大丈夫よ」


ランディは柔らかくほほえみ、上目遣いで近衛兵を見つめた。


「わたくし、変では無いかしら?」


「いいえ、幸せを運ぶ可憐な天使のようにお美しいですよ」


一瞬、思考が停止する。

予想では「いつも通りですよ」という言葉が返ってくるはずだったが、皇女ともなると気恥ずかしい賛美が仕様のようだ。


――うわわ、なんともまあ、むずかゆい言葉ですね。


聞き慣れない言葉すぎて、口をむにむにと動かしたくなる。

変装に問題がないか探りを入れてみたが、特に疑わしくはないようだ。

ついでに先入観も植え付けておく。


「……その、魔力が遣えるようになってから少し見た目が変わったでしょう? 緊張して声も震えるの。いつも通りに振る舞えるか不安だわ」


「でも大丈夫ですよ。確かに緊張はなさっているようですが、いつもに比べると堂々としていますよ」


――なるほど。もう少し引いた態度が必要ということですね。


ランディの緊張感と皇女の引け目は見事にリンクしているようだ。

近衛兵は(あざむ)けている。彼が気づかないのなら大抵の人間は騙しきれるだろう。

それでも血縁者である兄姉にバレる可能性は拭いきれない。

きょうだい仲が悪く顔を合わせていないとはいえ、高い魔力の持ち主だ。

看破してくる懸念もある。油断は出来ない。


シャーロットは責任を取ると言っていたが、仕事として請け負った以上は、完璧にパーティーを終わらせてみせる。


気がつけば大広間の三階にある控えの間にたどり着いた。

この扉の先は第三皇子と多くの招待客でいっぱいだろう。


大広間に足を踏み入れれば一人での戦いだ。

弱音は吐けない。ランディのフォローをしてくれる者はいない。


逆に言えば、誰にも気兼ねせず戦えるということ。


ランディは両手をパンと軽く叩いて、気合いを入れた。

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