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進化?

「あ、上がった」


 もう一度ステータス画面を確認する。

 間違いない。レベル20ってなっている。


「来た――!」


 ガッツポーズで飛び跳ねていると、みんながステータス画面を覗き込んできた。


「やったな。絶対時間が開けたら、進化が始まるぞ」

「うふふ。アオは絶対可愛い女の子になるわ。楽しみ」

「今度こそヒーラーが欲しいな」

「私は人型なら何でもいいかな。それより、絶対時間が明けるまでは、普通にしてていいの?」


 ノアが頷いたので、私は急いで解体に取り掛かった。


 これで連戦十二回目。既にたくさん牛肉のストックが出来た。だからといって、解体の手を緩めるつもりは毛頭ないのた。


 解体を終えると、少し離れた場所に移動して、ブランが拠点を作る。後は絶対時間が明けるのを待つばかりだ。


「明けるぞ」


 虹色のシャボン玉が消えた途端、身体中の力が抜けた。

 気持ち悪い訳ではなく、ただ力が入らない。


 倒れ込みそうになった私を、ノアが抱き止め、そのまま肩に担ぐ。


「飛び込めー!」

「人型! 人型!」

「毛虫! 毛虫!」


 シャモア、こんにゃろー。


 私は荷物のように担がれて、拠点に運ばれる。

 段々頭がぼんやりしてきた。視界も頭の中も真っ白になって暖かい光のお風呂の中にいるような浮遊感に満たされた。


 痛くもない。

 ただ、あったかい。


 白い光の中に、さらに明るい緑の光が流れていく。緑の光は数字だ。ゼロと一の数字の羅列が上から下へと滝のように流れ落ちていく。


 光る数字の帯は、私を取り囲み、絡み、包む。


 ああ、私は今変体中なんだなぁ。さなぎの中の蝶やカブトムシってこんな気分なのかな。

 そんなことを考えていると、いきなり光が弾けて視界が開けた。


 目の前には、仲間の驚いた顔。


 見慣れた拠点の風景が、進化が終わったことを教えてくれた。


 みんなの頭は、いつもより少し低い位置にある。そうか、私背が伸びたんだ。

 という事は二足歩行。私は期待を込めて、自分の手足を見降ろした。


「……あれ?」


 見降ろした先には、見慣れたピンクのもふもふがあった。


 にぎにぎしてみる。やっぱり間違いなく私の手のようだ。


「ん?」


―――変わってない?


 嫌な汗が背中を流れた。


「もしかして、進化失敗?」


 そんなの嫌だ! それじゃ一生ウサギのままじゃないか!


 青ざめる私の前で、みんながフリーズした後、


「ぷっ、くくく」


 大爆笑した。


「あはははは」

「なんだそれ! は、腹が痛い」

「こ、これが進化でござるか……」


 初めて進化を見るモスは顎を落としている。それは良いとして、何故他のみんなお腹を抱えて、笑い転げている? リディスなんか涙目だ。

 むう。なんなんだ!


「なんなの?! 笑い事じゃないんだけも!」


 足裏を地面に叩きつける。

 と、異変に気づいた。


 今まで素足だった足が、皮のブーツを履いていた。

 しましまの靴下まで見える。


 足は確実に伸びているみたいだ。まあ、靴下の上から覗くところはピンクのもふ足なんだけど。


 どうやら進化はしているみたい。

 私はステータス画面を開いて確認した。


NAME アオ(盗人(ぬすっと)ウサギ)

HP  1784  MP  251

STR 78   DEF 63

VIT 69   INT 60

AGI 75


「……盗人(ぬすっと)ウサギ?」

「暴れウサギの次は盗人かよ!」

「もーアオったらどんだけウサギが好きなの?」


 ステータスもAGIとINT伸びている。

 そりゃ盗人だから、素早さは必要だよねーって言ってる場合か!!!


「じゃあなんだ? 私はウサギからウサギに進化したって事?」

「だな。順当な進化だ」

「何処が順当なんだ!!」


 私は両手を地面について項垂れた。

 そりゃあもう、この世の終わりってくらい項垂れた。


「ノアはいいよ! 上位種だけど、めっちゃ人型じゃん! 美形だし! 私もふもふなんだけど! ピンクなんだけど! 何にも変わってないじゃん!」

「いや、変わったって」


 ブランが笑いを堪えた声で頭をぽんぽんしてきた。


「何処が?」

「服着てる」

「そんだけかー!」


 適当な事言いやがって!

 ブランの首根っこを捕まえて、ガタガタ揺らしてやる。


「ほ、他にもあるって」

「どこ?」

「耳が垂れた」


 それがどーした?!


「背が伸びた」

「ちょっと、しゅんとしたわね。大人になったわ」

「あ! 首があるでござるよ! 前は埋もれて首が見当たらなかったでござる」

「重箱の隅を突くような違いばっかりじゃん……」


 ヒバ○ーがエー○バーンになったくらいの変化じゃん!


「ノア! 進化って一度だけ? もうワンチャンないの?!」


 縋り付いて訴えると、ノアは困ったように頭をかいた。


「分からん。少なくともレベル54まではこのままだ」

「レベル54?」


 随分と中途半端な数字に首を傾げると、ノアが寂しげに、口元だけ笑った。


「それが現状の目覚めし者の最高到達点だ。それより長く生きた個体は存在しないため、その先は分からん。もしかするとレベル60で進化するかもしれないし、最後までこのままかもしれない」


 レベル54。

 思ったよりもずっと低レベルだった。


 でもそのレベルあれば、ツティーシニー平原に篭っていれば、比較的安泰に過ごせただろうに。

 先を目指したんだ。


「ノアが記録を更新するよ」


 私は拳を突き出して言った。


「勿論そのつもりだ」


 ノアはくすりと笑うと、私の拳に拳をぶつけた。グータッチだ。頼もしげな笑顔に、私は懇願する。

 

「もうワンチャンあるって、証明してね」


 ノアは、だといいがな、と首を竦めると、諭すように言った。


「大きな変化がないのはメリットもあるぞ。戦闘スタイルが変わらないから、今までのノウハウが活かせる。俺は進化で四つ足から、大剣持ちになったから苦労した」

「そっか。ちょっと救われたよ」

「落ち着いたなら、スキルを確認してみろ。増えてるぞ」


 同じウサギと言っても、別種だからやれる事も増えてるのか。

 盗人ってくらいだから、盗むとかかな?


 スキル

【盗む】レベル1 対象の持ち物から、確率で一つを盗める。

【忍び足】レベル1 半径五十メートルの範囲で気配を消せる。


 アビリティ

【気配探知】レベル1 半径五百メートルの気配を探知できる。


「なんか、盗賊っぽい能力ばっかりだね。戦闘系が欲しかったな」

「気配察知なら俺も持ってるぞ。プレイヤーを避けるには良いスキルだ」


 ノアは犬科なので、鼻が効くらしい。匂いでプレイヤーの位置を把握できるのだそうだ。私は兎だから音だな。アビリティレベルを上げれば、安全度が増すな。


 っていうか、また戦闘系ないじゃん!


「アオ殿は速さを活かして手数で稼ぐタイプでござるよ。小生と同じでござる」

「でもモスにはカッコいい攻撃スキルがあるじゃない」


 私も一つでいいから欲しかった。


「スキルはこれ以上増えないでござるか?」


 気になっていた事をモスが聞いてくれた。


「そんな事ないわよ。アオの『解体』みたいに、行動によって手に入るものもあるわ。後はレベルが十上がる度に新しいスキルを覚えるわね」

「やった!」


 大丈夫。私はまだまだ強くなれる。

 そう思うと、俄然やる気になってきた。


 こうなったらプロのウサギを目指すぞ!


「次はシャモアだな。どうする? このまま連戦するか?」

「やる」


 シャモアもやる気になったみたい。


 一晩休んで、モスの進化までアリシュタ連戦することになった。

次は月曜日に更新します

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